東方麺祭伝   作:CLAM

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すみません。タグに残酷な描写を追加します。
苦手な人は申し訳ないです。
ストーリー上入れた方がいいと思いました。
大丈夫!と言う人はよければ見てください。

では、第三話です。




三杯目...麺屋と冬に荒れる赤

とある田舎の麺職人――であった麦野餅士は、

銀髪の少女、妹紅に出会った。

そしていま、少年は初めての女の子の手作り料理を食べようとしている……のだが。

 

「なぜか、嬉しさがこみ上げてこないです……。」

 

「なんだと!?」

 

餅士は想像以上に落胆した。女の子の手作り料理というのは、世界でも限られた男子しか食べられないもので、男子の間ではそのプレミア価値はとてつもなく高い(テレビのとある番組参照)らしい。

作った本人の努力や背伸びの度合いが分かり、見ただけで無意識にニヤけてしまう(テレビの以下略)と言われている。テレビが言うのだ。間違っているとは思えない。しかし。しかし………

 

「どうして、どうしてこんなにもガックリしているのでしょうか…」

 

「なんだよ!!文句あるのかよ!?」

 

涙目で騒ぐ妹紅を尻目に、項垂れる餅士。その手には、木の棒に刺さった焼き魚が掴まれていた。

そう、高まる期待を抱いて料理を待っていた餅士のもとに妹紅が持ってきたのは、ズバリ

 

~川魚の直火焼き~

 

「これでニヤけるなんてどだい無理な話ですよ!」

 

「も、文句ばっかいうなよぉぉ………」

 

遂に、妹紅がしおらしくなった。それを見て餅士ははっと気づく。そうだ。自分はまだ口にしてすらいない。そんな状態で文句を言う方も悪い。

そう、料理は食べてから。見た目など二の次なのだ。

餅士は木の棒に刺さったその焼き魚を口に頬張る。

すると、餅士の頭に電流のようなものが走り、餅士は目を見開く。

 

「ど、どうだ?」

 

不安そうに見つめる妹紅。目を見開いたままの餅士を固唾を呑んで見守っている。

 

「お……………おいしいです………」

 

焼き魚は美味しかった。それも、最高に。

川魚の柔らかな白身は、ホカホカとしていて、噛むと、白身がさっと切れると同時に、じわっと上質な油が滲み出る。癖もなく、とても食べやすい。

そして極め付きはその焼き加減だ。

皮はパリッと香ばしくできているのに対し、中は火はしっかりと通っているものの、余計に脂を落とすことなく、中に旨みがギュッと閉じ込められている。

味付けなどされていない筈なのに、どうしてか食欲をそそられる。

初めての感覚であった。普段麺を作っている餅士ほ、麺物は麺自体に主の味はなく、どうしてもスープなどでいつも味付けをしなければならなかった。

それが先入観となって、味付けをしなくては料理にならないという観念に囚われていた。そんな餅士にとって、この焼き魚は「革新」であった。

 

「だろ!?だろ!?自信あったんだようん。」

 

妹紅は先程とは打って変わって自信ありげに言う。

だか、その自信は本物だ。こんなにも美味しく魚を焼けるのだから。彼女の経験の量がわかる。

 

「ほんとに、妹紅はすごい人なんですね…」

 

おそらく彼女はこうやって生きていく中で色々な技術が磨かれていったのだろう。

自分はただ淡々と麺を茹でては乗せていただけ。

同じ暮らしであっても、その間には歴然とした差があるように思えた。

しかし、それを聞いた妹紅は、悲しげな顔をして

 

「私なんて、すごくもなんともないよ。

ただ意地悪く生き残ろうとしているだけさ。」

 

と自嘲した。

よく分からない。妹紅が自分に自信があるのかないのか。彼女の本音は、本心はどちらなのか。

そんなことを考えながら、餅士は妹紅を見つめていた。

 

「どうした?なにかついてたか?」

 

「いえ、なんでもありません。」

 

そう言うと、ムッと妹紅は顔をしかめる。

バレてしまっただろうか。餅士は動揺したが、妹紅の発した言葉は全く別のことだった。

 

「その言い方、なんか他人行儀なんだよな。」

 

「え?」

 

言い方?何か悪いことを言っただろうか。

とりあえず、謝っておくのが吉か。

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「ほら、それだよ。」

 

ますます妹紅は顔をしかめる。何がいけないのだろうか。自分はおかしなことを言ったつもりはない筈なのだが……。妹紅は言葉を続ける

 

「その、もうこれから一緒に生活するんだぜ?そんな丁寧口調せずに普通に話してくれよ。」

 

「丁寧口調、ですか?」

 

「ああ。」

 

餅士は動揺した。こんなことを聞いてもいいのだろうか。さも当然の如く言っているから、聞きにくいが。聞かねば平行線だ。勇気を出して尋ねる。

 

「丁寧口調ってなんですか?」

 

「は?」

 

妹紅は唖然として持っていた魚を落とす。

やはり聞かない方が良かったのか、と餅士は少しばかり後悔する、

 

「そんじゃなんだ?お前はその口調が普通だってのか?」

 

「はい……多分生まれた時からこういうふうに喋ってると思います………」

 

妹紅はまた信じられないというような顔をしていたが、息を吹き出したあと、突然何かが憑いたように笑い出した

 

「な、なんですか?」

 

「あ、ははははは!お、お前っその口調がもともとの口調なのかよ!あはは、おかしいっ!はははっ!」

 

「なんなんですか一体!」

 

妹紅が涙を拭う、笑いすぎたようだ。餅士は少し腹が立ったが、丁寧口調を知らない餅士が悪いのかもれない。憤りを抱えつつも、餅士は二匹目の焼き魚にかぶり付く。

 

「はぁ、おかしい。丁寧口調が素の口調のやつなんて聞いたことねえよ。」

 

まだ笑いの余韻が残っているのか、妹紅は少しにやけながら話す。餅士はやはり事態が飲み込めず、妹紅の説明を待つばかりだった―――

 

 

 

 

「つまりな、お前の喋り方は人を敬うときに使う言い方なんだよ。」

 

「そうだったんですか………」

 

妹紅による丁寧口調講座が終わった。

今まで気にもしなかったことに、餅士は驚きを隠せなかった。

なるほど、喋り方にも様々あるのは分かっていたが自分のこの話し方がまさかそんな特殊なものだとは思わなかった。

 

「変えた方がいいんですかね……この口調」

 

「いやいや、初対面の人とか尊敬する人とかにはむしろ使わないといけないんだ。大事にするべきだ。

……ただ、こうこれからともに過ごしていく仲だと、なんか、避けられてる感じがするんだよな…。」

 

「そうですか………」

 

餅士は思案する。このまま妹紅の機嫌を損ねたままにするのも申し訳ないが、生まれつきこの喋り方だ。

今すぐ変えろと言われても難しいものである。

すると妹紅はとある提案をする

 

「とりあえず、誰かの口調を真似してみる…ってのはどうだ?あ、私のはナシな。似合わないから。」

 

「口調を、真似するんですか……?」

 

「そう。とりあえず私に挨拶してみな。」

 

それならもしかしたらできるかもしれない。

餅士はそう思いながら、誰の真似をする。

とりあえず先代の口調にしてみようか。

 

「ガハハハハ!妹紅、元ッ気してる「却下」なんでですか!?まだ終わってません!!」

 

即却下された。

 

「なんつーか、お前に合ってないんだよ。もっと落ち着いた感じの口調とかないのか?」

 

「落ち着いた口調……」

 

なるほど、口調にも合う合わないがあるのか。

それにしても、落ちついた口調とはなんだろう…

落ちついた……落ちついた……

そこで餅士は思い出す。テレビではそんな感じの何とか系男子の番組をやっていた。女性にも人気だと言っていたから、これなら問題なかろう。

そう考えると、餅士は立ち上がり、切り株に座る妹紅の方へ歩く。妹紅はキョトンとしたまま、餅士の方を向き続けている。餅士は妹紅の前に立ち、足を曲げて妹紅と目線を合わせ、右手で妹紅の顎を優しく掴む。

そして、顔を近づけて―――

 

「悲しい顔すんなよ。そんな顔していると、奪いたくなる――――」

 

コンマ数秒後、餅士は宙に浮き上がっていた。

そして、数秒の空中浮遊を楽しんだ後、地面に落ちた

 

「あだっ!?」

 

地面に腰をぶつける。女の子に人気の口調をしたのにもかかわらず、餅士は妹紅に投げられたのだ。

 

「な、ななな何だお前いきなり!?ふざけんなよ!」

 

ふざけたつもりなどない。

しかし、もこうは顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。テレビで言っていたにもかかわらず、ここまで怒らせるとは、よっぽど自分に合っていなかったのだろう。

とにかく、どうにかしてこの口調に関しての問題を解決したいのだが、まだ何かいい方法があるだろうか……。

はっと気づいた妹紅は、気を取り直すように妹紅は咳払いをした。

 

「ま、まあこれから一緒に過ごすんだし、少しずつ変えていくしかないな。」

 

「そうですね。」

 

「そこは『そうだね』とかって言うんだよ

はい、もう一回。」

 

「そ、そうだね。」

 

「おう、そうそう」

 

まだ先は長そうだが、仕方ない。

頑張っていこう―――餅士はそう思った。

 

「さ、今日はもう日が暮れるし、とっとと寝ようぜ。」

 

「そ、そうだね。」

 

習ったばかりの話し方をぎこちなく使う餅士に向けて、妹紅は優しく微笑んだ。

 

 

 

 

それから、妹紅との野生生活が始まった。

川で魚を取り、森で野草を摘んで、食料をまかなっていた。最初は料理を作る側に回るつもりだった餅士だったが、麺類しか作れないため、もっぱら他の料理など作ることができず、妹紅に即刻クビにされた。

その後からは、妹紅が料理担当になり(一度、料理する場を見せて欲しいと頼んだが、頑として見せてくれなかった)、餅士は食料集めの方に回ったが、そちらの方はセンスが良かったのだろうか

どんどん上達していき、最終的には妹紅に食材集めの全てを任されるようになった。

それ以外にも、森を散策している時に斧などを拾ったため、それを使って気を切り倒し、簡易的な家具を作ったりもしていた。

ある時餅士が、雨が降った時どうするのかと聞いた時に、妹紅は別にどうもしないと返して呆れたということもあり、屋根を作ったりもしていた。

餅士の役割は、食料調達兼大工へと確立されていった。

そして、夏が過ぎ、秋も終わりに差し掛かってきたであろう時のことである。

 

「へぷしっ!!……寒いです…。」

 

「おいおい、こんなんで寒がってたらこれからキツいぞ?」

 

「そんなこと言ったって、僕半袖半ズボンなんです……だよ?」

 

「まあ、確かに普通の人にはきついか…」

 

冬に入りはじめて、気温はぐっと下がってきた。しかし、餅士の着替えは白いTシャツに紺色の半ズボンのみ。

これからの寒さに耐えることができるとは思えなかった。

 

「ま、まあとりあえず野草をとってくるね……グズッ」

 

「ああ、頼むよ。気をつけてな。」

 

「うん。」

 

そう言って餅士は森の奥へと向かった。

ザクザクと枯葉を踏む音がなる。

もう冬に入ろうとしているのだ。もうじき野草の取れる量も減ってくる。今日くらいには多めにとって備えておいた方がいいかもしれない。

何度も入っては野草をとってきた。

もうほとんど迷うこともなくなった。

餅士は野草を取り続けた。しかし、いつもよりも収穫の率が悪い。やはりどうしても野草の量が少なくなってきているのだ。

これはまだ奥に行かないといけないかもしれない。仕方なく餅士はいつもより奥に行って野草を取り続けた。

昼頃はまわり、もう気温も下がり始めている頃だろう。早めに戻らないといけない。

餅士はそう思いながらも、野草を取り続けた。

だんだんと集まってくる野草。

しかしまだ足りない。この量ではすぐに無くなってしまうだろう。

餅士は震える体を抑えて、野草を取り続けた。まだ足りない……まだ足りない……

寒さで少しずつ意識が朦朧としてくる中、それだけを考えて餅士は動いていた。

日はもう地平線近くまで傾き、いつもであれば妹紅と食事している頃だろう。

餅士は大量の野草を収穫した。

これだけあればもう大丈夫だろう。そう思いながら妹紅のいる家に戻ろうとしたとき。

 

「あ、れ……?」

 

目の前がふらふらと泳いで見える。

体も重い。思うように動かない。

それでもなんとか歩こうとしたが、足がもたついてうまく歩けず、その場で倒れた。

 

(体が、ぜんぜん動かない、です……)

 

寒い中、半袖で長時間の労働をしていたせいで、体力が奪われていたのだろう。

しかし、餅士はそんなことを知るはずもなく、ただ倒れたまま浮つく頭の中倒れた自分を認識することしかできなかった。

その時、ザクザクという音と共に、餅士の視線の先から大きな影が見えた。

 

(も、こう………?)

 

妹紅であって欲しかった。妹紅なら、自分に気づいて馬鹿だと笑いながら助けてくれていただろう。しかし、そんな淡い期待は脆く崩れ去った。影は、大きな化け物熊であった。

その熊は餅士の方へと近づく。

餅士はこの危険事態に頭が気づいた。

しかし、熊にであった時のやり過ごし方など知らない餅士は動かない体を必死に起こそうとしながら熊を睨む。

不幸にも熊はそれを挑発ととったのだろうか。グオオオオオと大きな咆哮と共に、餅士の方へと一直線に向かって走ってきた。

もはや絶望的な状況。死ぬ。餅士は覚悟をした。しかし、次の瞬間――――

 

「餅士に近づくんじゃねええええええ!!」

 

突如化け物熊が横に倒れた。

そして、見慣れた銀髪の少女が、こちらに駆け寄る。

 

「もこう、だぁ……」

 

「何してんだ餅士!なんでこんなところに倒れてるんだよ!心配したんだぞ!」

 

その目には涙。荒い息から、自分を必死で探してくれていたのだろう。本当に優しい。

 

「ごめんなさい、あと、ありがとう」

 

「馬鹿っ!そんなの、当たり前だろっ!」

 

妹紅は目を腫らしながらそう言った。

本当に迷惑をかけた。また妹紅に謝らないと。そう思っていた、その時――

 

ザシュッ―――

 

不意に肉が切れる音がした。そして、それと同時にもこうの背中から大量の血が吹く。

後ろには先程の化け物熊が。

 

「あ、うぁッ……」

 

妹紅が苦痛の声を上げる。しかし、体の動かない餅士にはどうすることもできなかった。

 

「もこ―――」

 

朦朧とする視界の中で、はっきりと映る赤。

頭の中は危険信号のランプが何度も点滅しているのに、この寒さで凍りきった体はピクリとも動かない。

 

「クソッ…………!!」

 

妹紅はすぐさま後ろを振り向く。

餅士からはその背中の傷がはっきりと見えた。あまりに強引に切られた背中は痛々しく、血が絶えず滴り落ちている。

熊はまた手を振りかぶる。

動くことのできない妹紅は手を広げて餅士を守ることしかできなかった。

熊が手を振り下ろすと同時に、妹紅の左腕が落ちる。肩からまた血が噴き出す

 

「ぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

妹紅が叫ぶ。

 

(動いて!動いてください!お願いします!!)

 

餅士は心の中で悲痛に叫ぶ。しかし、体は寒さと恐怖で竦んでどうしても動かない。

 

(動いてください!動かないと、妹紅が!!)

 

熊が再度手を振り上げる。

その時、妹紅は目にもとまらぬ速さで熊の懐に潜り込み、残った右手を振り上げた。

直後、熊の腹から焼けた傷のような痕がついた。熊は鳴き叫ぶ。

「………死ね。」

そんな独り言が聞こえたと同時、妹紅はまた熊に向かって右手を振り上げる。

熊にバツ印のような焼け傷がつく。

 

(何が……)

 

何が起こっているのだろう。

何一つ理解できない餅士は、この事態を見守ることしかできなかった。

熊は叫びを上げるだけで、もう攻撃することもできない。妹紅はその間、何度も何度も右手を振り続けて、熊の腹を焼き切っていた。

 

「しね、しね、しね、しね、しね、ひね、しね、しねよ、しねっつってんだろ!!」

 

ジュッ、ザク、ザクッ、ジュァ

 

妹紅は取り憑かれたように言葉を吐きながら、何度も、何度も何度も熊を切る。

肉の切れる音と、焼ける音が一斉に聞こえて、耳を塞ぎたくなるようなくらいの、残酷な音が響く。

やがて、ブショアという生々しい音とともに、熊の大きな肢体は倒れた。

 

「ハァ、ハッハッ、ハッ、ァァ………」

 

妹紅は息切れとも言えぬ短い呼吸をしながら、フラフラと餅士の方へと向かおうとした。しかし、餅士の目の前で崩れるように倒れた。

 

「も、こ………う」

 

名前を呼ぶ。返事はない。力なく倒れる自分の体に向けて、餅士は動け、動けと一心に命令を送る。ピクッと体が動いたのを機に、餅士はズルズルと地面を這いつくばりながら妹紅の方に近づく。

 

「もこう、もこう………!!」

 

もはやありがとうなど言うことは出来なかった。自分のせいで、その同居人は、その少女は、無惨な姿で倒れ、死んでしまうのだ。

 

「ごめん妹紅……!!もこう…!」

 

謝ってももはや意味はない。彼女は息を引き取っているだろう。自分の勝手な行動のせいで………餅士は力なく歯を食いしばって、己の惨めさを心中で嘆いた。

その時、妹紅の傷口から小さな炎が燃え始めた。

その小さな炎は少しずつ大きくなっていき、妹紅の傷口を覆っていく。

そして妹紅の体を火が包み込み、火がついた所から段々とその体は元へ戻っていく。

 

(何が、起こってるの………?)

 

またも起こる理解不能の事態に、餅士の頭は混乱する。

 

その間にも炎は燃え移り、妹紅の体を再生していく。気づいた時には妹紅の体にはもはや傷などなく、いつもの綺麗な体に戻っていた。

 

(何だったのですか――――)

 

そう思いながらも餅士は、妹紅の体が戻った事に安堵し、そして深い闇へと意識が落ちていった――――

 

 

 





シリアス展開で終わりました。
今回は前より長めの文章になりました。
自分としては一話の文字制限などは設けていないので、これからも長かったり短かったりすると思います。

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