食レポも難しいですね…精進します。
では、第六話です。
しがない麺うちの職人だった少年、麦野餅士は、
銀髪ロングの少女、藤原妹紅と村に住む黒い髪の女性、幸と一緒に村を散策していた。
餅士の隣には、腕を組む形で餅士に寄り添う幸と
腕を組みながら不満そうに歩く妹紅がいた。
「あの、歩きづらいんですけど……」
「まあまあ、若者の余裕ってことで許してよぉ。
餅士くんを見ると、お姉さんの若い頃が思い出されて、ついつい乙女になるのよぉ……」
「いや、幸さんまだそんなに年をとってるわけではないでしょう………。」
「まあ!まださっちゃんは若くて可愛らしいですって!やぁんお世辞がうまいわねぇ。もっと好きになっちゃいそう!」
「ポジティブすぎます!そのままの意味です!」
「ちっ……イチャイチャしやがって……」
幸はハイテンションで餅士に絡み、餅士はその対応におわれてアタフタ。妹紅はその様子を見てブツブツと呟く。道行く人からは、声をかけられたり、やれお熱いだのと茶化されたりして、餅士の精神力はゴリゴリと削られていった。
そして、幸の目指していた和菓子屋につくまでには、
餅士はがっくりと肩を落としながら歩いていた。
妹紅はお疲れといったように餅士の背中をポンポンと叩いた。
幸は、餅士を引きずるような形で店に入る。
店の中はほとんど木で作られていてで、細かいところまで装飾されており、とても整然とした和の雰囲気があった。
中には、カウンター席のようなところが数箇所あり、
3人はそこに並ぶように座った。
幸が店の奥に声をかけると、中からとてもガタイのいい男性が出てきた。とても和菓子は作らなさそうである。
「ようさっちゃん。今日は見ない顔を連れてきてるじゃあないか。彼氏かい?」
「違います!」
「まあまあ、そう見えます!?そう見えます!?」
「はぁ……」
このやりとりに疲れたと言わんばかりに溜め息を漏らす妹紅。この状況にもっとも溜め息をつきたいのは餅士なのであるが…。すると、和菓子屋の男は言った。
「そこの彼氏さんも、そっちの銀髪の嬢ちゃんも見ない顔だね。余所もんかい?」
「だから彼氏じゃないです!」
「そうよ泰さん。この二人は冬になって食べ物に困ってきたから食べるもの探しにいろいろと探し回ってたみたいなのよぉ。だから、どちらかって言うとこの二人が男女の仲?」
「ちょ、バカっ。そんなんじゃないっ…!」
妹紅は顔を赤らめながら否定しようとするが、それは先ほどの和菓子の男――泰さんと呼ばれた人の笑い声に消された。
「はっはっは!!そうかいそうかい。それならまあ休んでいけ。和菓子で腹は満たせんだろうが、寒さで冷えた心は満たしてやるからなぁ!」
「まあまあ泰さん張り切ってるわねぇ!!
とても台詞がくさいわ!!」
泰さんは、笑いながら店の奥へと行く。
注文を聞かれていないのだが……と餅士と妹紅は思っていたが、幸がそれについて答える。
「泰さんは基本注文を取らないのよ。
自分の底から沸き上がる想像を和菓子作りに当てはめて、それでできたものを出すの。」
「それって結構博打じゃないか?」
「私もそう思ってたけど、案外そうでもないのよぉ。泰さんの作る和菓子、みんなおいしいの!」
「そうなのか……。」
妹紅が意外そうに呟く。たしかに、あのガタイで和菓子を作っていると言われても冗談だと思ってしまうだろう。
ふと、餅士はさっき気になったことを幸に聞く。
「そう言えば幸さん、歩いてる時もけっこう人から話しかけられたりしましたけど、この村では人気者何ですか?」
「いえいえ、そうじゃないわぁ。ただ、村のみんなが優しいだけよぉ。私みたいな余所者を、ずっと心配してくれてるだけ。」
「幸さんは、この村の出身じゃなかったんですか?」
餅士は驚く。あれほどまで村の人達と馴染んでいたので、勝手に村出身なのかと思っていた。
これについては妹紅も驚いていたようで、目を開いて幸の方をみる。幸は言葉を続けた。
「ええ、2、3年くらい前かしら…
村の前で倒れてた私を助けてくれてねぇ。
あの時は本当に迷惑をかけたでしょうね……。」
深く話を聞こうかとも思ったが、不思議と聞く気にもなれず餅士はそのままにしておいた。
すると妹紅が、静かに口を開く。
「今は、幸せなのか?」
それを聞いた幸は少しびっくりしたような顔をするが、すぐに微笑んで言った。
「ええ、幸せよ。この村に来てなかったら、多分私は生きてはいなかったし、生きていても今みたいな幸せは得られなかったと思う。」
「そう……そうか。」
妹紅はそっと微笑む。安心したような、それでいてどこか悲しげな表情。餅士が妹紅に話しかけようとしたとき、ちょうど泰さんが、3人分の和菓子を作り終えて、戻ってきた。
「ははは!辛気臭え話は、甘いもん食って振り払うが吉だ!今回は甘餡菓子だ!」
そう言って、泰さんが前においた和菓子は、若々しい緑色のもみじの葉を模した饅頭であった。
丹念に形作られたその饅頭に感心しながら、妹紅と餅士は半分に分けて、口に含む。
「わあ、おいしいです。」
緑色の生地の中に込められた餡もまた、深い緑色であった。さらっとした舌触りの、そのこし餡は優しい甘味の中にある、ほのかな苦味がアクセントとなって、深い味わいの餡菓子となっていた。
餅士は思わず舌鼓を打つ。このガタイから作られたとは思えないほどの繊細な和菓子だ。
妹紅のほうを見ると、こらえ切れんとばかりに顔をにやけさせながら味わっていたかと思うと、口元をこすって真剣な顔でもう半分を食べ、また幸せそうなにやけ顔をしていた。
「この餡……抹茶を入れてるのね。」
「さすがさっちゃんだ。秋も終わる頃にこういう新緑の和菓子ってのも、なかなか粋なもんだろう?」
餅士はもう一口も食べる。
深い緑のこの饅頭は、この季節のせいでもあるのか、餅士にとって、とても新鮮な味わいであった。
この季節すらも味方にした素朴かつ大胆な和菓子に
餅士は思わず感動してしまった。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「ああ、お粗末様だったな!」
餅士は感服の意もこめて、合掌する。
泰さんは豪快な笑いと共にそれに返す。餅士はその豪快さと作る和菓子との繊細さのギャップが、不思議に思って苦笑する。
「さ、それじゃあ次も回りましょうか。」
「まだあるのか。楽しみだな。」
妹紅は楽しそうに会話する。どうやら泰さんの餡菓子が随分とお気に召したようで、次は何を食べるのか。それだけしか考えていないようである。
あれほど警戒していたのに…と餅士はまた苦笑して
3人は泰さんの店を出た。その時、
「………この感覚、この香り………」
ふと餅士が立ち止まる。それを不思議に思った幸と妹紅も立ち止まり。餅士の方を見たと同時、
餅士は猛スピードで通りの奥へと走り出した。
「ちょ、餅士!?」
「どうしたの餅士くん!?」
何が起こったのかわからないまま二人は、慌てて餅士を追いかけるべく、餅士と同じ通りの奥へと走っていった。
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「はぁ…!はっ…!まって、もこちゃんっ…!」
「おっそいよ……。ほら、早く。」
「そんなこと…!言われても…!」
妹紅と幸は、走り去った餅士を追いかける途中だったが、運動し慣れていなかった幸は持続するはずもなく、餅士との距離はどんどん離れ、今は既に餅士を見失っていた。
待ちきれず、妹紅は幸をおんぶする。幸は少し驚くが、すぐに妹紅の髪に顔をうずめ、恍惚とした表情になる。
「あー、とても楽だし、もこちゃんの髪を独り占めできるし、快適だわぁ。」
妹紅は呆れてため息をつくが、そのままおぶって走り出す。
そして、道いく人に尋ねていく。
「ああ、そう言えばさっき緑の服を着た少年が優さんとこ――あの赤屋根の店に入ったのを見たよ。」
「そうか、ありがとう。」
何人かに話を聞いたところで、有力な情報を得る。妹紅はその赤屋根の店の方まで目にも止まらぬ速さで走る。
途中、幸の「降参!無理!」と言う声が聞こえたが、無視した。
すぐに赤屋根の店にはつき、気持ち悪そうにうなだれる幸を尻目に、店の中へと入った。
「餅士、いるか!?」
妹紅は餅士の名前を呼ぶ。返事はなかったが、奥からドタドタと走る音が聞こえ、厨房から少し小太りのおばさんが困った顔で飛び出してきた。
「お迎えかしら?いきなり来てこまってるのよ……。」
「ああ、迷惑かけたみたいで悪い…。」
そう言って厨房の中に入らせてもらうと、
なにやら袋をジッと見つめる餅士がいた。
「……なんだよ、たく…。戻るぞ餅士。」
妹紅は謎に思いながらも、餅士を連れていこうとした。しかし、餅士はそれを払いのけ、また袋を凝視する。何なのかと思って袋を見ると、そこには大量の小麦が入っていた。ふと餅士が口を開く。
「………中と強の間くらいかな……。」
ますます意味が分からなくなる妹紅。
この店の女将さんも首をかしげている。
奥からはそっと厨房に幸が入ってくるが、やはりこの事態を見てキョトンとしている。
すると、おもむろに餅士はさきほどの女将さんに問いた。
「この小麦からできた小麦粉ってありますか?」
「え、ええ。あるけど……どうするの?」
やはり状況が読み込めない女将さん。
しかし、幸はなにやら合点がいったかのようで、女将さんにヒソヒソと話す。
すると、女将さんはああと納得したようで、
すぐにとってくると言い残して材料庫のほうに向かった。
「なんて言ったんだ?」
「んん?適当に理由をつけただけよぉ。」
妹紅の質問は、きれいにはぐらかされ、妹紅は少し不満を覚える。
言っていた通りすぐに戻ってきた女将さんの手には、白い粉末が大量に入った袋。
「あんた料理作るの好きなの?
そういうのなら喜んで作らせてあげるよ!」
「あ、ありがとうございます。」
ここで妹紅はなるほどと思った。
この状況を見て幸は、餅士が料理人であることを見抜いたのだ。
妹紅も忘れがちになるが、彼はたしかに元いた時代で店を経営していた。
幸もああ見えて、なかなかに鋭いやつなのだなと妹紅は感心した。
そんなことはお構いなしに、餅士は料理の準備をする。
次々と材料を出していき、手にとって舐めたり、匂いをかいだりして、素材を確かめる。
「この水、既に塩っ気がある……。この水、どこからとったんですか?」
「ああ、近くの川の水だよ。その川の水源が塩気のある湖でねぇ。そこから塩と水は手に入れてるよ。」
「なるほど……後で寄ってみよう…。」
女将さんともいろいろな会話をしながら用意をし、準備が出たかと思うとすぐに調理をはじめる。
「何を作るのかしら?」
「分からないけど、多分美味しんじゃないかしらぁ。」
女将さんと幸は料理をする餅士の話をする。
しかし、餅士と一緒にいた妹紅はとても不安になる。今までの餅士の料理は、決して美味しいと言えるものではなかった。
唯一美味しかったのは、あの初めて会ったときに食べた、らあめんという料理だけ。
大丈夫だろうか……。
餅士は小麦粉に先ほど言っていた川の水を少量加えこね出す。
何かの生地作りだろうか……。
そんなことを考えていたところで、幸が妹紅と女将さんの背中を押す。
「さあさあ、邪魔にならないようにわたし達は待っておきましょう!」
妹紅は言われるがまま、厨房の外に出て、餅士の料理ができるのを待つのであった。
待つこと数十分、作り終えた餅士が
3人分の器を持って来た。
「すみません。下ごしらえからしたので、時間がかかりました。」
「いいのよぉ、何を作ってくれたのかしら?」
餅士はそれぞれに器を置く。
暖かく、湯気が出ていたそれの中身は、
なんの盛りつけもされていないうどんであった。
「餅士、これ麺しかないぞ?」
「ああ、そうだった。」
そう言って、餅士が取っってきたのは、温泉卵や葱などで色鮮やかに盛りつけされたスープだった。ドロっとした感じで、スープというよりタレのような感じだ。
「これが、出汁なのかしら?」
「はい、うどん版つけ麺……つけうどんです。麺をこの出汁につけて食べてください。」
妹紅は不思議そうにそのスープを眺める。
幸は少し香りを味わったあと、すぐに麺をスープをつけて食べる。
「んー、美味しいわぁ。」
幸は、幸せそうな笑顔を見せる。
それを見て、妹紅もそれを食べる。
「……う、うまい……。」
妹紅は思わず口元を押さえる。
コシが強く、モチモチとした弾力感があった麺とドロっとした味噌ベースのスープが絶妙に絡み合い、口に含んだ瞬間に味噌の旨味が口いっぱいに広がる。
口の中の麺をしっかりと味わう。
麺に使われた小麦の甘味が、しっとりと妹紅の口を喜ばせる。
妹紅も思わず幸と同じ幸せそうな笑顔になってしまう。女将さんも同様のようだ。
3人は、黙々と麺を食べ、あっという間に一人前を平らげた。餅士も自分の分を作っていたようで、
ごちそうさまと手を合わせていた。
「いやー、おいしかったよほんと。
餅士くん、だっけ?また作りに来てほしいわねー。いつでも歓迎してるわー。」
「あ、ありがとうございます。」
「美味しかったわぁ。ごちそうさま。」
「ああ、美味かった。」
「うん、ありがと。」
そんな感じで、餅士たちは店を出る。
餅士は女将さんに頼んで、小麦の束をもらっていた。おそらく育てるつもりなのだろう。
「さ、じゃあ次はどこに行きましょうか!」
「あ、すみません。僕ちょっと行きたいところがあるんです。」
餅士は少し言葉を挟む。
「そうなの?じゃあそこに向かいましょうか。」
「ああ、一人で大丈夫です。」
「………どこに行くんだ?」
「女将さんが行ってた川のところ。近くって行ってたからすぐに戻ってこれるはずだよ。」
「そうか……。分かった。」
妹紅も少しシュンとするが、了承する。
餅士はありがとうと言ったあと、女将さんに聞いたとおりの道を餅士は歩いていった。
「大丈夫かな……。」
少し不安そうに呟く妹紅に、幸は言う
「…じゃあ、餅士くんが帰ってくるまで女の子二人で楽しみましょうか!」
次くらいに誰か出てきそうな気がします。
ちなみに、今更ですが
今のところ出てきた村の人は幸(さち)、泰(たい)
という呼び名です。女将さんは優(やす)です。