ブライト博士と学園都市   作:架空柿

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 のーこめ


分かれ道のような物語

 ブライトが遅れて学校に到着すると、校門の前にノノミがいた。ノノミはブライトに気がつくと、すぐさま反応し、声をかけてくる。

「あれ、先生?」

「遅れてすまないね」

「いえ、むしろ早いですよ!」

「それなら良かった」

 ブライトはノノミが校門の前にいる理由を疑問に思ったが、すぐ後ろに箒が置かれているのを見つけ、掃除を行っていたのだと確信した。

「ところで、大将は大丈夫でしたか……?」

「あぁ。特に体にはそこまでの影響は少なかった。後遺症もなさそうだ」

「……そうでしたか、それは良かったです☆ この目でご無事を確認したい気持ちもありましたが、大勢で押し掛けるわけにもいきませんからね……」

「確かに、全員となるとあの病室じゃ狭いな。ま、今度行けば良い」

 ノノミの不安そうな顔を察して、ブライトは察し、言葉を紡ぎ続けようとしたが、ノノミが先に首を横に振った。

「私の気持ちを読んでくださってありがたいですが……また後程、皆で集まったときに教えてください」

「……分かった。それじゃ、世間話もこのぐらいにして行く?」

 ブライトは足の向きを変え、返事も聞かずに校舎の方へと歩みを進めようとしたが、自転車の音が聞こえてきたため、進めようにも進めなくなった。ここで気にせず向かってしまっては、少々大人気ない。

「やあやあシロコ」

「シロコちゃんも早かったですね?」

「うん……ホシノ先輩は?」

「ホシノ先輩は多分、また学校のどこかでお昼寝の最中かと……」

「夜ちゃんと眠れてるのかねぇ……心配しちゃうね」

「分からない……先生、大将の容態は?」

「身体に致命的ダメージは無し。詳しくは後で説明する」

「うん、分かった。じゃあ、先に入ってるね」

「私も」

 ブライトとシロコは共に校舎に向けて歩みを進め始めた。ノノミは数十秒してからようやく歩み始めた。

 歩みは速い方だと自負しているブライトだが、そんなブライトでも見て分かるように、シロコは急いで歩いているようだった。それは自転車に乗った後だからか、気持ちからくるものなのか、ブライトは分からない。

 

 途中で用事があるらしいシロコと分かれたブライトは教室へ向かう途中、明らかに穏やかでない物音が聞こえたために音源の方へと向かった。すると、その音源のある教室ではシロコとホシノが何か言い争いをしている現場であった。

「どうした? 痴話喧嘩?」

「ん、その……ホシノ先輩に、用事があるの」

「用事って何?」

「言えない。悪いけど、二人きりにして」

「う~ん、それはダメです☆」

 思惑通りにいかず、シロコは不満気に頬を少し膨らます。対してホシノはバツが悪そうな笑顔を浮かべていた。

「対策委員会に『二人だけの秘密』みたいなものは許されません」

「これだけは見逃せないかな」

「……でも」

「ですので、きちんと状況を説明もしてくれない悪い子には……お仕置き☆しちゃいますよ?」

 ノノミはシロコへとじんわりと近づいて行き、ある程度まで近づくと、両の手をシロコの脇に向けて伸ばしはじめた。手が脇に到着する直前、ホシノが言葉を割り込ませ、阻止したが。

「……えっとねえ、実は、おじさんがこっそりお昼寝してたのがバレちゃったんだよね~」

 明らかな嘘、長年の勘と経験からブライトは直感していたが、敢えて口にすることはなかい。折角の空気が台無しになってしまうからだ。

 方便を並べるホシノに、シロコは継ぎ接ぎの肯定を示す。そして、ホシノが一足先に教室を後にすると、続いてシロコも教室を去った。

「…………探んねえとなぁ……ありゃ、発芽したらヤバそうだ。大丈夫? ノノミ。何か気分が悪そうだけど」

「私は大丈夫です……何か、言いたくないことがあるみたいですね。仕方ありませんね。誰しも言いたくない秘密の一つや二つぐらい持っているものでしょうし」

「そりゃそうだ。私だってそうだ。ほら、遅れる前に向かうとしよう」

 ブライトはノノミを連れて、対策委員会の部屋へと向かう。

 

 教室に着くと、気まずい空気が流れていたが、急いで入ってきたセリカによって空気は破壊された。

 セリカは何か地図のような物を握りしめており、汗の跡が残っている。それほど、急いでいたのだろう。

「先輩たち、大変! これ見て!」

「アビドス自治区の関係書類を持ってきました! これを…………?」

「……あれ?」

 アヤネとセリカは残留していた空気を感じとり、思わず疑問の声を漏らした。それもそうだ、いつもの三人からはありえない空気だ。

「色々とね。それより、話を続けて欲しいなーって」

「あぁ、そうそう、とんでもないことが分かったの!」

「はい、衝撃の事実です……! 皆さん、これを見てください!」

 まるで新発見を見てもらいたい幼い子供のようなテンションで見せられた地図には、国境のようなエリア分けする線が事細かに引かれていた。

「地籍図……これまたマイナー資料を」

「午前中にお見舞いへ行った時、大将から話を聞いたんです柴関ラーメンが入っている建物は勿論のこと、アビドス自治区の殆どが……私達の学校が所有していることになっていませんでした」

 余りにも衝撃的な一言に、初耳の三人は驚きの声を鳴らす。あのホシノでさえ、驚きから目が覚めていた。

「……どういうこと? アビドス自治区がアビドスの所有じゃないって、そんなわけ……」

「……私も驚いたさ。でも、この地図が動かぬ証拠……そして、更に酷いのが、現在の所有者」

「カイザーコンストラクション……そう書かれています」

 カイザー。それはかつて襲った銀行を運営する会社。または、アビドスの借金先。

「よりにもよってカイザーとはねぇ……ここら一体、あいつらの奴隷ってわけだ。退去命令もあいつら。あぁイライラする」

「落ち着いてください先生!」

 ブライトは装置に向け、「と」と言葉を出したところで、アヤネによる制止が入りやめた。もしもう少しでも遅ければとんでもないことになっていただろう。それこそ、アビドス崩壊どころではないことに、延いてはキヴォトス壊滅。

「……そんなわけで、残念ながらあそこは畳むことにしたようだ……いつかは起きるはずだったことだ、と……」

 あんまりにもあんまりなブライトの宣告はその場にいた者を沈黙させるには十分であった。

「……既に砂漠になってしまった、本来のアビドス高校本館と、その周辺数千万坪の荒れ地。そしてまだ砂漠化が進んでいない、市内の建物や土地まで……」

「かろうじてこの館と一部だけが生き残り、ほんっと、酷いな」

「で、ですが、どうしてこんなことに? 学校の自治区の土地を取引なんて、普通できる筈が……」

「……考えられるのは、借金の担保か、詐欺か」

「…………学校の資産の議決権は、生徒会にある」

 先ほどまで沈黙していたホシノが、今までにない真剣な面持ちで、いつもの雰囲気を感じられぬ口調で話し出す。

「それが可能なのは普通に考えて、その学校の生徒会だけ」

「……はい、その通りです。取引の主体は、アビドスの前生徒会でした」

「そんな……アビドスの生徒会は、もう二年前に無くなったはずでは……」

「……はい。ですので、生徒会が無くなってからは、取引は行われていません」

「二年前……ホシノが一年の頃…………くっそ、ここらの歴史も確認しときゃ良かった」

 軽く机を叩き、悔しがるブライトを横目に、ホシノは何か懐かしむような、それでいて後悔を孕ませた目をしたまま動かなくなった。

「……それぞれの学校の自治区は、学校のもの。余りにも当たり前の常識です」

「その当たり前にやられた……正に灯台もと暗しだ…………なあホシノ、何か知らないか?」

「あ、そうです! ホシノ先輩も、アビドスの生徒会でしたよね?」

「え? そ、そうだったの!?」

「それに……最期の生徒会の、副会長だったと聞きました」

「おお、ジャストフィットな証人!」

「…………うへ~、まあそんなこともあったねえ。二年も前のことだし、そもそも私もその辺の生徒会の先輩たちとは、実際に関わりは無くってさー。私が生徒会に入った時には、もう生徒会のほとんど辞めちゃってたから。その時はもう在校生も二桁になってたし、教職員もいない。授業なんてものは、もうとっくの昔に途絶えていた」

「……なんでそんな状況のここに入ったのか、不思議に思うが」

「…………ま、ここしか無かったからねぇ」

「成る程ねぇ……ところで、ホシノが副なら、どんな人が会長だったんだ?」

「……生徒会長は無鉄砲で、会長なのに校内でも随一のバカで……私の方だって、嫌な性格な新入生でさ」

 そのときだけ、ブライトが会長について問いたときだけ、ホシノの言葉に乗っていた感情のような何かが異なっていた。さっきまでは呆れのようなものであったが、この時は悲哀や苦痛のような、聞いていて痛々しいものであった。ブライトの好奇心にそこそこ刺激を与えるものである。

「校内随一のバカが生徒会長……? 何それ、どんな生徒会よ……?」

「うーむ、まぁそのような人がリーダーでも面白そうだがね。学業と政治で使う技能は全く異なるものだよ」

「そもそも、セリカちゃんも成績はそんなに……」

「わ、分かってるってば!」

「……今度補習しようか? 私こう見えても権威ではあるよ? それに知人も呼べるし」

「いらないわよ!」

 その後も、ちょっと話が脱線し、セリカは皆から口撃、もとい可愛がられたのであった。

 そんな一通りの茶番が一区切りつき、アビドスの土地に話題は戻る。

「……では、どうして前の生徒会は、カイザーコーポレーションにアビドスの土地を売ったんでしょうか?」

「やっぱ借金返済じゃない?」

「確かに、それはあり得ますね」

「うん、そんな感じだった気がするな」

「借金のために、土地を……」

「あや、飽くまで予想だからね」

「いえ、私もそれが正しいと思います。当時既に学校の借金は、かなり膨れ上がった状態でした。ただ、それでもこのアビドスの土地に高値が付くはずもなく、少なくとも借金自体を減らすには至らなかった……」

「連鎖…………カイザーは最初からこれを……?」

「あ~……」

「アビドスにお金を貸したのも、カイザーコーポレーション」

「……!」

「ということは……」

「いや~……まんまと嵌められたねぇ……相当な規模の計画なんじゃない?」

「それこそ、何十年も前から……」

「そうそう」

 また怒りのゲージが溢れて割れたブライトは、再び装置から何かを出そうとしたが、今度は何とか理性で抑え、なんとかなる。

「ま、騙されるのも少しは悪いが、騙す方も悪い」

「……わ、私も分かってるわよ!」

「まあ、君は重々理解してるだろうね。ま、取り敢えず結論だけでも出しちゃお。会議で最も大事な行程」

 ブライトは言葉を発さずにアヤネへと視線を向ける。するとその意味を汲み取ったアヤネは、少し息を吸い、口を開いた。

「学校の借金、このアビドスが陥っている状況、そして私達が先生と一緒に見つけ出してきた幾つかの糸口。全てが繋がり始めている気がします。カイザーコーポレーションはアビドスの生徒会が消えてしまってから土地を購入する方法がなくなり……」

「強行手段へと」

「はい、そしてカイザーコーポレーションの狙いはお金ではなく土地だった、という結論で良いと思います!」

「異議なーし」

「でも、どうして土地なんでしょうか? アビドスの自治区は、もうほとんどが荒れ地と砂漠、砂まみれの廃墟となっているのに……」

 ノノミの言葉に、ブライトは少し考える。そして、考え始めてすぐに、ある者からの言葉を思い出した。

「……アビドスの砂漠でカイザーは何かを企んでいる」

「へ?」

「前に、とある協力者から聞いた情報だよ」

「アビドスの砂漠で……」

「そ、カイザーが悪巧み」

「どうして、その情報を先生に……?」

「ああもう、そんな難しいこと考えるより、先にやることがあるでしょ!」

「確かにね。そんじゃ、向かうか? 百聞は一見に如かず、それを体現しようじゃないか。総員、準備を」

 教室に、五つの賛同を表す声が鳴り響いた。

 

 ブライトが準備のため、教室から廊下へと出て、少し歩いていると、シロコが急いで駆け寄ってきた。どうやら、何か急いでいる様子である。

「どうした、何か用事? もしかして告白?」

「いや、ちょっと出発前に、ちょっと時間が欲しい……相談したいことがあって」

「……分かった」

 ブライトが受諾すると、シロコは近くの教室へと入っていった。ブライトもそれに合わせ、教室へと入る。

 教室に入って早々、シロコは自信の鞄の中を漁り、一枚の紙を取りだし、ブライトへと手渡した。

「これは?」

「……ホシノ先輩のバックの中から見つけたの」

 B5程度のサイズはある紙のブライトははっと見る。長年の癖から上部、普段アイテム番号が書かれている場所を見ると、そこには「退会・退部届け」の文字と、「対策委員会小鳥遊ホシノ」という文字が刻まれていた。

「え、は? は?」

「……書かれている通りの意味」

「いや、分かる。分かるんだ。分かってしまうんだ! 何で……こんなものを……」

「分からない……ホシノ先輩の鞄を勝手に漁ったことは悪いと思ってる。怒られてもしょうがない」

「……そうだね…………いやぁ…………取り敢えず保留にしようか。何か裏があるかもしれない」

「……うん。そうあってほしい」




 ブライトってなんか離れ行く人に対しては素の感情出しそう(小並感)
 というか最近SCP出せてない気がするのは気のせいかな……

会話について

  • もう少しブライトの台詞を増やして欲しい
  • このまま
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