蛇だった者たちへ。   作:Ciels

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赫怒 14

 

 

 

 

 

 一人、その男は砂漠を歩いていた。

 背にはカイザーPMCの施設。そして上空にはヘリが数機飛んでいる。かなりの低空飛行だ、それが襲撃を目的としているのは目に見えていた。

 そんな低空を飛んでいれば、嫌でもヘリに描かれたマークが目に入る。アビドス高等学校のものだ。そしてその真横に描かれているのは、翼の生えた髑髏のマーク。

 

「アウターヘブン……」

 

 男は呟く。かつて、男とその同志達が目指した天国の外側。そしてこの世界には、決して運び込んではならない情報(meme)

 だがそれすらも、自分達が蒔いた種である。今まさに、アウターヘブンを背負うヘリに乗り込む男の業。そして施設の中へと忍び込んだ男でさえも、彼が全てを狂わせた。

 

 罪滅ぼしとは言わない。子供を搾取して良い世界など、きっと彼の宿敵()でさえ良しとしない。

 だから、少しだけ。少しだけ、手を貸した。それだけのことだ。後のことは、きっと彼らならうまくやる。

 

 男は腰に取り付けた装置を起動させる。するとみるみるうちに身体が透明になり、砂漠にその姿は消えてしまった。後にはヘリの騒音と、砲撃の音が響くだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ピークォド内部から見渡すアビドスは、どこまでいっても砂塗れだ。だがそんな砂も、ようやく切れ目が出来ていく。カイザーPMCの施設が見えてきたのだ。

 アヤネはすぐにタブレットを操作して、地図上の火力集中点を確認する。

 

「ホーク、こちらCP! 火力要求、火力集中点1から15、効力射! 時速やか!」

 

 アヤネの火力要求を受けて、今頃学校の校舎では砲兵部隊が大忙しで榴弾砲を撃っているのだろう。ここから学校までの距離は、概ね15キロといったところか。

 スネーク達、空中強襲部隊の狙いは敵の後方陣地の撹乱及び破壊にあった。

 まず榴弾砲により対空火器を破壊又は制圧。その次に直接乗り込んで、偵察部隊と対策委員会で防衛装置を破壊する。

 その後は、ホシノの救出だ。正面の敵は機甲部隊と歩兵部隊が相手にする。

 

 バンダナをキツく巻く。潜入することは考えていない。だから、彼にしては珍しく重武装だった。

 対弾プレートがインサートされたキャリアー、俗に言うプレートキャリアーを着込み。服は砂漠用のデジタル迷彩。海軍特殊部隊(SEALs)も砂漠地帯の任務で使用していたものだ。

 手に握るのは、砂漠の砂対策として持ち込んだ近代改修AK。サイドロックマウント上に取り付けられたホロサイトは、近接戦闘での照準に向いている。

 サイドアームにはUSPを持ち込んだ。こいつならこの劣悪な環境でも信用できる。

 

「砲撃来ます!」

 

 アヤネが叫ぶと、上空からカイザーの施設へと何本も砲弾が落ちていく。すぐに爆発が起きて、けたたましいサイレンが鳴り出した。施設はかなりの混乱だろう。

 

『イーグル1−1及び1−2、攻撃する』

 

 随伴していた攻撃ヘリのパイロットがそう警告すると、すぐにロケットが連発して放たれる。

 攻撃ヘリのロケットは地上に停車していた戦車や車両を火だるまにしていく。奇襲は成功のようだ。

 

LZ(着陸地点)まで20秒!』

 

 ピークォドのパイロットが報告すると、対策委員会の面々の顔が強張った。

 ヘリが外壁を越え、開けた中央のヘリパッド上でホバリングする。すると厚手の手袋を手に嵌めたシロコとセリカが、左右のサイドハッチを解放した。

 

「ロープ垂らせ!」

「ロープ垂らせ、ロープ良し!」

 

 スネークの号令にシロコとセリカがヘリの左右から極太のロープを垂らす。アヤネを除く全員が座席から立ち上がる。

 

「卸下用意!」

「卸下用意、準備よし」

 

 先頭のシロコとセリカがロープを握る。そして、

 

「卸下!」

 

 言った瞬間、シロコとセリカがロープを伝って地面に降りて行く。ファストロープ。かつてビッグシェル事件でSEALsが降り立った方法だ。特殊部隊などでよく実施されている。

 後続のノノミがミニガンを背負って降り立つと、スネークもロープを掴む。

 

「先生、お気をつけて!」

 

 アヤネの忠告に頷き、一気に降下する。

 厚手の手袋を嵌めてもやはり手は摩擦で熱い。

 地上に降り立つと、素早く展開して周囲を警戒する。そしてスネークは無線越しに降下完了を伝えると、ロープが上から切り落とされ、すぐにヘリは離脱した。

 

「敵が混乱している内に!」

 

 シロコがそう告げると、彼らはすぐに動き出す。少し遅れて降下してきた偵察部隊も混ざれば、指揮系統が混乱しているのか右往左往するだけのPMCロボを排除しながら重要ターゲットにどんどん爆弾を取り付けていく。

 対戦車火器、多連装ロケット、戦車倉庫、ドローン施設。事前に示された場所へと爆弾を取り付け終わると、スネークは無線で襲撃部隊に連絡する。

 

「ここはもういい、内部に急ぐぞ! オタコン、道案内頼む!」

『分かった! そこから北へ行ってくれ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、アビドス砂漠。カイザー施設から2キロ東。

 

 機動戦闘部……つまり機甲部隊は新たに導入(略奪)した最新型の戦車、エイブラムスで編成された小隊を先頭に、砂漠を駆ける。一列に並び、速度を重視した隊形であることが見てとれた。

 もちろんその最新型戦車の小隊長は、キョウコだ。まだ見慣れないモニターで前方を警戒しながら無線で報告する。

 

「CPこちらパンサー! PL3(統制線)通過、先生達はどうなってる!」

『こちらCP、爆弾の設置完了! 爆破まであと……10秒!』

 

 どうやらスネーク達はうまく行っているようだった。キョウコ達はこれから、残存する敵戦力を撃破してホシノを助ける皆の退路と安全を確保しなければならない。とても重要な任務だ。

 

『爆破成功! セイバー(戦車中隊)、隊形変換横隊!』

 

 アヤネからの指示を聞き、キョウコや他の戦車小隊の小隊長は指示を出す。

 

「タイガー隊形変換横隊、左へ!」

 

 縦一列の戦車部隊が綺麗に90度旋回すると、横一列に前進する。教本のような動きだ。

 

『パンサーこちらレオパルド(第2戦車小隊長)! 射撃支援態勢を取る!』

「パンサー了!」

 

 時速30キロで前進していた戦車中隊の最右翼にいたTー80小隊が、速度を増して先行する。恐らく最大速力だろう。

 先行した小隊が砂丘の稜線をうまく使い、施設から見て砲塔だけ露出するように停止すると、無線が飛び交う。

 

『パンサーこちらレオパルド、射撃支援態勢完了! 射撃及び視察範囲、施設前面一帯!』

「パンサー了! タイガー(キョウコの小隊)こちらパンサー、命令を捕捉する! 新たに判明した敵情、ネットワークで送信! 小隊は中隊主力となり、敵の第一線防御を突破、施設内100メートルまで一気に奪取する! 突入要領歩兵との同時突撃! 警戒方向変化なし! 以上命令の捕捉終わり! 戦闘指導、火力優先、戦車、対戦車ミサイル、装甲車、多連装ロケットの順!」

 

 キョウコが無線で命令を捕捉し終えると、サイドモニターのマップを確認する。

 指揮下部隊どころか、ネットワークに加入している味方ならば地図上に全て表示されている優れものだ。その上、地図上に自分でマークもできる。

 

「よーし行くよみんな!」

「やってやろうぜ!」

「うっしゃー! 新車は気持ちがいいぜ〜!」

 

 戦車内の砲手と操縦手が意気揚々と呼応する。そしてとうとうキョウコの車両が射撃支援の小隊を超越する。攻撃開始の合図だ。

 

「タイガーLD(攻撃開始)!!!!!!」

 

 無線で端的に伝えると、同時に施設のゲートから今頃敵の戦車や装甲車が慌てるように飛び出してきた。キョウコの目の色が変わる。

 

「12時戦車装甲車! 一班戦車部隊二班装甲車部隊、タイガー徹甲、班集中、行進射!」

「距離良し!」

 

 砲手がボタンを押すと徹甲弾が自動装填される。

 

「撃て!」

 

 キョウコの小隊の戦車が一斉に射撃する。

 二班の放った二発が装甲車二台を貫き炎上させる。どうやら弾薬に引火したようだ。

 そしてキョウコ達の放った劣化ウランの徹甲弾も、戦車のエンジンまで達したようで、そこからの引火で弾薬庫もろとも爆発してみせた。

 

「命中撃ち方待て! レオパルド、射撃遅い!」

『キョウコ達が速すぎるんだよ!』

 

 それもこれも、最新型のエイブラムスが成せる技だ。車長席のモニターから砲手モニターが確認できるが、あれだけ砂漠の上を爆走しても一切ブレないのだ。かなり安定性が高い。

 

「CPこちらタイガー、戦車2、装甲車2撃破! 引き続き前進する!」

『了解! まだ残存の戦力がいるようです! 注意してください!』

 

 アヤネの忠告通り、わらわらと大破した戦車を押し出して新しい敵の戦車が出てくる。それに随伴の兵士もだ。

 

『敵戦車! レオパルド射撃する! 敵先頭車両! レオパルド小隊集中、徹甲!』『距離良し!』『撃て! 命中目標変換、続けて撃て!』

 

 後方から射撃音がすると、押し出して展開し出した敵の戦車部隊がどんどんやられていく。

 と、そんな時、この前アビドス市街襲撃時に出てきた二足歩行兵器が数台出てきた。

 

「人型兵器! 小隊集中、徹甲行進射、撃て!」

 

 ドンドン、と時間差を交えてエイブラムスが射撃する。すると人型兵器は膝をついた。流石に最新型の劣化ウラン徹甲弾はキツいらしい。ブラックマーケットで急遽高値で揃えただけはある。

 

『効果判定! 効果あり、レオパルド撃つぞ!』

 

 続けてレオパルドの小隊も射撃すれば、流石の最新兵器も倒れて動かなくなった。もうすぐゲート付近だ。

 

「CPこちらパンサー、突撃支援射撃要求、時速やか! タイガー突入する!」

『突撃支援射撃実施します!』

 

 突撃時、通常迫撃砲などで支援を受ける。本来ならば攻撃前進する際も受けるのだが、今のアビドスにその余裕はない。アビドス市街での戦闘で消耗しすぎたのだ。

 

『待ってください……アビドス以外からも迫撃砲が飛んできているようです!』

「突入待てないぞ!」

『いえ……これは!? ゲヘナとトリニティの支援です! セイバーは引き続き突入、陣地を奪取してください!』

 

 ちらりと車長用のカメラを左右に振ってみれば、確かに少し離れた砂丘の上に部隊が展開していた。あれはトリニティだろう。白い制服はよく目立つ。

 

「タイガー隊形変換縦隊、緊縮隊形とれ! 各操縦手追従しろ! タイガー警戒方向に連装、行進射、撃て!」

「おりゃおりゃ〜!」

 

 パララララ、と砲塔同軸の連装銃が弾をばら撒く。先頭のキョウコは前方に。追従する車両は示された方向に。

 ゲートを突破されたカイザーの兵士達はその突撃力に圧倒されていた。

 

「タイガー、停止用意! 止まれ! ハイエナ、超越して!」

『アイアイサ〜!!!!!!』

 

 戦車の後方から装甲歩兵小隊のBMPが前進し、キョウコ達を超越する。少し進んでから停車すると、中から見知った装甲歩兵部のミナミが飛び出し、展開して徒歩による突撃を開始した。

 

「CPこちらパンサー、正面ゲート奪取! 残敵掃討に移る!」

『了解、襲撃部隊も先生と内部へ侵入しました! 引き続きセイバーはPL6のラインまで奪取してください! それと、ゲヘナの機甲部隊が応援として来てくれます!』

 

 キョウコは思わず舌打ちした。ゲヘナの風紀委員は戦った経験がある。故に、その低練度ぶりもよく知っていた。それに、奴らにはエイハブの借りもある。

 

「いらないって言ってよ。邪魔になるだけだよ」

『そ、それが、ゲヘナもトリニティが出て来てるせいでやる気みたいで……』

 

 ため息が漏れてしまう。政治というやつだ。敵視している相手に良い格好はさせられないんだろう。

 

「CP、こちらパンサー。意見具申。ゲヘナの部隊には奪取した地域の安全確保をしてほしい」

『了解、期待しないでください……』

 

 アヤネさんはキレない限り優しいからなぁ、と砲手が呟く。まったくもってその通りだとキョウコは苦笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒナやイオリのゲヘナ勢は、その様子を少し離れた高台から眺めていた。

 噂には聞いていたが、あまりにも洗練されたアビドス部隊の動きに流石のヒナも顔を顰めそうになる。たった数週間であの練度は異常とも言えた。風紀委員会はずっと練度は高くないというのに。

 流石に先日の敗北があってから、イオリが主体となって猛特訓を積んではいるが。

 

「座標同じ! 支援射撃急げ!」

「腕が疲れる〜!」

 

 すぐ真横で迫撃砲を撃ちまくる風紀委員達を見る。前よりは良くなってはいるが、まだまだアビドスの砲兵部隊には届かないだろう。現に、弾着の座標が少しずれているらしく修正が多い。アビドス砲兵部隊の砲撃に狂いはほぼ無かったというのに。

 

「委員長、その……」

「イオリ。どうしたの?」

 

 申し訳なさそうにイオリがヒナに話しかける。

 

「アビドスから、戦車の援軍は施設内に入ってくれるなと……練度が低いからって……」

「……そう。無理もないわね」

 

 カイザー施設の外でわちゃわちゃとしているゲヘナのT-72を見る。その数数十台。更新するには金が掛かったが、乗員を育てるとなると金では解決しない。教育者が必要なのだ。ゲヘナの戦車の第一人者と風紀委員は仲が良くないから頼めない。

 

「彼女達の退路を確保することに務めなさい。事前調整していないのだから、邪魔するだけだわ」

 

 今できるのはそれくらいだ。少なくとも、これで少しは借りは返せただろう。

 そう思い、ヒナはその場を後にしようとして。

 

「あ、おい! お前どこに……」

「誰かそいつを止めて!」

 

 不意に、後方の地域からそんな怒号が響いた。何が起きたのかと振り返れば、一人のゲヘナ生がとんでもない足の速さで施設へと突撃している。

 あまり見たことのない生徒だ。茶髪で、端正な顔立ちで、制服をラフに着て、胸元が……というよりも水着のような下着が見えてしまっている。

 その手にしているのはスナイパーライフルだろう。見た目の割にスナイパーらしい。

 

「あ、シズカ! 待て!」

 

 イオリが制止しようとするが、跳躍してスルーされる。

 

「イオリ、あれは? 部外者?」

「え? あ、あの……私の友人の、シズカです。突然同行したいと言い出して……優秀なスナイパーなので、その、助けになるかと思ったんだけど……」

「邪魔にならなければ良いわ……ごめんなさい、席を外すわ」

 

 不意に、ヒナのスマホが振動する。疲れた表情をするイオリに背を向け画面を見れば、ヒナは驚いた。そしてそそくさとその場から離れて誰にも見られないように一人になる。

 

「もしもし。今どこにいるの?」

「君の近くだ」

 

 突然、背後から声をかけられる。ビクッと身体をびくつかせ、振り返ればそこには誰もいない。

 否、透明な何かがそこにはいる。ヒナの電話相手だ。

 

「君も驚くんだな」

「貴方は……今まで一体どこに?」

 

 空間から微弱な電気が放たれたと思えば、男が姿を現す。まるで、連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の先生そっくりな男が。

 けれど、唯一違うのはその右眼に眼帯をしている事だろう。体格も少しばかりゴツい。

 

「ちょっと野暮用でな。あの中にいた」

「カイザーの施設……? どうして……」

「まぁそれはいい。ちょっと車を借りたいんだが」

 

 相変わらずマイペースな男だ。ヒナは溜息混じりに自分が乗って来た車を指差す。どこにでもあるジープだ。

 

「すまんな」

うち(ゲヘナ)には帰ってこないのかしら?」

 

 そう尋ねると、男はうん? ああ……とちょっとバツの悪そうな返答をする。

 

「まだ調べなきゃならんことがあってな」

「それは……例の条約に関係しているのかしら?」

 

 男は今度こそ答えない。

 まぁいいわ、とヒナは言い、イオリ達の方へと足を進めて。立ち止まり、一言だけ言う。

 

「……気をつけてね。ジャック」

 

 振り返らずにそれだけ言うと、彼女は今度こそ皆の元へ戻る。男は健気な少女の後ろ姿をしばし眺め、彼女に聞こえるようにただ言う。

 

「また会おう」

 

 それだけ言って男はジープに乗り込むと、アビドスの砂漠に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全部、私が悪いんだ。

 

 結局は誰も救えず、また大人に騙されて。約束を反故にされて、みんなを危険に晒した。

 死にたい、とはこういう感情なのだろう。死んで罪を償うという言葉は聞いたことがあっても、実感したことなどあるはずがなかった。それほどまでに、今の自分の胸の内には罪悪感が溢れている。

 

 惨めなものだ。結局、自分は何も成し得ていない。

 ずっとずっと、ユメ先輩の幻影を追いかけて。エイハブ先生に憧れて。余計な事ばかりして。

 暁のホルスと呼ばれ恐れられた自分は、今こうして捕まっている。動くことすらままならない、奴らの技術によって。

 このまま死ねたら、どれだけ楽だろうか。嗚呼、でもきっと、死んで魂だけになってもユメ先輩に顔向けできないに違いない。

 

「先生……」

 

 ただ、今はその名を呼ぶことしかできない。非力な自分は、助けを求めるに値しないのに。

 

 

「ホシノ」

 

 

 ついに、幻聴まで聞こえ始めた。

 カズヒラの言う通りだった、自分は先生が大好きなのだろう。

 

「ホシノ」

 

 やめて、名前を呼ばないで。私は先生を危険に晒した。

 皆を傷つけた。

 黒服達は、先生を含む皆の抹殺を提示してきたのだ。彼らにはその手段があると、そう言い聞かせてきた。それを防ぐために自分は身売りしたというのに、このザマなのだから。

 

 突然、発砲音が何度もする。すると、自分を拘束していたレーザーが消えて行く。そこでようやく現実と向き合うことができた。

 

「ホシノ……!」

「、え……先生……?」

 

 目の前に、望んでいた光景が広がっていた。

 エイハブ先生が。傷だらけの彼が、自分の肩を揺らす。

 

「俺だ、助けに来た」

「せ、んせ、い」

「話は後だ、逃げるぞ」

 

 その瞬間、抑えていた感情が溢れる。

 そんな資格はないのに、涙を流して抱きついてしまう。でも先生は、そんな私を優しく抱いてくれた。

 

「どうして……どうして一人で……!」

「言ったろう、まだ戻れる場所があると。……帰るぞ、俺たちの家に」

 

 自分にまだこんなことを言ってくれる事が嬉しくて。けど、どうしても謝りたくて。

 

「ごめんね先生……私、ダメな子だよ」

「……子供は手が掛かる方が可愛いってもんだ。ほら、歩けるか?」

 

 

 

 

 

 ホシノの手を取り立たせれば、彼女は涙を拭って頷いた。そんな彼女に、背中のショットガンを手渡す。

 もちろんそれは、ホシノのショットガン(Eye of Horus)だ。わざわざこれを持ってきたのは、帰ってこいという意思の表れでもある。

 

『ホシノが無事で良かった……ボス、どうやらデイヴィッド達が急行しているようだ。急いでそこから脱出して合流してくれ』

 

 そんな時、爆発のような振動が施設を襲う。カズの言う通り、スネーク達がここにやって来ているようだ。

 

「……行こう、先生」

 

 ホシノの言葉に頷くと、二人は施設からの脱出を目指す。そんな二人を、監視カメラで眺める者がいる。

 これから起きるであろう悲劇と、その神秘を観測するために。

 

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