教室は一般的な日本の高等学校のものと類似しており、ブライトに最も近い机には、一人の少女が突っ伏して眠っていた。ブライトはその少女に近づき、観察する。
「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクの方が……」
「……いやカステラにはマヨネーズでしょ」
「そうなんですかぁ……」
少女は寝息と寝言を口から放ち続ける。ブライトは観察を続ける。
見た目から推測される年齢はとても高校生とは思えない。だが頭に浮かぶ輪が、ブライトが訪れた学園都市における生徒証明であることは既に知っていた。頬は柔らかそうであり、ブライトの指を吸い付ける。
「うにゃ……まだですよぉ……しっかり噛まないと……」
「寝ながら食事ってのも体に悪いと思うのだが」
ブライトが呟くと、少女は少し目を開いた。そして唐突に立ち上がって目を大きくしていく。
「ありゃ、ありゃりゃ……?」
「やあ、おはよう。起きられて良かったね」
少女はブライトをみて慌てる様子を見せた。アニメや漫画でよく見るような白目表現をしながら。
「せ、先生!? この空間に入ってきたということは、ま、ま、まさかブライト先生……?!」
「そうだよ。それにしてもここは何処だ? さっきまでこんなところにはいなかった……認識改変か? それとも現実……珍しい瞬間移動異常性!?」
「な……なんのことでしょうか……」
まるで頭にクエスチョンマークでも浮かべてそうな表情でブライトを見つめる。しかしブライトは独り言を止めない。自身の得意分野が来れば、誰もが興奮することだ。
「落ち着いてください……自己紹介を……」
「……あぁ、悪かった」
ブライトは珍しく、素直に頭を下げて謝罪をした。ここにウクレレ弾きでもいたら「明日は隕石が降るな」と言っていたことだろう。
「頭を上げてください……私はアロナ! この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
「ほう、秘書とな。なんとも頼りなさそうな秘書だ」
「酷いです!」
頬を膨らませ、アロナと紹介した少女はブライトに大声を浴びせる。輪の色は赤く、漢字の火のようなものに変化していた。
「冗談はさておき、これからよろしく」
「……はい! よろしくお願いします!」
ブライトは手を出し、アロナもそれに応じるようにその手を握って握手を交わした。
「まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが……」
「ふむ……確かに少し違和感を感じる…………だめだ、良い感じのやつが思い付かねぇ……」
「なんのことでしょうか?」
先程の独り言の時と同じ表情をアロナはした。
「んん……教えとくべきなのかねぇ……試すか……『正体不明』……で良いんだっけか」
すると装置から球状ではない何かが現れた。ブライトはそれを、驚くアロナに数秒程見せ、直ぐに戻した。
「さて、今見せた物について説明できる?」
「ええと…………分かりません」
「Ok.じゃあ全オブジェクトのデータダウンロードは辞めとくか」
「え? え? オブジェクト?」
また疑問の顔をした。今度は、頭上の輪さえもクエスチョンマークになっている。ブライトは少々面倒臭そうな顔をし、口を開く。
「オブジェクトはね、めっちゃ不思議なもの。0匹を維持するイナゴだったりね」
「よく分かりません…………それはそうと生体認証を行います!」
「はえぇ、割と最新的」
そう言うと、アロナはブライトに近づき、右手人差し指の腹を見せつける。
「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください」
ブライトはその言葉に従い、指を人差し指におく。
「……『E.T.』かな?」
「違います。実はこれで生体情報の指紋を確認するんです!」
「その割には認証装置壊れてるけどね」
「……え?」
アロナは自身の指を見つめ、自己健康診断を行う。結果はブライトの言う通り、認証装置は水没により壊れていた。
「……なんで分かったんですか?」
「勘だね」
「……まあ、指紋なんて目視で確認できます。はい、確認終わりです」
「なんとも信頼できない生体認証だ」
アロナは先程より少し小さく頬を膨らませる。しかしブライトが頭を撫でると、膨らみは小さくなった。
その後ブライトは事情を話した。自身はある組織に所属しており、上からの命令でここに来たことを。
「ま、詳しくは君にも教えられないけど……そういえば、何処かで聞いた連邦生徒会長って誰?」
「私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが……」
「知らないのか?」
「はあ……お役に立てず、すいません。ですが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです」
「ほう。それは良い。私もなんとかできそうだが……副作用が怖くてね」
ブライトはとんかちを振るような動作をアロナに見せるが、アロナは全く分かっていないようだった。
「それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復しちゃいますね。少々お待ちください」
アロナは目を瞑る。その目は段々と眠そうなものへと変わっていくのが分かる。そして突然目を開き、輝かせて呟いた。
「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!」
「おお、お疲れさん」
アロナは手を腰に当て、胸を張っている。
「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます」
「じゃあそれでお願い。権利ってのは持つもんじゃないしね」
「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」
そこで、ブライト博士の視界はまた白く光ったかと思えば、シャーレの部室の中に戻ってきていた。壁の向こうではリンが電話で話す音が聞こえてくる。そして、扉の開く音がした。
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理が進められますね」
「お、良かったね。じゃ、行政はよろしく」
「はい。後、ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」
「ふ、心配せずとも、自分で自分の身を守れる」
ブライトは勝ち誇ったかのような顔をリンに向ける。リンは呆れたような顔をブライトに向けた。
「さて、私の役目はあと一つです。着いてきてください。連邦捜査部『シャーレ』をご紹介します」
ブライトは先を行くリンの後を着いてあるいてゆく。歩いていると、「空室、近々始業予定」と張り紙がされた、ガラス張りの部屋の前に到着した。ブライトは我先にとその部屋に入っていった。
部屋の中は普通のオフィスのように、書類の入った棚やパソコンデスク、その他様々な物が散乱していた。
「ここがシャーレの部室です。勝手に入られ驚きました」
「どうせここが目的地だと思ったし」
「えぇ……ここで先生はお仕事を始めると良いでしょう」
「なにすりゃ良い?」
「……シャーレは権限だけはありますが目標はありません」
「つまり何をしても良いと」
「……まぁ、そうです。詳しくは机上の書類や送られてくる苦情から察してください。では、ごゆっくり」
リンが退出すると、ブライトは目に見えてはしゃぎだした。
ある程度はしゃぎ終わり、建物から出ると、先程協力してくれた人達がいた。
「君達も報告ありがとう。いつか遊びにでも行くよ」
そう言うと、そこにいた子達は皆少し喜ぶような表情を見せ、去っていった。ブライトはその背中を眺め、部室へと戻っていった。
そして戻る廊下の途中、端末越しにアロナが話しかけてきた。
「あはは……なんだか慌ただしい感じてしたが……ある程度、落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした」
「そっちもね。ま、忙しいのは去ったし……この箱の仕組みでも考察するかな。どうせ分解もできないし」
「大変なのはこれからですよ! これから先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです……!」
「……これが自由の代償ってやつか。ま、よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ブライトは少し気を沈ませ、逆にアロナは浮かばせて互いに言い合った。
そうそう、二ヶ月程前から言おうと思って忘れてましたが、実は二、三年ほど前からTwitter(X)アカあるんですよね。良かったら見てってください。休載情報とかあれば流すので。(宣伝)(PR)
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CptBellman, qntm作
SCP-055 - [正体不明]
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DrGemini作
SCP-101-FR - 私タちのイる場所
2015
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dr_toraya
SCP-240-JP - 0匹のイナゴ
2014
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kotarou611, Pagema157作
SCP-1706-JP - 叩けば直してあげられる
2017
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CC BY-SA 3.0
会話について
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もう少しブライトの台詞を増やして欲しい
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