サオリとアツコとヒヨリとミサキともう一人。あの地獄の様なアリウスで必死に生きた5人。その中の一人が先生にベアトリーチェが来るまでのアリウスについて語る話

イメージとしては絆エピソードの一番最初の回みたいな感じでモモトークで呼び出された先生が行ってみると……みたいなやつ。

アリウスメンバーの過去に対するかなりの捏造と暴力表現などか含まれます。


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自己犠牲の日々

 

今回は呼び出しに応じてくれてありがとう、先生。

 

なんで呼び出したのって?

 

あの時のアリウスの話をしようと思うんだ。

あの時っていうのは今から十年くらい前かな。

ベアトリーチェがアリウスに来る前、アリウス内で紛争をしていて、いわば死が日常にあったときの話。

 

アリウススクワッドのみんなと僕の根幹に関わるような話だ。これからみんなと関わりを深めていくであろう先生には伝えておかなくちゃいけないと思って。

 

あとは……僕の罪の懺悔にもなるのかな? いろんなことを間違えた。これは僕の罪の話でもある。

許して欲しいなんて言わないけどそれを聞いて欲しい。

 

 

 

あの時のアリウスは本当にひどかったよ。誰も彼もに食料と住処が足りていないって言うのに、銃と弾薬だけは溢れるようにあった。

ヘイローを持っていたら銃で打たれた位じゃ死なない。でもそんなキヴォトスの人だからといって食料がなくなってしまったらひとたまりもない。

 

そんなとこで、僕はストリートチルドレンをやっていたよ。親は居なかった。っていうか誰かは知らなかったな。とりあえず生まれた時から1人で生きてどうにかこうにか命をつないでいた。拾い物を食って命をつないで、壊れていない建物を探してそこで寝る。

そんなふうにして毎日生きていた僕には一つだけ許せないことがあった。

 

それが生まれたときから続いている内紛だ。僕はあんな状況、うんざりだったんだ。誰も死んで欲しくなんかなかった。本当なら小学校に通っているような女の子たちが平気で銃を使った殺し合いをしている。

ただ、それだけのことが許せなかった。

 

 

 

それだけのことなんて言うなって? ………それだけのことでいいんだよ先生。僕はそう思っていなかったけど、間違いなくあの時あの場所じゃ誰が死んでもそんなことで済まされてた。

悲しいかもしれないけどそれが当時のアリウスだった。

 

でも、それを嘆いても当時の僕にはそれを変えるような力なんてなかった。でも、同時にそれを理由に諦めたくなんかなかった。

たとえどんな小さな事でも、自分にできる事は無いかってずっと考えてた。

 

当時最も大変だったのは食料を集めることで、食料を持っている人から奪うか、どこかの建物に入ってまだ食べられるものを探すかしか方法がなかった。

そういうことを長く続けていると、同じエリアに住んでいるストリートチルドレンなんかとはよく顔を見合わせることがあった。

 

いつものように食料を探しに行った時、馴染みのある顔と対面した。それはサオリだった。

といっても、当時は名前だって知らなくて、ただ近くに住んでいる同じような境遇の女の子ってだけだった。当時からサオリは強かったからそれでも有名だったかな。

 

今日明日で死んでしまうかもしれないような日々、そんな中で見つけた貴重な食料。

奪い合いになるしかないって思ったんだろうね。対面したときにはもうサオリは銃を抜いていた。

 

そこで僕は食料を譲ったんだ。銃すら抜かず、両手を挙げてどうぞ持って行って下さいって言うふうにしてみた。そうしたら明らかにサオリは動揺していた。

 

 

『なんのつもりだ』

 

 

そんなふうにサオリが言ってた。これでも僕はあの時のアリウスの中じゃかなり強かった方で有名だった。当時から神秘は弱かったけど身のこなしとかスピードでその名をアリウスに轟かせてたんだよ。

まぁ()()()()()()だし、轟かせたといっても僕の住んでる周りだけだったけど。

 

そして最初は何かの罠なんじゃないかって警戒していたサオリも食料を受け取ってくれた。

 

これが当時のアリウスを変えようとした僕の行動だった。今からすれば何の意味もないって思える。

それは当時からしても無駄なことだった。空虚なことだった。

 

別のところで食料を探したけど、結局見つけることができなくて、その日は何も食べずに眠りについたんだ。

その時の夜のことは今でも鮮明に覚えている。

 

最後に食べたのがいつかもわからないような状況でようやく見つけた食料を譲ってそうやって感じたあの達成感と言ったら!

 

間違いなく無駄なことだった。でも、その時の判断を僕は全く後悔していない。先生だってそれを笑わないでしょ? 

 

 

 

………そこまで力強く断言されると、ちょっと恥ずかしく思えてきちゃうけど。

 

それからまた何回かそういうことがあった。というより、同じようなシチュエーションに陥ったら、相手が誰であろうと僕は必ず食料を譲るようにしていた。

そのたびに、空腹とそれを上回る位の達成感を感じていた。当然のことだけど、そんなこと続けていたら僕の食べる分なんか残るはずがない。

 

アリウスのある路地裏で僕は行き倒れた。当時じゃ別に珍しくも何ともないさ、行き倒れるやつなんて何人もいた。

その1人に僕が加わっただけ。

当時なら話題になっても軽く流されてしまうような、世間話にもならない、そんな程度の事だった。

 

そのまま死んでもいいって思ってた。僕一人くらい死んだところでだれも惜しまない。それがあの時のアリウスと言う街だった。徒党でも組んでなきゃ誰かが誰かを思いやることなんて事はなかった。

それに僕自身が命を惜しんでなかったんだからさ。

 

 

 

……そんな怖い顔しないでよ、先生。あくまで昔の話だし、今ここに僕が居るからちゃんと助かったからさ。

 

え? そんな簡単に自分を掛けてほしくないって? 今じゃしっかり解ってるよ。命を掛けて子供を守るなんてことは大人になってからやることだろう、先生?

 

……はははっ! 冗談だよ冗談。

 

そんな僕を助けてくれたのはサオリだった。自業自得で行き倒れていた僕を自分たちのアジトまで連れて行ってくれて、それで食料と水を分けてもらったんだ。

ただ、そこにいたのはサオリだけじゃなくて、もう一人いた。そこに居たのはアツコだった。

 

あの時のアツコは特徴的なあのピンクの髪がまだ短かったなぁ。懐かしい。それでサオリは僕のことを受け入れようとするんだけど、アツコがそれに反対してしまって僕が入ってきた初め頃はすごく空気が悪かったんだ。

 

別にアツコは僕のことを邪険にしていたわけでも嫌ってたわけでもない。ただ、あの時のアリウスという場所で過ごした子供時代じゃ理想論を語る余裕なんてなかった。

 

誰かを見捨てて、自分が生きる。そんなリアリストにならなきゃ生きていけないような場所だった。

でもサオリは無理を通して、僕に食料と水を補給してくれた。

 

『やる。早く食え』

 

サオリが手短にそう言ったのをいまだに覚えてるよ。当時は確かアツコとサオリの二人は毎日食料を分け合って生活していてサオリは自分の分の今日の分の食料を僕にくれたんだ。あの時のサオリが僕に食事を渡した後、アツコに自分の分は自分で食べていいって言ったの。

 

僕はね、それもまた嫌だなって思ったんだ。おかしいでしょ? 自分が最初にやりはじめたことなのに。

 

でも、まぁよくも悪くも、あの時の僕は子供だったんだ。実際サオリとは一学年分下だし。やりたいことだけやって、嫌なことされたらすぐ拒んでしまう。だから、僕は空腹で死にかけながらも差し出されたその食料を拒んだ。

 

今思えば馬鹿なことをしたなって思うよ。優しさがないからあんな風になっていたアリウスでサオリが持った優しさを僕は否定したんだ。自分以外に自己犠牲をさせたくないからって。

 

そうしたら今度はアツコまで一緒になって僕に食料を食べさせようとしてきたんだ。そうなったらもうどうしようもない。僕は2人の前に降伏しておとなしく差し出された食料を食べたよ。

 

それからは2人と一緒に行動するようになった。でもやる事はあんまり変わってなくて、食料を集めてそれを2人に与える。それだけだった。

 

ただ、今まで出会った人に無差別に渡していったのが、サオリとアツコになっただけ。アリウスを救うなんて大層な夢を掲げてそのための手段としてやっていた。

だけど、いつしかみんなに食料を渡すこと自体が目的になっていた。当時の僕は気づきもしなかったけどね

 

それからは、まぁいろんなことがあったよ。僕たちにミサキとヒヨリが加入したり。アリウスでの争いが激化して、食料がさらに集めづらくなったり。

 

特にヒヨリと仲が良くなったかな。ヒヨリが好んで読んでいた雑誌とか小説とかは僕も好きだったから。

ミサキは当時から警戒心が強くて、しばらくしてから緩和したけどその精神性こそ僕たちには必要な人物になった。

 

でも、僕は変わらなかった。いや、きっと変われなかったんだ。それからも僕は食料を集めてはみんなに渡していた。その頃なると、僕たちのグループはもうかなり有名ななっていて、僕たちを襲う奴らも少なくなかった。そういう奴らとも戦って撃退していた。

 

そして、お腹が空くたんびに、みんなから無理矢理食料を食べさせられた。ベアトリーチェから言われたんだけど、俺はゴミみたいな神秘をしているらしいからすぐに怪我ができる。それを治療してくれたりしていた。

 

『どうしてそこまでしてくれるの』

 

そう聞いてきたのはアツコだったっけ。襲撃者を撃退するときの戦い方は今とスクワットの時と似通っていて、この頃からある程度役割分担がされていた。僕は銃弾を避けるタイプのタンクだったかな。

 

でもその時は珍しく銃弾が当たってしまってアツコから治療を受けていた。それに僕はみんなで協力して暮らし合ってるんだからそんなこと聞くなよって返した。でも

 

『違う、そうじゃなくて……』

 

アツコが言うにはどうしてそこまでの献身をしてくれるのかわからないと、私だって初めはよく扱っていたわけではないし、ずっと与えてもらってるばっかりで、何も返せていないかららしい

 

僕はさ、ずっと1人で生きてたんだ。生まれた時からそうだったし、自分から関係を作りに行こうとも思わなかった。サオリとアツコが初めてだったんだよ。まともに人と話したのだって。

 

僕にはね、人との関係ってのが全くわかんなかったんだ。だから、当時の僕は無理矢理わかることに押し込めようとした。

人間関係というものを自分が理解できる論理的なものだとして考えていた。

 

僕がみんなと関係を持てたのはあの時食料を渡していたからだって、それにサオリが返したところから僕たちの関係は始まったんだ。

だから僕はずっと何か与え続けていようって思ったんだ。そうしなきゃ、本当にあの関係が終わると思ってたから。

 

先生もなんとなくわかってると思うけどさ、これは間違ってるよ。あの4人と出会ってからベアトリーチェが来るまで過ごした時間は半年にも満たなかったと思う。

 

でも、その間命を掛けて助け合って、互いが互いを思いやって、そうやって生きてきた。そんなのもうギブとテイクじゃ表せられない。

 

今になったらそういうことが言えるけど、当時の僕はそれに気づかないまま与え続けなければこの関係が終わるかもしれないからとアツコに言った。

 

そう言ったらアツコはなんとなく理解はできたけど、納得はしていないようだった。でも彼女は自分の感情に理由をつけることができなくて、結局僕のこの考えがその時正される事はなかった。

 

その辺からかな。アリウスの治安が加速度的に悪くなっていった。あの中じゃもう食料が足りなかったんだ。探したって、もうどこにもなかった。探しても、ね。

 

もうみんなわかっていたんだ。奪い合うしかないって。アリウスは限られた場所で、その中で有限個しか資源がないんだから生きられる人数は決まっている。

その中の1人に自分が入れるように、もう手段だって選んでいられない。

 

でも、僕たちはそんな分かり切っていたことから目を逸らして、まだ幻想を追っていた。

僕たちは襲われた時しか戦う事はなくて、自分から誰かを襲う事は絶対になかった。

 

そうなったのは僕のせいだ。僕が唱えていた馬鹿げた理想論が、あの時のアリウススクワットには根付いていた。自分がその日食べる食料がなくなってもみんなに分けてあげる。そんなことをしている僕がいるのに、他のみんなが誰かから奪うなんて手段に出る事はなかった。

 

なら、僕が責任を取るべきだって思うのも間違ったことじゃなかったと思う。僕のせいでみんなが死ぬ。そんなの絶対に許せなかった。

僕にとってもうみんなは、自分の夢よりも大事なものになっていたんだ。

 

だからさ、しょうがなかったんだ。

 

先生、最初に言ったよね。この街で食料を集めるには食料を探すか誰かから奪うしかない。それをみんなの中で1番早く実践したのは僕だった。

 

実はこのことで1番迷っていたのはサオリだったんだよ。僕たちのリーダーとして、その決断をしなければならない事はわかっていたんだろう。でも、僕が理想論を教えてしまったせいで、僕たちと理想の間に挟まって苦しんでいた。

 

あの時のサオリが見てられなかったってのもそうした理由かな。今でもあの日の事は覚えているよ。明確に自衛のため以外で、他人に武器を振るった。ちょっとだけ反撃を食ったけど、重症と呼べるような傷はつけられなかった。

 

その時に僕はきっとひどい顔していたんだろう。でもそれをみんなに見せたくなかったから、無理矢理笑顔をとりつくろって、食料品とちょっとしたお土産を持ってみんなの元へ戻っていった。

 

『おい。どこでこんな量』

 

目を大きく開いて怯えながら、縋るようにサオリが聞いた。こういうことに関しては聡明だった。その言葉に僕は聞こえないふりをして先にお土産を渡していた。ヒヨリには雑誌を、ミサキにはぬいぐるみを渡した。

 

『あ、ありがとうございます!』

 

『これ、どこで……いや、ありがとう』

 

ヒヨリは気づかなかったんだろうね。素直に喜んでたよ。ミサキはたぶん気づいてただろうね。達観してたし、そういう方法を取らなきゃ、これだけの量の物資は持って帰ることができないってわかってただろう。

 

『答えろ! どうやって見つけて来た!?』

 

激昂したサオリが声を荒げながら僕の胸ぐらを掴んできた。その目はやっぱり何かに怯えているようだった。ヒヨリとアツコが僕たちのことを怯えた目で見ていた。

 

今なら解るよ。サオリはきっと僕のことが許せなかったんだろう。サオリに人に優しくすることを教えた僕がこんな行為を働くことが。

僕はそんなサオリに対してなるべく優しく声をかけた。サオリ、と名前を呼んで言葉を続けた。

 

これは他のグループから奪ってきた物だって諭すように言った。そうしたらサオリは絶望したような顔でこちらを見つめてきた。胸ぐらを掴んでいた手から力が抜けてだらんと下に下がると同時に膝を付いた。

 

『なんで……お前はいつも一人で……』

 

そのまま僕のもとに倒れ込んで来たサオリが震えた声で僕に問いかけた。サオリだってこれしかないことに気付いている。

でもサオリはそう思う自分に対する嫌悪感が現実から目を背けさせていた。

 

僕はアツコに前言ったことをそのまま説明しようとした。でも何か違うような気がして、途中で言葉が止まってしまった。

 

『もうそんなことしなくたって、私達は仲間じゃない』

 

アツコが言った。その通りだと当時の僕でも思った。ここでずっと僕が勘違いしていたことに気づいた。

でももう止まれなかった。

 

僕の口から出たのはそれでも絶対誰かやらなくちゃいけないことだったし、僕にはこれ以外のやり方も思いつかなかったから、なんて言う言い訳。

 

アツコが悲しそうな目で僕を見つめてきた。僕は目を合わせることができなくて、逸してしまった。僕はこの瞬間、間違えなく選択を間違えていた。

 

『……これはみんなで食べよう』

 

絞り出すようにしてサオリが言った。これは僕がいつもみたいにみんなにあげるからと言って、僕だけが食べなくなることを危惧したからだった。

 

ヒヨリは食べている時目を瞑って食べていた。ミサキは普通なことのように平常心で食べようとしていたけど震えていた手は見ていて悲しくなるくらい正直だった。アツコは手に持ったそれをじっと見つめた後、意を決したようにして口に運んだ

 

そしてサオリは口元まで手を持っていくことができるのだけれど、そこから先に踏ん切りがつかないようだった。

 

僕も食べたよ。あんまりが味がしなかった。

 

僕はその後でも食料を集めるのを止めなかった。それらをみんなに渡すのも。変わったことは僕も一緒に食べるようになったことかな。

 

うん、そうだね。行動はそのくらいしか変わってないだろう。でも僕たちとみんなの精神性はもう元には戻らない位に変わっていった。言うなら共依存が一番近いかな。

 

僕とみんなで違った事は依存先だった。きっとみんなは僕に対して依存していたんだと思う。でも僕は僕とみんなの関係性に依存していたんだ。

 

サオリはリーダーとしてやらなきゃいけなかった選択を僕に任せたことに対する罪悪感。理想と現実のギャップ。そしてその理想も現実も僕が与えたこと。

 

アツコもきっと罪悪感。僕がずっと身を削って見せてきた誠意に対して自分は何も返せていないんじゃないかっていう感情。ずっと支えられる側でいることを嫌だと思っていたんだと思う。

 

ヒヨリはあの中じゃ1番の夢想家で、自分たちの生活がまるで小説みたいに奇跡が起きて劇的に変わることを望んでいた。そして本当にそうなった時の虚しさ。

 

ミサキはリアリストで、頭が良かったから僕の行動もそうするしかないって解ってた。でも現実とか未来に失望したみたいだった。仲間のこと以外どうでもよくなってしまったって言えばいいのかな。

 

そして僕は、これらの関係性に依存した。自分が求められているってことに。僕たちは仲間なのに自分が守らなきゃいけないって勝手に決めつけて、一人で全部抱え込んだ。無自覚だったけどさ。

 

僕が昔掲げたあまりにも御大層な夢はこんな形で、醜く、歪になって花を咲かせた。

 

そんな日々はあまり長くはなかったけど、それでも僕たちの心に大きな傷跡を残した。日に日に増えていく瓦礫の山を掻き分けながら、食事のたびにみんなが絶望して、か細い命の火を残していく。

 

でも、そんな日々にも終わりが来る。いつものように僕は食料を探しに歩いていた。この頃になるとサオリとミサキがついていきたいと言うようになったんだけど、僕はそれを許せなかった。

 

その先で、僕は襲われた。襲ってきたのは、僕が今まで食料を奪ってきた集団たちの生き残りだった。

僕が別に今までの相手にとどめを刺してきたわけじゃないから、こういうことだってある。

 

でも、今までと違ったのは、そいつらが徒党を組んで襲ってきたことだった。対集団と言う人数不利、そして不意打ちだったこともあって戦闘は一方的なものになった。

 

こんな時になっても、僕は相手を殺さず、無力化しようとしていた。でも、こっちは銃弾一発でももらったら傷になってしまう。なかなか耐えた方だとは思うんだけど、いいところに一発もらってしまって、僕は意識を手放した。

 

起きたらたくさんの人影に囲まれていた。手足は縛られていた。その全てに見覚えがあった。僕がここ最近で食料を奪った奴らだけでなく、僕たちを攻撃してきたから撃退した奴らもいた。

 

そこからは、まぁ想像通りというか。殴られたり、蹴られたり、銃で打たれたりした。ひとしきり持ち回りで僕に暴行を加えていって、一周したくらいでトドメを刺そうという流れになった。

 

 

 

……そんな悲しんだり、怒ったりするのはありがたいけど、そんな気にしなくてもいいよ。僕は今こうして生きてるんだし、向こうにも正当性があるどころか、僕がまいた種でもある。因果応報だ。受け止めるしかないよ。

 

もう助からないと思った。次の瞬間僕は止めを刺されているかもしれないし、仮に止めを刺されなくてここに放置されたとしても、今流れてる血の量を鑑みればもう生き残る事は難しいんじゃないかって思った。

でもそうはならかなかった。

 

助けに来てくれたんだよ、みんなが。血を流しすぎてしまって、朦朧としてきた意識の中で、それがしっかりと認識できた。

 

僕の体は貧弱だ。普通の銃弾一発で血が流れてしまうくらいには。そんなものを何発も打ち込まれたんだ。体が重たくて熱くて全く言うことを聞いてくれなかった。

 

それでも僕はどうにかして立ち上がった。その時には、もう戦闘は終わっていた。最後まで立っていたのはみんなだった。

 

サオリが泣きながら僕のもとに駆け寄ってきた。僕は立ってすぐ足に力が入らなくなってサオリに持たれ掛かるようにして倒れ込んだ。血で濡れていた僕の服はサオリに触れたと同時に嫌な音を発した。僕の傷の程度が解ったサオリは目を見開いた。

 

僕の耳にみんなの声が聞こえてきて。でも耳鳴りがうるさくでそれが意味を紡ぐことはなかった。今まで負った怪我でも一番酷くて、僕はもう生きることを諦めていた。

 

これが最後の言葉になると思った。声を聞いただけで僕はほっとしてしまったのにサオリに体重を預けてしまっているこの状況じゃいつ安心のあまり意識を手放してしまうのか解らなかった。

 

ごめんって、最後に言った。今まで間違ってたことに気付いてたのにそれに向き合おうとしなくてとか、みんなを悲しませたかったわけじゃないとかいろんなことに関しての謝罪だった。

 

それを聞いたサオリが顔を酷く歪めて何かを叫んだ。薄れゆく意識の中じゃそらはどんな意味だったかはわからない。でも僕はそんな顔をさせたかった訳じゃないってちょっと後悔した。

 

 

 

……二回目だけど、僕は今ここに居るんだからそんな怖い顔しなくても大丈夫だよ。僕の行動とかに関してもいまじゃしっかり間違ってたって気付いて反省してるよ。

僕のせいで食料が無くなって生き延びれなかった誰がはいるかもしれないことも理解してる。先生だったらもっとうまくやれたのかな。

 

……いや、何でもない。言ったってどうしようもないか、ごめんね。先生

 

目が覚めたら包帯ぐるぐる巻きで全身が酷く痛んでいた。その時は驚いたよ。絶対に僕は助からないものだと思っていたからさ。

実際、僕たちが持っていた医療用具と医療技術じゃ助からなかった。

 

体の感覚がいくつか足りてないような気分になった。痛みだけは残っていたけど、手や足がうまく動かせなかった。

長らくベッドで寝たことなんてなかったからそこが病室で自分がベッドに寝転んでいることに気づくのに、しばらく時間がかかった。

 

どうにかして僕が顔をあげると、ベッドのすぐ近くに誰かがいた。痛みが襲う中で1つだけ優しいぬくもりを感じている場所があった。

そのほうに目を向けると、僕の手を握っていたサオリが居て目が合った。

 

サオリはずいぶんひどい様子だった。目の下には隈が出来ていて、顔から生気がなかったように見えた。どっちが怪我人かわからないくらいだった。

 

サオリは泣きながら僕に生きていて良かったとか、死んでたらどうしようとか言って、そこから酷い後悔が読み取れた。

手を動かすことはできなかったからしばらくそんなサオリを声だけでなだめたら泣きつかれたのか座ったまま僕のベッドに上半身を投げ出して眠ってしまった。

 

それからまたしばらくしたらアツコが部屋に入ってきた。目が覚めてからしばらく頭を回していたから聞きたいことが出来ていた。

 

アツコとしばらく話をした。真っ先に聞いたのは僕がどうやって助かったかだった。奇跡が起きてなんてことは信じていなかった。やっぱりあの時僕はリアリストの一人だった。

 

ベアトリーチェっていう大人が僕のことを助けてくれたと聞いた。今思うとアツコとベアトリーチェは知り合いだったから、たぶん僕たちを監視しながらどのタイミングで介入するべきか見てたのかな。うん、やりそうなことだ。

 

あとはベアトリーチェがアリウスを統一したこととか、サオリが僕が目覚めるまでずって寝ていなかったこととか、僕は3日間寝てたことか。いろいろ話をした。

 

僕が完全に治るのかはまだ解らないそうだった。血を流し過ぎていたから何か後遺症が残るかもしれないって。

 

今見てもらったらわかると思うけど、ちょっと足がうまく動かせなくなって、杖を使うようになった。みんなが僕の移動を手伝ってくれたからあんまり不便じゃなかったよ。だからこそみんなと離れて行動してる今、それをしみじみ感じてる

 

僕を助けるときに、その対価として私の手先となれみたいな一幕があったようで、みんなはベアトリーチェに従うようになった。

僕も命を救われた恩義を感じていたから同じく従った。

 

それで、まぁここからは大体先生も知ってる通りだと思う。それからまたかなりして、聖園ミカがアリウスに来て、エデン条約に関わって。今はあの時と比べたらだいぶマシな生活を送ってる。

 

どう、先生? これが僕の人生だ。途中途中端折りはしたけど、大体先生も僕たちの事情をわかってくれたと思う。

その上で先生にお願いがあるんだ。

 

先生たちのおかげでベアトリーチェに洗脳されていた考え方とか、価値観はなくなった。

そして、その後に残っているのはあの時みんなで生きていたこと。

 

もともと僕たちの関係性は、解決したわけでも何でもない。ただ僕が大怪我負ったこと、ベアトリーチェが現れたことでうやむやになってしまっただけだ。

 

あの時先延ばしにしていた問題が、今になって現れてしまった。これは僕がどうにかしなきゃいけないことは解ってる。

 

……でもさ、恥ずかしいけど自信がないんだ。また間違えてしまうんじゃないかって。

 

だからさ、先生、僕のことを手伝ってくれないか。みんなとの仲直りを。自分の過去と向き合うことを。

 

もちろん、全部手伝って貰おうなんて思ってない。僕がやらなくちゃいけないことだらけだから。

 

でも、もし僕がどうしたらいいのかわからなくなった時に相談に乗ってほしい。それだけでいいから。だからさ

 

お願い。

 

 

 

………!

 

 

 

ありがとう、先生。





真面目にやったら数話掛かるものを無理やり短編一万字に収めました。

現金な人なので、感想や評価が多かったら他者視点を書くと思います。特に感想が原動力です。お願いします。

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