猫と魔本   作:さぬきのみやつこ

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読みに来てくれてありがとうございます。

久しぶりなので、不安です。

誤字脱字あったら、ごめんなさい。


兎とビクトリーム

 

 

吾輩は、猫である。

名前は、タマ・クラネル

今は、村から家族のベルと共に冒険者になってから、おおよそひと月を超えた頃だろうか?

 

今日は、ベルとは別行動である。

というのも、ベルの成長が早すぎて、そろそろ頭打ちになりそうなのだ。

Lv.1の上層でできることが減ってきた以上、早く強くなりたいベルが次に目指すのは中層の進出になる。

そこで問題が2つ出てくるのだ。

 

ひとつ目は装備である。

中層のモンスターは上層よりも厄介だ。

物理的な攻撃への対処力が上がっても、モンスターのブレスや状態異常の経験と備えが足りないのだ。

専用の防具や、ポーションを揃えるためにも準備期間が必要になる。

そのためベルは、リリルカと2人っきりでダンジョンに向かった。

別れる時にリリルカはこちらに、とてもいい笑顔でサムズアップしてきたので、2つの意味で成果が出るといいな、とだけ書いておく。

 

ふたつ目は、パーティーメンバーだ。

現状のパーティーは、

ベル(ヒューマン)

タマ(訳アリ猫)

リリ(訳アリサポーター)

・・・このメンバーで中層とか、自殺を疑われても仕方ないな。

ヘスティアの友神に頼むという手もあるのだが、そうなると「レベルを上げるためだけに、寄生させてください。」といっているのと同義になる。

主神からの頼みになったとしても、向こうの心情はあまり気持ちがいいものではないだろう。

ヘスティアの今後の友神付き合いを守ってやるためにも、パーティーメンバーは自力で調達するのが理想だ。

 

というわけで、吾輩は現在、ギルドの受付でお利口にお座りしている。

駆け出しからベテランまで、さまざまな冒険者がギルドを利用するのだ。

中には、吾輩たちと同じように、中層に進みたいがパーティーメンバーがいない。という冒険者も1人や2人いるはずだ。

お互い利害は一致するが、巡り合わせが悪くそういう人材に出会えなかった可能性を考えれば、ギルドで張り込みをして情報を集めるのが1番と考えた。そして即実行している。

 

吾輩自ら声をかけることはないが、今のうちに目星をつけておけば、あとの仲間探しがスムーズになる。

エイナ嬢がどさくさに紛れて肉球を弄ぶ以外に、欠点らしい欠点がない、吾輩にしてはスマートな計画だ。

聞き耳を立てられないので、耳だけは触らせない。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ああ、やっとこの場面が始まったか・・・下界を満喫出来なかった分、楽しみにしてたんだよな〜!」

 

1柱の神が世界を覗く、まるで映画でも見に来た子供のようにワクワクとした表情を見せながら笑う。

 

「世界は分岐する。同じ時間に、全く別の未来が存在する。私が落とした異分子が、どう影響するか楽しみだ!」

 

神の言う“異分子”が破滅となるのか、それとも救済になるのか

 

その答えは、神も知らぬ

 

悪戯をした神は、ただ見届けるだけである。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

深層に向かう途中、リリルカによって事情を知らされたロキ・ファミリアがベルの元に辿り着いたのは、ベルが再び立ち上がって2、3分のごとだった。

途中、敵対派閥のオッタルに止められたが、剣を交えることもなく、たった一言

 

「・・・・・・邪魔をしてやるな」

 

それだけを伝えて、道を譲られた。

邪魔をするな?何を言っているのか・・・そのような文句も、ミノタウロスと襲われているという少年の元にたどり着いて、すぐに消えた。

 

「おい、アイズッ!状況はどうなってやが・・・」

 

静寂

 

モンスターの荒ぶる鳴き声も、助けを求める少年の声も聞こえない。

先に辿り着いた少女の目線の先には、明らかに通常のものとは毛色の違うミノタウロスと白い兎を彷彿とさせる少年。

 

まるで武人が立ち合いを行うように向かい合い、獲物を構える両者は、相手から視線を外さずに微動だにしない。

 

自分たちが来るまでに、何度か打ち合いをしたのだろう・・・辺りを見渡せば、少年が装備していたであろう防具の一部や、ここに来るまでに襲われて逃げていた冒険者たちの装備が散らばっている。

 

「ねえ、アイズ・・・これどうなってるの?」

 

また1人、追いついてきた仲間が状況を尋ねると、

 

「・・・始まる」

 

ただ簡潔に返ってくる。

 

その言葉を皮切りに、場面が動く。

 

「うぉおおおおおおおおおお!!!」

「ヴゥモォオオオオオオオオ!!!」

 

ナイフを持った少年は、まるで兎のように飛び回りながら右手に持ったナイフで、左手から伸びた回転する円盤のようなもので、隙を作り、切り掛かり、また距離を取る。

 

大剣を持ったミノタウロスは、大剣を盾にしつつ、拳を持って、これを迎撃する。

 

少年のナイフが届いたと思えば、ミノタウロスの拳が刺さる。

数えるのも馬鹿らしいほど、それを、繰り返す

一進一退に思える攻防は、『体力』という面でミノタウロスに軍配が上がった。

 

一撃離脱を繰り返す少年は、次の離脱を図るため左腕を振るおうとした瞬間に、違和感と、そのすぐ後にいいようのない脱力感に襲われる。

 

「マインドダウン!!」

 

誰かが、そう言ったのが聞こえた。

ここまでの間に酷使していた【マグル・ヨーヨー】、その魔力消費のツケが今になってきた。

その瞬間に状況を理解し、防御もできずに壁まで吹き飛ばされた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「・・・ここは?」

 

ベル・クラネルは見知らぬ空間に立っていた。

いや、正確には知っている。

だが、そこにいるはずの人がいないため、あの場所と同じと言っていいのが悩んでしまう。

 

いつも高笑いを上げ、変な体勢で光線を放つ・・・なんと言えばいいんだろう?師匠?のような人

 

この何もない空間なら、より目立つ見た目の彼がいないことに、ひどく違和感を覚える。

 

「あのーーー!すみませーーーん!ビクトリームさーーん!!」

 

・・・返事がない。

 

(僕は何故ここにいるのだろう?さっきまで何をしていたんだっけ?)

 

しばらく歩き続けると、足元に手紙と魔本が落ちていることに気づく

 

「手紙?」

 

直接話せばいいのに・・・そんなことを思いつつ、手紙を読み始める。

 

『やあ、ベル!これを読んでいるということは、あの牛もどきに一撃をもらって気絶しているころだろう。』

 

(そうだ、さっきまでミノタウロスと戦っていたんだ!!)

 

手紙の一文で先ほどまでの状況を思い出し、ハッとする。

 

『なぜここに呼ばれたの、なぜ私がいないのか、色々疑問があることだろう。この手紙に書き記しておいたので、最後までどうか読んで欲しい。』

 

(心を読まれているみたいだ)

 

『心を読んでるって?そんなわけなかろう。お前がわかりやすいのだベルよ』

 

(・・・)

 

『まず戦闘中にここに呼ばれた理由だが、気絶するか、睡眠行為を行うか、そのどちらかが行われた時に、ここに意識が来るように設定をしておいた。

戦闘中なら運が良かったと思え、ここでの時間は、現実世界では瞬きだ。

 

次に読んだ理由になるが・・・単純な話、お別れを言うためだ。』

 

(お別れ!?)

 

『驚くことではないぞ?本に宿っている私の魂はあくまで預けていたもの・・・色々事情があってだな、ようやく元の場所に帰るというだけの話だ。

 

唐突な別れになって、申し訳なく思う。

ただ黙っていなくなるのも忍びないので、1つアドバイスを残そう。』

 

(は、話がどんどん進んで行く!?文句言う暇もないよ!!)

 

『ここを去る直前、牛もどきとの戦闘を少しだけ見させてもらった。』

 

(ついさっきまでいた!?手紙、いつ書いたんですか!?)

 

『いい顔をするようになった・・・会った頃のオドオド具合が懐かしく思えるほどに・・・もう教えることはないだろうが、これだけは覚えておけ。

 

私が見せた【マグルガ】も【チャーグル・イミスドン】もあくまで私の術だ。

私のように“V”の身体を持たぬ者がそっくりそのまま覚えようとしても、できないのが当たり前だ・・・例外はあるがな・・・』

 

(でも・・・【マグルガ】さえ、習得できていれば・・・『負けなかった・・・か』ッ!?)

 

『自惚れだよ。・・・それは、

私がお前に見せたのは、お行儀のよいお手本ではない!

ひとつの“可能性”だ!!!』

 

(!!!)

 

『私に倣うな!ここからは己の道を模索するんだ!・・・その可能性の先に冒険がある!!』

 

持っている手紙が光を帯びる。

 

『この本は、その手助けをする!

私もまだ見たことがない“V”をお前が作れ!』

 

手紙を読み終える頃には、見慣れた1冊の本が手元に収まっていた。

 

新たなページに

 

新たな呪文を写して

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

勝った!

 

それがこの戦闘を終えての感想だった。

いつのまにか退路を封じている冒険者たちは、己を逃すことはないだろう。

それほどまでの凄みをヒシヒシと肌でかんじる。先ほどまで戦った少年とは比べものにならない。

 

だが、それでもやり切ったのだと、雄叫びを上げる。

 

さあ、やるならやれ!その前にもうひと暴れするがな!!

 

「ヴゥモォオオオオオオオおおおう?」

 

おかしい、なぜ立っている?

 

その本はなんだ?なぜ光っている?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ベルは、目が覚めると同時に、いつの間にか左手に収まっていた本を構え立ち上がった。

 

「第2の術 【ガンズ・マグルガ】」

 

右手に持ったナイフを振り下ろし、切り上げ形を作る

 

空中に描かれた軌跡からは、一拍も置かずに光線が放たれ

 

歪ながらも“V”の軌跡を残し、ミノタウロスを貫いた

 

「ビクトリームさん・・・最後の追伸、絶対要らなかったですよね?」

 

ミノタウロスの撃破を確認したベルは、誰にもわからぬ文句を言って、今度こそ意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

吾輩は、猫である。

名前は、タマ・クラネル。

吾輩は今、とある女神のお住まいにお邪魔、もとい拉致監禁されている。

 

「ヘ、ヘルン?やっぱりダメよ・・・この子、猫じゃらしもまたたびも、全く興味を示さないわ!?」

 

「フレイヤ様、こちらもダメみたいです!好物だと聞いていた鰹節にも、一切興味を示しません!!」

 

・・・・・・大した用がないなら、帰して欲しい。

というか試練やなんやら言っていたのは、どうした?




ビクトリームの追伸

『たまーーーに、様子を観に来るかもだから、メロンの畑、残しといてね』

【ガンズ・マグルガ】
本来なら自身周囲に小さいマグルガを放つVを複数設置して使う術
ベルはナイフの軌道にそれを重ねて設置することで擬似的に【マグルガ】を再現しました。
はい、1年ほど頭を悩ませたオリジナル術です。
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