【近日中フルリメイク】……あなたが、先生、ですか。はじめまして、不知火カヤと、申します。 作:猫型探索者
梔子物産という、知らぬ間に出来ていた企業のことが頭から離れないまま掃除を続けていると、突然、部屋の扉がガラガラと音を立てながら開きました。
丁度、入り口の方に背を向けていたので、一瞬体が反応して銃を取ってしまいそうになりましたが、そんなことをしたらキヴォトス人でも流石に危ないのと、しばらく右腕が使い物にならなくなるので、それをグッと堪えて。
ゆっくりと振り返ると、そこには、
「……おはようございます、ホシノさん」
「おはよう、カヤ。調子はどう?」
肩甲骨の上あたりまで伸びた髪を揺らしながら、軽く右手を上げて、此方へ微笑みかけてくるホシノさんの姿がありました。
そんな彼女が纏う雰囲気は、後輩たちと共に居るときのような柔らかい日差しのようなモノとは打って変わって。何処までも気高く、まるで研ぎ澄まされたナイフのようでありながら、月光のような優しさがこもったモノでした。
「悪く無いですよ。久々にゆっくりと寝られて、体の疲れも取れましたから」
「それはよかった。――調子が悪いなんて言われてたら、おじさんどうしようかと思っちゃったよ~……なーんて、ね。カヤ相手にこれはちょっと恥ずかしいな、やっぱり」
そんな、私が知っている“小鳥遊ホシノ”の雰囲気に、説明のしようがない安心感と、私を信頼してくれているのだという喜びが心の中でわき上がったと同時に、彼女がここまで私を信頼して素を見せてくれているのに、それに答えず気を張り続けるのは嫌だという気持ちが、じわりじわりと染み出して来ます。
だから。
周囲を見渡して。
耳を澄まして。
彼女以外の、誰の気配も感じないことを、十二分に確認した上で。
「やっぱり私は、いつものホシノさんの方が好き、ですよ」
「へっ!? …………う、うへへっ。急にそう言われると、照れちゃうよ。――……私も室長モードのカヤより、普段のカヤの方が好きだよ」
「……やだ、もう。顔が熱くなるじゃないですか」
「へへ、私を照れさせたお返しだよ」
ラーメンを奢らされたり、奢ってもらったり、しょうもないことで喧嘩したり、逆に駄弁ったり。アビドスに通っていた間の数ヶ月間は、私にとって数少ない青春の一時であると同時に、高校生活の中でも一番楽しい時期でした。
だって、あの頃は防衛室長としての重圧も、周囲からの圧力も、大人達との戦いもなくて、与えられた役目さえこなしていれば、ただ自分の好きなような過ごすだけで良かったんですもの。
少しだけで良いから、昔に戻ることができれば良いのに。
――なーんてことを思いながら、ふと視線を棚の方へ移した時です。
「…………あ」
「どうしたの、カヤ」
「――いえ。懐かしいものがあるな、って思って」
そこにあったのは、ユメさんと、ホシノさんと、私の三人で撮った記念写真。
骨董品レベルのカメラで撮影したものなので、写真自体の劣化は激しいのですが、撮影した時の思い出は今もなお色褪せること無く、鮮明に甦って来ます。
「うへへ、お互い若くてエネルギッシュだった頃の写真だねぇ。私もピシッとしてるし、カヤにも隈がないし。……本当、この頃は何だって出来る気がしたし、体力気力共に満ち溢れてたんだけどね」
そう言うと、ホシノさんは右手で写真を取り、左手で私の手を引いて、部屋の奥に設置された大きな姿見の前まで歩きます。
そして。
「……それが、これだもんねぇ」
そう言って、残酷な事実を突き付けてきました。
「お互い、老けたねぇ。――……いや、本当に」
「月日って、こんなにも残酷なんですね。私、知りませんでした」
鏡に映る私たちと、写真の中に居る私たちを比べたら、それはもう、ね。
つい目を覆ってしまいたくなりましたよ。
純粋で好奇心旺盛かつ、活動的なのが分かる写真の中のホシノさんに比べて、今のホシノさんは、どこか社会に疲れてくたびれたようなおじさん感が満載ですし、私に至っては、本当に同一人物なのか怪しくなるレベルで顔が変わっています。
これ、下手したら。
「今の私、もしかして二十代後半でも通じるんじゃないですか?」
「……………………かもね」
「そこは否定して欲しかったんですけど」
「私、嘘つけないからさ」
……ぬぅ。
「優しい嘘、って知ってます?」
「優しさは何処かに落としてきちゃったから無いかなぁ」
「それなら探しに行きますか? お掃除ロボット達がこのお部屋の掃除を終えるくらいまでなら、それなりに涼しいでしょうし」
「…………うへ。ずいぶんと変わったお誘いだけど、することないし、乗っちゃおうかなぁ? ――……エスコート、ちゃんとしてよ?」
「私から誘ったんですから、当然です」
「よぉし。それじゃあ、それぞれ銃を持って校庭に集合ね」
「分かりました。……一応、催涙弾と閃光弾、スモークグレーネードを持っていっても良いですか? あまり銃は撃ちたくないので」
「ん? あぁ。全然いいよ~。どうせ私も手榴弾何個か持って行くし」
「…………なんか、カチコミに行くみたいですね、これ」
「うへ、備えは過剰な位が丁度いいんだよ。アビドスでは、特にね。――はい、これカヤの水筒ね」
「あ、ありがとうございます。……まだ残ってたんですね、これ」
「昨日家から持ってきたんだよ。どこに行くにしても絶ッ対必要でしょ?」
「…………ええ、そうですね」
「……」
「……」
「……じゃ、出よっか」
「……はい」
こうして、私たちは久々のお散――ではなく、探し物をするため、それぞれ自分の銃を持って外へ出ました。
保健室で眠っているユメさんに書き置きを残すことを、すっかり忘れたままで。
ありがとうございました!
次回投稿は七月の後半になると思います。
……毎年この時期は多忙なのですが、今年は一層凄まじく。
今は奇しくも“先生”にかなり近い生活スタイルになっているので、中々投稿頻度を安定させられていないのですが、気長にお待ち頂けると嬉しいです。
カヤ室長の今後について【誰かの家に転がり込む場合は、家がある地区が活動拠点となります】
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アビドス編終了までこのまま滞在
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アビドス編の途中でDUへ出発する
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ホシノの家に転がり込む
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即座にDUへ向かい防衛室へ突撃
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ヒナの家に転がり込む
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シャーレに転がり込む
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ナギサの家に転がり込む
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柴関ラーメンで働く
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ツルギの家に転がり込む
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カンナの家に転がり込む
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ノアの家に転がり込む
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便利屋68と共に行動する
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イチカの家に転がり込む
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マコトの家に転がり込む