【近日中フルリメイク】……あなたが、先生、ですか。はじめまして、不知火カヤと、申します。   作:猫型探索者

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投稿予約を再来年の三月六日に設定しておりました。
どうしてそうなったのか――コレガワカラナイ。


覚悟を持って

 

 ふくらはぎに感じる確かな疲労と、顔にダラダラ落ちてくる塩辛い汗水を拭いながら、私は大きな溜め息を付きました。

 

 どうして、こんなことになったのか。

 何故私がこんな目に合わなければならないのか。

 何時もならば“普段の行いが悪いのだろう”と自己完結するようなことですが、今日はそんな考えが延々と頭の中を巡ってしまいます。

 

 それほど、私はこれからの運命をあの花に掛けていたのです。あんなに元気な花があるということは、近くに水源がある。水源があるということは、限られた私の“時間”が増えるということ。

 

 この命を繋ぐためには、また皆の元へ帰るためには、どうしても、水を手に入れなければならない。人は三日間水を飲まなければ死ぬ、と言いますが、灼熱である砂漠という環境では、ソレよりも早くタイムリミットが訪れることは明白です。

 

  

 ――……故に、私は、あの希望の花を目掛けて、残り少ない体力を何とか絞り出しながら足を動かしました。何度も躓き、転んで、膝に擦り傷を作りながらも、前へ、前へと。

 全ては、キヴォトスの平和の為に――なんて、綺麗事を言うつもりはありません。私は、死にたくないから、もう皆に会えないのが嫌だったから、足を動かすことを止めませんでした。

 

 そうして、やっとたどり着いた場所にあったもの。

 

 

 

  

 それは、熱々の岩の台座()()でした。

 

 

 

 

 結論から言えば、アレは。

 

 疲労と、ほんの僅かな絶望の中発見した、あの黄色い花のようなものは、タンポポなどではなく、それどころか、花ですら無かった、ということなのでしょう。

 

 では、それが何だったのかと問われると…………分かりません。

 なぜなら、ソレは、この場所まで残り数百メートルと言ったところで、忽然と姿を消してしまったのですから。まるで、その存在そのものが、元から無かったかのように。

 

 あれは不知火だったのか、はたまた幻覚だったのか。

 正体は定かではありませんが、そこに実在するものではないという点では、同じものと言っても良いでしょう。今の私にしてみれば、自然現象か心理的現象かの違いでしかないのですから。

 

 

 なにせ。

 

  

 もう少しで、何かしらの水の手がかりが見つかる。

 もう少しで、助かる道が見える。

 

 そう自分に言い聞かせ、瞼を閉じて気合いを入れ直し、次に目を開いた時、そこにあったのは光が差し込む岩の台座だけ。

 砂漠に咲く一輪の花なんて影も形もなかったときの心臓の暴れようと行ったら、それはもう、自分でも笑いが込み上げてくるレベルで。

 

 希望が見えたと思ったら絶望に叩き落とされるなんて、まるで物語の中のワンシーンではありませんか? あの瞬間は、漫画本か何かの主人公になった気分でしたよ、私。

 

 実際、けらけらと笑いながら、膝から崩れ落ちましたし。

 第三者の視点で見てみれば、さぞ面白い光景だったでしょうね、ええ。

 

 

 

 

 ――……と、まあ。

 

 ここまでは、あまりよろしくないことばかりを取り上げていたのですが、実を言えば、悪いことばかりが続いているわけではありません。

 

 新たな希望は、見つけられましたから。

 

 ここから、数百メートル、或いは一、ニキロほど進んだ場所の岩壁が、やや崩れていたのです。

 距離的にはまだまだ遠いので、実際その場所がどんな様子なのかはハッキリ分かりませんが、ここから見る限り、ギリギリ登れそうな気配を感じています。

 

 ただし、一つだけ懸念すべき点があるとすれば、あの斜面と思わしきものは、どうも自然に形成されたわけでは無さそう、という所でしょうか。

 まるで、なにか、巨大なモノが這ったような。

 

 そんな崩れ方に見えてしまうのは、私が疲れているからなのか、はたまた…………。

 

 

 

 いえ。

 考えるのは止しましょう。

 どの道、今はあそこへ向かわなければ未来はありません。

 

 

 砂埃と血で汚れ、所々が破けた連邦生徒会の制服をパタパタと叩いて、少しでも綺麗な状態へ戻してから、私は立ち上がって、また足を動かし始めます。

 荒れた地面にヒールは辛いですが、直射日光で照らされた地面は熱されたフライパンのようで、一度脱げは火傷一直線。

 足の裏を火傷して行動不能状態に陥るよりは、躓いて小さな擦り傷を作る方が、まだマシです。

 

 とはいえ、そもそも怪我をしないことが一番なのですが。

 

 

 

 ――そうして歩くこと、三時間。

 

 

  

 あれ以上の負傷を避けるために、いつも以上に足元へ気を配りながら歩いていたら、いつの間にか随分と太陽が傾いていました。

 お陰様でこの谷底は中々暗くなっており、明るい時間とはうって変わって、妙におどろおどろしい雰囲気を滲ませています。上から落下したのだと見られる動物の骨が無惨に砕け散っているのも、中々に()()()()()

 

 相手の判断一つで、私もこうなっていたかもしれない。

 そう考えれば、自然と眉間に皺が寄ってしまうというもの。

 

 過ぎ去ったことを考えすぎてしまうのは、あまりよろしくはありませんが、こんな状況なのです。考えるなという方が無理でしょう。 

 元が何の動物だったかの判別すら付かないほどに砕けてしまった亡骸へ、軽く手を合わせてから、反対方向へ目を向けます。

 

 さあ、こちらが本命です。

 

 そこにあるのは、急斜面の岩肌。

 ほぼほぼ崖と言ってしまっても良いレベルではありますが、他に比べれば全然なだらか。ギリギリ上れないこともない。

 

 とは言え、太陽の傾き加減からして日没までの猶予は数時間。

 それまでに私がこれを登りきれるかと問われると、とてもではありませんがYESなんて言葉は吐けません。十中八九、無理でしょう。

 この服装で夜を越すのはかなり辛いモノがあるとは思いますが、それでも、ここで無理して登ったら最後、視界不良の中で動けぬまま、そのうち体力が尽きて滑落するのが目に見えています。

 

 故に、私が取るべき選択肢は一つ。

 ここで一夜を明かし、明日の早朝、崖登りを開始するというスケジュールで動くことにしました。

 

 幸いなことに、明日の天気は晴れ…………だったはず。

 アビドス自治区にスコールが発生すること自体、極めて稀ではあるのですが、何かの間違いで“稀”な方を引いてしまえば、目も当てられません。

 飲み水の確保という点では一雨欲しいところですけれど、それで体力を持っていかれては本末転倒。

 

 指で、てるてる坊主の絵を描いて、明日の好天を願いながら、私は顔以外の全身を砂の中へ身を埋め、体を休めることにします。

 

 ああ、なんだか、お魚になったみたいです。

 

 

  

◇ 

 

 

 

 ――……おはようございます。

 

 まだ陽も登らぬ内に起床いたしました、不知火カヤです。

 起床と言っても、今の今まで眠っていたわけではなくて、一晩中ガタガタと寒さに震えながら夜が明けるのを待ち続け、空に明かりが灯ったタイミングで体を起こしただけなのですが。

 

 いやはや、砂漠の夜が冷える、という知識はありましたが、いざ体感してみると、辛いの一言しか出てこないものです。

 

 まともに眠れたのは、恐らく太陽が落ちてから一時間位まで。

 砂に潜ったのが三時から四時あたりと仮定すれば、睡眠時間は――……大体、四時間弱、でしょうか。

 

 睡眠時間が足りているとは到底思えませんし、そこまで体力が回復している気もしませんが、ここを出なければお話にならないのも事実。

 

 今は、行くしか。

 前に進むしか、帰る道はありませんから。

 

 

 

 

 

 

 一度、瞼を閉じて。

 

 

 

 

 大きく、息を吸って。

 

 

 

 

 ゆっくりと、吐いて。

 

 

 

 

「――……さあ、行きましょうか」

 

 

 私は、目の前にある突き出た岩へ、足を置きました。

 足を滑らせたら全てが終わるので、靴は脱いであります。ここまでくれば、火傷の心配以前に、生きて出ることを優先しなければなりません。

 

 最悪、生きてさえいれば、どうにでもなるのですから。

 

 そんな楽観的な思いを薄い胸一杯に抱き、岩の出っ張りに足を掛けて、私はゆっくりと体を押し上げます。周囲の安全を確認しながら、ゆっくりと、しかし着実に。ただただ無心で、上だけに意識を向けて。

 

 時折、強い風にあおられて数十メートル下の出発点へ落下しそうになったり、時間と共に空の天辺へ移動して行く太陽がジリジリと岩肌を熱してくれたお陰様で、手足がヒリヒリと痛み始めてきたりしましたが、無視して進み続け――……そうして、決死の崖登りが始まってから、それなりの時間が過ぎた頃。

 

 

 私は遂に、崖を登り終えたのでした。

 

 

 

 




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カヤ室長の今後について【誰かの家に転がり込む場合は、家がある地区が活動拠点となります】

  • アビドス編終了までこのまま滞在
  • アビドス編の途中でDUへ出発する
  • ホシノの家に転がり込む
  • 即座にDUへ向かい防衛室へ突撃
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