ブライト博士と学園都市   作:架空柿

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 のーこめ


反撃はやって損などない

 ブライトと理事の軽い揶揄い合いに、いてもたってもいられなくなったのかシロコが間に入ってきた。

「それはどうでもいいけど、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人ってことで良い?」

「……ほう」

 理事は少々不服そうな声色を砂漠に響かせる。

「そうよ! ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私たちをずっと苦しめてきた犯人があんたってことなんでしょ?」

「ふむ……?」

 今度は疑問に満ち溢れたような声を、さも濡れ衣を着せられた時のような声を出した。

「あんたのせいで私たちは……アビドスは……」

「やれやれ……最初に出てくる言葉がそれか。勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員達を攻撃し、施設を破壊しておいて……」

 ブライトの脳に嫌な予感が駆け巡る。それと同時に、予め仕込みをしておいて良かったとも思った。

「……くくっ、面白い。だが、口の利き方には気を付けたほうが良い。ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。まず君たちは今、企業の私有地に対し不法侵入しているのだということを理解するべきだ」

 ハッとしたように対策委員会の面々は目を見開いた。一理あるその言葉は、信じたくなくとも事実だと、思い知った瞬間だった。理事は嘲笑うかのように、見下し始めた。

「さて話を戻そうか……アビドスの自治区の土地だったか、確かに買ったとも」

「それにしても不思議だねぇ。何でこんな辺鄙な場所を……」

「単なる宝探しの一環だ。そんなことはどうでも良い。全ては合法的な取引、記録もしっかりと存在しているまるで、私たちが不法な行為でもしているかのような言い方は止めてもらおうか、わざわざ挑発をしに来たわけではないのだろう?」

「……へぇ、記録ねぇ」

 記録が残っていること、それはそれはブライトにとっては好都合なことであった。あるツテをブライトは知っていたのだから。それはまた後程のお話だが。

「成る程、あんたの言いたいことはよーく分かった。で、どうするんだい?」

「話が早くて助かる。君たちに少し、罰でも与えようか」

 理事はコートのポケットに手を入れた。しかし、その瞬間、余裕の多く含まれた表情が一変し、表情に焦りが満たされた。

「おや、もしかして探しているものはこれかなぁ?」

 ブライトは足元に来ていた、薬莢で構成された足を持った210-jpを抱えあげる。210-jpは、薬莢の他に、幾つもの携帯電話を融合させていた。その内の一つは独りでに動かされている。

 そして、先程まで砂の上にいたために、赤色の砂はポロポロと落ち、黒色の砂鉄が磁石のように反応していた。

「おや……おやおやおやおや! 格好つけちゃって気がつかなかったのかなぁ!? さいっこうに笑えるよ!」

 形相を変えた理事がブライトに掴みかかろうと足を動かした瞬間、突然地面から黒色の壁が現れ、理事の行く手を阻んだ。

「残念、この子を舐めないでくれよ」

「貴様あぁ!」

 すっかり化けの皮が剥がれた理事、そして狂ったように笑い続けるブライト。このブライトの豹変様に、流石の対策委員会も若干引いていた。

 そんな中、操作されていた携帯電話の電源が切られた。

「お、終わったかな?」

 こくりと頷く210-jp。暫く待つと、アヤネの通信に電話のベルが鳴り、驚きの会話が入ってきた。

「こちらカイザーローンです。現時点を持ちまして、アビドスの信用評価を最高ランクに引き上げさせていただきます」

「ふざけ!」

 理事が口答えをしようとした瞬間、その口に大量の砂鉄がぶちこまれ、何の音も放てなくなってしまった。

「変動金利を永続的0%へと下降、また借金の50%を我々が肩代わりさせていただきます。それでは引き続き、期限までに支払いをお願い致します」

 そうして電話は切れた。切れる瞬間、銀行員の疑問に満ち溢れた声が聞こえてきていたが、なんと言っていたかまでは分からない。

「ははは……はははははは! 残念でした、理事さーん! これであんたは大きな収益源を失ったなぁ! ここで更にブレイキングニュース。あれはあんたが下したものとされてる。更に、私はあんたでも取り消せねえようにするようこいつに頼んだ! お前何回かやってるらしいなこういうの! どう足掻こうがお前にはどうしようもない! ツケが回ったな!」

 狂気の笑いが周辺を包む。理事は限りなく体から煙を出し、拳を地面へと振り下げている。ブライトは理事に背を向け、必死に笑いを抑えながら対策委員会に告げる。

「さ、行こうか! こんなとこいたら思い出し笑いしてしまう!」

 ブライトは砂の上に一つ、また一つと足跡を増やしていく。それに続くようにし、対策委員会も同様に、静かに増やしていった。

 ブライトは皆が着いてきているのを確認すると、装置に向けてまた装置に向けて何かを呟くと、大量のカワラバトが上空を飛び始めた。カワラバトの集団は基地の周囲に留まると、基地にある戦車や重火器といった兵器達が軒並壊れていった。

「……先生、ありがとね」

「はは、気に入らない相手に悪戯をしただけさ」

 ブライトは尻目にハトらの様子を眺める。同時に、兵器達が着々と破壊されていく様子も見えてきた。もう、どれも使い物にはならなそうだ。

「……十分かな。『収容:鳩の群れ』」

 遠くに存在しているハト達は全て装置へと吸い込まれていった。

 

 学校に戻り、会議が始まった。とは言うものの、先程のブライトの変貌、そして突然に激減した借金でそれところではなく、会議はままならなかった。

「……あぁ、皆? 大丈夫?」

「……先生のせいでしょ」

「すまんね。代わりに進めてやろう。カイザーは何をしてんだかねぇ。宝探しとか……小学生かって!」

「あの砂漠には何も無いはずです。出鱈目を言ってるんだと思います」

「カバーストーリー……か」

「だとすると……どうして……」

「行ってくる」

「よせよせ、確保されたらどうする」

「でも……」

「ほらほらシロコちゃん落ち着いて」

 ブライトを強行突破しようとしたシロコの頭をホシノが胸の間に抱え、撫で始める。

「良い子だから、ね。まっ、取り敢えず今日はこの辺にしとこう。うへ~、じゃあ解散解散~。色々と吃驚尽くしだったけど、気持ちを整理して明日集まることにしようよ。これは委員長命令ってことで」

「そだね~。呆然としてちゃ進むもんも進まん。じゃ、そゆことで~」

 会議室から、ブライトは退室した。

 

 日が沈んだ頃、職員室で色々やっていたブライトとホシノ、シロコのみが学校に残っていた。そして、その三人が先程の会議室に集まっている。

「ん~? シロコちゃんは何かまだやることがある感じ?」

「……先輩、ちょっといい?」

「同じく私からも。同じ話題だから安心して」

「うへ~、二人から話があるなんて、おじさんモテモテだ。でもさ、今日は疲れたし」

「いや、今日じゃなければならない」

「……そうだね。じゃ、明日話そう。ね、シロコ」

「…………ん、じゃあまた明日」

 シロコはそそくさと部屋から出ていく。廊下から足音が響き、鳴り止むのを待ってから、ホシノは静かに口を開いた。

「うへ~、先生やるねえ? 未来予知みたいにおじさんの言おうとしたこと先に言って。何だかハブられたみたいでおじさんは何だか寂しいよ」

「……なあホシノ、これは何?」

 ブライトはポケットに入れていた、ホシノの退部・退会届をホシノに見せつけた。ホシノは驚いたような、ミスをおかしてしまった後悔のような、少し複雑な表情をブライトに見せる。

「うへ~、いつの間に……! これ、盗ったのはきっとシロコちゃんだよね? 全くシロコちゃんったら、いくら何でも先輩のカバンを漁るのはダメでしょ~。先生、きちんとシロコちゃんを叱っといてよ~? あのままじゃとんでもない大悪党になっちゃってもおかしくないってー」

「……そうだな。シロコにも、君にも。叱るというより、説教にちかいものだけど。どうしてこれを書いたんだ?」

 ホシノは誤魔化しきれなかった事実に苦しそうに口を強ばらせた。そして意を決したのか、固く閉ざした口を緩めていく。

「……そっかー……逃してくれそうには……ないよね~?」

「もし逃げても、私が必ず君を確保しよう」

「……はあ、仕方ないなあ……面と向かって言うのも何だし……先生、ちょっとその辺一緒に歩かない?」

「良いね」

 ブライトはホシノと共に廊下へと出る。そうして出ると、二人は校舎の中を散歩し始めた。どこまで行っても砂しか写さない窓、積み上げられた机と椅子。そして何よりも侵入してきている砂。アビドスの惨状を酷く物語っているようだった。

「掃除しようにも、そもそも人間に対して建物が大きすぎて……」

「ま、今度何か良い掃除道具でも探してあげるよ」

「……ありがと。でもさ~、折角の高校生活が全部砂色なんて、ちょっとやるせないと思わない?」

「まあな……だが、それでもここにいるってこたぁ、君がここを余程好いてるってことだ」

「……今の話の流れで、本当にそう思う? うへ、やっぱ先生は変な人だね」

「変で結構」

「……砂漠化が進む前、アビドスはかなり大きくて力のある学校だったって言われてるけど……そんな実感も記憶も、おじさんには全く無いんだよね~。最初からめちゃくちゃで、ちゃんとしたものなんて何一つ無い学校だった」

 ホシノは廊下のあちこちを見て、触りながら話を続けていく。終始笑顔は絶やさず、明るさを取り繕って。

「おじさんが入学した時のアビドス本館は、今はもう砂の中に埋もれちゃったし。当時の先輩達だって、もう皆いなくなった。今いるここは、砂漠化前に続けて何度も引っ越した結果に辿り着いた、ただの別館……ま、でもここに来てシロコちゃんやノノミちゃん、アヤネちゃんにセリカちゃんに会えたから……うへ、やっぱり好きなのかもしれないな~」

「なら、どうしてそんな好いてるこの場所を離れようとしているんだ?」

「……先生、正直に話すよ。私は二年前から、変な奴らから提案を受けてた」

 似ている、そうブライトは思った。オブジェクトと一般市民との接触に似ていると。

「提案……どんな?」

「カイザーコーポレーション……提案というかスカウトというか……アビドスに入学した直後からずっと、何回もね。そういえば、ついこの間もあったな~」

「……どんな条件でも、私はあそこからの提案は断るべきだとは思う。絶対怪しいし。ところで、提案者は何者だ?」

「……私も、あいつの正体は知らない……ただ、私は黒服って読んでる」

「黒服……」

「なんとなくゾッとするやつで……キヴォトス広しときえども、ああいうタイプは見たこと無かったし……怪しいやつだけど、別に特段問題を起こしたりはしなかった」

「いや、それで条件は十分」

 また新たな要注意人物の名を、ブライトは脳に焼き入れた。必ず見つけ出してやるためにも。そして、できれば確保し、収容し、保護するためにも。

 それを踏まえ、ブライトには更に言いたいこともある。

「じゃ、こいつはそのためと見てよろしいな?」

「……うへ……まあ、一ミリも悩んでなかったって言ったら嘘だし。ちょっとした気の迷いっていうか……うん、もう捨てちゃおっか」

 ホシノは偶然近くに置いてあったゴミ箱に、その紙を丸めて、バスケットボールの要領で投げ入れた。ブライトはそれを確認すると、すかさず偶然持ち合わせていたエタノールをかけ、火を着けた。たまたまゴミ箱は防火性で、燃え移ることもなかった。

「うへ~、スッキリした」

「これて一件落着っと。ま、後は君があの子達に話すかどうかだけど……」

「うん、明日、話そうと思うよ。隠し事もよくないし」

「よし分かった」

「……さ~てと、この話はこれでおしまい。じゃあ、また明日。先生。さよなら」

 ホシノは後ろを振り向き、昇降口へと向かう。しかし、ブライトは見逃さなかった。振り向いた瞬間の、ホシノの暗い顔を。

「……何かあったら気兼ねなく私を頼ってくれよ? 可能な限り、対処しよう。」

「……うん、ありがとう、先生」




 ブライト楽しそうですねぇ……まあやりたい放題するの好きそうですしね

登場SCP
Kwana作
SCP-210-JP - 金属生命体
2013
http://scp-jp.wikidot.com/scp-210-jp
CC BY-SA 3.0

SpoonOfEvil作
SCP-514 - 鳩の群れ
2009
http://scp-jp.wikidot.com/scp-514
CC BY-SA 3.0

会話について

  • もう少しブライトの台詞を増やして欲しい
  • このまま
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