東方麺祭伝   作:CLAM

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ラーメンはこってり。

では第四話です。




四杯目...麺屋と銀花は語らう

『餅士よ、聞け。人はな、生きれば必ず大切な人が見つかるんだ。』

 

『大切な人がどんな人かは分からない。でも直感で分かる。直感でわからなくとも、あるとき絶対にふと気づく。』

 

『それがわかった時はな、絶対に守るんだ。どんなに辛くても、守らにゃならん。それは、男だからとかそういう問題じゃないんだ。これは、生きる存在としての義務だ。』

 

 

『ガハハハハ、俺はもちろん餅士だ。だから、何があっても餅士を守り続ける。これは店主でもなく、保護者としてでもなく、生きる存在としての約束だ―――』

 

 

 

 

 

徐々に意識が戻りゆく中で、

餅士は体が少しずつ暖まっているのを感じる。

どうやら、まだ自分はこの世から消えてなどいなかったようだ。

薄く目を開いて、外を見る。

まだ視界はぼやけてはいたが、夕暮れの中風に揺られてガサガサと音を立てる木々と、パチパチと焚火が燃える音。そして目の前にはコクリコクリと頭を動かしながら眠る銀髪の少女がいた。

どうやら、気を失っている間ずっと膝枕をして看病していてくれていたようだ。

見慣れた少女の名前を、餅士は呼ぶ。

 

「妹紅……?」

 

「んっ……餅、士?」

 

その少女、妹紅はゆっくりと目を開ける。

燃えるような赤い目が餅士を捉えたと同時、パッと明るい笑顔を見せた。しかし、それも一瞬。妹紅はハッと気づくと目を逸らし、気まずそうに顔を逸らす。

餅士は彼女をじっと見つめた。薄れゆく意識の中で、彼にはどうしても言いたかったことがあった。

 

「妹紅、ごめんね。」

 

「………っ」

 

妹紅が再度餅士の方を向く。その表情は、もう今にも泣きそうであった。

 

「…なんで、お前が謝るんだよ。」

 

かすれた声で妹紅は呟く。

餅士は、自分の本心を言葉にのせた。

 

「僕が、欲張って野草を集めようとしたから。

僕が、無理をしたから……妹紅を傷つけちゃった。」

 

「………馬鹿っ、私なんか、…私なんか傷ついたって何も変わらないっ!だって―――」

 

―――私は、死なないんだから―――

 

餅士は妹紅の言った言葉を心で反芻する。

その可能性は、炎で再生する姿を見た時から考えていたものであった。

死なない。そのことの異常性は、常識の知らない餅士ですら分かる。それは人間の誰しもが持つ願望で、しかしそれはとても起こり得ることではなく、それはあってはならないことであり、それはある種の生命への冒涜である。

そう、不死とはそれほどの禁忌である。餅士はそう認識していた。餅士は、口を開く。

 

「だから、何だって言うんですか………?」

 

「……え?」

 

妹紅が目を見開く。

餅士は腕で地面に力をかける。まだ寒さで鈍っているのか、体は重く引きつっていて、うまく動かすことができない。

それでも、餅士は動かそうとした。カクカクと腕を震わせながら体を起こし、妹紅のほうを向くと、両手で

優しく妹紅を抱き寄せた。

 

「へい、し?」

 

「そんなこと、なんでもないです。

自分は妹紅を守れませんでした。自分の恩人を助けられませんでした。だからごめんなさい。妹紅が僕のことを見を呈して守ってくれました。だから、ありがとうございます。それだけです。自分が思っているのはそれだけです。

妹紅が死なないなんて関係ないです。ううん、また妹紅とこうやって話せて、謝れて、ありがとうって言えたのですから、今は感謝しないとです……。」

 

「…………うっ、へ、へいし………っ…!」

 

餅士は、妹紅を抱きしめる腕の力を強める。

妹紅も腕を兵士の腰に回して、こらえきれず、涙を流した。

餅士としてはこんな状況に会ったことなどないため、どうすればよいか戸惑っていた。

 

(でも、妹紅の気が済むまで、このままにしておきましょうか………)

 

そう心に決めて、2人は、妹紅が泣き止むまでずっと抱きしめ合っていた。

餅士は、冷えきった身体が内側から暖まっていくような感覚を味わっていた。

 

 

 

「悪いな餅士。ありがとう。」

 

「うん、どういたしまして。」

 

泣き止んだ妹紅は、そっと餅士から離れると、優しく微笑んで切り株に座った。目がまだ腫れていたがスッキリとした表情であった。

餅士はその様子に安堵すると、妹紅に倣うようにもうひとつの切り株に座り、あることを提案した。

 

「じゃあ、今日は寝るまで二人の話をしようよ。僕は妹紅のこと、もっと知りたいな。」

 

「…………ああ、そうだな。私も、餅士のことをもっと知りたい。」

 

妹紅は少し考え込んだが、顔を上げて、その提案に賛成した。

妹紅は、さっき元気づけてくれたお礼に。と自ら自分の隠していたことを話始めた。

 

「餅士、最初に名乗った時私は苗字を言わなかったよな?あれは、言うと色々とバレるかもと思ったからなんだ。」

 

「あ、確かに。そう言えば妹紅しか聞いてなかったね。そんなに有名な家柄の人なの?」

 

「ああ、藤原家……って言うんだけど、知ってるか?」

 

「フジワラ……いや、知らないよ?、ん待って」

 

餅士は考え込む。フジワラ、聞いたことがある。先代が話しているとは考えにくいから、おそらくテレビだが、何だったか………

 

「あ、思い出しました。………フジワラさん、確かにこっちの時代でも有名な人だった。」

 

「そうなのか?私が生まれてから、ずっと藤原家は活躍してるけど、それは未来の世界でも変わらないんだな。で、そいつは何してるんだ?」

 

「ん?確かお笑い芸人だよ。」

 

「おわらいげいにん?」

 

妹紅が顔をしかめる。あまり良くわからなかったようだ。なるほど、お笑い芸人はやはり最近生まれた職業なのか。餅士はその説明をする。

 

「お笑い芸人は、ツッコミとかボケとかを使って人を笑わせる仕事の人達だよ。」

 

「ツッコミ?ボケ?よく分からないけど、人を楽しませるって意味では芸者みたいなもんか?政とかに関わってるのかと思ってたけど、案外庶民っぽい方に移ってるんだな………意外だった。」

 

妹紅は驚き呟く。その言葉を聞く限り、この時代の藤原家は随分と偉い人なのだろうと餅士は推測したが、何も言わなかった。その質問には意味が無いのだから。妹紅もそのことを分かっていたのか、これ以上藤原家について何かを話そうとはしなかった。

そして、妹紅はまた目を伏せたかと思うと、重々しく口を開いた。

 

「あと、私はな……死なないんだ。不老不死の身を持っている。」

 

「……うん。」

 

餅士は妹紅に笑いかける。気になどしていないと言うように。それを見た妹紅も安心したように微笑む。

 

「まだ私が幼い頃……と言っても、不老不死だから顔立ちはほとんど変わってないんだけどな、ある女のせいで私の父は恥をかかされたんだ。私はその女を父の敵と思って復讐を考えてた。でも、その女は実は普通の人間じゃなくてな、月の住民だったんだよ。」

 

「月の……住民?月って、あの空に浮かぶお月様のこと?」

 

「そう。」

 

驚いた。月に人が住んでいるだなんて。

しかし、不老不死などというものが実在したのだ。そう簡単に嘘だと思うこともできないし、実際嘘ではないのだろう。

餅士はもう一度妹紅の話に耳を傾けた。

 

「それでな、その月の女……かぐやと言うんだが、かぐやは私が復讐する前に月へ帰っちまったんだ。悔しさと憤りに、なんとか一泡吹かせられないかと画策したんだ。

その時思いついたのが、かぐやが帝に渡した、蓬莱の薬を奪い取ることだった。」

 

「蓬莱の薬って?」

 

「月で作られたであろう不老不死の薬さ。月はこの私たちが住んでる世界より遥かに技術が進んでるらしく、そういうものも作れるそうなんだ。」

 

「そうなんだ……ってことは」

 

「ああ、……色々あったけど、とにかく私はその薬を奪うことに成功した。そして、幼く弱い私は、誘惑に負けてそれを飲んだ。で、今に至るわけさ……。」

 

妹紅は空を見ながら、昔話を語るように話した。その顔には様々な表情が隠されているように餅士には見えた。

悲しみ、苦しみ、怒り、後悔。沢山の気持ちが溢れて自然と顔にあらわれている。

どれだけ辛い思いをしたのだろうか。自分には分からない。だからこそ

 

「辛かった?」

 

と問う。辛かったのは顔を見れば推測できる。しかし、餅士は理解できない。だからこそ、分かったふりをしていられなかった。

それは餅士の純粋さからくるものであろう。

すると、妹紅は意外な答えを返す。

 

「辛かったさ。ただ、今はもう生きてて良かったかなって思ってる。」

 

餅士は予想もしなかった答えに少し驚く。

 

「どうしてですか?」

 

そう聞くと、妹紅は照れくさそうに答える。

 

「まあ、恥ずかしいが…餅士のおかげだよ」

 

「ぼくのですか?」

 

餅士は驚いて、聞き返す。妹紅は相変わらず照れくさそうだったが、今しかないとばかりに話し始めた。

 

「最初はさ、どうしてこうなったんだろうって、自分を悔いて、他人を憎んで、世界を呪ってた。その後、どうにかこの体でやっていけないかと思って努力した。でも、ダメだったんだ。色んなものや人が変わり行く中で、私だけが止まったように変わらない。そんな私を誰もが恐れたよ。『妖怪』って。それでも私は役に立とうと妖怪狩りを始めた。今までの怒りを、全部妖怪にぶつけたんだ。そしたら、いつの間にか私は『妖怪をも殺す化物』になってた。それでさ、なんで私は生きてるんだろうって、なんで死なないんだろうって思い始めた。いや、狂い始めた。それからは、わざと死に急ぐ真似をして、死んで生き返って、死んではまた生き返って、もうほんとなにしてんだか。」

 

妹紅は悲しく笑いながら語る。

そんな妹紅が痛々しくて、餅士は見ていられなかった。途中で何度も止めようとした。しかし、語ろうと決意した妹紅を止めることは出来なかった。妹紅は語り続ける。

 

「そんなことを思って壊れかけていた私のもとに、餅士が現れたんだ。あの時は、食欲もなく、飢えて死ぬつもりだったんだよ。そんな時に、餅士が焦った顔で私を助けようと……なんだっけ、らあめん?を食べさしてくれた。何だこれと思って食べたものはさ、生まれた中でもう一生食えないんじゃないかってくらい美味くて……すごい、満たされたような気がしたんだよ。」

 

目を瞑ってその光景や味を思い出すように語る妹紅。そんな姿に照れくさくなって、餅士は顔を俯かせる。

 

「なんでだろうな。人を避け続けてきた筈なのに……お前が家に困ってるとき、咄嗟にうちに泊まれって言っちまったんだ。それからの生活はこれまでの数百年の人生集めても勝てないくらいに楽しかった。楽しかったよ……。たった1年の半分にも満たない時間の間だけど、私だけでは数百年かけても味わえない幸せだった。だから、餅士が帰ってこなくて、とても怖かった。何もかも忘れて餅士を探した。餅士が熊に襲われかけてるとき、不老不死のことなんて忘れて、ホントに死ぬ気で助けようと思ったんだ。バレたらどうしようとか、怖がられるかなとかそんなこと全く気にせず、餅士を助けるためだけに動いていた………。私にとって、それくらい餅士は大切な存在になってたんだ……。」

 

目頭が熱くなる。照れくささと嬉しさで妹紅の方が見れない。

 

「餅士、私はあの時、お前が野原で私を助けてくれてた時、二度お前に救われてたんだよ。だから、今もう一度言わせてくれ。助けてくれてありがとう。」

 

餅士はゆっくりと顔をあげる。妹紅の目には涙が溜まり、頬に薄く伝っていたが、とても優しい顔で、微笑んでいた。

炎の明かりで照らされたその顔に、餅士は引き込まれるような感覚を覚えた。

餅士もその時気づいた。

自分にとっても妹紅は大切な存在になってたんだと。妹紅が自分に救われたように、自分も妹紅に救われていたのだと。

それを認識すると、震える口を開いて餅士は言葉を告げた。

 

「どう、いたしまして。」

 

その言葉を聞いた時の妹紅の笑顔は、赤い炎に彩られて、照り輝いていた。

 

 

 

 

それから、たくさん話をしたあと、二人はこれからについて話す。

 

「もうすぐ冬に入るけど、どうしようか………これ以上は耐えられる気がしないよ………」

 

「そうだな………結局食料も集めないといけないし、でも今日みたいなことにはなりたくない。どうするかな……」

 

「うーん。」

 

餅士と妹紅は思考を凝らす。

今回の一件で身にしみて分かったことは、これからの食料集めはかなり危険であるということであった。

しかし、そうはいうもののやはり食材は大事であって、尽きてはいけないものである。

なんとか安定的に食料を手に入れる方法はないか……。

 

「あ、栽培するってのは?この周りは森なわけだし。土地はいっぱいあるよ。」

 

「栽培するのはいいんだが、今回どうにかすることができないじゃないか。」

 

「そうか、そうだね………」

 

餅士はまた考え出す。しかしかなり難しい問題であった。何かないかと振り絞っていたところ、妹紅が少し躊躇いがちに提案した。

 

「……人里を、探すか……。」

 

「え?」

 

兵士はその言葉に耳を疑った。妹紅はさきほど自分で言っていたとおり、人里でいじめられる経緯を持つ。その人里とは違うところとはいえ、そんな事はしたくない。そういう気持ちのはずだった。しかし、もこうが自ら提案したということは、自分の事を思っての苦渋の案だったのだろう。餅士は聞いた。

 

「大丈夫なの?」

 

「ああ、餅士がこれ以上無理をするのは厳しいし……それに、私もずっと逃げてはいられないからな。」

 

やっぱり、藤原妹紅はどこまでも強かだ。

彼女の強かさは、一度人々によって潰されかけたが、また元に戻ったものなのだろう。餅士はそのことに思いがけず笑みがこぼれた。

 

「なんだよ?」

 

「ううん、なんでもない。じゃあ、明日人里を探しに行こっか。」

 

「ああ。」

 

二人はそう約束してから、眠りについた。

―――そして、次の日の朝になった――




麺はいつ出るって?
やだなぁ、いつか出ますよ。いつか。

なんてタグつけたらいいんだろうと悩んでいます。
こんなタグつけといたら?
というのを募集してます(他人まかせ)
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