Tear off the “Reins”
(手綱を引き千切る)

2023年コミックマーケットで出されたACdiscord鯖合同本、「ARMORED CORE Ⅵ Unofficial Discord server REPORT OF RUBICON」に寄稿したSSの加筆修正版となっております。

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このSSはアーマードコア6非公式discordサーバー合同誌に寄稿させて頂いたSSとなっています。

ルビコンの解放者√に進み、ザイレム撃墜を決めたC4-621のあるひと枠をくり抜いたSSとなっております。



Tear off the “Reins”

Tear off the “Reins”

 

 

ザイレムを、落とす。

私はそう選択した。

飼い主であるハンドラー・ウォルターを裏切って。

助けてくれた、シンダー・カーラも裏切って。

 

友である、エアの為に。

 

------

 

 

 

ルビコンの灼けた空を切り裂くように飛翔するザイレム。

“行きましょう、レイヴン”

エアの声が頭に響く。行かなければ。

エアから、“レイヴン”たる私へのたった一つの依頼。

シンダー・カーラを排除する(殺す)

 

彼女を排除し、ザイレム中枢であるメインユニットをハックし軌道を変更、アーレア海にザイレムそのものを水没させるという作戦だ。

 

 

 

アサルト・ブースト起動。頭部のバイザー・ユニットが後頭部から前面へ降りてくる。

 

都市部に当たる区画では、バスキュラープラントへの特攻を防がんとするアーキバス部隊とそれを阻止しようとするRaD製MT部隊の戦闘が繰り広げられていた。

 

 

 

それを無視して上空を飛び、最低限の消費で持ってカーラが居座り、指揮所となっている左舷貯水槽へと突撃する。

傍から見れば無謀としか思えないような作戦だが、これしかない。

 

“レイヴン、あれは”

 

都市部を抜けようと飛行する最中、エアの声が再び響く。ディスプレーに映し出されたのはMTと戦闘するAC。

重量二脚に紫暗色のカラーリング、背に負った長大な砲。あれは。

ざわりと全身が泡立つ感覚。寒気ではない、身体の奥底から沸き立ってくる「怒り」。

 

“V.Ⅱスネイル、オープンフェイスです”

“MT部隊と交戦してるようですね、無視して……レイヴン!?”

 

アサルトブーストの舵を切る。

あの男だけは許さない、生かしておけない、この場で必ず撃墜して殺してやる。あの男は、私の主を、ウォルターを…!

 

------

 

アーキバス製パーツで構成された重量二脚AC「オープンフェイス」。

肩にしたスタンニードル・ランチャーでRaDのMTを屠っていく。

 

「……ルビコンの猿共が」

 

憎々しげに吐き捨てるスネイル。色々と面倒なことになったとでもいうような声色。

オーバーシアーという集団により洋上都市ザイレムが浮上され、その進路はバスキュラープラント。急ぎ停止させるよう動いたアーキバス及びヴェスパー部隊であった。

残っていたヴェスパー部隊が――とはいえ二人のみだが――出動しての戦闘となった。

 

「全く手こずらせ……?」

 

ふいにレーダーに高速接近するACの反応。何事かと目を向ければ、漆黒と赤のAC。表示には、“Raven”と。

 

「おや、ハンドラーの駄犬でしたか……わざわざ死にに来たと見え――」

 

ここに来て乱入者、しかもあのハンドラー・ウォルターの猟犬。少し遊んでやろうとした刹那、警告音。

 

「な」

 

反応する間もなく、衝撃。突き刺さるニードルミサイル。

先の戦闘でACS負荷が蓄積していたオープンフェイスが限界を迎え硬直(スタッガー)した。

 

“しまった、頭に血が上る余りに”

 

思考と回避行動をとる間もなく、ミサイルの追撃。小口径の銃弾も降り注ぐ。

アサルト・ブーストにより距離が詰まり、成す術も無く蹴りが直撃。スネイルの重量級ACが吹っ飛び、壁に叩きつけられた。

 

「この、だけ――」

 

駄犬風情が。ACSが復帰し、行動を開始しようとしたがもう目の前にはACがいる。バイザーを下ろし、赤いセンサーライトが揺らめいているのが見えた。

 

V.Ⅱスネイルはこの瞬間、確かに恐怖を覚えた。

背筋を走る悪寒。圧倒的な殺意と怒りを感じる。

至近距離に肉薄した瞬間、レイヴンのACの背部装甲が展開される。その内部機構からパンタグラフ型の発振器が上にせり上がるように現れ、パルスエネルギーが大きく充填される。

何も出来ないまま死ね、そう言うかのようにダメ押しのアサルト・アーマー展開。オープンフェイスの装甲をパルスの奔流で焼いていく。

 

「こ、の……!!」

 

再びのACS負荷限界突入。オープンフェイスは動けず、されるがままに蹂躙される。

レイヴンのACの左腕。そこに装備された射突ブレードが展開され後方の機構が内部の鉄杭を引き絞る。

下からねじ込むようなアッパーカット。それと同時に大質量の杭が、オープンフェイスの装甲をいとも容易く貫き破壊した。

 

「この、駄犬が……ッ!!」

 

スネイルは咄嗟に脱出レバーを思いっきり引き込んだ。強い衝撃と共にコクピットブロックが排出される。

勢いよく射出されたコクピットブロックユニット。それが地面に叩き付けられてがりがりと地を滑り、ビルに衝突して漸く停止した。

 

 

「まだ、プランは残っている……」

 

「覚悟しておけ、“害獣”……!!!」

 

 

ひしゃげたブロックの隙間から、頭から血を流して負傷したスネイルが飛び去る漆黒のACを怒りに満ちた目で睨む。

 

ヤツは、この私を。企業を殺そうとした。

 

そのツケは確実に払わせる。

 

「貴様は、この私が……確実に殺してやる……!!」

 

 

------

 

 

“……V.Ⅱスネイル、脱出したようです”

 

頭の中でエアの声が響く。逃がしたか。今ので殺せた、そう思ったのに。

ちと小さく舌打ちして、機体を反転させた。殺せたならば死体を拝んでやろうと思ったが、今はそんな暇はない。一刻も早くカーラの元に辿り着かなければザイレムを止められない。

 

再びアサルト・ブースト起動。

 

砲火を潜り抜け、こちらに向かってくる攻撃はいなし、確実に歩みを進める。左舷貯水タンクエリアまで後少し。

タンクエリアへ続く地下格納庫の大穴に飛び込む。あとはそのすぐ右手側に見えるゲートを潜れば目的の場所まで一直線だ、レイヴンが安堵したその瞬間だった。

 

「……ビジター、アーキバスに大金でも積まれたかい?」

 

通信が入る。相手はシンダー・カーラ。

 

“……隔壁が封鎖されました!”

 

エアの叫びが響く。真上に見えていた大穴も、ゲートも分厚い隔壁で封鎖、ロックされた。罠だったと目を丸くしたのも束の間、小型のMTが天井やダクトの穴から一斉に出現。

それらは濃い電磁スモークを炊き、視界も行動も制限しようと畳み掛けてきた。

 

「残念だよ……だが、落とし前はキッチリ付けさせてもらう」

 

大きな溜息混じりのカーラの声が響く。あんなに気さくで、優しかったカーラの冷酷さが鋭く心に突き刺さった事にレイヴンは動揺した。

 

“落ち着いて下さい、レイヴン!隔壁は私がやります、貴方は安全の確保を急いで!”

 

エアの声にはっとして、頭を横に振る。そうだ、ここで閉じ込められて果てる訳にはいかない。

直ぐに頭を戦闘モードに切り替える。この狭さでは機動性は活かせない。ならば。

 

閉所、対多数。

 

エキスパンションユニットの冷却も完了している。そこからレイヴンはこの状況の打開の為の最善策を刹那の瞬間に割り出した。

――コアブロック背部展開。エキスパンションユニットオーバーロード。

再びパルスエネルギーが、アサルト・アーマーとして青白い破壊の奔流を周囲に撒き散らす。

数機の小型MTがそれに飲み込まれ爆散し、電磁スモークがやや落ち着いてきた。だが更に第二波。

また同じ小型MTに加え、ミサイルを満載した四脚MTまで展開される。

 

“封鎖解除まであと少しです、何とか持ち堪えてください!”

 

エアの声に後押しされる。まだ終わってはない、生き残るために最善を尽くすまでだ。

アサルト・ブースト起動。目標はミサイルを乱射する四脚MTだ。

こちらをロックオンして放たれるミサイルをアサルト・ブーストからのクイック・ブーストで左右に切りかえしながら回避し、近距離戦の間合いになったところで鋭い蹴りを見舞う。

吹っ飛びはしたもののMT健在。それならばとそこから更に踏み込む。ストレートのようなパイルバンカーでの刺突攻撃が、四脚MTを今度こそ粉砕した。

 

クイック・ターンで瞬速の反転。後は残った雑魚だけだ。左肩にした六連装ミサイルランチャーをマルチロック。放たれた六条のミサイルが、小型MTに直撃し爆散させた。

 

“残り三機!”

 

まだ居たか――部屋の隅やミサイルのマルチロックを逃れた数機。それらは右手のアサルトライフルと右肩のニードルミサイルで処理。

 

“片付いた様ですね……レイヴン”

 

響く声にやっと息を吐く。無意識に呼吸を止めていたようだ。

心拍数の上昇を感じる。緊張が解けない。

――いや解いてはいけない。まだ目的は達成していない(ミッションは終わってない)

 

“こちらも隔壁の解錠が終わりました。行きましょう”

 

小さく頷いて、機体を上昇させる。ゲートのロックを解除すると、湾曲した通路が見えた。

 

「……流石に小細工が通用するような相手じゃないね」

 

カーラの声が再び届く。想定の範囲内であったかのような声だ。それよりも。

 

「……カー、ラ……」

 

レイヴンが口を開く。

彼女は、ACの操縦以外の機能は殆ど死んでいた。

だがそれも、ウォルターとのリハビリや外部装置によりある程度こなせるようになっていた。

強化人間はACと機体を神経接続させ、脳波で動かすことが出来る。

本来必要ない歩く練習も、声を出す練習も、何もかも全部した。

 

それは、ウォルターの優しさがあったからだ。

コーラルを見つければ、再手術をして普通の人生を歩むことが出来る。それを信じ、ウォルターの猟犬となった。

そして普通の人生のために必要だと、身体を動かし声を発する練習もさせてくれた。

 

「……アンタ、声が……」

 

カーラは驚愕した。初めてレイヴンと直接対面した時は、喋ることは出来なくて端末によるメッセージでやり取りを行っていたからだ。

 

レイヴンには、驚きを隠せない様子で息を飲むカーラの息遣いが聞こえた。

 

「……わた、しは」

「あーきばす、とは……関係ない」

 

咳込みながらも続ける。エアが心配してくれる。無理をするなと制止をかけてくれる。でも。

 

「……私、は……」

「…………友達を、助けたい」

「ウォルたーの、意志に、背いても」

「…………それが、私の……選んだ道、だから!」

 

心に火が点る。

焼け焦げた燃え殻の様な心の奥に、熱いものが宿ってくる。

私は、私自身に火を点ける。

“私”という燃え残った全てに火を点けて、戦う。

 

それが恩人の望んだ事に、宿願に弓を引く行為なのは分かってる。でも、それでも。

これは自分自身の選択だ。少なからずの後悔はあれど、もう迷わない。

 

「だから、わたし、は」

「……カーラ、あなた、を……倒す」

 

はっきりと口にした、宣戦布告。咳き込むと生暖かい血が込み上げてくる。声帯が本調子じゃない。

 

「…………っ、は」

「言うじゃないかビジター」

 

カーラは思わず笑みを浮かべてしまった。

 

無機質、無感情、戦うための機械、そんな印象だった“彼女”が、ビジターが。

自ら自分に掛けられた手綱を引きちぎり今歩こうとしている。己の足で、己の意思で。

まるで親離れじゃないか、そんな事を思いながら口を開く。

 

「……その喧嘩買ってやるよ」

「チャティ!準備しな……“手厚いおもてなし”をしてやろう」

 

そうだ、彼女は選んだ。ならばそれに真っ向から立ち向かってやろう。

 

「……いこう、エア」

 

こちらからエアにはっきりと話し掛けるのは初めてかもしれない。レイヴンは血を拭いながらそう思った。

自分の声で、はっきりと何かを伝えたのも初めてだ。それがましてやあんな喧嘩を売るような言葉になるとも思ってなかった。

解放されたゲートの向こう側の通路へACを走らせた。

 

“……この先にカーラが居ます”

 

通路の終わりには再び分厚いゲートが現れる。ロックを解除しながらエアの声に頷く。もう覚悟は決めた。

 

------

 

「……来たねビジター」

 

開け放たれたゲートの向こう、上下にも広い貯水タンクエリアの上段に二機のACが見え、カーラの声が響く。

 

「アタシのモットーを教えてやる――“生きてるなら、笑え”だ」

 

シンダー・カーラの乗機「フルコース」。

チャティ・スティックの乗機「サーカス」。

二機のACがレイヴンの前に立ち塞がる。

 

「アンタの選択、聞き届けたよ」

「……うん、わたしは、選んだよ」

「ビジター……その選択に、後悔は無いね?」

 

カーラから問いかけられた。降伏するのならば今のうちだという一握の慈悲。でもそんなものはもう要らない。自らの足で立ち上がり、広がる光景を見た今だからこそ、私は“選択”しよう。

 

「……ないよ、カーラ」

「あなたを倒して……ザイレムを、止める……!」

 

「……よく言った」

「ならばその選択、楽しませてもらう」

「アタシの“フルコース”、腹一杯になるまで楽しみな!!」

 

灼けた空を舞うレイヴンは選び、自らに掛けられた手綱を、自らの意思で噛みちぎった。

ただ一人の友人の為に。

 

戦いが始まる刹那、思い返すのは主の言葉。

 

“火を点けろ、燃え残った全てに”(Feed the Fire, Let cinder last burn.)

 

 

 

私は私自身のために。

誰かの為に、火を点ける。

その先に何が待っていても構わない。

それが私の、選択だ。

 

 




Lo4d3r 4++

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2C-2000 Crawler

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Assault Armor

RF-025 Scudder
PB-033M Ashmead
EL-PW-01 Trueno
BML-G2/P03-MLT

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という訳で今回のSSでした。挿絵等も頂きましたがそちらはXの方で公開させていただきます。
ほんのちょっとのきっかけで冬コミに寄稿させていただきまして主催の水無月氏と立夏氏には感謝してもしきれません。この場を借りて御礼申し上げます。
夏コミでも二冊目が出るそうで、私も(運が良ければ)参加させて頂きます。

改めて今回は参画させて頂きましてありがとうございました。

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