雷陽と黒龍   作:四ツ鼓的な

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 タイトルでお察しいたいただいているかもしれませんが、先週の①②形式が早くも再来でございます。
 最近謝ってばかりですが、今週中に後半を出します……!



赤い突撃獣①(vsRB②)

 

『なんと!? 【イナズマジャパン】が早々にピンチかと思われた中! 風丸の新必殺技がペク・シウに炸裂ッ! ピンチを脱したッ!』

 

 着地と共にボールを足元に置いた風丸を筆頭に、イナズマジャパンは攻勢へ転じていく。

 円堂は、大きく拳を突き上げた。

 

「ナイスディフェンス! 風丸!」

「ああ! 任せろ!」

 

 風丸は大きく中央を避けて開き、走り出す。

 

「――鬼道!」

 

 駆け並んだ鬼道はボールをしっかりと足元にキャッチし、流れるようにドリブルへと移行した。

 

「驚いた。分身で回転力を補って完成させるとはな……!」

「……!! 流石、お前にはすぐバレるか……。――そう。俺は絶対に世界級の奴らを吹き飛ばせるくらいの『風』になる!」

 

 風丸は地面を強く蹴り加速する。

 

「フッ、帝国で良いものを貰ってきたようだな――!」

 

 鬼道のパスで、風丸にボールが戻る。

 前方には、右サイドハーフの唾付きキャップを被り眼鏡を掛けた小柄の相手が1人。

 

 ――更に後方からトップ下のイ・ドンヒョクが迫る。

 

「風丸さん!」

 

 稲森は、風丸を先行してサイドを上がる。

 相手に挟み込まれては、風丸のスピードは活かせない。そんな単純な理屈だった。

 

 ただ、鬼道は気づいてパスを出した。

 

 約一年間の帝国に起きた変化。

 その一助となった『風』の行方を再認識するために――。

 

「――――疾風ダッシュ!!」

 

 風丸が稲森の進路が開いた一直線を走り抜ける。

 瞬間、衝撃波が強烈な風となって放たれた。

 

『風丸がサイドを駆け上がる――ッ!!』

 

 一度の攻防では、韓国代表の底はやはり見えない。国内では今年の全国予選において、昨年以上に対応力を上げた『疾風ダッシュ』に挟み込もうとした2人の選手は割り込むこともできず弾かれていた。

 

 とはいえ、これ以上は風丸への負担だ。

 

「頼むぞ、稲森――!」

「ハイッッ!」

 

 中央を抜けていく稲森にパスが通る――。

 

「ホーントレインッッ!!」

 

「くっ――――」

 

 ただ、稲森の瞬発力をもってしても、完全にボールの行方を読み切った相手の守備の速さには間に合わない。

 稲森はかろうじてトラップの直後に、もう片方の足を上げてボールを空中へと逃がした。

 

 ――決して、ただの逃げではない。

 

 稲森明日人は、稲森明日人という人間の規格ながら出来る最善を模索し――ある種の信頼を打ち上げた。

 

 応えた爆炎が、渦と化してボールを追う。

 日本の最前に立つツートップの片割れは、回転を重ねながら穿つべきゴールを見据えている。

 一発目から、全力を込めて。

 

 

――爆熱スクリューッッ!!

 

 

 豪炎寺修也の巻き上げた猛炎は、打ち放たれた。

 

「よしっ!!」

 

 稲森の狙い通り。

 そして、チームの狙い通り。

 

 シュートが【レッドバイソン】のゴールへ重力を乗せた超加速をする。

 稲妻のように大気中を揺れながら、ゴールネットへの距離を急速に縮めていく。

 

 

「ファイアウォール……ッッ!!」

 

 

 奇しくも、GKシン・レウォンもまた、炎をもって構えを取った。

 全身を烈火によって覆い、大気を伝いゴールポストの間にまで火力を広げる。

 

 ――猛炎の大壁が、爆炎のドリルと激突する。

 

 瞬間、壁と螺旋は盛大な爆発となって、ピッチを揺らした。

 

「――ッ!?」

 

 咄嗟に稲森は視界を覆って、姿勢を落とした。

 対面で動きを中止したセンターバックの男も同様。

 

 ゴール前の選手たちを吹き飛ばさんとばかりの衝撃と轟音。

 

 その直後、一帯を覆った黒煙が失せていく。

 

 

 ◇

 

 

「残念だけど、この試合……日本は負ける」

 

 ベンチに座りながら試合の行方を見定めていた一星充は、衝撃音に重ねて呟いた。

 

 誰の耳にも届いていない。

 届いていたとしても、それどころではない。

 

 皆ゴールの衝突に動揺を隠せていない。

 

「マジかよ……」

 

 灰崎は、表情に怒りを込めている。

 

「オーホッホ♪ やはり今のあなたでは敵いませんか」

 

 趙金雲が笑う一方で、隣の目金を始めとしたマネージャー陣は引き攣ったような表情で、()()試合を視線で追う。

 

 ――豪炎寺修也が、早々に止められた。

 

 

 ◇

 

 

「……カウンターが来るぞッ!」

 

 鬼道が即座に声を荒げた。

 位置は、ペナルティエリアの寸前というところ。

 

 その頭上を、投げ放たれたボールが通り抜ける。

 

 ボールの向くピッチの中心軸上に立つのは、切り返しと共に駆けあがるソク・ミンウ。

 イナズマジャパンの誰から見ても、このロングスローを通してはならないと理解が及ぶ。

 

「良いぞッッ! シン!!」

 

 大きく選手たちの頭上を抜けていくボールに、ソク・ミンウは氷浦たち中央の面々を超え、先行して上がって行く。

 

 先には吹雪が構えているが、これ以上の接近は、かえって吹雪を始めとするディフェンス陣の負担が格段に跳ねあがる。

 

「――ボクが入るッッ!!」

 

 サイド際から中央に寄っていた亜風炉が、サイドラインの警戒を諦めてソクを追った。

 落下軌道が選手たちそれぞれの視界に予感されるよりも早く、亜風炉は大まかな位置を特定し跳躍への構えを取る。

 

「――邪魔だァッ!!」

 

「な――!?」

「ペク――ッ!?」

 

 だが、急速に加速をしたペク・シウが、ボールへ跳びかかった。

 

「く……ッ!」

 

 身体を押さえつけるように胸を構えに掛かるペクに、地上の亜風炉照美ではなすすべがなく、ボールを通してしまう。

 

「行ったぞ! 吹雪!!」

 

「何をして――いや良い! ペク、こっちに下げろ!!」

 

 鬼道とソク・ミンウが叫ぶ。

 

「何を言って――」

 

 

――アイスグランド……!!

 

 

「何―――」

 

 ペク・シウが氷塊に閉じ込められた直後、ピッチ上に出来たスケートリンクを滑る吹雪が、優雅にボールを奪取した。

 

「良いぞ吹雪!!」

「ああ……行くよ!!」

 

 吹雪から、鬼道へとボールが回った。

 

「サイドは少し中央に寄れ――隙を与えずに、シュートチャンスを増やすんだ!! サイドバックも、相手の位置に注意しながら攻撃に回れ!!」

 

「――スンジン!」

「りゃぁッッ!!」

 

 鬼道本人の隙を狙うべくソク・ミンウの指示と、スライディングによる強襲。

 鬼道は右への細やかなボールタッチによって躱してみせた。

 

「こっちです鬼道さん!」

「万作――!」

 

 指示通りにサイドを駆け上がった万作にボールが回る。

 

 そして細やかなパス回しが連続し――

 

 

『イナズマジャパン、速攻を返しまたしてもボールは相手のゴール前だッッ!!』

 

 

 豪炎寺に代わって、吉良ヒロトへとボールが回る。

 

「ホーントレインッッ」

 

「遅いッ!!」

 

 相手の突進が迫るその一秒とない時間の中、吉良はボールを蹴り上げた。

 そして、地面に垂直となる方向に打ち上がったボールを追って、跳躍する。

 

「――ッらァ……ッ!」

 

 落下しようとしたボールを打ち返し、

 

「ォらァッッ!!」

 

 打ち上がるボールに先回りしてそれを打ち返す。

 連鎖的にボールを蹴りつけ、そくdしながら、威力を高め続け、【レッドバイソン】のゴールを射程に入れる――吉良ヒロトの右足から必殺シュートが打ち放たれる。

 

 

「――ザ・エクスプロージョンッッ!!」

 

 

 吉良ヒロトの放つ必殺技。日本の誇る“究極の個人技”による多段的爆発を伴った彗星の如き超軌道が、大気を引き裂きながらゴールへ迫っていく。

 

 だが、

 

「なっ!?」

 

 吉良が目を見開いた。

 再び日本代表を驚かせたのは、ゴール前で豪炎寺を阻んだ炎の大壁ではなかった。

 

 ゴール前、ゴールとシュート軌道の間に立ちはだかるのは、烈火の赤を身に纏う青き闘士。

 ――ソク・ミンウが、ゴールの前で跳び上がった。

 

 相手が自らの技術や肉体をもって、シュートからゴールを守ろうとしているだけ。

 自体は、何ら不思議なことではない。

 

 ただ、ソクが跳んだ瞬間に、相手のゴールキーパーは構えを解いていた。

 

 瞬間、無数の光の粒が大気中に煌めく――。

 

 

「――グランドスイーパー!!

 

 

 ソクの回転に合わせて、その一つ一つが連続で炸裂し、大きな爆発を引き起こした。

 

 煙が前線を覆って残留する。

 吉良は即座にキックを放ち、砂煙を押しのける。

 

『……な……っ、なんと!? 吉良の「ザ・エクスプロージョン」がGKシンへ届くこともなく、韓国主将ソクによって奪われたァアアアア――――ッッ!?』

 

 ――ボールを片足で抑え、悠然とソク・ミンウは立っていた。

 

「嘘だろ……ッ!?」

「…………」

 

 己の最大を破られた。

 ゴールキーパーですらない相手に、“ゴッドストライカー”吉良ヒロトの必殺技が――。

 

 走る日本のオフェンス陣の頭上をソクのパスが飛んでいく。

 

「「「「……ッ!!」」」」

 

 出し抜かれた吉良もまた、ディフェンスへと駆け戻る。

 

 ボールは、簡単に中盤の小柄な金髪黒キャップのサイドハーフの選手へ到達した。

 風丸が走り込むが、間に合わない。

 

「ジフン!」

「頼んだぞミンウ!!」

 

 凄まじい速度で選択肢として駆け戻ったソクの一声に呼ばれたサイドのヨン・ジフンは、高くその場を跳躍し、ヘディングでボールをイナズマジャパンの陣地奥へと送り込む。

 

「――岩戸!」

「了解でゴス!」

 

 鬼道の呼び声で、中盤にまで上がった岩戸がボールを視界に捉える。

 ソクが突撃してくるのを必殺技の構えで見据えている。

 

 互いの距離が縮まっていくが、両者必殺技を発動しない。先手で発動して仕舞えば、不利になる。

 両者共に、きっとそんな意識を持っていた。

 ソクと岩戸。既に必殺技の発動に必要な工程は両者共に完了している。あとは放出するタイミングの粘り合い。

 

 ――時間制限(タイム・リミット)は、ボールが互いの激突地点へと落下する瞬間。

 

「行くぞ……っ!!」

「…………まだゴスッ!」

 

 粘る。

 正面からの猛進によって、数秒の内に距離が縮まっていく。

 

「ゴス――!?」

 

 不意に、ソクが右の手を挙げた。

 

「来い……!」

 

「「……ッ!?」」

 

 相手のツートップが駆けだした。

 突然の出来事に、マークについていた氷浦と稲森の走り出しが、一段遅れた。

 

 岩戸との距離を縮めていくソク・ミンウ。そこにツートップのペクとドンヒョクが追いついて3人。

 3人が脚の回転を急速に高めていく。

 

「「「ウォオオオオオオオオオオオオッ!!」」」

 

 加速、加速、加速。脚が回転するたびに加速する。

 やがて3×2の霊長的機能すら放棄して、1×4――巨大な一頭の四足獣による突撃かの如く、地響きを上げながら踏みしめた大地を抉り走る。

 

 開幕に思い知っている岩戸には、粘る選択肢はなく、迫力に押されるように猛り上がる。

 

「ッッ!! ――ザ・ウォール!!」

 

 早くも2度目の展開。誰の見解も変わらない――

 

 

「特攻!バッファロートレインッッ!!!!」

 

 

 ――世界最強の突破技。

 

 岩壁を岩戸の作り上げた選手らの身長の数倍以上ある岩壁と、超速の獣角が衝突した――瞬間に岩戸の壁を木っ端微塵に粉砕した。

 





 残り一回で期末終わって夏休みになるのでちゃんと書き貯めます。
 テスト期間中に週一投稿完成版なしはやるもんじゃないと思わされました……。

 次回『資格』
 投稿予定日・来週土曜(②投稿予定は今週中どこか)

地の文での稲森明日人について。(投票期限:2026/8/22)

  • 明日人
  • 稲森
  • 俺(一人称化・票数反映は恐らく不可)
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