領域展開
それは術式の最終段階であり、呪術の極致と呼ばれる領域
己の生得領域(己の心の中)を結界という形で体外に創り出して相手を閉じ込め、その結界に術師本人の生得術式を付与する事で術式に基づく攻撃を必中とする結界術の一種
であるが、現代の呪術師には、領域を使える者は数え切れるほどしか存在せず、むしろ呪霊のほうが使える存在が多くいるのが現状
悟「領域っておい…」
星弦「初めて見たぞ…」
初めての領域に身構えるふたりを前に、宗介は笑みを浮かべながら説明する
宗介「この領域の必中効果。それは足元の血溜まりから対象に穿血の集中砲火が放たれ蜂の巣になるまでそれが止まない……だったらよかったんだけどね」
悟/星弦「「へ?」」
宗介「生憎まだまだ未熟だから、この領域には必中効果がないんだよね」
悟/星弦「「なんだそれ!?」」
宗介のカミングアウトに思わずずっこけるふたり
悟「脅かすなよな!」
星弦「領域なんて使ってくるから思わず身構えちまっただろうが!」
宗介「いやいや逆に考えてみてよ。まだ呪術を習って3年未満の8歳児が完全な領域展開なんてできるわけがないじゃないか(だが、必中効果がない代わりに閉じ込めることは出来ているのは及第点かな)」
星弦「いやそれ逆に言えば3年未満で未完成とはいえ領域が使えるってことだろ!?(8歳で領域って…もしかしたらこいつ呪術師の歴史上最も早くに領域会得したんじゃ…)」
悟「お前さっきまでの自分大した事ないムーブ何だったんだ!?むしろお前が一番やばいだろ!(やっべ、マジで焦ったわぁ…これが必中効果ありなら普通に死んでたわ)」
宗介「私これでも術は完成した物を実戦で使いたいこだわりがあってね。だから本当はこんな不完全で不細工な領域、とてもじゃないが使いたくなかったんだよね(とか言いつつふたりとも領域を使った瞬間、瞬時に落花の情で必中効果から身を守ろうとしたな…悪くない反応速度だ)」
領域の必中効果の対処法はいくつかあるが、その一つに領域から放たれた攻撃自体なら呪力で防御する事が可能であり、これを発展させたものが御三家秘伝の領域対策『落花の情』であり、これは自身の周囲に呪力を纏い、敵の攻撃が触れた瞬間に呪力を解放して迎撃して身を守るカウンター技である
初めての領域だというのにそれを脊髄反射で発動してみせたのは、素直に感心する宗介
悟「完璧主義者かよ…」
宗介「でも領域を使うメリットとして、術者の潜在能力を高めること、後は領域内ではあらゆる術式効果を中和する効果がある…つまり、今の君になら私の攻撃は届くということだよ」
悟「!」
術式の中和
これにより悟の無下限呪術の不可侵は破られた
宗介「つまり…今この場において、私は君達よりも強い!」
その瞬間足元の水溜りから血のレーザーが放たれた
悟「!」
星弦「『鵺』!」
悟は飛んでくる攻撃を走って回避し、星弦は自身の式神、鵺を顕現させその背中に乗り空中へ回避した
血のレーザーだけでなく血の弾丸も襲って来ており、それが悟の身体を貫くには至らずとも、かすり傷を作ることは出来ている
悟「(たくっ…傷なんて出来るのなんて、いつ振りだ?)」
明らかに不利な状況に陥っているはずの悟だがその表情は喜びに満ちていた
自分にとって周りの人間は等しく下であり、自分に並ぶ存在などこれまで誰一人出会ったこともなかった
熟練の呪詛師(呪術を犯罪にもちいる存在)に襲われた時ですら余力を残して勝ったこともある
その現状に悟はある種の孤独感を抱いていた
そんな自分が、今こうして傷つけられるだけでなく、死ぬかもしれない場面に立ちあっている
その事実に悟はこれ以上無いほど充足感を味わっていた
悟「(やめだ…余裕いっぱいなんて立ち回りも、プライドもへったくれも捨てて、泥臭く、全身全霊で相手してやろうか!)」
そう心に決めた悟はなんと、飛んでくる血のレーザーや血の弾丸が向かってくるのを無視して、領域の主 宗介に向け駆け出した
飛んでくる攻撃全ては避けられない攻撃にはその箇所に呪力を込めてガードし、避けれる攻撃にはギリギリで回避し、宗介のもとに辿り着くまでに血だらけになりながらも飛び込む
突然だが、領域に対抗する手段はいくつかある
最も有効なのは領域には領域を当てること
これは簡易領域のような領域展開の下位互換でも有効であり、領域の押し付け合いとなる間は必中効果は中和される
その間どちらかの領域が相手の領域を飲み込むことができれば勝ちではあるが、それとは別に、領域の主に領域を維持できないほどのダメージを負わせることでの領域破壊も手段としてあげられる
宗介の領域は未完成である為必中効果はなく、悟や星弦は領域が使えないため宗介の領域に対抗することは出来ない
ならば今取るべき手段は2つ
一つは領域を維持するにも呪力がいるため、呪力切れを起こすまで領域内で生き延びること
だがこれは勝率が低く、悟は逃げずもう一つの方法を選んだ
それは、領域が維持できないほどのダメージを宗介に負わすということを
悟「!」
悟の呪力が篭った一撃を受け止める宗介
互いに子どもとは思えない呪力を持ち合わせており、互いの打撃の一撃一撃が勝敗を大きく作用する
それをわかっているからこそ、悟はなんとしても全力で拳を当てたがり、宗介はそれを全力で防ぐ
悟「くらえよ!」
宗介「くらわせないよ!」
その間も悟を襲う血の攻撃、だがそれを悟は無視して戦い続ける
一方の宗介も攻撃こそくらってはいないものの実戦での初領域展開に加え、まだ慣れてない領域使用時の呪力消耗、維持に集中したいにも関わらず攻撃してくる悟に呪力ロスが増え少しずつ領域の維持が困難になってきている
星弦「漁夫の利みたいで悪いが『満象』」
そんなふたりを上空から鵺越しで見下ろしていた星弦がゾウの式神 満象を顕現させそれをふたりの頭上に落とす
悟/宗介「「!?」」
満象の存在に気がついたふたりはすぐに後ろに飛び退いた
だがそれを見越していた星弦は電気性質を持つ鵺を宗介が地面に降りる直前を狙い激突させた
宗介「ぐぅ!」
咄嗟に落花の情を発動させ鵺の激突に対する攻撃は防げたが鵺の纏う電撃までは防ぎきれずダメージを負う
その直後だった
宗介「!」
満象の鼻から圧縮した水のレーザーが放たれ、それが宗介の肩を貫く
これを受けた宗介は領域が維持できぬほどのダメージを負い領域が解かれるのだった
一方の星弦は鵺と満象に宗介への追撃をやらせつつ、自身は鵺から飛び降り悟に殴りかかる
悟「そこは領域の主を狙わないんだな!」
星弦「まあ確かに普通はそうすべきだろうな。だが俺は上から見ていた。あいつは領域の維持に神経使ってたのをな。あの分じゃ呪力切れになる前に自分から解くか維持できなくなるかのどちらかだったからそっちは俺の式神を間髪入れずにぶつけることにした。だから今のうちにお前にも攻撃を当てられるうちに当てておくつもりだ!」
星弦と悟
ふたりの少年は領域が切れるまでの僅かな時間
互いに殴り合う
星弦「ぐっ!」
悟の拳が星弦の胴体を殴りつけると
悟「ヴェ!」
星弦の拳が悟の顔面を思いっきり強打した
星弦/悟「「!?」」
その直後、星弦と悟の腹部を血のレーザーが貫いた
悟「(これ…は…!)」
星弦「(せん…け…つ!?)」
宗介「(フフッ…ただで…は、やら…れは…しないさ…)」
そう、領域が解かれる直前に宗介は赤血操術の奥義『穿血』を放った
それも星弦が背を向け悟と身体の位置が重なるタイミングを瞬時に狙い放った
領域は使用後、使用者の術式が一時的に焼き切れ使用不可となる
だからこそ領域が切れる寸前に悪あがきのつもりで放ったのだった
そうして宗介の領域が解かれた今
悟「はぁ…はぁ…はぁ…(うわ…こんなに血まみれになるなんて経験…初めてだな…)」
星弦「うっ…(やべ…もろにくらった…さっさと治療しなければ出血多量で死ぬな……)」
宗介「はぁ…はぁ…(初の実戦導入にしては及第点かな…お陰で今術式焼ききれてるけど…)」
三者共に息を荒げ、身体も負傷し血を流している
既に立っているのも精一杯であるが、それでも降参宣言をする者は居ない
星弦「…あのさ…一つ提案があるけどいいか?」
悟「提案?」
星弦「ああ…真面目な話…これ以上やったら…多分俺達死ぬと思う」
悟「…かもな…」
星弦「だからさ…次の一撃……それぞれの攻撃を最後にお開きにしないか?…でなきゃマジで死ぬ…最悪『相伝持ちの御三家次期当主全員死亡』になりかねない」
宗介「御三家史上最悪の事件になりそう」
星弦「とにかくだ…その最後の一撃を受けても、立ってられたやつが勝ち…ってことにしないか?」
悟「はっ!シンプルな勝利条件だな!いいぜ、乗った!!」
宗介「私もその提案に賛成だね。負傷してなくても術式使えないからね」
星弦の提案に賛成した悟と宗介
互いに見合いながら拳を握りしめる
悟「…正直さ……俺って自分こそが最強だって自惚れてた」
星弦「いきなりどうした?自分語りなんかしてよ」
悟「いいから最後まで聞けって…だからさ…今日お前達を見て、俺の中でずっと違和感があった…それがなんなのか確かめる為に、お前達と勝負してさ…ようやくこの違和感の謎がわかった…」
宗介「……」
悟「お前らは、俺と肩を並べられる力を持った奴らだってな。嬉しかった…生きていても、退屈さを感じてばかりだった…お前らと戦って…その退屈が裏返る気がした…まさかこんな身近に、俺と渡り合える奴が、それもふたりいた!」
星弦「……最強ゆえの孤独…か…」
宗介「ははっ………数百年ぶりの六眼持ちの君にそう言ってもらえるなんて光栄だね…」
悟「だからさ…この戦いが終わってもよ。またやり合わないか?」
宗介「…それは構わないよ。今私が目指しているのは、無下限呪術を領域を用いずに破る方法の模索だから…でも流石に何度も戦うとなると家の連中がうるさいからどうしようか」
星弦「いやだったらよ。友達になれば良くないか?」
悟/宗介「「とも…だち…?」」
星弦「(……ああ……まあ…御三家じゃ珍しくないか)仮にも御三家の次期当主が戦う目的だけで会うなんて家の奴らが騒ぐなら、次期当主としてじゃなく、友達として会いに行ったってことにすれば良くないか?」
星弦の言葉を聞いたふたりは少し考える素振りを見せ
宗介「友達…か……考えてみれば…私、一人もできた事なかったな…」
悟「まあ環境が環境だからな…」
星弦「んじゃあ!今日から俺達は友達だ。次からは互いに会いに行く時は、御三家の次期当主としてじゃなく、友達として会いに行こうか!」
その言葉とともに星弦から呪力の高ぶりが発生
続く形で悟と宗介もまた呪力が高ぶった
星弦「そういえば…まだ名前言ってなかったな……俺は禪院星弦」
悟「五条悟だ」
宗介「私は加茂宗介」
互いに自己紹介した直後
星弦「これからよろしく悟、宗介!」
宗介「こちらこそだよ星弦、悟!」
悟「ああよろしくな、星弦、宗介!」
三者共に駆け出す
それぞれが拳に己の持つ呪力を込めた
互いに目を離さず、術式抜きの純粋な膂力と呪力のみの拳と拳をぶつけ合った
その瞬間
黒い閃光が、三者の拳の衝突とともに発生したのだった
呪術には、稀にある現象が発生する場合がある
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み それは平均で通常時の2.5乗の威力を生む
その現象を経験できた者とできてない者とでは呪力の核心への理解度が天と地ほどの差がある
一度決まると術師はアスリートで言う所の『ゾーン』に入った状態となり、一時的にではあるが普段意識的に行っている呪力の操作が呼吸するかのように自然と行われ、圧倒的な全能感を味わうことができる
その現象を呪術師達は『黒閃』と呼ぶ
偶発的に…しかも初めて黒閃を決めた3人だったが、今この場においてそれはむしろ悪手でしか無かった
そもそも子どもとはいえ既に大人顔負けの呪力量を有しており、傷だらけの状態で互いに放った黒閃
星弦が提案したとはいえ、まさかこのタイミングで黒閃を決める事となったのは非常に不味かった
三者の黒閃が決まった瞬間、3人の拳を中心に凄まじい衝撃と共に3人はそれぞれ身体が吹き飛び一人は壁へ、一人は地面に、そして一人は庭の池に落ちていった
3人が黒閃を決めた地面には、まるで強い力が押し付けられたかのような跡ができており、それがいかに強力なものだったか理解できるだろう
ただでさえボロボロの状態で放った三者の黒閃は、むしろ互いを瀕死に追いやる行為でしかなく、全員が死の間際に立つのだった
悟「いやー、死ぬかと思ったな実際!」
星弦「俺の提案で死にかけておいてなんだが、怪我の功名で済んでマジで良かった…」
宗介「どっちかって言ったら災い転じて福となすが近いかな?」
が、それから数分後
死の淵に立たされたことと黒閃を決めたことで呪力の核心を掴んだ三者は反転術式を会得し、それぞれ蘇生させることに成功するのだった
五条悟
自分に並ぶ存在がいたことに歓喜を漏らす8才児
原作通りに強くなっていくはずが思わぬ形で黒閃を決め反転術式を会得
禪院星弦
自身の術式の解釈を広げることでふたりと渡り合えた8才児
実はこの中で非術師もとい世俗のことに一番詳しかったりする為他2名の友達とは?に対して思うところがあった
現時点で摩虎羅と虎葬を除く式神は全て調伏出来ている(後にこの時円鹿使えたんだから能力だけ顕現させれば悟の無下限呪術を中和無効化できた事に気づき悔しがる)
自分の提案のせいで思わぬ形で黒閃を決め危うく相伝持ちの御三家次期当主全員死亡が現実のものになりかけたとはいえ反転術式を会得した
加茂宗介
自分の術式は大した事ないとか抜かしておいてサラッと不意討ち決めたり未完成とはいえ領域を使ってみせた8才児。死にかけたが黒閃を決めたことや反転術式を会得できたことに満足しているが後に反転術式のアウトプットができる事が判明する
研究者や技術者の一面を持ち、呪術に対する好奇心は3人の中で強く(メロンパンの影響?)、また結界術の才能も3人の中で一番持っている
悟や星弦からは『自分がヤバい(才能の塊)と気づいていない最もヤバい奴』と思われている