東方麺祭伝   作:CLAM

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いつ書くの?明日でしょ!を続けてはや3ヶ月。
誠に申し訳ないです。
では、第十六話です。




十六杯目...麺屋の子供遊び

静かな夏の朝。障子からチラチラと差し込む朝日を背に、餅士と怜依は黙々と朝ごはんを食べていた。今日の朝ごはんは白飯に焼き魚。味噌汁等々と一般的な和食になっていた。

 

作ったのは怜依である。本当は泊まらせてもらっている身、餅士が作る予定だったのだが、怜衣が「今日は麺類じゃないの作って」というため、麺のない料理を作ったところ……

 

「何よこの焼き魚!」

 

「え、でもしっかり焼くって言ったじゃないですか。」

 

「だからって、誰が炭にしろって言ったのよ!!」

 

となったり、

 

「これ、味噌汁じゃなくて味噌ラーメンのスープじゃない!」

 

「え、でも同じ『味噌スープ』じゃ……」

 

「英語と日本語は別物よ!やり直し!!」

 

となったりで、まともなものが作れなかったのだ。そのため、しぶしぶ怜依が作ることとなったのだ。

 

「まさか、麺類しか作れないなんて……本当に面白い才能を持ったものね……。」

 

怜依の皮肉に、餅士は苦笑いをしながら返事をする。

 

「昔から、麺しか作ってなかったからか、麺がなくなった瞬間何をしたらいいのかわからなくなって……どうにも作れないんです。」

 

「そんなことってあるのかしら……。」

 

頭を抱えつつも、まあいいわと一言。怜依は食べ終えた膳を台所へと持っていく。餅士もそれを見て急いで食べる。あまりもたもたもしていられないのだ。昨日は泊まらせてもらえただけで、今日はどうかは分からない。いや、怜依はなんだかんだ優しいから泊めてもらえるとは思うが、それでも申し訳なさが先に立った。餅士も食べ終えた食器を持って、台所へと向かう。台所で洗い物をしている怜依の前に食器を置き、手を差し出す。

 

「洗い物しておきます。」

 

餅士は居候していた身だ。これくらいはと思っての発言だったが、怜依は手を止めずそのまま餅士の食器にも手をつけた。

 

「あんたは早くここから出ないといけないんだから、こんなとこで家事の手伝いしてる場合じゃないでしょ。」

 

「とは言っても………」

 

「はい、いってらっしゃい。」

 

怜依は少し濡れた手で餅士の背中を押して促す。餅士も少し不満げだったが、怜依なりの優しさだと、そのまま外へと出た。外はすっきりと晴れている。時間もたっぷりある。

 

「……よしっ。」

 

餅士は少し強く拳を握り、視線を空に向けて体を浮かす力が働くよう念じる。瞬間、ふわっと餅士の体は浮きそのまま加速度的に上空へと昇る。慌てて力を弱めて速度を弱め、体を安定させる。

 

「うわっ……、ははっ。」

 

まだ制御になれておらず、ふわふわと上下に揺れながらも餅士はなんとか空中に留まった。緑が溢れる上空からの景色は、やはり餅士にとっては格別のものだった。その景色を楽しみながら、餅士は昨日見つけた場所へと向かう。少しのあいだ動くと、昨日と同じような場所が目についた。

 

「ここだ。」

 

ゆっくりと地面へと降りて、足を地につける。機能見つけた土地もそのまま、餅士が触っていた場所もその形を保っていた。

 

「ここ、誰も通らないのかな。」

 

そう言いながら辺りを見回す。後ろは森、目の前は広大な平野。人や何かが住んでいる形跡は見当たらない。ここなら少し居座っても迷惑にならず、あまり危険でもないかもしれない。そう思うも、危険なのはむしろ自分かと少し自嘲する。

 

「おにーちゃん♪」

 

不意に後ろから声がかけられた。餅士は聞き覚えのあるその声と、聞きなれない呼ばれ方で察する。

 

「あ、えっと、こいしちゃん?」

 

「正解!覚えててくれたんだ!」

 

名前を呼ぶと、こいし――古明地こいしはにーっと可愛らしく笑う。そういえば、また来ると言っていたような気がすると餅士は思い出す。

 

「こいしちゃんは、いつもここに来るの?」

 

「ううん、昨日はたまたまここに着いただけだし、今日はあなたが来るかなと思ったから待ってただけよ。」

 

腕を後ろに組み、ご機嫌に腰をフリフリしながらニコニコと餅士を見るこいし。昨日初めてあったはずなのに、何故か妙になつかれている事に戸惑いを覚えつつも、餅士はこのあたりの場所について聞いてみようかと考える。

 

「えっと、ここの場所って――

 

「危険かどうかはわからないけど、今日いた限りでは人は見なかったし妖怪にも会わなかったわ。」

 

――危……へ?えっと、ありがと?」

 

「どういたしまして!」

 

質問の前に答えられ、餅士は少し面食、らう。そんなにも顔に出ていたのだろうか?すこし自分の顔をペタペタと触って確かめる。その様子を、こいしは依然として楽しそうに眺めているだけだった。その圧に押されながら、どうしたものかと悩む餅士にこいしがグイグイと迫ってくる。

 

「はいはい!遊ぼお兄ちゃん!私遊びたい!」

 

「いや、今から用事が……」

 

「私も探すから!ね?それならいいでしょ?」

 

「いや、その……」

 

「いいでしょ!?」

 

「え、うん……えぇ……」

 

小さな少女から発せられる無邪気な重圧に意見を潰された餅士。キャッキャとはしゃぐこいしを尻目に、結局こうなるのかとため息をつく。しかしまあ、後で一緒に探してくれると言っているし、大丈夫だろうと思うことにした。

 

「で、なにする?」

 

「じゃんけん!」

 

「まさかのじゃんけん……?」

 

謎のチョイスに餅士は聞き返すが、こいしはむふーっと強気に息をだすと、右手を引いて戦闘体制に入った。餅士は少しのけぞるが、ぐっと睨み返してこいしと同じポーズをとる。

 

(よくわからないけど、ジャンケンすればいいんだ……)

 

「三連勝したら相手の言うことひとつ聞くっていう罰ゲームね!」

 

「え、いやちょっとそれは!―――」

 

「じゃん、けん!」

 

(ああ、もう……とりあえずチョキ……!)

 

振りかぶりもないまま、すっと手を伸ばし、瞬時に人差し指と中指を伸ばす。こいしもこちらを見つめながら、腕を伸ばしてくる。ふと、視界にこいしの後ろから伸びている「目」と目が合う。こちらを鉄のような目で見るそれに、餅士は一瞬肝が冷えるような心地がした。

 

「ぽん!」

 

両者の手が出る。餅士はチョキ。そして、こいしはグー。餅士の負けだ。

 

「負けた……。」

 

「ふふーん。まず一勝ね。」

 

こいしはしたり顔と仁王立ちの黄金の組み合わせで餅士を見上げる。餅士は口に指を当て、こいしにくっついている「目」を見やる。

 

(やっぱり、目なのかな……)

 

こいしには目が二つあるが、本人によれば彼女は妖怪だ。もうひとつ目があってもおかしくはないし、自由がきくならば死角も見れるメリットもある。だとしても……

 

(あの感じは何なんだろう……)

 

一切瞬きをしない「目」は、周りを見渡すこともなく、じっと餅士を見つめている。しかし、その無機質な視線は、餅士に向いているようでどことなく違う気がしてしまう。

 

「お兄ちゃん!二戦目やろ!」

 

こいしは相変わらずニコニコしていた。しかし、不意にこいしがうつむいた時の顔からは、笑顔の奥にどこか別の感情が覗いているかのようで、餅士は少し心がざわめくのを感じた。そんなこいしを見て、餅士はペチペチと頬を叩き、もう一度ジャンケンのポーズをとる。

 

「じゃあ、やろっか。」

 

はっとこいしはこちらを見上げる。その表情は珍しく驚いたようなものだったが、すぐににかっと笑うと腕をぐるぐると回してやる気を出す。餅士はその驚いた時のこいしの潤んだ目に、心が揺さぶられる。その目と、胸の位置にある「目」との深い隔壁を、餅士は先程から疑問に感じていた。だが、そんな疑問は一旦横に追いやり、餅士もにかっと笑い返す。

 

「次も、勝つわ!」

 

「次こそ勝つよ!」

 

そう言い合って再度、二人の腕が振るわれる。掛け声に合わさって出た手はグーとパー。勝敗は……

 

「また負けた……。」

 

「ふふーん。」

 

またも餅士の負けである。負けた餅士はぐだっとうなだれ、勝ったこいしはえっへんと小さな胸を張る。餅士はうなだれた体勢のまま、少し思考をめぐらせる。下にたれた前髪に遮られた餅士の目は見えなかったが、しかし口元の微笑みから、何かを導きだしたのは見て取れた。餅士はぐっと腕を上げて背を伸ばし、こいしに向き直る。そして、こいしの目をじっと見つめる。こいしはきょとんとしていたが、その後ぎょっと目を見開き、後ろめたそうに目をそらす。その態度に確信を得た餅士は、三度目のジャンケンを行う体勢をとった。こいしはまるで悪い事をした子供のように怯えながら、餅士に向かって呟く。

 

「怒らないの……?」

 

その言葉に餅士は優しく微笑むのみでとどめた。餅士はそのまま何も言わず、こいしがゆっくりとこちらに向き直るまで、待ち続けた。

 

(僕は、またグーを出すよ。)

 

誰に言うでもなく心中でつぶやいた言葉は、しかし確かに誰かに伝わったと感じ、餅士は声を張ろうと息を吸う。

 

「じゃーんけーんぽん!」

 

餅士は自身の大きな掛け声と同時に、勢いよく手を拳の状態で突き出す。そして、タイミングを合わせてぴたっと止めた握りこぶしの前に、小さく開かれた手が、震えながらもゆっくりと出される。

 

「これで、三連敗だね。」

 

餅士は微笑みながらこいしに向かってそう言う。こいしはとても気まずそうにぎゅっと出した手をもう一方の手でおさえる。餅士は話し出しづらそうに構えるこいしを思って自分から切り出した。

 

「こいしちゃんは心が読める能力……なのかな?」

 

「…………うん。」

 

そっか、と餅士は一人頷く。未だに顔をあげようとしないこいしを見て、しょうがないといったようにため息をつく。

 

「じゃあ、僕負けたからこいしちゃんの言うこと聞かないとね。」

 

「…………え?」

 

その言葉を聞いたこいしが、やっと顔を上げる。その顔には驚きと不安の入り混じって今にも泣きそうだった。餅士はそんな様子を見て思わず笑いそうになる。

 

「こいしが言ったんだよ?負けた方が勝った人のいうことを聞くって。」

 

「で、でも……私ズルしたから……。」

 

「そう思うなら、最初から使わなかったら良かったのに。」

 

「……ごめんなさい。」

 

にこやかに笑う餅士とは対称に、どんどんとこいしは萎縮していく。しかし、目をそらしたままこいしは少しずつ言葉を紡いでいく。

 

「でも、こうしないと……誰も遊んでくれようとしないの……わ、私はただ…… 遊びたかっただけなのに……。」

 

潤んだその目には徐々に涙が溜まる。餅士はそんなこいしの近くに寄り、体をかがめて優しく頭をなでる。

 

「うん分かった。じゃあ遊ぼうよ、満足するまでさ!」

 

「ほんとにいいの?」

 

「いいよ。言うこと聞かないとね。」

 

こいしは頬に垂れかかった涙を拭うと、ぱっと明るい笑顔に変わった。

 

「遊ぶ!遊ぼ餅士お兄ちゃん!」

 

「そっか、何して遊ぶ?」

 

「えっとねー、えっとね!私――――」

 

そうして、こいしのワガママに付き合う形で餅士は二人きりの子供遊びをする。鬼ごっこ、木登り、缶蹴り、等々二人でできそうにもないことも二人で考え、遊んだ。餅士はまた怜依のところに泊まるようお願いしなければ……と悩んでもいたが、こいしの楽しそうな様子を見て、仕方ないかと苦笑する。この純真な笑顔の裏に隠された影、時折見せる不安とも恐怖とも言える表情、それがたまらなく餅士の心を揺らす。どうしても無視できなくなる。これが全て「心を読める」こいしの策略だったとしても――――

 

いつの間にか時間は過ぎ、日は傾いてきた。餅士とこいしも遊び疲れ、今は森の木に二人でもたれかかって休んでいる。こいしは幸せそうにリズムをとって頭を揺らしている。餅士はチラと見える空をじっと眺めていた。餅士がそろそろ神社に戻るかと体を起こそうとすると、すっと横のこいしが立ち上がり、座る餅士を覗き込むようにかがむ。

 

「今度は、私が約束を守る番ね。」

 

「え?」

 

「約束、ジャンケンする時に言ったでしょ?」

 

餅士はその時の言葉を思い出し、あっと口から漏らす。そう言えば、こいしはジャンケンをする際に餅士の寝床を一緒に探す約束をしていた。しかし、まさか本当に守るとは思わなかったし、第一この時間からでは間に合わないだろう……そう餅士は考えた。すると、こいしは微笑みと一緒にそれに返答する。

 

「本当は守る気なんてなかったんだけど、だも、なんとなくやっぱり守りたいなって思っちゃったの。それに、アテならあるの!」

 

「そうなの?この辺りにはあまり来ないって言ってたけど。」

 

「ここじゃないわ!私のお家。地霊殿っていうの!」

 

こいしは餅士の腕をつかんでぐっと引き上げる。餅士はそれに釣られるようにして立ち上がった。こいしは餅士の腕を持ったまま空を飛ぼうとする。体が少し浮いたところで餅士も能力を使って体を浮かせる。こいしが腕をつかんでる手前、また吹っ飛んだりは出来ずひやひやしたが、なんとか上手くいったようだ。夕日も隠れかけて、紫色の夜空が広がっている。こいしと餅士はスピードを上げて向かった。

 

「こいしちゃんの家ってどこにあるのー?」

 

「地底よ!地面の下!」

 

「え、地下!?」

 

まさかの場所に餅士は驚くが、これから行く地下都市に心踊らせて、ひらひらとはためく緑髪を見つめながら、これからの流れに身を任せるのであった。

 

 

 




さて、ついに地底の世界に行く餅士くん。あの中キャラ濃いからなー。毒されんじゃねえかなぁ大丈夫かなぁと思いながら、頑張れ餅士と応援しておきましょう。

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