蛇だった者たちへ。   作:Ciels

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めちゃくちゃお待たせしました。
エデン条約編、わかってたけど難産すぎる……


補習 2

 

 

 

 正直、ここまでとは思わなかった。スネークは補習授業部の面々の姿を見て頭を抱えたくなる。

 

 ナギサから渡された資料を基に、集めた四人の少女達。それはつまり、過去のテストでとんでもない点数を取ったり、そもそもテストを受けていなかったりして目をつけられた少女達だ。

 補習授業部。それはつまり、彼女達の点数を上げてくれという、なんとも教職員らしい仕事だった。

 

 下江コハル。トリニティ総合学園の一年生であり、正義実現委員会所属。どういうわけか二年生用の試験を受けたために点数が届かず落第候補。本人は人見知りかつプライドが高い一面を持つ。また、性的な事に対する拒絶がもの凄い。

 

 浦和ハナコ。トリニティ総合学園の二年生。かつては才媛と呼ばれ、一年生の時点で三年生終了までのテストに合格。しかしながら近年では異常行動が見られ、素行も悪い。卑猥な言葉や態度、服装で定期的に指導されている。

 

 阿慈谷ヒフミ。トリニティ総合学園の二年生。特に問題行動等はないものの、各部活動に知り合い多数。また、モモフレンズに対する異常な執着心により、断定されてはいないがブラックマーケット等に出入りしていた兆候あり。テスト当日もペロロ(モモフレンズのキャラクター)のライブを鑑賞しに行き、受験が不可能であった。

 

 白洲アズサ。トリニティ総合学園二年生。つい最近、検閲済みより転校。問題行動が多い。正義実現委員会や生徒との衝突複数。また、単独行動によるゲリラ戦に長けているとの情報あり。学力は低い。

 ちなみに今日彼女に会いに行った時は、正義実現委員会の独房の中にいた。なんでも派手に暴れていたらしい。

 

 ……以上が、補習授業部の四名に関する資料に書かれている内容だ。そして改めて、目の前にいる彼女達を眺める。

 一回目の特別学力試験を実施した。ちなみに期限は三回まで。三回目までに受からなければ、彼女達は落第となる。今回は小手調べという意味合いもあるのだが。

 しかし返却されたテストの解答用紙を見ている彼女達の表情は明るくない。合格できたのはヒフミだけ……あとの三人は、見るも無惨な結果だった。結果的に、補習授業部は合宿をすることとなる。

 

「先が思いやられるな……」

 

 一人、夜のトリニティ校舎を歩くスネーク。

 

『あはは……それにしても、ハナコのやり方……あれはちょっと、故意的なものを感じるね』

「かつては才媛と呼ばれた少女が……何があったのかは知らないが。随分と捻くれたようだ」

『スネーク、君なら間違いは起こさないと思うけど……ハナコの言葉でその気にならないでくれよ?』

「オタコン……」

 

 ハナコの言動は痴女そのものだ。口を開けば猥談、さも当然のように水着で徘徊しているため、正義実現委員会からもマークされてしまっている。

 

『コハルさんも、その……随分とあれな方ですね』

「アロナ、率直に言ってやれ。勉強できないのを認めろとな」

『あはは……』

 

 テスト直前まで、自分は力を隠していただけだ、と強気な姿勢を見せていたコハルは、ただ勉強が苦手なだけだ。教師としてバカという言葉を使いたくはないが、実際そうなのだからしょうがない。もっとも、キヴォトスの授業は実際に教員が教えることはなく、ほぼ全てが記憶媒体を見て学ぶだけのものだ。アビドスで実際に元スケバン達に授業して分かったが、不良や成績の悪い学生達は頭が悪いんじゃない。適切な勉強方法を知らないだけなのだ。

 

「オタコン、アズサについて調べて欲しい」

『うん。僕も同じことを考えてた。今、データバンクにアクセスしているよ。ただ、改竄された形跡があるからあまり期待しないでくれ』

「改竄?」

 

 うん、とオタコンが耳元で肯定する。

 

『どこの誰がやったのかは分からないけど……随分と周到な処理だ。完全な復元は無理だろう』

『ごめんなさい先生、完全に消されていたら流石に復旧は……』

 

 謝るアロナに、スネークはいいんだ、と言って諭す。それはおいおい分かれば良い。彼女と打ち解け、聞き出せばいい。それに問題は、彼女のことだけじゃない。

 ヒフミは言っていた。三回の学力試験に落ちれば、何かがあるのだと。彼女は言い淀み、その先を言わなかったが……

 

「合宿ねぇ」

『どう思う、先生?』

 

 茶化すように聞いてくるオタコン。

 

「隔離だろうな。ナギサは今、例の条約とやらに躍起になっている。問題はなるべく少ない方がいい」

『うまく言っているつもりだろうけど、結局の所は僕達に厄介者を押し付けた感じだろうね。連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の先生が面倒を見るのであれば問題は少ないと判断したんだろう』

「それだけならいいんだがな」

 

 どうにも嫌なものを感じる。それで終わらない気がする。それはスネークが、戦場で培ってきたある種の第六感のようなものだ。大抵、こういう時の勘は当たってしまうから困る。

 と、そうして歩いていれば目的の場所へと辿り着く。それはティーパーティーの部屋、そのテラスだった。

 

「ナギサ」

 

 一人、夜風に当たりながら紅茶を嗜むナギサに声をかける。彼女は振り返ると冷静な笑みを浮かべ、スネークに対した。

 

「あら、先生。お疲れ様です、補習授業部の方はいかがですか?」

「君のことだ、もう耳に入ってるんだろう?」

 

 そう言うと、彼女はにっこりと笑ってみせた。政治屋のような笑みだ。本心はそこにはない。

 

「ええ。最初の試験は、うまくいかなかったようで。ですがまだ、二回試験はあります」

 

 そうは言うも、何だか信用ならない。まるで残り二回の試験も同じようになると言っているようにも感じた。

 ふと、彼女の目の前にあるチェスに目が行く。そのことに彼女も気がついたようだ。

 

「ああ、これですか? チェスです、趣味なものでして」

「随分と歪なチェスだな」

 

 並ぶ駒は白黒対称ではない。黒はキングとクイーン、あとはポーン(劣兵)のみ。対して白はキングとルーク、ビショップ、そしてルークが三つずつ。まるでそれは、圧倒的な火力で脆弱な敵を叩き潰すが如く。

 戦術的な話をしよう。攻撃側は防御側に比して不利である。よって、その戦力比を三倍以上にして攻撃を仕掛けるのだ。ある種、戦争の鉄則のようなもの。

 だがナギサのチェスは、それだけを意味しているのではない。圧倒的な兵力で敵を必ず殺す。そういう意思を感じ取れた。

 

「一人でこれを?」

「ええ。今はうるさいミカさんもいないですし……」

 

 それよりも、と彼女は話を変える。

 

「今日は先生にお伝えしたいことがあったのですが……それよりも先に、先生の方から何か言いたげなことがあるように見受けられますね」

 

 聡い子だ。どうやらスネークがここに来たワケを理解していたらしい。

 

「三回とも試験に落ちたらどうなる?」

 

 そう尋ねると、彼女はしばらく黙った後に冷めているであろう紅茶を一口飲む。

 

「小耳に挟まれたのでしょうか。出所は……ヒフミさんですかね」

 

 ふぅっと、彼女はわざとらしいため息を吐いてみせた。彼女のどこからどこまでが演技なのか、まだ掴めない。

 

「彼女は、そういうところがありますから……まぁそれが、ヒフミさんの良い所でもあるのですが……」

「親しいんだな」

 

 そう口を挟めば、彼女は少しだけ目付きを変えた。どうやらあまり触れてはいけない部分だったのか。或いは、弱みを見せたと思われたか。

 

「……さて、質問にお答えしますと、簡単なお話です。試験で不合格を繰り返す、落第を逃れられそうにない、助け合うこともできない……だとすれば皆さん一緒に退学していただくしかありません」

「待て、退学だと?」

 

 その発言を予想していなかったわけではない。ただあまりにもその可能性は低いだろうと思っていた。だから思わず、声を上げてしまう。

 彼女はトリニティにも落第や退学といった処分があること、しかし手続きが複数存在し面倒なこと、そして粗暴なゲヘナとは異なりトリニティは公的な手続きを重要視するといったことを語ってみせた。

 そして同時に、わざわざ連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)という超法規的存在を呼び寄せたことの意味を理解してしまった。

 

「……ナギサ。君は、その手続きや校則を無視して退学に追いやれるように連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の俺を呼び寄せたのか?」

 

 連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の権限。それは単にスネークが行使するものだけではない。現状、連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)は連邦生徒会長の権限を一部譲渡されている。その連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の先生が補習授業部にアタッチされているとなれば、その権限すらもアタッチされていると考えても不思議じゃない。要は、解釈の問題だ。

 彼女は驚いたのか、少しハッとした表情を見せた後にまた澄ました顔へと戻る。

 

「驚きました。流石は連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の先生……ええ、そうです。そのために先生をお呼びしました」

 

 きっと、まだ理由はあるはずだ。こちとら散々色んな謀略に巻き込まれてきたのだから勘は働く。

 

「なら、教えて欲しい。補習授業部……いったい何のためにこの部活を作ったんだ」

 

 そう。今の話からすると、その目的はまるで……

 スネークとオタコンが推察するのと同時に、ナギサは語る。

 

「もう、お気付きでしょうが。そうです。生徒を退学させるために、補習授業部があるのです」

「……理由は」

 

 驚きはしない。だが、失望はしていた。昼間の会話で彼女は確かに聡明だが、ミカと会話をしていた感じはまだ少女だったから。

 けれど、退学。つまりはキヴォトスにおける人権の喪失を意味する権限を振り翳すとなれば話は変わってくる。それは大人として、先生として。若者を導く者として、断固として阻止しなければならない。

 

「あの中に、トリニティの裏切り者がいるからです」

「裏切り者?」

 

 スネークは唖然とした。言っている意味がわからない。いや、信じたくないのかもしれない。あの中に、ナギサを嵌めようとしている人間がいるなどと。

 

「エデン条約の締結阻止……それが、裏切り者の狙いでしょう」

「エデン条約……トリニティとゲヘナ間における不可侵条約か」

 

 一瞬、ナギサのカップを持つ手が震えた。きっとエデン条約の事が漏れているということが気に入らないのだろう。

 

「……その通り。その核心は、トリニティとゲヘナの中心メンバーが全員出席する、中立的な機構を設立することにあります」

 

 ナギサはカップを置くと、立ち上がって語り出した。

 

エデン条約機構(Eden Treaty Organization)、将来ETOと呼ばれるであろうこの団体が、両者間で紛争が発生した際に介入し、紛争を解決することになります。これにより、両者の間で全面戦争が起こることは無くなります。誰かが踏み込めば、両陣営が仲良く共倒れしてしまうことになりますので」

 

 まるで抑止論のようなものだ。だがスネークは、そして蛇の一族は知っている。人は核の抑止を無視して撃ててしまうほどに愚かであることを。

 核という絶対的な抑止が無いこの条約で、人は本当に約束を守れるのだろうか?

 かつて、スカルフェイスは言っていた。人は誰かを敵と見做さなければ自分を肯定できないのだと。確かに条約の内容は良いものだ。争いのない世界、それを目指すのは使命なのだから。

 けれど、穴が大きすぎると思ってしまうのだ。絶対的なものはない。抑止は続かない。それを、知ってしまっている。

 

「トリニティとゲヘナの長きによる対立は、お互いの大きな負担となっています。エデン条約はその無意味な消耗を防ぐための、恐らく唯一の方法であり、キヴォトスにおける力のバランスを保つための方法でもあります。……それに、これは連邦生徒会長が提示した解決策でもありました。彼女が行方不明になってしまい、一度は瓦解しかけたものを私の下でどうにかここまで立て直したのです」

 

 確かにその政治手腕には恐れ入る。けれど、それは連邦生徒会という中立的かつ上位の存在がいればこそだ。

 

「そして念願の条約締結直前、このタイミングで……これを妨害しようとする者達がいるという情報を、耳にしてしまいました」

 

 彼女の瞳に暗い炎が灯る。

 

「それが誰なのか……また、誰に指示されているのか、といったことまでは特定できてはいません。そこで、次善の策として、その可能性がある容疑者を一か所に集めたのです」

「それが補習授業部を作った理由?」

「十分な理由でしょう。一つの箱に押し留め、必要ならば一気に捨てる……先生にはその箱の創造に手を貸していただきました。……ごめんなさい」

 

 本当ならば、ここで彼女を叱咤するのも良かったかもしれない。だが、最後にポツンと呟いた謝罪の言葉。それが、スネークを思い留まらせた。まだ、彼女は戻って来れる。

 タバコが吸いたくなった。こういう時、落ち着くためにニコチンはとても頼りになる。けれど今のスネークは大人で、先生だ。

 

「……人を疑い出すとキリがなくなる。ナギサ、君はまだ、信じたいはずだ。あの四人を」

「……」

 

 彼女は答えなかった。けれど、心に迷いがあることをはっきりと感じられた。沈黙とは時に、雄弁なのだから。

 

「本当に利用するつもりなら、ここで君の意図を話すことなんてしないはずだ。ナギサ、俺は誰の敵でもない。だからせめて、俺にだけは話してくれないか」

 

 導かなければならない。この、疑うことでしか安心できない少女を。否、疑ってもなお安心できない彼女を。

 

「流石、鋭いですね。仰る通りです」

 

 彼女は少しばかりの観念した態度と、安堵を織り交ぜて話す。

 

「……先生。補習授業部にいる裏切り者を、探してもらえませんか?」

「ナギサ……」

「先生を、トリニティを騙そうとしている裏切り者がいます。平和を破壊するテロリストが。私達だけでなく、キヴォトス全体の平和を、自分達の利益と天秤にかけようとしているのです」

 

 彼女はまるで指導者の演説のように言ってみせる。それが当然であり、正義であるとスネークに説得するように。

 

「裏切り者を探し出すことが、キヴォトスの平和に直結します。いかがでしょう、連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)としてご理解いただけますと幸いなのですが……」

「ナギサ。そう、うまくはいかない」

 

 彼女に背を向け、テラスからトリニティを一望する。事はそう単純ではなくなっている。スネークは直感していた。

 

「キヴォトス全体の平和に繋がるような条約を、たった数人、それも学生が阻止できるとは思えん」

 

 テロ、というものには金も時間もかかる。人数が少なければ少ないほどにそれは増していく。確かにナギサが疑う通り、裏切り者がいるのかもしれない。だが、このキヴォトスにおいて国家とも呼べる存在である学園を、たった一人で転覆させられるだろうか? 答えは、否。或いは、同じ蛇の運命を背負った者ならば。

 けれどそれは、考えすぎだろう。

 

「それにだ。君は一つ、勘違いをしている」

「……勘違い?」

 

 スネークは頷くと、はっきりと言ってみせた。

 

「俺はみんなの先生だ。君も、ミカも、補習授業部も、みんな俺の大切な生徒なんだ」

 

 ナギサは言葉を失う。けれど、すぐにまた表情を冷酷なものに戻した。

 

「たとえ、相手がテロリストでも?」

 

 スネークは答えない。答えない事こそ、肯定だった。

 彼は踵を返すと、テラスから去って行く。

 

「俺は俺のやり方でやる」

「そうですか。……先生、時に。ゴミを細かくして捨てるのが難しい時は、箱ごと捨てるのも手の一つ……そう、思いませんか?」

「いや、思わないな」

 

 キッパリと彼女の思惑を否定する。

 

「先生、もう一つ。試験は基本的に私達の掌の上にあります。テストの内容が変わったり、試験場所が変わったり、難易度が変わったりですとか……」

「肝に銘じておこう」

 

 それだけ言うと、スネークは今度こそテラスから消える。それをナギサは、ただ見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人、スネークは夜の街を歩く。どうにもタバコが吸いたい気持ちが抑えられない。ここがキヴォトスで、酒とニコチンに厳しい街で良かったと思う。そうでなければ買っていただろう。

 

『素直じゃないね』

「ナギサか。ありゃあ、ある意味隠し事には向いてないな」

 

 わざわざ彼女は言っていた。妨害をする気だから気をつけろ、と。本当に妨害するつもりならば、相手に塩を贈るようなことは言わないはずだ。

 それでも言ってしまうあたり、やはり彼女の本質は誰かを信じたがっている。だからスネークは、ナギサを信じる。例え妨害して来ようとも。それらを跳ね除け、ナギサに自分達を信じさせる。それが、先生として自分にできる事だから。

 

『君もだよ、スネーク』

「俺か? 俺はちゃんと言ってただろう」

『わざわざ挑発するように言わなくても良いのに、まったく……ま、それも君らしいっちゃ君らしいけど』

 

 本当に人を信じられなかった時。人を信じることを教えてくれた相棒が、そう言っている。スネークは苦笑する。

 これからが大変だ。なんせスネークは、補習授業部の皆を信じつつ、ナギサの信頼を勝ち取りつつ、エデン条約の裏で暗躍する者を探さなければならないのだ。

 だが、だからといって諦めているようじゃ伝説の英雄は務まらない。まずは合宿のことを考えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ステルス迷彩のバッテリーが切れると、一人の男が姿を現した。

 連邦捜査部(S.C.H.A.L.E)の先生によく似た男。しかし右目に眼帯をした、蛇の始祖。或いは、起源。

 ジャック、或いはBIGBOSSと呼ばれた男。

 

「ここでバッテリー切れか……」

 

 装着したステルス迷彩を見てみれば、バッテリー残量を示すゲージが小さく赤く光っている。ミレニアムの試作品らしいから、バッテリーが長く持たないのが難点だ。

 とりあえず装置を外してポーチに収納すると、本来の彼らしく慎重に、それでいて素早く行動する。

 恐ろしいまでに洗練された潜入技術。それは彼を象徴するものだ。

 アリウス自治区。キヴォトスの連邦生徒会ですら手の及ばぬ、下手をすればブラックマーケットよりもタチの悪い場所。そこにスネークはいた。

 

 裏路地に入り、迂回しようとして巡回の学生達がやって来る。すぐさまゴミ箱の中に隠れると、それをやり過ごす。

 

「セクション1異常なし」

「待て、ダンボールだ。中を確認しろ」

 

 ギョッとした。少女達はガスマスク越しにダンボールに向け銃を構えると、一人を差し出して中を確認させる。まるでダンボール箱の中に脅威がいるかもしれないといった行動だ。

 中を開け、何もないことを確認すれば彼女達はクリア、とだけ言って去って行く。完全に見えなくなると、ジャックはゴミ箱の蓋を少し開けて周辺を確認した。誰もいない。

 

「ダンボール箱に安心できない時代か……こりゃたまったもんじゃないな」

 

 思わず苦笑し、彼はゴミ箱から這い出ると、そのままアリウスの戦場へと姿を消した。

 

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