蛇だった者たちへ。   作:Ciels

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お待たせしました。


赫怒 10

 

 

 ──大人になるという事は、自分で生き方を決める事だ。

 

 ──メタルギアソリッド ピースウォーカーより、スネーク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は珍しく、アヤネが一番乗りだった。

 今じゃ元ヘルメット団やスケバンだった少女達もアビドス高校近郊の学生寮に部屋を借りて住んでいる。連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)を通して、連邦生徒会に諸々の手続きを済ませたからだ。故に、朝一の校舎は静かである。

 急いで対策委員会室に来た割には、まだ誰もいなかった。てっきりもうシロコやノノミあたりは来ていてもおかしくないのだが。

 

「……? なにこれ……」

 

 不意に、机の上に置かれた紙切れと封筒に目が行く。昨日の夕方にこんなものはなかったと思ったが。

 アヤネがそれを手にすると、彼女の瞳が大きく見開いた。次いで、ようやくシロコとノノミが登校してきたようでアヤネの存在に気がつき挨拶をする。

 だが、当のアヤネはそれどころではなかった。

 

「どうして……! どうして!?」

 

 そんな、まるで狂ってしまったかのような様子に二人は困惑した。だがすぐに、彼女達もアヤネと同様に驚く事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 ホシノの現状と謝罪、感謝。

 彼女はかなり前からカイザーPMCの傭兵としての勧誘を受けていたらしい。その対価としてアビドスの借金の大半を肩代わりをするという話で。

 アビドスの最後の生徒会メンバーとして、責任を取ると。彼女の文字で、そう書かれていた。そして、もうお別れであるということも。それから彼女は、対策委員会や他の生徒達について感謝を述べる。

 

 アヤネが読み上げる手紙に、二人の大人はそれぞれの表情を浮かべていた。似通った苦しみを彼らも背負ったのかもしれない。シロコはスネークとエイハブを見てそう感じる。

 

 ホシノは、大人が嫌いだった。初めてスネークがここに来た時、おかしな大人が来たと思ったらしい。だがスネークは、エイハブとは明確に異なる事が一つあった。

 それは、自らは直接的に手を出さない。しっかりと子供達に考えさせ、それでいて大人として指導する。そんな所に、ホシノはキヴォトスの未来を見たのだと。

 スネークはそれを聞いて笑うこともしない。ただ、眉間に皺を寄せているだけだ。

 

 そして、エイハブ。

 彼がいなければ、自分達はもっと早くに心が折れていたのだと。大きくなるアビドスを見るにつれて、夢を抱くことができたのだと。

 明日はない自分でさえも、夢を見ることができるのだと。ならば、それを夢で終わらせてはならない。だから、自分はこの選択をするのだと。

 

 ──先生、ありがとう。きっと先生は、怒ると思う。でもね、私はここのボスだから。ビッグボスじゃない。先生みたいに世界を敵に回せない。

 けれど、みんなのことを背負う身として、私は責務を全うする。あの人の幻影として。だから、私も先生と同じかも。

 

 エイハブは、表情を動かすことはなかった。ホログラムのカズヒラがその表情を盗み見て、ギョッとする。

 ……あんたの今の顔。まるで、仲間の遺体を燃やした時のそれだぞ、と。

 

 ──みんなが信頼している先生に、あとはお願いしようと思う。先生は、きっといっぱい苦しんできて、それでも私達のために命を掛けてくれた。そんな先生に最後に出会えて、私は……って、こんな照れ臭いこと似合わないよね。

 もし、もしもこの先。私が敵として相対する事があったなら。

 

 そのさきは、聞きたくなかった。だが聞かなければ前に進めない。

 

 ──私のヘイローを、壊して。

 

 

 その瞬間、エイハブの義手が机を叩き割った。それは、皆の代弁でもあったに違いない。

 すぐにシロコはガンラックに掛けてあった自身の銃を手にすると部屋を立ち去ろうとする。

 

「待てシロコ! 落ち着くんだ!」

 

 それをスネークが腕を引いて止める。

 

「ホシノ先輩を助けなきゃ、私が行く」

「落ち着け! どこにいるのかも分からない、一旦情報を整理するんだ」

「ホシノ先輩は私達のために地獄に落ちようとしてるんだよ!? なら私も地獄に堕ちる! ホシノ先輩と一緒に!」

「落ち着くんだッ!」

 

 デイヴィッドが怒鳴るように言った。流石のシロコも、一旦立ち止まり下を俯く。そんな時、不意にカズがエイハブのイヤホンを通してのみ密告する。

 

『ボス、ホシノの居場所が掴めた』

 

 止められる事は分かっている。だから、ここからはアビドスの先生として動くのではない。アウターヘブンとして、或いはダイアモンド・ドッグズとして動くことに決めた瞬間だった。

 だが、悪いことは重なる。突如として校内に警報が鳴り響く。それはアビドスの街に武力攻撃が発生したことを知らせるものだった。

 

「アヤネ、状況を」

 

 真っ先にスネークはアヤネに指示を飛ばした。ワンテンポ遅れてから彼女はタブレットを開き、事態を掌握しにかかる。

 

「数百近いカイザーPMC兵がアビドス市内に侵攻中……! アビドス市内に攻撃をしています!」

「よりによってなんでこのタイミングで!?」

 

 セリカが苛立ちを隠せない様子で言う。だが、スネークもオタコンも、その理由を理解していた。

 

「オタコン……」

『ああ、間違いない。正式な生徒会であるホシノがいなくなった今、アビドス高等学校に公的な指揮権者は誰一人としていない。それを狙ったんだ』

 

 これをあの理事が企んでいたのは明白だ。元々、ホシノとの約束など守る気はない。彼らはただアビドスが欲しかった。そのためならば何だってする。それが、大人の汚いやり口だ。

 

「応戦しよう」

 

 そう口に出したのは、いくらか冷静になったシロコだった。セリカがホシノはどうすると言うも、ただシロコは現状を確認してやるべきことを口にする。

 

「……今は、アビドスを守る。アヤネ、ファストフォースは?」

「もう出動しています! 偵察隊先行班、及び主力が一分前に、戦車小隊及び機械化歩兵小隊が今前進しました!」

 

 タブレットには地図上に部隊アイコンが表示されている。他の部隊も準備しているようだ。

 

「アロナ、オタコンとアヤネをサポートしろ。シロコ、俺達も行こう」

「うん、行こう先生」

 

 そう言って部屋を出ようとして、スネークは気がつく。もう対策委員会の面々は部屋を駆け出して行った。だが、エイハブだけは何故かここに残ったままだった。

 まるで固まったように。けれど、待っていたかのように。そんな雰囲気を感じ取れた。

 

「……エイハブ」

 

 そう呼び掛けると、彼はまっすぐスネークを見た。

 

「お前、行く気か」

 

 エイハブは何も答えなかった。ただその瞳には、そして顔には炎が宿っていた。どす黒く、そして全てを飲み込むような炎が。

 きっと日光を背に受けて、表情がうまく見えないからだろう。スネークはエイハブにかつてのトラウマを重ねてしまった。

 

 ──私は、仲間を多く失った。くだらない政治や思想の中で。

 

 心拍数が跳ね上がった。そんなはずはないのだと。目の前の男は、彼ではない。

 

 ──お前は何のために忠を尽くす。お前は何のために戦う。

 

 鬼。鬼が、そこにいる。昔対峙した、思い出したくもないあの記憶が蘇る。

 

 ──お前は私を許せないだろう。だが私も、お前達を許せない。

 

 そこにいるのはエイハブではなかった。失った痛みに苛まれ続ける、一人の鬼だった。

 

 ──彼女の、そして彼の意志を実現する。兵士のための天国……アウターヘブンを。

 

 何度も何度も、その言葉は若い頃のスネークの頭で呪いとなった。そして彼の兄弟達もその呪いに囚われた。

 だが、スネークは。デイヴィッドは違う。彼は、人生を愛している。信じるもののために、そして何より未来のために戦う。

 

『……スネーク、スネーク!』

 

 そこでようやく、スネークは我に帰る。オタコンがずっと呼びかけていたらしい。

 

「オタコン……」

『スネーク、僕達も急ごう』

「ああ……」

 

 その言葉の通り、彼は部屋を出ようとして。また、エイハブを見る。そこに鬼はいない。ただ、見知った義手の男がいるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス市街は混沌に包まれていた。

 ある程度整備されていた街並みは、爆撃や砲迫によって破壊されており、民間人が多数負傷している。中には助けを求める人もいる。

 偵察隊として、いち早く出動したオートバイの新生アビドス生徒はその光景を見て絶句する。ゲヘナ自治区内はよく温泉や美食テロリストによって爆発事件が起きがちだが、これはその比ではない。戦争だった。

 

 不意に、前方の十字路から走行車両が現出する。アビドスのものではない、最新のカイザーPMCのストライカー装甲車だ。

 

「ターン、ターンだ!」

 

 急いでブレーキターンとアクセルターンを駆使してアスファルトで急反転すると、オートバイは離脱する。

 

「CP、こちらヴァイパー! 敵と接触! 敵装甲車一両!」

『戦車で対処します! 偵察隊は迂回路を選定し、敵の中枢を解明してください!』

 

 アヤネの命令の後、少し遅れて主力の偵察装甲車が来る。火力を持たないオートバイを援護するように、偵察装甲車の砲塔がカイザーのストライカーへと向く。

 

『ハンター敵装甲車射撃する! 班集中、徹甲高速点射! 撃て!』

 

 30mm機関砲がストライカーの真横を撃ち抜くと、どうやら想定外の被弾だったようで黒煙を上げた。だがすぐにその後方から装甲車や戦車、そして歩兵のロボット達がわらわらと出てくる。

 アビドスの偵察装甲車もすぐに反転してオートバイと迂回路を探しに行くと、戦車部隊とすれ違う。キョウコ達だ。

 

タイガー(戦車小隊)こちらパンサー(小隊長)、命令を補足する! 新たに判明した敵情、中央区に敵装甲車複数中隊規模、戦車複数中隊規模、歩兵複数大隊規模! 小隊は中央通りを前進、中央区に進出したカイザーPMCを撃破する! 一班警戒方向10時から2時方向、2班9時から3時方向! 戦闘指導、敵は最新鋭の装備で武装されていると見積もられる! 敵と接触したならば直ちに小隊横隊、敵を駆逐しつつアビドスを奪回する! なお遭遇戦になると見積もられるため、各車は即座に火力を発揮できるよう警戒! 以上戦闘指導終わり!」

 

 了解、という音声がヘッドセットに響く。

 そして、カイザーの機械科部隊と接敵したのはそれからすぐ後の事だった。

 曲がり角を曲がった瞬間、カイザーPMCの戦車部隊がズラッと並んでいた。連装銃を撃ちまくり、市民を追い払っている。死んではいないが、まるで虐殺だ。

 

「敵戦車、タイガー射撃する! 一班右一帯、二班左一帯、班集中射徹甲、行進射、撃て!」

「発射!」

 

 けたたましい音を発てて、アビドス戦車小隊の戦車が一斉に射撃する。発射された弾は、 装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)と呼ばれる戦車の装甲を貫くことを目的とした運動エネルギー弾だ。

 強烈なタングステンの弾芯は、しかし敵戦車の装甲に当たると爆発を起こした。そして一瞬だけ敵の戦車は動きが鈍くなったが、すぐに反撃してくる。

 

ERA(爆発反応装甲)だ! 貫徹できてない!』

 

 小隊の戦車長が叫ぶ。どうやらカイザーの戦車は、装甲の外側に増加装甲を付けているようだった。戦車砲弾の威力を減殺するためのものだ。

 キョウコはすぐに決断を迫られた。

 

「隊形変換縦隊、小隊左へ! 路地に入れ!」

「レーザー検知!」

「レーザー検知! ミサイル、ミサイル! 小隊APS作動!」

 

 警告音が鳴ったかと思えば、随伴していたPMCの歩兵が対戦車ミサイルを発射しているのが見えた。すぐに発煙弾で視界を塞ぎ、スイッチを入れて新たに導入した兵装を起動する。

 戦車小隊が隊形を変えると、すぐに装置は作動した。

 キョウコの乗る戦車の上部に取り付けられた装置から何かが飛び出すと、飛来するミサイルを撃ち落としたのだ。アクティブ防護装置と呼ばれる対ミサイル装備だ。ミラーの鶴の一声で取り付けられたものだ。

 すぐに彼女達は逃げるように路地へと入る。

 

「CPこちらタイガー! 敵戦車部隊と遭遇、125mmで貫徹できないため、迂回して敵を急襲する!」

『え!? りょ、了解!』

「キョウコ前! 前!」

 

 不意に操縦手が叫ぶ。モニターを使って前を見ると、カイザーPMCの兵士ロボットが待ち伏せしていた。

 

「敵部隊! 砲手連装、行進射撃て!」

「おらおら〜!」

「小隊、カイザーの兵士を轢けッ!」

 

 キョウコが叫ぶように命じると、連装銃を撃ちながら待ち伏せするカイザーPMCの敵を轢きまくる。バックアップは取っているだろうから死にはしないはずだ。

 ふと、轢かれるのを免れた兵士がこちらに筒を向けているのが見えた。

 

「RPG! うわっ!」

 

 後方爆風なんて気にせずに兵士はロケットを発射すると、運良くその弾頭は真上を通り過ぎる。

 

『キョウコ、一旦第二大通りに出よう!』

「了解……小隊、このまま第二大通りまで前進、じ後カイザー戦車部隊を駆逐する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、スネーク達アビドス主力も苦戦を強いられていた。

 

「横から攻める!」

「カバーします!」

 

 ノノミのミニガンが弾丸の雨を降らせると、シロコとセリカがPMCの側面から攻撃する。持ち前の機動力を活かして戦うも、敵は湧いて出るようにまた増援となって攻めてくる。

 

「キリがありません……!」

 

 ノノミのミニガンの銃身が空転しながら白煙を上げる。スネークはタブレットを開き、状況を確認する。どうやら各地でアビドス高等学校は苦戦を強いられているようだ。

 

「オタコン、数が多すぎる。このままじゃ押し切られるぞ」

『うん……スネーク、敵は戦術ネットワークを使って的確にこちらの動きを封じているようだ。今、EMPを使って妨害もしてるけど、対策もされているからまだ効果が出ないみたいだ。敵の指揮官を排除できれば混乱させられるんだけど……』

 

 だが、指揮官というのは通常前線には出ないものだ。故に、敵指揮官を排除するのであればここを突破しなければならない。それに負傷した民間人もいる。彼らを置いていく事もできない。

 一先ず、目に見える敵は排除できた。対策委員会だけでは無理だっただろう。歩兵小隊や攻撃ヘリの力もある。

 

 不意に、敵の増援が通りの奥からやって来るのが見えた。そしてその中央には、例の理事がいるではないか。

 

「オタコン、どうやら向こうから来てくれたようだ」

『え? 理事が? 一体どうして……』

「さぁな。随分と自分達の手の内を明かすのが好きなようだからな」

 

 ずしり、ずしりと音を発て、先陣に立つ理事。

 

「ふむ……学校まで出向こうかと思ったのだが。そっちからお出迎えとは関心だ、アビドス高校の諸君」

「企業が街を攻撃するなんて、いくら土地の所有者があなた達でも、そんな権利はないはずです!」

 

 ノノミが銃身を回しながら言う。

 

「それに、学校はまだ私達アビドスのものです! このような侵攻は明確な不法行為、連邦生徒会に通報しますよ!」

 

 アヤネが強気に口を開いた。ふと、シロコがスネークの真横で呟く。

 

「今なら撃てる……」

「待てシロコ」

「この悪党め……ホシノ先輩を返して!」

 

 セリカの言葉に、理事は笑った。

 

「揃いも揃って何を言ってるんだか。連邦生徒会に通報だと? 面白い、今すぐやってみたらどうだ? 君達には今までも、その窮状を何度も伝えて来ただろう。その結果、その借金の問題は解決したのか? ……そろそろ分かっただろう。お前達がどう足掻いた所で、何一つ変わりはしない」

 

 理事がこちらへ歩み寄る。

 

「そしてアビドス最後の生徒会メンバー、小鳥遊ホシノは退学した。今やアビドスの生徒会は存在しない。君達はもう、何者でもない」

 

 賤しい者の声が響く。

 

「対策委員会は生徒会ではない。そして、喜ぶがいい。君達は晴れて、あの借金地獄から解放されるのだからな!」

「は、ははは、ハーッハッハッハ!」

 

 突如として、スネークが笑い出す。

 その異様な光景に、理事だけではない。対策委員会も、そして随伴していた歩兵小隊の面々もスネークを見る。

 

「……何がおかしい」

「茶番はおかしいものだろう」

 

 かつて、対峙した者達の言葉を借りる。

 

「対策委員会は生徒会じゃない? ホシノが退学した? お前は何を言っているんだ」

「何?」

 

 スネークは懐から一枚の紙切れを取り出す。それはホシノの退学届。それを、これ見よがしに破いてみせた。

 

「俺は、連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)は、そして連邦生徒会はそれを受理しない。そして対策委員会は既に生徒会として機能している。俺が認めている」

 

 暴論だった。だが、連邦生徒会長が超法規的権限をスネークに与えていることも事実だった。

 

「お前は今、連邦生徒会が自治区として認めたアビドスに侵攻している。どうする? 企業として名に傷が付くわけだ」

「く……また詭弁か」

「いいや、事実だ。……お前が汚い大人を見せるのなら、俺もそうするまでだ。さぁ、どうする。今、ここで手を引いて謝罪するか。或いは、ここで俺達と戦い連邦生徒会を敵に回すか」

 

 正直、連邦生徒会にその力はない。カイザーコーポレーションはキヴォトスに根付きすぎている。それを失えば、経済的な損失は免れない。だからこれは、詭弁に過ぎない。だが無視できない詭弁だ。

 

「……そうです。アビドスは、私達のものです! これ以上あなた達が不届なことをするのなら、許しません!」

「そうよ! ここから出ていけ犯罪者!」

 

 アヤネ達が非難すると、理事はぐぬぬ、と後退さる。

 

「……だが! それは貴様らがいるからだ! ここで貴様らを倒せば、文字通り生徒会はいなくなる!」

 

 理事は言った。言ってしまった。

 つまりそれは、殺すということだ。邪魔な敵を殺して、乗っ取るということだ。

 

「……お前、それが意味する事は分かっているんだろうな?」

「フン! お前の詭弁に付き合うのもこれで最後だ! 総員、攻撃……」

 

 カイザー理事の言葉は、しかし爆発音によって遮られる。次々と、PMC方向から爆発音が響き、彼らは明らかに混乱しているようだった。

 

「な、何が起きている!?」

「どこかから爆発が! うぉあ!!??」

 

 報告したロボット兵士も爆発に巻き込まれる。

 

 

「そうよ! それでいい! 戦うことをやめてはいけない、あなた達は、あなた達のために戦う! それでこそアビドスよ!」

 

 歩道橋の上から声が響く。それは、便利屋68。社長、陸八魔アルのものだ。

 気が付けば、便利屋の皆が歩道橋の上から自分達を見下ろしている。どうやらこの爆発は彼女達の仕業らしい。

 

「自分達のために戦い、生き残る! あなた達アウターヘブンらしいわ!」

 

 スネークは顔を顰める。あの言葉を真に受けたアルもそうだし、アウターヘブンという言葉はそれこそ呪いそのものだ。

 だが、便利屋が加勢してくれたことは確かだ。今も歩道橋からスーパーヒーロー着地を決めてドヤ顔している彼女でも、心強い。

 

「アル。カイザーとの契約はもういいのか」

「私たちはアウトローよ。戦う理由は自分で決めるわ。さて……」

 

 アル達はスネーク達の横に並び、PMCと向き合う。奴らの後続は爆発の混乱で散り散りになっているようだった。カタをつけるなら今しかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──俺が一人で行く。

 

 砂漠の中を一人、駆ける。その姿はいつもの迷彩服ではない。施設潜入に特化した、ダイアモンド・ドッグズ印のスニーキングスーツだ。

 

 ──大規模施設への単独潜入になる。支援は当てにしないでほしい。それでも行くのか。昔と今じゃやり方も違う。

 

 砂の丘を越え、匍匐して双眼鏡で観察する。レンズに映るのは多数の警備ロボット達。

 

 ──ホシノを失うわけにはいかない。

 

 双眼鏡をポーチへ収納すると、ヘーゼルの瞳で彼らを睨む。

 

 ──分かった。俺は最後まであんたと一緒だ、ボス。

 

 膝立ちになり、潜入できそうな経路を探す。あった、外柵が金網になっている部分がある。あそこからなら入れそうだ。

 

 ──カズ、バックアップを頼む。

 

 巨大な施設に単独潜入なんて、きっとOKBゼロ以来だろう。だが、やらなければならなかった。

 これは、自分の問題でもある。残してはいけないものを、伝えてはいけないものを伝えてしまった自分達の責任でもある。

 エイハブは、一人潜入する。衛生兵や先生としてではなく、パニッシュド・ヴェノム・スネークとして、ビッグボスとして。

 




今エンディング作成してます。



追記
誤字報告ありがとうございます。しかしながら、誤字報告機能については誤字のみをお願い致します。

追記2
じ後←誤字じゃありません、これ軍事用語です!
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