ワンピースをテンプレで生きる   作:楯樰

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テンプレその壱六
・変態



招集

 ――ある日の海軍、新兵訓練後風呂場。男湯にて。

 

「いいか! 可愛いは正義だ! ……そして我らが同胞よ! 男子諸君よ! ――おっぱいは好きか?」

 

『――ッッ!?』

 

 同期、聖王ギルガ・E・ウルクの言葉が雷電のように体を貫いた。

 

 なんだ、おっぱい……おっぱいとはアレか! 乳房であり、赤子が吸う……主に女性の膨らんだ胸の事…!

 

「いや、おっぱいに限らず! 女体を! 女性の性的特徴を貴殿らは好きか?! ……同期ビンズ。お前は確か鎖骨フェチだったな。……此処にアインの写真がある……。鎖骨、……ぺろぺろしたいよな?」

 

 あぁ、あぁ! なんと健康的で…! なんて美しい鎖骨なんだ……ッ!

 

『……ゴクリ』

 

 周りの奴らも俺と同じようだ。

 

 ……く、悔しいッ! 実に悔しい! 俺は、俺は鎖骨とは無縁の――尾てい骨フェチだというのにッッ!!

 

 それなのに、何故だ! 何故……こんなにも目で追ってしまいそうになるというのだ……! 舐めたい衝動に駆られてしまうのだッ!

 

 これでは、これでは……浮気になってしまう――! 誠実では居られなくなってしま――、

 

「まて、同胞たちよ。気持ちはわかる。……中にはうなじを好きだという奴もいるだろう。鍛えてもどうしてもプニプニとしてしまう二の腕が好きだという奴もいるだろう。そして先ほど、アインの鎖骨を見て己らのフェチズムが揺らいでしまったという奴も多いだろうと思う。……ロリだとか熟女だとか、婆だろうが赤子だろうが……お前たちの好きだという感情を、愛でることを! ……貶すつもりは、ない」

 

 淡々我らが聖王は語る。

 

「だが、我が同胞たちには伝えたいことがある。先ほど、鎖骨に揺れてしまいそうになった者達よ。――別に好きになってしまっても構わないのだ、ということを知って欲しい。全力で、渾身で、満身で。全身全霊、あらん限りの持てる力全てでもって……全てを愛せばいいということだ」

 

 ……。

 

 聖王の言葉はわかる。……それが出来ないから、俺たちは一つにフェチズムに囚われたのだ。

 

 

 

「諦めるな!」

 

 

 

 気づいたら俺たちは俯いていた。

 

「全てが守れないから……そんな風に諦め、一つを守ろうとした者に、諦めた者には何も守ることはできない! そして、全てを中途半端に守ろうとする者は一つすらも守れるわけがない…ッ! ……各々苦渋の選択をしてきたのかもしれない。だがな、諦めたらそこで何もかも終わってしまうッ!」

 

「鎖骨に揺れてしまったから浮気だと? 尾てい骨が好きだから、揺れてしまってはだめだと? ――そんな垣根崩してしまえ! 好きを好きだと言って何が悪いッ! 可愛いを可愛いと言って何が悪い! 悪くないのなら正義だ! だが悪いとされるなら悪でもいい! 悪すら正義に変えて、己らの芯を! 好きだという気合を! 根性見せてみろッッ!!」

 

「愛すのなら、全力で愛せばいいのだ。全力で全てを愛すつもりで、一つを愛せ。一つを愛すつもりで全てを愛すのだ。愛して、愛して……。身が朽ち果て、愛せなくなった時……その時こそ、愛せたと我々は言う事が出来る。そう、その時こそ我らは全力を尽くしたと言えるようになる」

 

 じん、と胸に来た。

 

 純粋に好きだという気持ちを、俺たちは偽っていたのだと。

 

 

 

 そして愛おしかったあの日の事を思い出した。

 

 

 

「もう一度、この鎖骨を見てくれ。……此奴をどう思う?」

 

『凄く! 舐めたいです!』

 

 

 

 自分に正直になろう。

 

 

 

「ではこちらだ。……今や、年老いてしまった海軍で大参謀と呼ばれるおつるさんの昔の写真だ。可愛いだろう?」

 

『可愛いです! 守りたい! その笑顔ッ!』

 

 

 

 偽ってどうするのだ。

 

 

 

「……どう思った?」

 

『凄く! おっぱいです!』

 

 

 

 なんの得がある。

 

 

 

「極秘裏に撮ったヒナ大尉の寝姿だ……このうなじを見てくれ、どう思う?」

 

『凄く! 美しいです!』

 

 

 

 人徳者という称号か。

 

 

 

「舐めたいな!」

 

『舐めたいです!』

 

 

 

 そんなもので飯が食えるか。

 

 

 

「可愛いは正義だ!」

 

『イエスッ! ジャスティス!』

 

 

 

 嘘をつくことは悪いことだと、死んでしまったお爺ちゃんが言っていた。

 

 

 

「おっぱいも鎖骨も、うなじも! 尾てい骨も正義だ!」

 

『イエェスッ! ジャスッティィイイスゥ!』

 

 

 

 正直者になれよと、死んだ婆さんが言っていた。

 

 

 

「この世の正義は世界政府の掲げる正義じゃない!」

 

『全てが正義! 悪など何処にも有りはしない!』

 

 

 

 海軍の正義とはなんだ。

 

 

 

「そうだッ! この世は正義であふれているッ!」

 

『我ら海軍! 正義を愛し! 正義を守る者!』

 

 

 

 天竜人が守るべきモノに横暴を振るう事を黙ってみることか。

 

 

 

「おっぱいと可愛いは絶対正義だ!」

 

『おっぱいと可愛いは絶対正義だ!』

 

 

 

 海賊が守るべきものを蹂躙するのを良しとすることか。

 

 

 

「フェチと可愛いも絶対正義だ!」

 

『フェチと可愛いも絶対正義だ!』

 

 

 

 そんなこと、……許すものか、許せるものか。

 

 

 

「『例え変態と罵られようとも、気持ち悪いとさげすまれようとも! 我ら海軍! その事実、一片の曇り無しッ! 正義を犯すモノに、――容赦はしないッ!』」

 

 この日、俺たちの掲げる正義は定まった。

 

 

 

 ――……これはアイン、ビンズ、ギルガ・E・ウルク含む十数余名が訓練艦への搭乗を命じられる前日の出来事である。

 

 

 

 Ξ-Ξ-Ξ-Ξ

 

 

 

 ――訓練艦、初搭乗前でござる。

 

 一番初めに行った持久走を含めるその他体力テストの結果と、その他演習活動で優秀だった自分、アイン、鎖骨フェチのビンズが先輩方の乗る訓練艦への乗船を許可された。それと、何気にまともな船に乗るのは初めてだったり。

 

 アインへのスキンシップ(意味深)に力を注いでいた自分が選ばれたのは、どうやらその無駄に体力を使った数々のスキンシップ(意味深)を、遠くから訓練風景をサボり魔の青い雉の大将が見ていたらしく。

 

 訓練艦に乗るように、とその時訓練教官であった将校さんから怒りマークと共に指令書を渡された。

 

 にこっり笑顔で受け取ってしまって、殴られそうになったのは驚いたけど。

 

 鉄塊『剛』して受けてあげたけどね。腕が痛そうだったのに笑いをこらえるのが大変だったなぁ……。

 

 

 

 で、今現在、訓練艦を指揮する教官を待っている。

 

 隣に居るアインが凄い緊張してるんだよね。

 

「アイン、肩揉んであげようか?」

 

「結構です」

 

「緊張してるでしょ?」

 

「それでも結構です」

 

「あー、あー……らめぇ、変な声出ちゃう!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「あぁん! ウルク! だめぇえ!」(ニヤニヤ

 

「わ、私の声でそんな……い、いやらしい声だすのやめて!!」

 

 必死な顔で赤面したアインをもっと苛めたくなるのは男の性だからしかたない。

 

 生命帰還で声帯模写余裕でした。

 

 クールビューティな女の子に悪戯したくなるのは、男の性だからしかたないね!(大事な事なので(ry

 

「そんなところ触っちゃらめぇ! いっひゃ――」

 

「そ、そんなことまで言ってないでしょ! ……他の人に変な誤解されるから止めてってば!」

 

「いや、この前肩揉んだときに言ってた。最後にはもっとしてぇ! って自分からおねだりしてたよね」

 

「あ、あ、あわわ……あー! あー! きーこーえーまーせーんー!」

 

 それにしてもおかしい。

 

 ……海軍に入る前まで捕まる様なことまでしようだなんて思わなかったのに。

 

 おっぱいも見るだけで満足してたし。

 

 エネルとワポル、ついでに言うと悪いジョーンズの姿でもこんなにセクハラはしなかった……というか出来なかった。

 

 もしかして無自覚にだけど溜まってる?

 

 でも、尻触ったりとか過度なボディタッチしてたら絶対捕まるぞ、自分。

 

 

 

「う、うるさいぞッ! 新人ども!!」

 

 

 

 あ、怒られた。

 

 ただ、無駄にエロい声で喘いでたせいか、ちょっと先輩たちが前かがみになってる。

 

「アイン、喘ぐなって。煩いってさ」

 

「……くぅっ!」

 

 その悔しそうな顔でごはん三杯は行けそうですわ(ゲス顔)

 

「ま、緊張ほぐれたろ?」

 

「不本意だけどね……。……うん、ありがと」

 

「……何このかわいい子、結婚しよ」

 

 ホント結婚したいわ。うん。

 

 できたらマリアのお母さんになってもらいたいわ。

 

 ……や、でもあの子はマリーに一番なついてるし……それにマリーも美人で可愛いしおっぱいだし。

 

 そろそろハンコック達を待たせるのは良くないだろう。でも、一人を選べとなったら、どうするかなぁ……。

 

「え!? その、……え?!」

 

「ん? どうしたんだ、アイン?」

 

「なんでもない……うん、なんでもないから」

 

「ん、そっか」

 

「……――むしろ嫌いよね。好きでもな……アレ? 違うの? 好きなの、私? え?」

 

 ……なんだか隣の子がぶつぶつ言って百面相してるんですけど。

 

 何かチラチラこっち見てきてるんですけども。うん?

 

 

 

「ゼファー教官がいらっしゃったぞ!」

 

 ま、アインの事はほっとこう。

 

 それよりも大事な事がある。

 

 

 

 ――……気を引き締めていこうか。

 

 

 




>>変態じゃないよ。仮に変態だとしても変態という名の海軍だよ。
テンプレしてるよね(錯乱)

カリスマ溢れるお二方の姿では行動が制限されてしまいます。
独身の男がシないわけないじゃないですか。でもしなかったんです。出来なかったんです。だってカリスマが落ちちゃうから。
九蛇の三姉妹も迫られるけどやんわり断って手付かずです。

Q.つまりどうなったの?
A.壊れた。その結果がアインへの仕打ちです。


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