【近日中フルリメイク】……あなたが、先生、ですか。はじめまして、不知火カヤと、申します。   作:猫型探索者

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アビドスin暴走トラック

 

 あの夢も希望も未来も無い谷底から抜け出した私は、サンクトゥムタワーの発する光の柱を目印に歩き続けました。

 砂嵐に飲み込まれても、本格的に足の裏を火傷しても、何かの動物と思わしき屍を見かけても、決して足を止めること無く、ただただ、前を見据えて。

 

 歩き始めの数日は、連れ拐われてから今日で何日目、なんて意味のないことを考えたりもしましたが、砂漠を歩くことが日常になった時点で、考えるだけ無駄と判断してカウントを辞めてしまいました。 

 多分、二ヶ月は経っていないと思いますが、実際どうなのかは分かりません。

 

 と、言うのも。

 

 近頃は、限界まで歩き続けて体力が尽きたら休む、という生活スタイルに変わっていたせいで、私の頭の中で昼夜の概念が消えてしまっていたのです。 

 今までも、仕事に追われて生活スタイルが逆転することは多々ありましたが、こんなことになるのは初めてでしたよ。

 

 

 ――……さて、前置きもこれくらいにして、現状の整理と行きましょう。

 

 

 時折気絶しながらも延々と歩き続けた成果として、もっとも大きなものをあげるならば、それは砂と岩と多肉植物くらいしか無いアビドスの砂漠地帯を完全に抜けて、砂に埋まった住宅街へと辿り着いたこと以外にありません。

 

 あぁ勿論、人の気配は皆無ですし、看板にあった町の名を見たところ、大昔に町としての登録が抹消されている地区なので、食料品や飲料等々、生活必需品の類いは何も残っていませんよ。

 まあ、それでも、ちゃんとした建物の内部で体を休められる、という利点はとても大きい。風を防げるだけで御の字、というワケです。

 

 

 ――……まあ、正直、痛いんですよ。

  

 砂が風に乗って吹き付けられるのって。

 顔面をヤスリがけされているみたいで。 

 だから、それから解放されるというのは、非常に大きいことなのです。

 

 

 ともあれ、一先ずはゆったり眠れる場所へ辿り着いた訳ですが、空はまだ明るいですし、体力も残っています。前に進めそうなのに立ち止まるのも、何か気持ちが悪い感じがする、ということで、もう少し歩いてみることにしました。

 完全にウォーキング中毒と化していますが、出来る限り早く帰らなければならない現状では良いことだと思うので、放置です、放置。

 

 それに、休んだら休んだで、色々と面倒になって怠惰になりそうですし。

 

 なにせ、この地区に入ってからは水と食料になる植物(サボテン)が何処にでも生えているので、死ぬかもしれない、という危機感が大分薄れてしまっています。勿論、栄養バランスは壊滅的でしょう。

 

 しかも、暫くサボテンと多肉植物のみで食い繋いできたせいで、体中の脂肪が消え失せている始末です。

 この服の下がどうなっているか、なんて、わざわざ見なくとも理解出来る程に。

 

 固いんですもの。

 手も、脚も、お腹も、胸も、お尻も、すべてが。

 ヒタヒタと自分の顔を触るだけでも頬が痩けているのが分かりますし、目も僅かに落ち窪んでいるのか、ゴツゴツしています。

 手の見た目なんて、もう枯れ枝寸前です。

 

 休まず歩く選択をしたのも、体力に余りがあったのもそうですが、一番はこの生活サイクルがいつまで通用するか分からないと、私自身、思っているから。

 残された道は一方通行、後ろからは死が迫ってきている。

 そう考えれば考えるほど、休む選択肢が取りづらくなる。

 

 だから、私は歩くのです。

 

 ドツボにはまっている自覚は、あります。

 大した休息もなしに砂漠を歩くのは極めて危険な行為であることも、十二分に理解しています。それでも、もう止まれないのです。

 

 故に、私が休むのは、体力が限界を迎えたその時だけ。

 休むのも、必要最小限の時間に抑えて、また再び歩き始める。

 

 来る日も、来る日も。

 決して、立ち止まることなく。

 

 

 何故なら。

 

 

 止まったらその分だけ。

 背後から、死が――……ゆっくりと、しかし確実に、近づいてくるのですから。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 道中で見つけた廃線を辿りながら、サンクトゥムタワーの光を目指します。

 

 アビドス砂漠の様子ですが、昼の雰囲気とは一変して、どこか無機質で冷たい印象です。夜に見る廃墟に、内心恐怖を感じている、というだけなのかもしれませんけど。

 幾つになっても、怖いものは怖いのです。

 

 

 ――……それにしても。

 代わり映えしない景色なので、こうして思い浮かべることも特に無くなってしまいます。元々、独り言は言わないタイプだったのですが、ここに連れてこられてからは明らかに増えました。

 

 もう、何をするにしても、ぼそぼそと口に出てしまう。

 そして、それが自分の声だと理解しているのに、人間の声だと安心している自分が居るのです。不思議というか、奇妙なものですけれど。

 

 

「……はぁ…………さびしい……」

 

 

 あぁ、もう。

 なんで、こんなことになったのでしょう。

 

 いい加減、人肌が恋しいです。

 自分の独り言ではなくて、誰かと面と向かって話がしたい。

 

 この際、カイザーのあんぽんたんでも、ヘルメット頭の不良でも良いので――。

 

 

 

 

 

 ――…………?

 

 

 

 

 あれは……何でしょうか?

 光が、此方へ向かってきています。

 

 それに、この音。

 車のエンジン音のような、耳にこびりつく音。

 

 

 この地域に人が住んでいる記録は無いと記憶していましたが、もしや、私の記憶違いだったのでしょうか。しかし、去年カイザー関連で住民票を照会した際には、この地域の住人については記載がありませんでした。

 

 つまり、あれは…………。

 

 回転の悪くなった頭を回しながら眼を凝らして光を見ていると、それは徐々に姿をあらわします。

 やはりというべきか、その正体は車。もっと言えばトラックでした。

どうやら、相手も私に気づいているようで、こちらへ()()()()向かってきています。

 

 

 ――……一体、どういうつもりなのか。

 

 

 確かに人肌恋しいとは思いましたが、不穏なのは御免です。

 それに、相手が私に気付いているのなら、そろそろブレーキを踏んでも良いはずなのに、スピードは一向に落ちていない。

 

 それどころか、加速しているように思います。

 

 進路は変わらず、私に一直線。

 左右に動いても追尾してきていることから、私を人間だと認識していないという可能性も無い。

 

 つまり、私を轢こうとしている。

 

 

 

 

「全く、勘弁……してください」

 

 

  

 普段ならともかく、今、あんなトラックに轢かれたら死んでしまいます。

 全ての生徒と、善良な住人は私が守るべき対象。あまり、相手に怪我をさせる可能性がある行動は、取りたくないのですけれど――……致し方ありませんね。

 

 私だって、命が惜しいですから。

 

 

 トラックと私の距離は、おおよそ百五十メートル。

 この距離だとこの子には辛いので、もう少し引き付けます。 

 ()()()拳銃を握ってトラックへ向けつつ、動きを見ていますが、やはり減速するつもりは無いようです。

 

 追突まで、あと、百メートル。

 セーフティを解除し、一発だけ射撃します。

 耳を劈く銃声と共にトラックのミラーが吹き飛んだのが見えましたが、特に変わることもなく、向かってきています。

 

 

 ――……良いでしょう。

 

 

 あなたが私に牙を剥くなら、私はあなたに弾丸をプレゼントするだけのこと。

 

 さァ残り、五十メートル。

 その選択が、命取りとなることを、頭に直接教えて差し上げます。

 

 

 

 

 引き金を引くのは、三回きり。

 

 

 放たれた弾丸は、確実に役目を果たしてくれることでしょう。

 

 

  

 

 直後、瞼を閉じてその時を待つ私の耳に入ってきたのは、けたたましい金属音と、複数の叫び声、そしておまけの爆発音でした。

 

 瞼を開けて、横転し、一部から出火しているトラックの横を素通りします。

 

 アタシの車が、なんてヘルメット頭の絶叫が響いていますが、私の知ったことではありません。わざわざ歩道に突っ込んでこなくとも、道の真ん中を走るなり、私を拾うなり、選択肢は数多くあったはずでしょうに。

 

 やはり、不良ヘルメット団の考えることはよく分かりませんね。

 

 

「――ギャアァアアァアァアアアアアッ!?」

 

 

 あと、燃えた車からは、早急に逃げるべきです。

 爆発に巻き込まれたいなら、話は別ですけれど。

 

 

「あぁ……顔面から落ちましたか。暫く痛いでしょうね。可愛そうに」

 

 

 ――…………まあ、それは良いとして。

 

 

 私の目の前で気絶している、猫耳の子。

 一瞬、ヘルメット団の仲間かと思いましたが、この制服はアビドス高等学校のモノだったはず。前に写真集を頂いたときに、ユメさんが今年は新入生が二人入ったんだと笑顔で話されていましたから、この子がそうなのでしょうか。

 

 暗くてあまり見えませんが、胸元の学生証も本物に見えますし。

 

 

 ――と、すれば。

 何故、この子がヘルメット団と共に?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………もしかして、誘拐?」

 

 

「うへへっ。流石、鋭いねぇ。――……で? 何で貴女がこんな場所に居るのか、私に聞かせてくれないかなぁ。ねぇ、カヤ」

 

 ……何か、この人また強くなっていませんかねぇ。

 背中に感じる殺気が、去年の比じゃないですよ。

 

「……お久し振りですね、ホシノさん。出来ることなら、貴女とは日常の中でお会いしたかった。あぁそれと…………私の心臓に突き付けているソレを、今すぐに下ろして欲しいのですけれど」

「それは無理な相談かなぁ~。……私たちを裏切っておいて、どの口が言うんだか」

 

 

 ……裏切った?

 

 私が?

 

 アビドス高等学校を??

 

 

「ホシノさん」

「……なに? おじさん、下手な言い訳は聞きたく無いんだけどなぁ」

 

 

 そんなこと――。

 

 

「私を、アビドス高校へ連れて行ってください。もし、私のことが信用できなければ、気絶させて拘束しても構いません。――……ああでも、出来れば銃は使わないで頂けると。今、貴女に撃たれると、恐らく死んでしまうので」

 

 

 

「…………へぇ?」

 

 

 

 絶対に、有り得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それと、出来れば水と食料を頂けませんか? 後で費用はお渡ししますから」

「…………何でも良いの?」

「ええ、勿論」

 




大変お待たせいたしました!
インフル+花粉症のダブルパンチにノックアウトされていましたが、なんとか回復したので投稿を再開します。


次回投稿は月曜日の06:30になります。



カヤ室長の今後について【誰かの家に転がり込む場合は、家がある地区が活動拠点となります】

  • アビドス編終了までこのまま滞在
  • アビドス編の途中でDUへ出発する
  • ホシノの家に転がり込む
  • 即座にDUへ向かい防衛室へ突撃
  • ヒナの家に転がり込む
  • シャーレに転がり込む
  • ナギサの家に転がり込む
  • 柴関ラーメンで働く
  • ツルギの家に転がり込む
  • カンナの家に転がり込む
  • ノアの家に転がり込む
  • 便利屋68と共に行動する
  • イチカの家に転がり込む
  • マコトの家に転がり込む
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