ブライト博士と学園都市   作:架空柿

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 のーこめ


幼き容姿の魔王、到着

 少しひりついた空気が流れる中、ブライトはいつの間にかに復活していたハルカが視界に写った。何かを小さく連続で呟いている。そうしてハルカとの目が合ったとき、ブライトに向けて不敵な笑みを浮かべてその場を去ってしまった。

「……何だったんだ……まいっか」

 ブライトは再びアコのいる方を見つめる。互いに互いを怪訝に見つめあうアビドスとゲヘナ風紀の間には静寂が漂っていた。

「行政官ということは……風紀委員会のナンバー2……」

「あら、実際そんな大した者ではありません。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして……」

「へぇ……その割にはご主人様は見当たらないが。それにあんたの部下達も若干震えてるし」

「それ、私も思った。どうして?」

 アコは一瞬だけ苦虫を噛み潰したかのようにし、すぐさま平静を取り繕った。

「成る程、素晴らしい洞察力です。先生と確か……砂狼シロコさん、でしたか?」

「そっちの記憶力も中々なようで」

「ありがとうございます。ふむ、アビドスに生徒会の面々だけが残っていると聞きましたが、みなさんのことのようですね。アビドスの生徒会は五名と聞いていましたが、後一人はどちらに?」

「ちょーと、バカンスに行ってるかな。対策委員会委員長は」

「今は貴方の意見を聞いてるのではありません。先生? 少し席を外していただければ幸いです」

「おやおや、冷たいね。お望み通り、外してやるよ」

 ブライトは若干野次るように言葉を吐き捨て、適当な場所に向けて歩みを進め始める。間もなくして背後から会話が聞こえ始め、若干の寂しさも覚えていた。

 そして少し散策すること五十三秒、聞き慣れたショットガンの音がした。急いでブライトが現場に戻ってみると、そこには倒れている風紀委員、そしてアコと便利屋の面々、更にホシノを除くアビドス一同が集まっていた。

「……なーんか見所見逃しちったかなぁ……」

 自害しようとするハルカ、軽く止めるムツキ、驚くアコ。正に混沌が繰り広げられている。

「……やるね」

「申し訳ありません、行政官。視界を遮られた隙に……今からもう一度包囲網を……」

「いえ、大丈夫です。大した問題でもありませんし……それより、面白い話をしますね、カヨコさん?」

「……最初はどうして風紀委員がここに現れたのか、理解できなかった。風紀委員が他の自治区まで追ってくる理由、それも私たちを狙って? こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない」

「ほ~……秘書の独断侵攻、中々に大胆に行動するねぇ……」

 アコは無言を貫いている。肯定とも否定ともとれる無言だ。

「それに、私たちを相手するにしてはあまりにも多すぎるこの兵力。他集団との戦闘を想定していたとすれば、説明つく。とはいえ、このアビドスは全校生徒集めても五人のみ……なら結論は一つ。アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から先生を狙ってここまで来たんだ」

「私……? そんな人気者なの私」

 驚嘆の声が吹き荒れるなか、アコはいたって冷静に、自身の失敗を反省した。まさか目的を見破られるとは、思考の外にあったようだが。

一人反省会を終えたアコが、何か合図のようなものを出すと、多数の方角から増員が向かってくる。

「まだいただなんて……それに、こんなにも数が……!」

「うーん……少々やりすぎたかとも思いましたが……シャーレを相手にするのですから、これくらいあっても困らないでしょうし……」

「私の能力を高く買っているようだが……まあいいや」

 ブライトは“電子の最強部隊”でも出そうかと思ったが、辞めた。それはまあまあつまらないからだ。

 アコがカヨコとの論争のような形で目的を話している。シャーレの予測危険性、条約、ティーパーティー、単純で複雑な、ブライトの嫌いな部類の問題だ。

「……要するに、私の誘拐が目的?」

「私たちがそれで『はいそうですか』って言うとでも思った?」

「……ふふ、やっぱりこういう展開になりますか。では仕方ありませんね、奥空アヤネさん? ゲヘナの風紀委員会は、必要でしたら戦力を行使することもあります。私たちはその判断をすれば、一切の遠慮をしません」

「……へぇ」

 ブライトはそこら辺に落ちていた、風紀委員のものと思わしきピストルを手に取った。もし捕まった場合にそれで頭を撃ち抜けるように、自分に手を出した後悔をさせられるように。

 そんな折だった。便利屋が援助を引き受けてくれた。自身で墓穴を掘るアルに若干の哀れみの目をブライトは浴びせた。

「うーん……まあ、これはこれで想定していた状況ではありましたが……それにしても、ここまで意気投合が早いとは……その点は想定外でした……まあいいでしょう、それでは」

「戦闘だ!」

 戦闘が始まった。風紀委員は相変わらずの連携を取っていたが、その連携もハルカの暴れ馬の如き乱射で乱され、アルの狙撃が着実に戦闘員を削いでいく。ムツキの爆発が場を乱すと、そこに入り込むようにシロコのミサイルやセリカとノノミの一掃が敵を倒していく。ブライトはブライトで、先程のピストルを使い風紀委員をチマチマと倒していた。

「第一中隊、全滅!」

「第三中隊、これ以上の続行は不可能!」

 続々とあがる風紀委員の戦闘不可報告。予想の遥か上を越える戦力にアコは感心していた。しかし分析もしっかりと行い、戦闘終了の令は下さず、そのまま継続をさせる。更なる増員は流石にアビドス便利屋連合にもキツイものがあった。

 そんな時だった、アコの継続令が仇となったのは。

「アコ」

 行政官の名を呼ぶ、身に合わぬ巨大な羽を持ち、頭に王の冠が如き黒と紫のヘイローを浮かべる少女が通信に割り込んで現れた。

「ひ、ひ、ヒナ委員長!?」

「お、ラスボス降臨って感じ?」

「委員長ってことは、風紀委員会のトップ……?」

「い、い、委員長がどうしてこんな時間に……?」

「アコ、今どこ?」

 明らかな動揺を見せるアコに、ヒナは少々気だるそうにアコへと問い詰める。アコは質問を虚言で返すも、それは直ぐに看破されてしまった。何故ならば、現場を生で見ていたから他ならない。

「い、い、い、委員長!? い、一体いつから!?」

「……え……えええっ!?」

 ヒナはその場に立ち尽くし、アコへと怒りを向ける。

「……アコ。この状況、きちんと説明してもらう」

 これまで以上に、アコは冷静を欠かし、見たこともない量の冷や汗を流していた。

「ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナ。外見情報も一致します、間違いなく本人のようです」

「そうだねぇ……アコ的にはかなり焦るだろうなぁ」

 ヒナは相も変わらず桁違いの威圧を放っている。全てはアコへと向けられて。

「そ、その……これは、素行の悪い生徒達を捕まえようと……」

「便利屋68のこと? どこにいるの? 今はシャーレとアビドスと、対峙しているように見えるけど」

 ブライトが辺りを見渡すと、いつもまにか便利屋は居なくなっていた。ブライトが気づく間もなく。

「い、いつの間に逃げたのですか!? さ、さっきまでそこにいた筈……!」

 事実を述べているにも関わらず、状況が状況のために言い訳にしか聞き取れない。ヒナは更に怒りを加速させる。

「え、えっと……委員長、全て説明いたします」

「……いや、もういい。大体把握した。察するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除。そういう政治的な活動の一端ってところね。でもアコ、私たちは風紀委員会であって、生徒会じゃない。シャーレ、ティーパーティー、それに連邦生徒会長。そういうのは『万魔殿パンデモニウム・ソサエティー』のタヌキ達にでも任せておけばいい。詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎してなさい、アコ」

「……はい」

 ヒナによる怒涛の説教。普段から叱られ慣れているブライトでも、その光景には少しの恐怖心を覚えた。

 アコのホログラムが消えた後、ヒナはアヤネのいる方向へと身体を向け、静かに眺める。静寂が再び流れるなか、シロコが最初に口を開いた。

「じゃあ、改めてやろうか」

「ちょシロコ!?」

「ゲヘナの風紀委員長と言ったら、キヴォトスでも匹敵する人物を見つけるのが難しいほどの、強者の中の強者ですよ!」

「だからシロコ落ち着こうか!」

「……ご、ごめん」

 ヒナは静かに光景を見ていた。そんなヒナにアヤネがホログラム状で近づき、交渉を始める。

「こちらはアビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員長ですね。初めまして。この状況については理解されてますでしょうか?」

「もちろん。事前通達無しで他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒達との衝突……けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

「……確かに」

「それはそうかも」

「それで?」

「私達の意見は変わりませんよ?」

「ちょっと待ってください! 便利屋の人達もいない、あっちの兵力は変わってない、私達にはもう先生しか……その先生も、味方も止めるのも大変だし……! こういうときにホシノ先輩がいてくれれば……」

 ヒナは「ホシノ」という言葉に反応した。どうやらヒナはホシノはもう学校から居ないものだと思い込んでおり、今名前が出たことに驚いたようだ。そして、噂をすればなんとやら、張本人の声がその場に響く。

「うへ~、こいつはまた何があったんだが。すこいことになってるじゃ~ん」

「ようよう、主役は遅れてやってくるってか?」

「ごめんごめん、ちょっと昼寝しててね~、少し遅れちゃった」

 相変わらずの雰囲気を醸し出すホシノを、ヒナは好奇の目で眺めていた。かつての面影を感じぬその変化に。

 一方、ブライトは、ホシノが昼寝をしていないことに気がついた。どうにも昼寝したとは思えない眠気を帯びた目、そして若干の強ばり。ブライトは見逃してなかった。

「ゲヘナの風紀委員会かぁ……便利屋を追ってここまで来たの? うーん、事情はよく分からないけど、対策委員会はこれで勢揃いだよ。ということで、改めてやりあってみる? 風紀委員長ちゃん?」

「……一年生の時とは随分変わった、人違いじゃないかと思うくらいに」

「……ん? 私のこと知ってるの?」

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒達をある程度把握していたから。特に小鳥遊ホシノ……貴方のことを忘れる筈がない」

「熱いねぇ、最強が最強を注視していたとは」

「……まあいい、私も戦うために来たわけじゃないから。イオリ、チナツ」

 先程からあまり動いていない二人も、委員長の言葉には動かざるを得ないのか、痛々しく足で立ち上がった。

「撤退準備、帰るよ」

「えっ!」

「ほう、さよならを選ぶか」

 予想外の言葉が飛び出し、驚きの声が駆け巡るなか、ヒナはアビドスの面々がいる方へと身体を向け、深々と頭を下げた。

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。この事については私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する。今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することは無いと約束する。どうか許してほしい」

「……どうか頭を上げてくれ。我々も貴殿の公務を妨害し、申し訳ない」

 互いに頭を下げ合い、謝罪をする。それが終わるのと同時に、逃した便利屋の処遇の質問がイオリから上がったが、ヒナの威圧により、潰されてしまった。

「ほら、帰るよ」

 そう言い残すと、風紀委員達は撤退していった。そして、ヒナはある言葉を先生へと託してから去った。

「……風紀委員会の全兵力、凄い速さでアビドスの郊外へと消えていきました。あれほど大規模な兵力を、一糸乱れずに……風紀委員長、凄い方ですね」

「勿体ない、強い人と戦えるチャンスだったのに」

「「どっかの戦闘民族か(なの)?」」

「うへ~、結局おじさんは状況が全然分かってないんだけど、何があったの?」

「……私達もあまり分からない。それに、ホシノも何処に行ってたの?」

「ごめんごめん」

「はあ……なんたか更に大事になってきている気がします。慌ただしいことばっかりで……分かっていないことだらけです」

「……こんな日は休憩だ! 解散!」

 ブライトは一番に帰宅していった。




 うーん……地の文ムズい!

登場(?)SCP
The Great Hippo作
SCP-2639 - ビデオゲーム・バイオレンス
2017
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2639
CC BY-SA 3.0

会話について

  • もう少しブライトの台詞を増やして欲しい
  • このまま
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