単行本派なのでそれに至るまでの物語は知りません。なのでどんな結末を迎えるのか楽しみです!!しかし不穏な噂も耳にしまして……12月が待ち遠しいです。
どんな結末でも原作は原作です。この小説ではこの小説の物語ですのでどうなるんでしょうかね?今後に影響を及ぼす程の結末なのか……何がともあれ暇つぶし程度にこの小説を楽しんでください。
それでは……
本編どうぞ!
「……ふぅ」
ため息がうっかり漏れた。いつもはシャワーだけで過ごすが、今日は
今日もダブルバカ含めたB小町の仕事に付き添ってきた。アルバイトスタッフだったはずだが、今では正式な正社員と変わらない扱いを受けている。ちんけな給料なのに仕事はきつい。特にダブルバカとガキどもの相手は勘弁してほしいもんだ。こうして疲れた時もシャワーばかりで風呂を堪能することはあまりなかった。長風呂に浸かってもまだ
中にはビールがキンッキンに冷えてやがるッ!そしてビールを片手にテーブルに置いておいた煙草を手にしても流石に部屋の中で煙草は吸えない。それぐらいのマナーは守っているし、火災警報器が作動してしまうのはまずい。ムカムカする気持ちを我慢しながらベランダへと足を進めた。
ベランダに出ると夜風が風呂上がりの身体に当たり、涼しく感じるが風呂上がりじゃなければ少し寒いかもしれないな。そんなことを考えながら煙草に火をつけるが、どうにもいつものように堪能できない。
気休めにもならないが、ビールと煙草を堪能していると背後から気配がする……振り返らずともそれが誰なのかわかる。今会いたくないそいつは自然にオレの隣にやってくる。
「アクアとルビーは寝ちゃったよ」
「もっと早く寝させろ。ガキは早く寝て早く起きるのがいいんだよ。お前はまだ寝ないのか?」
「うん、ちょっとまだ起きていたいなって思っちゃってさ」
「そうかよ」
そこで会話が一度止まる。気まずい……バカに感づかれているかもしれない。だがバカは何も言わず、ただオレと同じように夜の街並みを眺めている。そうしている内に時間だけが過ぎていく。そうなると不思議と過去を振り返りたくなってしまうのはなんでだろうな?
出会うきっかけは最悪だった。バカに似ているだけでストーカー野郎に刺されて死にかけた。応急処置が無ければここにオレはいなかった。目覚めた時にはそこにはバカが居て、拉致監禁までされて、そこから流されるままに流されて面倒事に巻き込まれた。B小町の連中、ダブルバカ、ガキどもとそいつらの面倒を見る羽目になり、安い給料で働かされるとは思ってもいなかった。それもこれもバカがオレのスマホを壊しやがったせいだ。それさえなければ今頃……オレは……
「……どうしていたんだろうな」
「どうしたの?」
「いや、なんでもねぇよ」
口に出していたようだ。しかし今更そんなタラればの話は忘れてしまおう。そこからはどうでもいい会話で時間が過ぎ、温まっていた身体も夜の寒さを感じ始めた。
「寒くなってきたからお前は中に入れ」
「コイも手冷たくなっているよ」
「気安く触るな。オレは煙草を一本だけ吸ってから戻る」
「風邪引かないでね?」
「それはこっちのセリフ……いや、馬鹿は風邪引かないか」
「う~ん、それって誰のことかな?アイわかんな~い」
「……ぶりっ子するんじゃねぇよ。気持ち悪いぞ」
「ぶぅ!可愛いアイドルに対してそれはないと思うなぁ?」
「うっさい、早く中に戻れ」
「はーい」
バカは部屋へと戻る際に「おやすみ」と「……辛いことがあるんだったら頼ってね」と残していきやがった。やっぱり感づかれていたようだ。よくオレのことを見ているよ……ホントいい迷惑だよ、まったくうざったい奴だ。だが深く追求してこなくて助かった。
「………………………………………………」
スマホを操作して検索履歴の中のとあるサイトを開く。そのサイトは『大人気アイドルB小町語るスレ』と掲示板形式に個人的な意見が書かれている。不特定多数の人間が利用できて自由に書き込むことができる掲示板のとある文面を見るとそこには……
『アイにそっくりな子と
仕事帰りでたまたま暇つぶしにネットニュースを眺めながていたら、例のとあうサイトを見つけたわけだ。そこにはどこの誰かもわからない
ネットでどうこう言うのは勝手だ。だからそいつが語ることなんて気にならない……はずだったんだ。ずっとさっきから落ち着いたはずの
なんでこんな気分になる?こんなことは以前にもあった。バカが風邪を引いてオレが代役として出向いた時と同じ感覚だ。一体この感覚ってなんなんだよぉ……
「会いに来てくれて嬉しいわ」
オレは何故か
昨日から気分が落ち着かず、十分な睡眠時間を取ることができなくて少々瞼が重い。そのせいでバカだけでなくガキどもにも心配されたとあっちゃ惨めなもんだ。こんな時は煙草に頼ろうとしたらポケットを探れば空、在庫も切れていたと気づく。気分転換に買い出しに出たんだが、朝から上の空だったと実感している。気づけば近くのコンビニではなく、見たことのある安っすいアパートが視界に飛び込んできたんだから。ボケっとしていてもこんなところに来てしまうなんてオレの頭は末期なのか?と恐ろしくなったもんだ。さっさと離れようと振り返れば……そこにこの女が居たことに驚いた。その後は流れるように女に付いていきこの有様だ。
何故逃げると言う選択肢を取らなかったのだろうか謎だ。だがこの女に会いたくて会いに来たわけでは……ないぞ?
「べ、別に会いたくなったとか……そんなつもりで来たんじゃねぇから勘違いするなよな!!」
「そ、そうなのね……」
そのことを伝えたら落ち込みやがった。この女は相変わらずめんどくさい奴だな!!そんなしらけた面されたら折角の酒がまずくなるだろう!!
「チッ、ただあれだ……その……友人の一人もいないあんたのことだ。寂しすぎて孤独死してないか確かめに来たんだよ。そうなったら面識のあるオレ達が迷惑するのはごめんなんだよ。だからって心配しているとかそういうのではないからな!!」
「……そうね。お母さん、
女のしらけた面をどうにかしようと適当なことを言っただけなのに
「それで……本当はここに何しに来たの?」
「いや、別になんでもない……」
「嘘ついちゃダメよ。ここに来た時、あなたの顔……不安そうだったわ」
「……」
「言いたくないなら言わなくてもいいわ。でも辛いなら……お母さんに話してほしいな?」
「……誰がお母さんだよ……」
オレとお前は他人……だが、優し気に語り掛けてくるこの女の声に妙な安心感を抱くのはなんでなんだ?心配されていることが嬉しいと感じているのか?馬鹿馬鹿しいそんなことあるわけ……あるわけが……
「……ビール追加でくれ。話は長くなるから」
……っと思いつつもオレは何故か話してしまった。ただオレが男を抱いていたことは秘密にし、掲示板での内容も本来オレへの誹謗中傷がバカへの誹謗中傷として言われていると言い換えておいた。
オレが話している間、女は頷くこともなく黙って聞いていた。長々と話して手元にあったビールは全部が空になっていた。そして話し終わった後には沈黙が続いて気まずい雰囲気になっていた。
「……あなたはアイに申し訳ないと感じているのね」
「オレがあのバカに?そんなことは……」
「ないの?それならどうしてそんなに辛そうな顔をしているの?」
「……」
女の言葉が胸に刺さる。あのバカにそんな感情を抱くなんて……っ!?
「……なにやってんだ?」
触れられた感触と生暖かい体温が伝わってきた。気づけば女がオレを抱きしめていた……いきなりのことでわけがわからない。
「いきなりこんなことをしてごめんなさい。でも……どうしてもあなたの顔を見ていると自分を抑えられなかったの」
「……」
なんでオレがこの女に抱きしめられなきゃならないんだ!伝わってくる体温から逃れようと頭の中ではもがこうとしているオレ自身の姿が浮かぶが、現実ではなされるがままの身体……なんで動かないんだ!?
「……辛かったわよね。私にできることなんて何もないけど……溜まった苛立ちをぶつけてくれてもいいのよ?」
「……そんなことしねぇよ」
なされるがままの身体で馬鹿なことを勝手に言いやがってと思う。それじゃただの八つ当たりにしかならない。そんなことをしても気分が晴れることはないだろう。それよりも……
「………………………………………………」
こうしていると……なんだか落ち着く。何故だ?
この女は
そんな何の関係もないこの女に抱かれていることが嫌なはずなのに……
「………………………………………………ZZZ」
「寝ちゃったのね。何もできないダメな母親だけど今だけは……あなたのお母さんでいさせてね」
「くっそー!!いつの間にか寝ちまった!!」
朝から眠たかったし、ビールも飲んだから気づいたら寝てしまっていた。しかもあの女のアパートでだ。ご丁寧に布団の中でオレはぐっすり眠っていたらしく、女に寝顔を見られてしまっていたようだ……恥っず!?女も女だ、生暖かい目で見てきやがって!!外も夜になっているし慌ててアパートから去ったわけだ。べ、別に逃げ出したわけじゃなからな!!
自分自身の失態に嫌気を差しながら歩いているとコンビニを発見した。そう言えば煙草を買いに行っていたんだったと思い出し、煙草と酒、そしてふっと家に居るガキどもが思い浮かびお菓子をついでに買ってやった。用も済んで歩いていると居候先のいつものマンションが見えてきた。
マンションの玄関をくぐり、階段を上がるとそこには……
「コイー!!」
バカとガキどもが部屋の前で待っていた。おいおい、お前は有名人なのに下手に姿を見せたらファンに見つかって面倒なことになるのが目に見えているのに……まったく馬鹿な奴だ。
「おかえり……何か良いことでもあったんだね」
「なんだよ、良いことがあったのは確定なのか?」
「うん、昨日よりも良い顔になってるってわかるもん♪」
「……へっ、そうか。それよりもこんなところで突っ立ってないで部屋に入れ。ガキどももだ」
「アマの帰りを待っていたのにお礼も言えないの?」
「へいへい、感謝してやるよ。お礼にアクアとルビーにはお菓子を恵んでやる」
「……っ」
「おいアクア、何か言いたそうな顔をしてるな?」
「あっ、いえ、天野さんの機嫌が良くて安心しました。昨日は声を掛けづらかった雰囲気でしたので」
「……へっ、まぁそんなことはどうでもいいんだよ。それよりもほら、さっさと入れ。」
急かして部屋へと入らせる。それから全員で食事をしたがオレが帰って来るまで食べるのを待っていたんだと。まったく、オレの事なんて気にする必要ないのに……馬鹿な奴らだよ。
胸にあったムカムカがいつの間にか無くなっていたと翌日になってから気づいたのだった。