ブライト博士と学園都市   作:架空柿

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 のーこめ


成果

 ブラックマーケットから逃避行すること四十分。ようやくマーケットガードは見えなくなり、安全圏までもう少しとなる。覆面を被ったままの走行はキツイ以外の何者でもなく、ブライトは覆面を脱いだ。

「きっっつ! あいつらもしつこいんだよ……」

「まあまあ先生、まだ急がないと直ぐ来ちゃうよ」

「ひえぇ……」

 今のブライトの体に運動はキツイ。そんなブライトに救いの手が差しのべられることは無慈悲にも無く、走って行くしかない。スピードが着々と落ちてゆくなか、生徒達は若さからか全く息も上がっておらず、シロコは道案内までしていた。

「こっち、おいで」

「あの、シロコ先輩……覆面脱がないの?」

「低酸素運動でも……してるの? 意識高いね……」

「天職感じちゃったて言うか、もう魂の一部みたいなものになっちゃって、脱ぎたくないんじゃな~い?」

「強盗が天職か……あんた中々にイカしてるな……」

「そ、そうかな……」

 シロコはほんの少しだけ照れる様子を見せながら、渋々覆面を脱いだ。

 その後も走り続けて凡そ十分。とある歩道橋の上でのアヤネが安全地帯の到着を告げた。ブライトはその場に倒れ、息を整えた。

「先生、運動の後急に止まるのよくない」

「わぁってるよ! 十キロを五十分だぜ? 倒れさせてくれ……」

 ブライトはその場に横たわったまま、暫く動かなかった。

「じゃ、シロコちゃん。集金記録の書類出してくれる?」

「分かった」

 シロコはいつも抱えているバックの中を漁り、大量の紙幣と共に頼まれた書類を取り出した。紙幣は宙を舞い、地面へと落ちて行く。

「あーあ……そっちも行ったのか」

「ち、違う……このお金は銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで……」

「犯人は大体そう言うんだよ」

「違うの……」

「まあまあ先生、そんなにシロコちゃんを虐めないであげて。どれどれ……うへ、軽く一億はあるね」

「有言実行だなこりゃ」

「やったあ! なにボーッとしてるの! 運ぶわよ!」

 そう言いながらセリカは地面に落ちた紙幣もかき集める。まるで草を抜くかのように素早く、丁寧に。

 セリカの言動から、その場にいる者はセリカの行わんとしていることが予想でき、アヤネが異を唱えた。

「そのお金、使うつもりですか!?」

「アヤネちゃん、なんで? 借金を返さなきゃ!」

「そんなことしたら……本当に犯罪だよ、セリカちゃん!」

「流石に私のお家でもそんなことするやつ…………とにかく、君に豚箱デビューは早すぎるぞ?」

「だから何!? このお金はそもそも、私たちが汗水流して稼いだお金なんだよ! それがあの闇銀行に流れてったんだよ! それに、そのままにしておいたら、犯罪者の武器や兵器に変えられてたかもしれない! 悪人のお金を盗んで、何が悪いの!?」

 少々理に叶ったセリカの訴えに一瞬沈黙が流れた。確かに悪事を未然に防いだという面では良いのかもしれない。自分等が稼いだお金を取り返した。それだけなのだ。ノノミはセリカを肯定した。

 しかし、そんなセリカの肩をホシノが後ろから優しく叩いた。

「んむ……それはそうなんだけど……シロコちゃんはどう思う?」

「……自分の意見を述べるまでもない、ホシノ先輩が反対するだろうから」

「私も同じく」

「流石はシロコちゃん。私のこと、分かってるね~。それに先生も、理解してくれてありがとね」

 ホシノは小さく咳払いを行い、セリカの前へと立ち、顔を見つめる。今までにない、真剣な面持ちで。

「私達に必要なのは書類だけ。お金じゃない。今回のは罪人の犯罪資金だから良いとして、次はどうする? その次は?」

 ホシノの問いを、セリカはどうも答えることは出来ずに、唯黙る。

「こんな方法に慣れちゃうと……ゆくゆくは、きっと同じことをするようになるよ。そしたら、この先またピンチになった時……『仕方ないよね』とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う……うへ~、このおじさんとしては、カワイイ後輩ちゃんがそうなっちゃうのはイヤだな~。そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ」

 ブライトは驚いた。ほんの数秒の間に、ホシノの中にあった厳しく叱るような雰囲気が近所の愉快なおじさんの雰囲気へと急変したからだ。それは区別のつく人にしかできない、至難の技だからだ。

 ホシノの叱りは続く。それはセリカが嫌いだからではない。むしろ大好きだから。大好きな人が悪事に手を染める事象は誰もが嫌うのだ。そしてホシノは紙幣を置いておくことをその場で決定した。

「うわああっ! もどかしい! 意味分かんない! こんな大金を捨ててく!? 変なところで真面目なんだから!」

「うん、委員長としての命令なら」

「ちゃんとお話の内容を理解してれば納得できる筈だが」

「わたしはアビドスさんの事情をよく知りませんが……このお金を持っていると、何か他のトラブルに巻き込まれるかもしれません。災いの種、みたいなものでしょうから……」

「あは……仕方ないですよね。このバックは、私が適当に処分します」

「……いや、その必要はないかな。皆、覆面被って」

「……! 何者かがそちらに接近しています!」

 ブライトとアヤネの言葉に対応し、慌てて皆覆面を被った。そして何者かが近づいてくる。ワインレッドのコートを羽織った角が生えた少女。その手には得物の赤いスナイパーライフルが握られている。シロコは反射的に銃を向けた。

「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから……」

「……着いてきたのかね?」

「え、ええ……その……た、大したことじゃないんだけど……」

 少女、元いアルは、まるで初めて会った人と話すときのように、口を少し籠らせ、足を震わせていた。

「銀行の襲撃、見せてもらったわ……ブラックマーケットの銀行をものの五分で攻撃して見事に撤収……あなたたち、稀に見るアウトローっぷりだったわ」

 緊張が嘘のように解けていくのが見て分かる。これも自分が新たな尊敬する者と話せている興奮からだろう。

「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世にあんな大胆なことができるなんて……感動的というか」

「……それは良かった! 私達も襲撃した甲斐があったよ!」

「その、私も頑張るわ! 法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂! そんなアウトローになりたいから!」

 ブライトを除く覆面者達は困惑していた。まるで自分達を知らないかのように振る舞ってくる相手に。まるで、相手がこちらの正体に気づいていないかのように。

「そ、そういうことだから……な、名前を教えて!」

「ほう、良いだろう! 私達の名前は……」

「人呼んで、覆面水着団!」

 そしてノノミとブライトは気がついた。非常に面白いオモチャを見つけたと。

「……覆面水着団!? や、ヤバい! 超クール! かっこ良すぎるわ!」

 ブライトは本当にこいつ大丈夫かと思うが、そんなことはどこかへと捨て、見つけたオモチャを弄ることにする。他の者は半ば呆れていた。そしてそんな遊びに、ホシノまで混ざってくる。

「うへ~本来スクール水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面だけなんだ~」

「だから本来の力を出せずに五分もかかってしまった……くぅ! 正装ならあんなところ秒で攻略できたのに!」

「普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に返信するんです!」

「アイドルネームは事務所関係で出せないけど……それなりに売れてるよ!」

「折角ですしこの子のためにも教えてあげましょう! 私はクリスティーナだお¥」

「私はパシフィカざんす¥」

「『だ、だお¥』、それに『ざんす¥』……!? きゃ、キャラも立ってる……!?」

「うへ、目には目を、歯には歯を、無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!」

「な、なんですってー!!」

「しかもしかも、実は正装をすることで力を解放できてね、なんと超能力が使えるようになるんだ! 私は写真を通して対象に干渉できるんだ!」

「な……な……なんですってー!!」

 いちいち反応する様はまさしくシャウティングチキン。三人はそれが面白くて面白くて堪らなかった。

 そんな様子を、他の社員が眺めていた。カヨコが迎えにも行こうとしたが、ムツキが面白がって止めた。便利屋の日常だ。

 十分にも渡るオモチャ遊びを止めたのはセリカ。そうして改めてアビドスとブライトはその場から去った。偶然、バックを置いて。




 思いの外長くなったな……原作一話でこんなに濃いなんてね! こんな濃厚ストーリーを味わえるのはブルーアーカイブ! 皆もやろう! ……この作品読んでるということは大体は既プレ勢か……

当時(?)SCP
Dantensen, DrClef, thedeadlymoose作
SCP-105 - "アイリス"
http://scp-jp.wikidot.com/scp-105
2008
CC BY-SA 3.0

会話について

  • もう少しブライトの台詞を増やして欲しい
  • このまま
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