先日の歓迎会を終え、ついに今日から本格的にアカデミア生活が始まる。前日に各施設を周り、慣れない船での移動により疲労が抜けきれておらず、欠伸を噛み殺しながら零士は学園へ登校する。
学園前に到着し、改めて学園を見上げる。
(しかしデカいな)
校門をくぐり進んでいくと、目の前に2人のブルーの男子生徒が立っていた。1人はメガネをかけており、もう1人はホウキのように髪を逆立ている生徒だ。
「昨日はどうやら怖気づいたようだな。あの落ちこぼれは怖気ず来たが、お前は負けるのが怖かった様だな。所詮はイエローの生徒だ、これからは身の程を弁えて生活することだな」
はははっ、と2人して笑っている。
「学園の規則にも書いてあるけど、深夜のデュエルフィールドの無断使用、しかもアンティルールでの掛けデュエルは禁止されている。破れは下手したら退学もあり得るのにわざわざいくかよ。これからの3年間をドブに捨てるわけないだろ。」
零士のド正論に、大笑いしていた2人は押し黙るしかなかった。
「それにデュエルを申し込んだのは万丈目だろ、なんでそこまで威張れんだよ。文句があんなら自分で挑んで来い。いくらでも受けてたつ」
そう言い放ち、2人の間通り抜けて教室へ向かう。
本当にくだらない。メッセージを送った本人に言われるならまだしも、万丈目にくっついている取り巻きが威張るのは違うだろう。ただエリートという自覚なのか、いや驕りという方が正しいか。ここの生徒はそれが根強く蔓延っている。エリートであることに胡座をかいて他者を蔑める。くだらない連中だ。
アカデミアの授業では、基本的に高等部で習う5教科の他にデュエルに関しての授業も習う。そして今まさにモンスター、魔法、罠についての説明を明日香がクロノス教論に質問され答えている。
「さすがシニョーラ明日香。エリートであるあなたには簡単な質問でしたノーネ」
クロノス教論は軽く見渡し、丸藤翔に質問を飛ばした。
「次は、セニョール丸藤。フィールド魔法についーテ、説明をお願いしまスーノ」
当てられた翔はフィールド魔法について、説明しようとしたがあがり症なのか、まともに答えることが出来なかった。
クロノス教論は落胆し翔を座らせる。お決まりの様にブルーの生徒からヤジや嘲笑が起こる。
クロノス教論の授業を聞きながらテストに出そうなとこをチェックやメモを取っていく。
(なんだか、新鮮だな)
やっていることは学生時代の頃と同じだが、自分の好きだったデュエルについて学んでいく。そんな生活に言葉に出来ない不思議な感覚を感じていた。
放課後、校舎を出てすぐの広場で近くの岩に腰を掛ける。目の前にはデュエルに負けたブルーの生徒達が倒れている。よくある負けた相手が残す捨て台詞を吐き、その場から退散していく。
「こんなもんか」
零士は小さくこぼした。いくらエリートと言っても攻撃力を上げればいいと考える者が多い。この時代は特にそれが顕著だ。別に攻撃力を上げることは悪いことではない。力こそ正義という言葉がある様に、必要としてるのは工夫だ。ただ攻撃力を上げるだけで終わらせず、そのカードを活かすための工夫が、零士の元いた時代と比べると酷なのは重々承知の上だが。
「物足りねぇな」
思わず呟く。とても渇く、もっと心躍るデュエルをしたい。勝とうが負けようが心の底から満足できるデュエルをしたい。すぐにハッと気を取り戻す。昔の悪い癖が出てしまった。
デュエルディスクをしまいイエロー寮に戻ろうとした時、どこからともなく拍手の音が聞こえた。その方向を向けば三沢が立っていた。
「あれだけの人数を相手に見事なデュエルだった流石だな」
「あぁ、ありがと。だがあの程度の相手ならあんたも軽くあしらえるだろう」
「そんなことはないさ、相手はブルーの生徒だ。そう簡単にはいかないさ。・・・・・・しかし、どこか不満そうだな」
驚いた。顔に出ていたのか、零士は思わず口元を抑える。確かに挑まれたデュエルは全て勝った。しかし、どこか気持ちは沈んだままであった。それが意図せず顔に出ていたのか。
「自分の部屋に戻って頭冷やしてくる」
イエロー寮に戻ろうと歩みを進めたとき。
「それなら新しく調整したデッキの相手をお願いできないか、気分転換になるかもしれないし。君からの意見も聞いてみたいと思っていたんだ」
思いがけない提案に、ニヤリと笑ってしまった。
「いいね、場所はどうする?ここでやるか?」
「いや、時間も遅いし寮まで戻ろう。寮の近くに適当な広場がある、そこでやろう」
そうして、2人は寮へと戻って行った。
零士達が去った後、デュエルしていた場所を上から見下ろせる場所に1人のブルーの女子生徒。
「ふふ。彼、面白そうね」
銀色の長髪を靡かせ、獲物を狩る獣の様に笑う
「ここら辺でいいだろう」
イエロー寮に帰り、近くの適当な広場に零士と三沢はお互いに向き合う様にして立つ。三沢は珍しい複数のデッキ所持者である。各属性をテーマにデッキを組み、相手にのデッキに合わせて戦う。基本は自分なりのデッキを作り上げ、そこから足したり削ったりしていく。そうすることによって、その人なりの特色が出るデッキに仕上がる。複数所持も悪くは無いが、デッキによって戦術や回し方も変わっていく。その結果、中途半端なデッキになってしまう。だからこそ自分らしい戦い方を見つけ、それを磨いていくのが1番いい。
「準備はいいか?」
「あぁ。いつでもいけるぜ」
お互いに構える。
「「デュエル!」」
「先行は俺からいかさせてもらう、・・・ドロー」
先行は三沢からだ。
「俺はシャインエンジェルを召喚」
三沢の場に二対の羽を生やし、白いキトンを着たモンスターが現れる
【シャインエンジェル】
星4 光属性 天使族 ATK1400
「さらにカード2枚を伏せターンエンド」
場に[シャインエンジェル]伏せカード2枚、無難な出だしである。
「俺のターン、ドロー」
引いたカードを含め手札を見て動き出す。
「俺はインフェルニティ・デーモンを召喚」
『インフェルニティ・デーモン』
星4 闇属性 悪魔族 ATK1800
「そのまま、インフェルニティ・デーモンでシャインエンジェルを攻撃」
零士の出した悪魔が、三沢の場の天使に襲いかかる。
「罠発動、ガード・ブロック。自分へのダメージを無効にし、デッキからカードを1枚ドローする。」
それだけでは終わらない。
「さらに戦闘破壊されたシャインエンジェルの効果により、デッキかコーリングノヴァを特殊召喚する」
現れたのはまるで、クリスマスの時に飾るリースの様な姿だ。
「そう簡単にライフは削らせない」
その言葉に零士はニヤリと笑う。それもそうだ、相手は入試試験で一位をとっている首席だ。そうでなければ面白くない。
「無の煉獄を発動。デッキからカード1枚を引き、このターンのエンドフェイズに手札を全て捨てる。さらにカード2枚を伏せターンエンドだ」
[無の煉獄]の効果で手札3枚を墓地へ送る。
(さぁ、何が出てくる)
零士はワクワクしながら、三沢にターンを渡す。
「俺は、フィールド魔法。天空の聖域を発動」
三沢の後ろに巨大な神殿が建つ。[天空の聖域]は天使族での発生する自分への戦闘ダメージを0にできるフィールド魔法。天使族中心のデッキで間違いない。
「さらに、天空の使者ゼラディアスを召喚」
【天空の使者 ゼラディアス】
星4 光属性 天使族 ATK2100
さらに高打点のモンスターも出してきた。星4の基本的な打点は1800だ、それ以上の打点となるとゴブリンシリーズの様にデメリットが存在する。[ゼラディアス]も[天空の聖域]が無いと自壊してしまうモンスターだがデメリットはそれだけだ。
「バトルだ!コーリングノヴァでインフェルニティ・デーモンを攻撃」
(デーモンより攻撃力が低いのに攻撃してきたか、自壊が目的か!)
[インフェルニティ・デーモン]に攻撃してきた[コーリングノヴァ]は掴まれ、そのまま真っ二つに引き裂かれる。
「破壊されたコーリングノヴァの効果によりデッキから
『
星5 光属性 天使族 ATK1900
「
[パーシアス]の放った光弾が[インフェルニティ・デーモン]に風穴を開ける。
零士
LP4000→3900
「パーシアスで戦闘ダメージを与えた時デッキからカードを1枚ドローする。さらにゼラディアスで直接攻撃。」
零士
LP3900→1800
(一気にライフを減らされたか、だが)
「戦闘ダメージを受けたとき、ダメージ・ゲートを発動。受けたダメージ以下の攻撃力を持つ、墓地のモンスターを1体を特殊召喚する。蘇れ、インフェルニティ・デーモン!」
「さらに、手札0でインフェルニティ・デーモンを特殊召喚したとき、デッキからインフェルニティと名のついたカードを手札に加える。」
先ほど破壊された、[インフェルニティ・デーモン]が悪魔らしい高笑いをしながら再び場に戻ってきたが、
「罠発動、天罰。手札1枚を墓地へ送り、相手モンスターの効果を無効にし破壊する」
効果を発動しようとした[インフェルニティ・デーモン]の頭上から雷が落ちてきて、[インフェルニティ・デーモン]は真っ黒な灰へと変えられてしまった。
「ちっ、そう簡単にはいかないか」
[インフェルニティ・デーモン]の効果を止められた零士は思わず舌打ちを打ってしまう。
「君のデッキは確かに強力だが、初動を止めてしまえば動きを封じられると睨んだのさ」
三沢の言う通りである。インフェルニティは手札0のときに、強力な爆発力を秘めているが、初動を止められてしまうとそれ以上動けないのだ。まさに諸刃の剣である。
「俺はパーシアスをリリースし、手札から天空勇士ネオパーシアスを特殊召喚。」
【
星7 光属性 天使族 ATK2300
「さらにネオパーシアスは自分と相手のライフの差だけ、攻撃力を増加させる」
【
ATK2300→4500
「カードを1枚伏せターンエンドだ、さぁ君のターンだ」
厄介なモンスターが出てきたな。かの究極竜と同じ攻撃力。さらに戦闘ダメージを与えると手札を補充でき、さらに貫通持ちだ。下手な壁を立てても破壊されるだけでなくさらにライフ差が開き攻撃力を上げるだけになってしまう。
場にはモンスターは存在せず、伏せカードは一枚だけ、次のドローしだいにより負けが確定する。かなりまずい状況であるのにも関わらず、零士は笑みをこぼしてしまう。
デッキに手を掛ける。
「俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードを確認し、勝利を確信する。
「俺はカード1枚をセットして。罠発動、インフェルニティ・ブレイク。墓地のインフェルニティ・ミラージュを除外し、相手の伏せカードを破壊する」
三沢の場にある1枚の伏せカードを破壊される。どうやら伏せていたカードは[神罰]の様だった。やはりな、
「くぅ・・・だが攻撃力4500の前では、並大抵のモンスターでは超えられないぞ」
確かに4500の打点はそうそう超えられない。しかしそれはまともに戦う場合である。
「さっきセットしたカードを発動。強欲な壺、デッキからカード2枚をドローする」
相変わらずイカれた性能のカードである。
「俺は手札1枚を墓地へ送り、D・D・Rを発動。除外されているモンスターを特殊召喚する。戻ってこいインフェルニティ・ミラージュ」
「インフェルニティ・ミラージュは自身をリリースして、墓地のインフェルニティ2体を特殊召喚する」
しまったと驚く三沢。
「わかってる様だな。俺が墓地から召喚するのは、インフェルニティ・アーチャー2体。能力の説明いらないな、とどめだ!」
2本の矢が三沢の身体を貫く。
三沢
LP4000→0
「くぅ、やはり強いな。あのまま押し切れると思っていたのに」
「あんたもなかなか強かったよ」
お互いに讃え合い固い握手を交わす。その後、部屋に戻り。意見を言い合いながら親睦を深めていった。
相変わらず描写の難しいのなんのと。悪魔族相手なので天使族で安易に対比をつけてみました。