人工天使4姉妹のキヴォトス体験記   作:アキラゼミ

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次女編第1話:メイド部に舞い降りたお嬢様

 

「──そんなワケで!天使(あまつか)アン、本日よりC&Cでお世話になりますわ!」

 

「うん!よろしく〜っ!」

 

「もし分からない事があったなら、遠慮なく聞いてくださいね」

 

「数学はともかく、C&Cやメイドの事なら私でも教えられると思うから、何かあったら言ってね」

 

 ある日、シャーレを離れてミレニアムサイエンススクールへとやってきた人工天使擬人化シリーズのアンブロジウスことアンは、C&Cの体験学習にとC&C部室に来ていた。

 幼い見た目で、メイド服の少女達の中に1人だけゴスロリが居て目立ってはいるものの、どの生徒も快くアンを受け入れているようだった。ただ1人、コールサイン・00(ダブルオー)こと部長の美甘ネルを除いて。

 

「……って、なんでどいつもこいつもすんなり受け入れてんだっ!?」

 

「アスナ先輩の判断だし……というより──」

 

「ネル先輩が不在の時にはアスナ先輩の判断で、と取り決めされてますし、何より──」

 

「確かに、先生が来た?って時あたしは不在だったけどよ……!前*1にそれでセミナーにやり込められてメイドカフェやらされただろーが!!どうしてまた安請け合いするんだよっ!?……アスナ!!」

 

「だって、ご主人様からのお願いだもん♪」

 

「アスナ先輩と同じです。私もご主人様のお願いは頑張ってこなしたいなと……」

 

「アスナ先輩がOKしたのを抜きにしても、先生に日々の恩返しがしたかったし……この子の面倒を見るくらいで先生が喜んでくれるなら、きっとその方が私達にとってもいいだろうとも思って」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ……!!」

 

 3人揃ってその反応なので、ネルは言葉を返せずプルプルと震える事しかできなかった。

 恐らく先生は、自分が反対するのを見越した上で敢えて自分が不在の時を狙ったのでは──と先生を疑いもしたものの、これに関しては否である。

 ノアとの逢瀬の為にミレニアムに来た際に、折角ミレニアムに来たのだからと、アンの体験学習先になる予定のC&Cに、モモトークではなく対面で、アンについて依頼したのだ。ただしその時、ネルはゲーセンでアリスと格ゲーに興じており不在だったというのが実情である。

 

「……先生はなんて?コイツの面倒を見ろってか?」

 

「まぁそんな感じかな?ね、アンちゃん?」

 

「ニュアンスにほんの少しの違和感はありますが、大体そうですわ!このミレニアムきっての戦闘集団であるC&Cでなら、この私の強さが、今より更に磨き上げられるだろうと思いましたの!」

 

「あのな、ガキのお遊びじゃねぇんだぞ。仕事(・・)だ。金も発生するし、請けた以上は『任務失敗しましたすみませーん』で済むような生温い世界じゃねぇ。しかもこちとら明日にはデカイ任務を控えてんだ。準備もしなきゃなんねーってのに、思い付きでお前みたいなガキを迎えるワケにはいかねーんだよ」

 

「……!」

 

「先生には悪いと思うが、お前の体験学習?の件は断らせてもらう。良くて、この任務の後始末までが終わってからだろうな。それまで待て」

 

「デカイ任務──ですか?」

 

「あぁ。先生ンとこのヤツだから教えてやるが──ミレニアムの最新技術を狙ったクソ会社が、近々、学校に攻めてくるって裏情報をウチのヴェリタス(ハッカー集団)が掴んだみてーでな。セミナーからの正式な依頼だ。理由が理由だけに今回はあたしもガチるつもりだ」

 

「……」

 

「規模としてはカイザーPMC未満だが、私兵をも有しているそうだ。だから、ガキのお()りしながら務まるような仕事じゃねぇってこった。分かったらさっさと帰んな、悪い事は言わねえ」

 

 ズバッと切り捨てるネル、流石のアスナもアンを庇う言葉を出せないくらいの正論パンチであった。カリン、アカネもまた同様に。しかし……。

 

「それなら尚更、私を連れて行くべきですわ!私の殲滅力はあなた方C&Cにも劣りませんの!寧ろ、殲滅力だけで言うのなら、ネルさんよりも上とすら認識してますわ?」

 

「……言うじゃねぇか。そんなに言うなら、この場で試してみるかよ?」

 

「望むところですわ?敵の数が多ければ多いほど、私の攻撃は輝くんですのよ?寧ろ、優秀な助っ人が来たと歓迎してほしいものですわね♪」

 

 挑発するようなムカつくドヤ顔に生意気な発言、ネルの堪忍袋の緒は今にも引きちぎれそうだった。お互いに銃に手を掛け、室内乱闘を始めようとしたまさにその瞬間────。

 

「失礼しま────って、何やってんのよ?室内で乱射はやめてよ、修繕費が嵩むから」

 

 ヌッ♡と現れたのはセミナーの会計ことユウカ。今回のC&Cへの依頼人であって、人工天使擬人化4姉妹にとって見れば、理解ある良き友人である。

 

「げっ、セミナーの……」

 

「『げっ』って何よ。明日の任務について、あまりド派手に暴れすぎないよう忠告に来ただけなのに」

 

「あーもう。何度も言われなくても分かってるよ。敵兵力の無力化と施設の中枢の破壊だろ」

 

「そう、速やかに的確にお願い。──って、なんでアンちゃんがここに!?」

 

「数日ぶりですわね。先生の取り計らいで本日からC&Cに体験学習に来ましたの」

 

「あぁ……成程、体験学習(その件)ね。さっきグレイちゃんとリンゴちゃんもセミナーに来たわ。明日の任務にもついて行くの?」

 

「もちろんですわ」

 

「テメッ、勝手に何を言っ……」

 

「そう、なら安心ね(・・・・・)。でもアンちゃんが行ったら、すぐ終わっちゃうんじゃない?」

 

「ふふっ、腕の見せ所ってヤツですわ♪ なんならタイムアタックしてやっても構いませんのよ?」

 

「コラコラ。民間企業とはいえ軍人が相手なのよ?遊び感覚ではダメよ」

 

「はぁ〜い♪」

 

「……でもまぁ、あなたなら遊び感覚で殲滅できるんでしょうけど。くれぐれも気を付けるのよ?」

 

「ええ、モチロンですわ。ネル先輩のサポートをも完璧にこなして魅せましょう」

 

「期待してるわ。明日はよろしくね」

 

 たぷたぷっと豊満な太ももを揺らして、ユウカは部室を出ていく。彼女の発言を聞いていた一同は、このアンという少女のことを、とんでもない怪物を見るような目で見ていた。

 

「ユウカさんに言われたのでは仕方ないですわね。遊び感覚は捨てて、真面目に『仕事』しましょう。という事ですから明日もよろしくお願いしますね?ネル先輩?」

 

 これまで幾度となくC&Cに任務を依頼してきたユウカが、アンの実力を認めるような発言をした。

 C&Cの実力を知った上での発言──今のアンとユウカのやり取りは、アンだけなら「C&Cの力を知らないから」と言えるだろうが、ユウカは違う。C&Cの実力を知った上での、あの発言なのだ。

 

(口うるさいあの会計が、このガキに……?)

 

 総力戦・人工天使擬人化4姉妹とセミナーの間に交戦記録が残されている。ユウカではなく、実際に現地で交戦した生塩ノアが残した戦闘記録だ。

 ユウカはノアのデータを全面的に信用している。だからこそ、ユウカはアン達4姉妹の、誇張抜きのありのままの実力を知っているのだ。

 そこまでの事はネルすら預かり知らないものの、ネルは──ユウカがC&Cの実力を知っている事を知っている。

 そんなユウカからのお墨付きだからこそ、ネルは今一度、アンへの評価を改めようとした。

 

「──お前ら。明日の任務だが……予定変更だ」

 

「「「えっ?」」」

 

「アスナとアカネもあたしと一緒に前線に出る予定だったが、建物の入口付近かどこかで待機してろ。すぐに動けるようにだけ備えておけ。カリンもだ、監視だけしてろ。手出しはすんな」

 

「なっ……」

 

「あたしとこのガキ2人で敵を潰してやる。実際に現場での戦闘で見定めてやるよ。アイツも認める、お前の強さってヤツをな」

 

「面白いですわ!機動力では劣りますが、殲滅力においては引けを取らないと見せつけてやります!」

 

「……しかし部長、大丈夫でしょうか……?敵戦力、民間の中小企業にしては上澄みとの事ですが……」

 

「コイツがダメそうと判断したらアスナとアカネも呼ぶしカリンの援護も動員する。それでいいだろ。そんでもってガキ、お前の体験学習はそれまでだ。文句は言わせねえよ。あたしらはエージェントだ、足を引っ張るようならすぐ先生に突き返してやる。先生にだって文句は言わせないさ」

 

「望むところですわ?寧ろ私の方からそうする予定でしたものね。大見得を切っておいて足を引っ張る体たらく……そんなの、あまりにも恥ずかしくって、恥ずかしさのあまり死んでしまいますもの……♡」

 

「……その大口がいつまで続くのか、見ものだな」

 

 かつては創り主のマエストロをして「失敗作」と言われたアンブロジウス。しかしその「失敗作」がどのように生まれ変わったのか。

 ネルのみならず、アンブロジウス本人もまた知る由は微塵も無かったのである。

*1
C&Cのグループストーリー第2、3話参照

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