【近日中フルリメイク】……あなたが、先生、ですか。はじめまして、不知火カヤと、申します。 作:猫型探索者
そして、独自設定マシマシなので、ご注意下さい。
周りを見渡しながら足早に、けれど極力汗を流さないよう歩みを進める。
壁を伝い、周囲を注視しながら奥へ奥へと突き進んで行くのが、実動部隊員だった頃を思い出して、ほんの少しだけ心が踊るような、そんな感情が湧いてきます。
現状を考えれば、この感情を持つことは相応しくないのでしょう。
ですが、私は考えました。
このような――……正直言って、ほぼ詰みかけている状況でこそ、無理にでも気持ちを明るく、活力を持たなければならないのではないかと。
そう思い、何か楽しいことを思い浮かべようと頭を回してみました――……が、脳裏を過るのは楽しい記憶などではなく、私が卒業するまでに解決しなければならないような仕事のことや、次の世代に引き継ぐべきでない厄介事ばかり。
近頃、急激な勢力の拡大が懸念されているカイザーコーポレーションとの
ふと頭に浮かんだモノだけでこれなのです。
全ての予定を合わせたのなら、途方もない数の仕事量になることでしょう。
彼の“超人”が謎の失踪を遂げたことで、只でさえマトモな労働時間ではなかった連邦生徒会の中でも特に労働量の多い防衛室は、もはや休日すら満足に取得出来ないカイザーもビックリの超ブラックな組織へと生まれ変わってしまっています。
だからこそ、こんな状況に陥ることだけは、どうしても避けたかったのです。
先輩、先輩と言って、ぴったり後ろに付いて歩いてくる可愛い後輩たちが、地獄の底無し沼に引きずり込まれる光景を、ただ指を咥えて見ているだけなんて鬼畜の所業に耐えられる先輩なぞ、一体何処に居ると言うのでしょう。
今、あの子達にどれほどの苦労を掛けているのだろうかと想像すればするほど、心臓の鼓動は激しさを増し、目の前が暗くなるような、そんな感覚に襲われます。
確かに、現状、私は生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされています。
いくら可愛い後輩と言えど、結局は赤の他人。今は彼女たちを心配するよりも、自分のことに全力を注ぐのが先決である――と、頭では理解しているのです。
理解していますが、やはり、考えてしまうんですよ。
……人員の損失を恐れて、被害をさらに悪化させる愚将。
あの
ですが。
私は、この考え方が間違っているとは、絶対に思いたくない。
この私が防衛室長である限り、私の意思を継ぐものが、防衛室に居る限り、キヴォトスに住む者たちへ、大切な人を亡くす悲しみは味あわせない。
時に笑い合い、時に喧嘩し、時に更生局へブチ込まれ、時に退学することがあったとしても、最終的には誰一人として欠けることなく、皆が笑顔で卒業出来る。そんな平和な学園都市を作り上げることこそが、それが私の信念であり、野望でもあるのですから。
――……とはいえ、現状は程遠いですし、それに今は、そんな夢物語を考える余裕はないかもしれません。
あくまで仮説ですが。
この状況が何か大規模な組織に仕組まれたものだとした場合、大半の
悪い言い方をすれば、バックドアと化しています。
その穴から何者かが連邦生徒会へ入り込み、内部を侵食して行く可能性も、高くはないとはいえ、低くも無い。起こりうる未来の一つとして、頭の片隅――いえ、意識の範囲内に入れておくべきであり、楽観視は禁物です。
――…………私は、自分に戦闘に関する才能が無いことは理解していましたし、ある程度納得もしていました。
ですが……ソレをこれ程恨んだ日は、恐らく、今日が最初で最後になることでしょう。
ええ。
最後にならなくてはならないのです。
……まあ、いつまでも悔やんでいても、仕方がありません。
頭を切り替えて、今は情報の収集に注力しましょう。
無知は罪ではありませんが、自らの首を刈り取る鎌となるのですから。
「はて、さて。…………どうしたものか」
時計も携帯電話も無いので時間は不明。
このお腹の空き具合と、岩壁の切れ目から光が射し込んでいる様子からして、現在時刻はお昼前でしょうか。
それなりに長い時間歩き続けたと思いますし、実際出発点と思わしき場所は随分と遠いので、脱出に向けた一日目の進捗としては及第点に達するとは思います。
しかし、残念――と言うか、危惧すべきことが一つ。
マズいことに、現状、水どころか草木の一本すら発見できていません。
確かに、この場所は日陰が多く、やたら乾燥していて、尚且つ気温が高い。
植物に適さない環境であることは、それらに詳しくない私でも理解できます――が、流石にここまで不毛の地だとは夢にも思いませんでした。
少なくとも、苔や小型の植物、或いはキノコなどの菌糸類くらいは、早い内に見つけられるだろうと踏んでいたのですが、それはあまりにも楽観的だったかもしれません。見える範囲の景色に代わり映えはありませんし、このままでは、本当に野垂れ死にする可能性がほんの僅かに、極少ですが、見えてきてしまいました。
……そして、そんな危機感が生まれると同時に、この極端な乾燥状態にある自然環境から、現在地についてある程度の目星がついたのは――或いは、ついてしまったのは、果たして良いことなのか悪いことなのか。
――……見渡す限りの、赤褐色の岩壁が造り出す一本道。
極端に乾燥した風は、僅かな湿気すらも感じられないもので。
時折強い風の音が鳴ると、遥か上にある岩壁の切れ目から黄金色の砂が雨のように降り注ぎ、視界と移動を遮る。
しかしそれと同時に、砂が切れ目から射し込んだ僅かな光を反射して幻想的な光景を生み出し、見る者――私一人ですが――の心を、落ち着けてくれる。
そんなこの光景に、私は見覚えがあります。
それも、つい最近。
具体的には、先週の日曜日に。
先週日曜、私は久々にもぎ取った半日休日を満喫していました。
行きつけのカフェでモーニングをいただいて、ショッピングモールで食後のお散歩ついでにお買い物。その足で広くも狭くも無いけれど活気のある公園へ出向き、キッチンカーにて販売されていたクレープとハニーバターワッフル、濃厚ミルクのアイスクリームを頬張って、ちょっとお高いコーヒーを楽しむ贅沢な午前中。
カロリー的には過剰摂取ですが、どうせ激務で減りますし、一切気にしません。
むしろ、胸が無いだの尻が薄いだのまな板だのと陰口を叩かれるくらいなら、多少の増量は歓迎ですよ。
……羽川さんに聞かれたら殺されそうですね、これ。
……ともあれ。
そうして休日を楽しんでいたら、偶然アビドス高等学校の元生徒会長さんにお会いしまして、分厚い写真集を頂いたんですよ。
何でも、ミレニアム製の形落ちカメラが格安で売られていたので購入し、ドローンに搭載して各地の写真を撮影。アビドスを知ってもらうためにと写真集を作って自費出版したそうで。
それで、私の記憶が正しければ、その中の一頁に、今目の前にある光景と酷似した写真があったんですよ。“光と砂が作り出すハイパーロングスロープ”という、何か妙に引っ掛かる題名と共に。
…………あれがこの谷のような場所の何処かだとすれば、ここはアビドス自治区と言うことになります。尤も、植生や気候からなんとなくそんな気はしていましたが、ほぼほぼ確定としても良いでしょう。
そして、ここがアビドス自治区であると仮定した場合、私をここへ連れて来られる人間、または組織というものは限られたものになる。
タコが出るか、はたまたクラーケンが出るか。
どちらであったとしても、私のなすべきことは変わりません。
一秒でも早く防衛室へと舞い戻り、キヴォトス全体の平和を、キヴォトスに住まう皆さんの健やかな日常を守ることが、今の私の急務です。
なぜなら、それが、私たち“連邦生徒会・防衛室”のお仕事なのですから。
――……ところで、あの岩影にポツンと鎮座している黄色いのは、もしかしてタンポポでしょうか。もし違うとしても、植物があるということはほんの僅かにでも水分が存在する証拠。
生き残る道を、見つけられた気がします。
ありがとうございました!
少し浮かんだものがありましたので、お試しでアンケートを設置してみました。
どうぞ、よろしくお願いします。
いずれ書く番外編ついて(上位四、五話を書く予定です)
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カヤ室長とカンナ局長が屋台で飲む話
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不知火カヤの優雅な休日
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コピ・ルアクを飲むカヤ室長
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カヤがカイザーと戦うに至るまでの軌跡
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モブちゃんと防衛室長のチェス勝負
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過労でぶっ倒れたカヤ室長の話
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先生とカヤの徹夜作業
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先生&カヤの戦い@オークション
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カヤ室長の胃痛MAX治安維持部隊巡り
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カヤ室長によるゲヘナ観光
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カヤ室長によるトリニティ観光
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カヤ室長によるミレニアム観光
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不知火カヤの奇妙な一日