割と早い朝、ブライトはとある雑ビルの中の一つの前に立っていた。見覚えのある生徒が続々と荷物を運びだしてトラックへと載せている様は、正しく引っ越しの準備と言ったところだろう。
「やあ、大変そうじゃないか。手伝ってやろうか?」
ブライトにしては珍しい朗らかな声をあげると、その場にいた者は皆一度、驚愕の声を思わず出した。来るとは予想できていなかったからだ。
「えっ、あ、先生だ! 来てくれたんだね!」
「いやぁ、私達のせいで引っ越すと聞いてね。ごめんね、強くて」
「な、なんで来たのよ! 嫌みを言う為だけに来たの!?」
「はは、ははは!」
ブライトは腰に手を当て、頭が地面に着くのではないかと思うほど、のけ反り、笑う。
「いやいや、悪いね、そんな目的でわざわざ来ないさ、引っ越し先が気になってね。金もないのに何処に行くつもりなのかな~って」
「ま、また別の依頼を求めてちょっと移動するだけよ!」
「……へぇ、ま、いい。じゃ、また何処かで」
「ふふっ……うふふふふっ! もちろんよ! 先生、あなたとは事業のパートナーとして協業するのも悪くなさそうだし。ただ今はうちが忙しくてバタバタしてるから、また今度ね、今度」
「そうか、じゃ、私は少し用事もあるからここで」
ブライトは便利屋の面々に背を向け、後ろに向けて手を振りながら立ち去った。その直後に、便利屋の荷物を載せたトラックの走り去る音がブライトの耳へと軽やかに飛んできた。
暫く歩き、面倒臭くなって瞬間移動した先は、とある病院の一室だった。部屋には現在、一頭と二人の人物が存在し、会話をしていた。ブライトはその会話に無理矢理入った。
「どうもどうも、体調の方はよろしくて?」
「先生……なんでそんなお嬢様な口調なの」
「何となく」
「ははは! 先生まで心配をかけてしまった! 大丈夫大丈夫、ちょっと擦りむいただけだ」
確かにパッと患者、柴大将の全身を眺めても、怪我らしい怪我は見当たらない。しかし、本体は大丈夫だとしても、彼には第二の本体とも言えるものがあった。
「でも……大将のお店が……」
「ああ、バイトできなくなっちゃってごめんな、セリカちゃん」
「そういう問題じゃないわよ」
ブライトは少し感心した。何せ、この犬型実体は自分自身の心配ではなく、目の前の、たかがバイトの少女の心配を優先したのだ。優しさの度合いが半端ない。
「そもそも、もうすぐお店も畳む予定だったからな、予定がちょっと早くなっただけだ」
「まああそこじゃ商売も上がったりかぁ」
「いや、寧ろそこは心配なかったさ。前から退去通知を受け取っててね」
「え、君たちそんなことしてたの?」
ブライトはアヤネとセリナに対し、冗談交じりの、いつもふざけてやるような巫山戯てやるような軽蔑の目を向ける。勿論、二人は全力で否定した。
「それはそうと、どういう事ですか? アビドス自治区の建物の所有者は、アビドス高校で……」
「……そうか、君たちは知らなかったんだな」
大将は静に目を閉じ、息を吸い、覚悟を決めた。これから、この二人に、少し可哀想なことをしてしまうと。
「……何年か前、アビドスの生徒会が借金が返せなくて、建物と土地の所有権が移ったんだ」
「えっ!?」
「まじかよ……」
「う、嘘!? アビドスの自治区なのに!? じゃあ今は一体誰が!?」
ブライトにとある嫌な予感が走った。現在の土地所有者に対しての、とてもとても、嫌な予感だ。
「カイザーか?」
「うーん……そんな名前だった気もするが……悪いな、はっきり覚えてねえや」
「いや、充分。ありがとう」
「そんな……でも、そういうことなら……セリカちゃん、先生。お二人は先に学校へ戻っていてください。私は確認したいことがあるので、ちょっと別のところに寄ってから行きます」
「ん、何のこと? よく分からないけど……私も一緒に行く!」
「では、先生は教室に」
「私も待つ。伝えたいこともあるしね」
「大将、まだ引退とか考えないでよ! 分かった!?」
「お、おお……」
大将は少し押され気味になって首を縦に振った。そんなとき、大将は突如ハッとして、何かを思い出したかのように口を開いた。
「そうだセリカちゃん最後に、お店のところにお金が入ったカバンがあったんだけど、何か知ってるかい?」
「あぁ、それは貴方のことを好いているファンからの、店再建の軍資金かと」
「お、おお?」
大将がブライトからの言葉の意味を処理している間、アヤネとセリカは部屋を去った。そして少しして、ブライトも部屋から退いた。
もうすぐ(もうすぐじゃない)脚舐めくるなぁ……どうしよっかな。ブライトが舐める印象……無くはないが……
登場SCP
Foweraker作
SCP-429 - 時計式瞬間移動
2010
http://scp-jp.wikidot.com/scp-429
CC BY-SA 3.0
会話について
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もう少しブライトの台詞を増やして欲しい
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