【近日中フルリメイク】……あなたが、先生、ですか。はじめまして、不知火カヤと、申します。 作:猫型探索者
そこかしこから銃声や爆発音が鳴り響き、銃弾やピンの抜かれた手榴弾が、辺りを飛び交う。
戦場と化したアビドス高等学校、校庭に設置された大量のバリケードの影。それの最も敵と近い場所に、今、私は居る。
それも、梔子商店作、砂祭りTシャツとパイナップル柄の半ズボンという、超軽装で。
一応、私を守ってくれる二丁の愛銃は、ベルトに取り付けられたホルダーにある。とは言え、この腕の事を考えると、無闇に撃つわけには行かない。
「……トイレを掃除した後、気晴らしに校舎の外周を散歩したのは悪手でしたか」
こんなことになるのなら、あの後おとなしく教室に戻ってゆっくり体を休めていればよかったと、今更ながらそう思う。
けれど、その行動を悔いた所で、この状況は何一つ変わることはなくて、それどころか時間経過で余計に悪化していくばかり。
バリケードの影に身を潜ませてから、未だ数十秒しか過ぎていないにも関わらず、相手の銃声と投擲武器の爆発音はかなり近づいてきている。
正直に言って、このまま隠れていても、私がたどる未来は、敵に見つかって人質にされるか、はたまた、他の生徒と同じように撃たれて、うっかり
――……そんなしょうもない死に方なんて、絶対してやるもんですか。
散るにしても派手に散りたいし、そもそも死ぬ気は全くない。
故に、私が選択したのは。
「よし、逃げましょう」
逃亡だった。
時には逃げることも必要なのだ。
「…………校舎までは、約四十メートル弱。敵との距離は二十メートルあるか無いか。そして――」
一瞬、校舎の方へ目を向ける。
校舎二階の窓から、眩いマズルフラッシュと煙が見えて、わずかに遅れてチェーンソーのような銃声が響く。
放たれた弾丸の雨が、バリケードごと襲撃者を打ち砕いたのだろう。幾人かの悲鳴と“ライフルが壊れた!? コレじゃ赤字だよぉ!?”という涙声が聞こえて来た。
その文言からするに、どうやら彼女らは何時ものヘルメット団の連中では無さそうだ。
そして赤字、という言葉に、何故か一瞬、あの
「っ……ぐぅ…………!」
再びこみ上げて来る熱いものを抑え込もうと口を手で押さえ、身体を丸めて呼吸を落ち着かせているその間にも、“校舎側”からの銃撃は激しさを増し、
「……成る程」
それが、いったい何を意味するのかを理解できないほど、私の頭は疲れ切っていない。
押し寄せる胃痛を我慢しつつ、一瞬、校舎の方を見て。
「行きますか」
私は、バリケードの影から、飛び出した。
「居たぞ!」
「ピンク髪だ! 気をつけろよ!!」
「……ここのピンク髪の子、あんな折れそうなほど細かったっけ? 写真と違うくない?」
「バカ、ダイエットしたんだろ」
瞬間、数多の銃弾が、一切の情け容赦無く、私を襲う。乱雑にばら撒かれているようで、確りと狙いを定められた弾丸が、足元を、パイナップル柄の短パンを、砂祭りTシャツを、そして頭髪を削って行く。
「はっ……はっ……!」
それなのに、体の動きは鈍重化して行くばかりで、放たれた弾丸が、どこから、どのような軌道で、何処を狙って飛んできているかは分かるのに、体がそれを避けられない。
反応が、間に合わない。
しかも、頑丈そうなバリケードへ隠れようと、より一層脚に力を入れた瞬間だった。
「――ッ!?」
足首に激痛を感じた直後、視界が反転し、体が宙を舞う。一瞬、手榴弾が至近距離で爆裂したのかと考えたが、それが正しくないことはすぐに理解できた。
何故って、受身を取った時に、視界の片隅に入ってきたんですよ。見事にグネって、変な方向に曲がった私の足首が。
その瞬間、理解しましたよ。
――ああ、私、こんな何にもない平地で足首を挫いたんだ、って。
でも、このまま転んで、蜂の巣にされるのはあまりにも癪だったもので。
私は転びながらも、ベルトのホルダーから銃を抜き、相手の銃口を狙って発砲しました。
「っ!? マジかよ……お前、ばっ、化け物か!?」
「驚いてる暇あるなら撃つんだよ!」
銃弾自体は見事に命中。銃口めがけてホールインワンしてくれたのですが、速さと精度を求めて、右手での射撃を行ってしまったのがいけなかった。
反動を抑えきれず、銃を取り落とし、最悪なことにバリケードの外へ相棒が転がって行く。おまけに右腕には激しい痛みが走り、筋肉の痙攣が止まらない。
転がっていく拳銃が見えたのか、敵は距離をつめてくる。足音が近づいてくる。
正直に言えば、後悔しました。
ことを急ぎすぎたかもしれない、と。
しかし後悔をし続けていても意味はないのです。特に今のような、秒単位での決断を求められる状況では。ゆえに、私は覚悟を決めました。
賭け、と言ってもいいかもしれません。
校舎からのマズルフラッシュが見えてから、約十秒経過している今、ホシノさんか、ユメさん、もしくはそれ以外の誰かが、こちらへ向かってきていることに賭けて、行動を起こしたのです。
幸いなことに、私のホルスターにはもう一つ相棒がいる。この子を発砲するのはいつ以来か。
もはや記憶にありませんが、メンテナンスを欠かしたことはありませんからね。
きっと。応えてくれるでしょう。
「――ッ!」
「ぅおっ!?」
極限まで重心を落とし、バリケードの影から飛び出した私は、敵の腰めがけてタックルを敢行。バランスを崩した敵に対して、デリンジャーの銃床でヘルメットのバイザーをかち割り、眉間に一発発砲する。
「痛ぁっ!」
次に。
振り向きざまに敵の銃の排莢口を狙って一発。
「あっクソ――ぅわぁああっ!?」
薬莢噛みを起こし、見事にジャムったのを見届けた私は、相手に組みつき、左手1本で投げ飛ばす。
体は動きませんが昔取った杵柄は未だ健在のようで、何の違和感もなく投げられました。
しかし、これでデリンジャーは弾切れ、体力も限界、足首ももう無理、打つ手がない。
「まだ私が居るんだよ、なぁっ!!」
ですから、私のターンもこれでおしまい。
今の状態で蜂の巣にされれば、下手をすれば死ぬかもしれません。
しかしやることはやったのですから、後悔はありません。未練は、山ほど残っていますが。
そんな恨み節を心の中で唱えながら、目を閉じて、衝撃に備えていた、そんな時でした。
「やぁっ!!」
そんな、気の抜けた掛け声が周囲に響き、ガシャンと大きな音が鳴る。まぶたを開けて音のした方へ目を向けると、ヘルメット頭が吹っ飛ばされ、バリケードに突っ込んでいた。
「遅れてごめんね、カヤちゃん。もう、大丈夫だよ」
目の前には、水色の髪が靡く大きな背中があった。
普段は、華奢で細く、ちょっと頼りない。そう思わせる背中なのに、どうして今はこんなにも大きく、頼もしく見えるのだろうか。
「ユメ……さん……」
ああ、疲れからか、思考がまとまらない。
「やー、危なかったね。でも、もう大丈夫だよ」
見慣れた桃色の髪の毛が、風に揺られている。小さいはずのその背中が、どうしてか、とても、とても、…………とっても、大きく見えた。
「――私が、来たからさ」
彼女の二色の瞳が、獰猛な光を宿している。長年一緒にいるからわかる。あれは、かなりキレている。
そんな彼女の様子が少し心配になって、名前を呼びながら手を伸ばそうとする――が。
「ホシノさん……ぅあっ!?」
脇の下に、ニュッと手を入れられて、持ち上げられてしまった。振り返ると、砂狼さんが、私のことを持ち上げていた。
「…………軽い」
清々しいほどの、無表情。
「…………あの、砂狼さん……?」
「何?」
そして、ビックリするほど曇りなき澄んだ眼で、私を見つめながら。
「いえ、何でもありません」
「そう。――じゃあ、カヤを先生のところまで連れて行くね」
「うん。お願いね、シロコちゃん。それと、カヤ」
「?」
「はい、これ。持っとかなきゃ、でしょ?」
短い時間で、色々起こりすぎて、頭がパンクしかけていたところで、ホシノさんから拳銃――私の相棒を手渡される。
「……ええ。ありがとうございます、ホシノさん」
「お安い御用さ〜。――じゃ、ゆっくり休んでて」
そんな言葉を交わすと、ホシノさんは敵に向かって突っ込んで行った。
「ん、じゃあ行こう」
そして、どうやら私もお役御免のようだ。砂狼さんに、猫を持ち上げるみたいにして抱えられたまま、私は最前線から離されてゆく。
まあ、私に出来ることは、もう何もありませんし、この戦いで出る幕は、もう無さそうですね。
「…………ねぇ」
「……どうされました?」
「その腕、痛くないの?」
「痛くない、と言ったら大きな嘘になってしまいますが…………コレでも、大分治ってきているのですよ」
「……これ、で…………?」
「ええ、これで」
「…………元は、黒焦げだった。――そう考えると、大分良くなってきていると、そう思いませんか?」
「……ん」
カヤ室長の今後について【誰かの家に転がり込む場合は、家がある地区が活動拠点となります】
-
アビドス編終了までこのまま滞在
-
アビドス編の途中でDUへ出発する
-
ホシノの家に転がり込む
-
即座にDUへ向かい防衛室へ突撃
-
ヒナの家に転がり込む
-
シャーレに転がり込む
-
ナギサの家に転がり込む
-
柴関ラーメンで働く
-
ツルギの家に転がり込む
-
カンナの家に転がり込む
-
ノアの家に転がり込む
-
便利屋68と共に行動する
-
イチカの家に転がり込む
-
マコトの家に転がり込む