・チート無双
この国に四季が生まれてから初めて四季が一巡りして、一年が経った。
やはり一昨年に比べて体調を崩す人が多かったが、それは既に理解していてもらった事なので、むしろ冬しかなかったこの島に四季が出来るので楽しみだったという国民が多かったことが幸いした。
まぁ格安で病院に掛かることが出来るというのも賛成された一因かな。
また、シャボンディ諸島周辺に見られるシャボンを人工的に再現することに成功したため、足に変化できない人魚たちへの対応も終了。
来年から本格的に魚人島からの移民を受け入れることが出来る。
偏に国民たちの理解があったために、実行できるんだけど……。
……頭が柔らかくないとやっていけない研究者気質の職人や開発者、科学者たちが多いとはいえ、円卓での会議で賛同を得て民衆に認められなければならないというのに。
自分が円卓の間で行う定例会議で提案したら即決だったんですが(困惑)
不思議に思って、なんでえ? とドルトンに聞けば「信頼しているからですよ」との一言。
我々のために提案してくれている、という認識がされているとかなんとか。
……どれだけ自分信用されてるの(白目)
あれだけ悪政敷いてたワポルが信用されるのは全部自動変換さんのおかげやね。
自分のお蔭じゃまずないからね(遠い目)
「……だが、まずはこれをどうにかせねば」
島を丸々ドーム状の防音防護壁で守っているから国に被害は出てないけど……あいつらまた来た(溜息)
今年に入って二回目のバスターコールなう。
「お父さん!」
うきうきとした様子で娘が入ってきた。
「マリアは此処で留守番だ。いいな? 絶対出てくるな?」
「えぇー……」
やっぱりか、わが娘よ。
えぇーじゃないよ、えぇーじゃ。
「はぁ……では、仕事を与える。国内に居る世界政府のスパイを捕まえ、捕縛後見張っていてくれ。……かなり重要な仕事だからな? 抜かったら駄目だぞ?」
「はーい!」
ゆら、とマリアの姿が揺らいで消えた。
……マリアが出てくとオーバーキルになっちゃうからね。仕方ないね。
この前なんか軍艦が木の小舟になっちゃったからね。
娘が強すぎてお父さんの立場が無いよ(白目)
Ξ-Ξ-Ξ-Ξ
「――全艦砲撃用意! 目標は皇帝ワポル! ――撃てェ!!」
ドラム帝国の皇帝のワポルはドームををすり抜けるように、金色に輝く鎧を纏って現れ、身体を冷気と雷に変えて自国を後ろに空に滞空していた。
海軍の軍艦五隻から一点に向かって巨大な鉛玉が飛来する。
「ふむ、この程度か」
迫る砲弾。ワポルの顔にあるのは既知が如しという諦観。
――砲弾は緩やかに振るわれた錫杖によって海に落とされる。
まるで舞い落ちる木の葉のように振るい落とされた鉛。
炸裂する仕掛けを施されていたソレは音もなく海に落ちた。
余りにも一瞬。その光景、余りにも信じがたく。
一種の神々しさを携えたワポルの姿、動きの一挙一動に何名かの海兵が感嘆の声を上げた直後、暴風が海軍の五隻の軍艦を襲った。
「っ……まさかぁ……風圧ってわけじゃあないよねぇ……?」
海軍大将、黄猿が呟く。いつもの間延びした声には若干の焦りがあった。
「もしかして此処の皇帝さま、実は相当な実力者なんじゃないの?」
「ちっ……忌々しいのォ。なんじゃあ、ただの能力者じゃあないっちゅうわけか」
……二度目のドラム帝国へのバスターコール。今回は中将だけでなく海軍三大将も来ていた。
一度目のバスターコールでは海軍の軍艦が全て木の小舟に変わった。
六式の仕える将校は月歩により海上に落ちることを逃れたが、大半の海兵は海へと落とされてしまった。海水温が高かったために凍死、温度差によるショック死を免れたことは不幸中の幸いだろう。……本来冬島であるドラム周辺海域の温度が高いというのも異常だったのだが、それよりも異常な事が起きたために忘れられていた。
落ちてしまった海兵の安全を一先ず確かめた後、将校たちは島を覆うドーム上の防護壁の破壊に試みたが、六式による攻撃は通用せず。覇気を乗せた攻撃も通さず。
まるで一つの山に攻撃を仕掛けている気分だった、とある中将は語る。
幾ら攻撃しようともびくともしない上に、見聞色で調べてみれば理解し難い金属で構成されており、土の中にまで防護壁が続いている。
これは駄目だ、と誰もが不落の壁に達観し、一度目のバスターコールは撤退という形で幕を下ろした。
『今度はそうはいかない』
……二度目のバスターコール。
海軍元帥仏のセンゴクが下した判断により、海軍三大将は投入された。
ドラムの皇帝ワポルは優雅に、尊大に、大胆に。六式の月歩のように空を踏みしめ海軍の軍艦へと進む。
――我が道に一切の障害は在らず。
海軍の事を敵とも見ていないのか、それとも自信の強さを信じて疑わないのか。
将校以下の海兵たちは圧倒され身動きを取れずにいた。
「
誰もが沈黙している中、その沈黙を破るかのように攻撃仕掛けたのは黄猿。
無数の光弾。熱量を伴うために実際の光に比べれば遅く、だが常人であれば速過ぎる速度を伴い空を歩く皇帝ワポルへと殺到する。
「……自然現象である限り光は熱で屈折する」
確かに聞こえたその言葉に黄猿は首を傾げる。
覇気を帯びているであろう光弾はワポルの手前で揺らぎ、避けるように通り過ぎていく。
「おやおやぁ……これは……。どういうことかねェ……」
何が起こったのか。その場に物理学者でもいれば陽炎の現象と同じだとわかるだろうが、生憎とこの場には居ない。
「次は此方側からで
シャリン。
錫杖の金輪が海上に冷たく鳴り響く。
ゆっくりと振り上げられた手の先にあるのは巨大な積乱雲。
シャリン。
冬島ではまず見られないそれが突然発生してたことに疑問を抱くのは束の間の事。凝縮され雲の中で静電気が蓄えられたそれは雷雲となる。
シャリン。
雷雲が形を変えていく。
最初に口が生まれ、歯が生まれ。
――シャリン。
次に鼻に髭。
――シャリン。
角と鱗。
――――シャリン。
腕、足……徐々に形を変えた雷雲は、巨大な冷気を携えた龍に。
『グォォォォォ――!』
雷が轟き嘶いた。
巨大な龍。さながらそれはドラム帝国を守らんとする龍神の如く。
頬を皇帝ワポルに寄せて付き従い「この者こそ我が主也」と宙にとぐろを巻いて。
「ちょっとこれは……不味いんじゃねぇの!」
「海軍大将が臆して如何するんじゃぁ――焼き尽くさんとなぁ!!」
三大将が攻撃に構えた。
「飲み乾せ、『
回避する間もなく、抵抗を許すこともなく海軍に迫り来る巨大な口。
赤犬が溶岩を打ち上げようとも、凍らされて全て呑み込まれ。
黄猿がヤルキマンマングローブを炭化させる程の蹴りを幾ら放とうとも、全て虚空へと掻き消える。
青雉は龍がただの雷で無く冷気でもあることを悟り、為す術無しと不動のまま。
海すら抉り取るように三大将の乗る軍艦一隻が――。
そして残る四隻も――
海には船底に付けられていた海楼石だけが残され、それもまた海に沈んでいった。
Ξ-Ξ-Ξ-Ξ
おおお……。
「お父さん、大丈夫?」
「すまない、マリア。……大丈夫じゃないが、気にしなくていい。気持ちの問題だ……」
城に帰って来て早々に気が付いた。
調子に乗り過ぎた(白目)
ネツネツで作っておいた雲と冷気、ゴロゴロによる発生する雷の制御と、ネツネツによる冷気で低抵抗化、バクバクの呑みこみの融合技が形にはまり過ぎていたのが悪い。
凄くッすっきり! したけどさッ!(歓喜)
……後になったらめっちゃ恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「元気出して、お父さん」
「……よし、もう大丈夫だ」
マリアのお蔭で元気出た(単純)
流石我が天使、格が違った。もう元気出た。大天使ですわ。
別に厨な感じで痛くても良いんだよ。
そうだよ。ポジティブシンキングに行こう。
……あ。
「お父さん!?」
「そうだ……そうだったッ!」
あることに気づいて膝をつき頭を抱える。
……そういや三大将丸呑みにしてた。
あはははー……絶対面倒臭い(確信)
>>海軍「……」(ぬとねの区別がつかなそうな顔)
テンプレした!(歓喜)
態々危険なカームベルトを軍艦五隻で来た後の絶望感。
仏のセンゴクはキレていい。