【近日中フルリメイク】……あなたが、先生、ですか。はじめまして、不知火カヤと、申します。 作:猫型探索者
ただ、目が覚めました。
誰かに起こされたわけでもなく、何らかの音で意識が覚醒したわけでもなく、水中深くから泡が浮き上がるように、緩やかに――しかし、確実に。
敢えて言葉にするなら、良い目覚めだとか、すっきり起きられた、だとか、そんな言葉がぴったりで、正にグッドモーニング、と言うわけです。
ぐっと体を伸ばして、固まった体を解しながら、未だ青黒い天井から、僅かに光射す窓の方へと視線を移してみます。
見覚えのある水色の髪の向こうには、ほんのりと白み始めた空が見えました。
ここから見る限りは、空に雲の姿はありません。
今日も気持ちの良い晴々とした天気になりそうで、思わず頬が緩んでしまいます。
「……くぁ…………っ……」
っと。
いけない、いけない。
大あくびは、いくらなんでも気を抜きすぎですね。
もう少し引き締めなければ。
それに、いつまでもベッドに居ても、二度寝という悪魔の誘惑に負けてしまうかもしれませんし、さっさと起きてしまいましょう。勿論、ベッドの両脇で眠っているホシノさんとユメさんを起こさないように、ですが。
――……というか、二人とも、こんなギッチギチのすし詰め状態で眠れるの、凄いですね。ホシノさんはまだ私と似た体格だから良いとしても、ユメさんは半分以上ベッドの外ですし。
その体勢、相当辛いと思うのですが……。
「ホシノちゃ……もう、たべれられないよぅ…………」
……まあ、気持ち良さそうに眠っていらっしゃいますし、大丈夫でしょう。
たぶん。
「うぅん!」
――っ!?
………………セーフ、ですか。
起こしてしまったかと思いました。
もっと静かに、落ち着いて行動しましょう。
大丈夫、大丈夫。
隠密行動なんて、一年の時に死ぬほど経験したではありませんか。
なにも、心配はいりません。
ですから、いい加減落ち着きなさい、私の心臓。
先程からバクバクうるさいんですよ。
…………ああ、緊張する。
何故かは知りませんけど。
「……ふぅ――っ!」
――よし。
行きましょう。
まずは、息を止めて。
次に、ベッドを降りて、靴を履いて。
ぬきあし。
さしあし。
しのびあし。
気分はさしずめ泥棒です。
なにも悪いことはしていないのに、ドキドキ、ドキドキと、今にも倒れそうな程の緊張感があります。
現役時代にも、こんなにドキドキすることはなかったと思うのですがねぇ。
なんとも、不思議なモノです。
まあでも、何とか扉の前に来られましたし、後は静かに開いて――。
「……」
さっと出て、これまた静かに閉めるだけ。
保健室からは何も物音は聞こえませんし、隠密行動は成功と見て良いでしょう。
まさか、こんな所で昔の技術を使うとは思いませんでしたよ、ええ。
あの部屋に時計らしきものが見当たりませんでしたので、正確な時刻は不明ですが、今は恐らく相当早い時間のはず。そんな時間に起こしてしまうのは、申し訳ないですからね。
――さて。
ゆっくり校舎を歩きながら、昨日ホシノさんの後輩さんたちが居た教室に向かうといたしましょうか。軽く見た感じ、あの部屋以外はあまり使われていなさそうですし。
皆さんが登校されるのを待つには、丁度良いでしょう。
…………それにしても、この辺の廊下は砂が凄い。
保健室前とは、大違いです。
いくら、この辺りの教室が使われていないにしても、やはり校舎にこれだけの砂が流入するのは、当たり前ですが良くありません。
機材の故障にも繋がりますし、目に入ったり吸い込んだりしてしまったら、健康を害する可能性もあります。いくら頑丈なキヴォトス人と言えど、です。
故に、連邦生徒会への帰還が叶った暁には、どうにかこの問題を解決、あるいは、軽減出来るように然るべき部署へ働きかけてみたいところですが、地方校に肩入れしすぎでは、という声も聞こえてきていましたから、厳しいかもしれません。
正直な話、防衛室長としての私に出来ることは、もう殆どやり尽くしています。
ホシノさんとユメさんを、無理やり連邦生徒会の議員と顧問にした際には、上からも下からも中々強烈な圧が掛かりましたし、厳重注意も食らいましたからね。
リンさんからも、次似たようなことを行えば、防衛室長から退いてもらうかもしれない、というお言葉も頂いたことですし、もうあまりアグレッシブには動けません。
ですから、私に出来るのは、小鳥遊ホシノの友人である不知火カヤとして、彼女を支援することのみでした。
――……去年の誕生日プレゼント、ホシノさんは珍しく、
その時は、中々珍しいとも思ったものですが、改めてこの惨状を見れば、理由も分かるというもの。正直、送った時には学校で使われるとは思っていませんでしたが、良く良く考えれば分かることですし……私も、モモトークでこの事をホシノさんから教えられたときには、ピンと来たんですよ。
これだ――ってね。
その年の誕生日、私はホシノさんへ“るんるンバ”を一台、プレゼントしました。
そして、その二ヶ月後――具体的には、ホシノさんから“るんるンバ”が学校で活躍していることを知らされた一週間後に、匿名で“るんるンバ”を十四台アビドス高校へ送ったのです。
後々、ホシノさんには感謝とお叱りの言葉を頂きましたが――。
「…………ふふっ」
今、それを行った意味は、確かにあったのだと。
私はそう、確信しました。
対策委員会室へ繋がる廊下には、砂が溜まっていないのです。
指で廊下に触れれば、多少砂の感触はしますが、この程度の汚れは、他校でも見られるレベルに過ぎません。
家に一台居れば掃除要らずと言われている最新鋭の全自動掃除機が、十五台も居るのですから、当たり前と言えば、そうなのですけれど。
『ゴミが満タンになりました。くじら丸、ベースに帰投します』
……そして、噂をすればなんとやら。
くじら丸と名付けられた“アビドス清掃隊”の隊長機は、今もなお故障すること無く、アビドス高校に献身していたようです。
特徴的な機械音を響かせながら空き教室から出てきた彼は、私の横を通過すると、別の部屋へと消えて行きました。
そんな光景に謎の感動を覚えつつ、私は対策委員会室の扉を開きます。
「おはようございます――なーんて。こんな時間には誰も居ませんよね」
先程よりは明るくなっているとは言え、現在時刻は…………時計が正しければ五時半ですし、皆さん、まだまだ眠っているはず。ホシノさんはワリと早起きですが、それでも後三十分は起きないと思いますし、それまで何をして時間を潰そうか悩みます。
「…………あら、まあ」
と、思っていましたが。
ありましたね。
時間が潰せそうなことが。
皆さん、昨日そこそこ遅くまでここにいらっしゃったのでしょうか。
開けたお菓子の袋や、机に散らばった銃弾がそのままになっています。
でも、見た感じ、お菓子は大袋に入れておく程の量は残っていなさそうですし、この細々したお菓子が入ったカゴにまとめて、袋は捨ててしまっても大丈夫そうですね。
そうすれば、多少机はスッキリするでしょうし。
「……ふむ」
それにしても、中々面白いお菓子ですね、これ。
“アビドス・オーパーツ・チョコレート~アビドスの地で発見された、不思議なモノの形を模したチョコレートです。全二十種、シークレット一種”、ですか。
製造販売元は――……製造がアビドス製菓で、販売が
――…………梔子物産??
今回はお話が長くなってしまいそうでしたので、分割して投稿しております。
実質的な後編となるお話の投稿時期は未定ですが、気長にお待ちくださると嬉しいです。
★5/31 01:25加筆修正を行いました。
また、誤字の報告、誠に有り難うございます!
カヤ室長の今後について【誰かの家に転がり込む場合は、家がある地区が活動拠点となります】
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アビドス編終了までこのまま滞在
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アビドス編の途中でDUへ出発する
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ホシノの家に転がり込む
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即座にDUへ向かい防衛室へ突撃
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ヒナの家に転がり込む
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シャーレに転がり込む
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ナギサの家に転がり込む
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柴関ラーメンで働く
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ツルギの家に転がり込む
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カンナの家に転がり込む
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便利屋68と共に行動する
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