一度地に墜ちた天馬は、再び翼を広げ、青空を駆ける。 作:桐山たかふみ
アビドス自治区から数km進んだ所に、それはあった。
「……でけぇ」
星矢の口からそんな感想が漏れる。下手な学園や自治区に匹敵するとは知らされていたのだが、規模が想像以上だったのだ。下手な町よりも大きい上に外から見ても活気が凄まじい。これは連邦生徒会も手を出せないな、と半ば納得する。
「私も行くのは初めてですが……情報によると、この中で様々な物の取引、そして売買や請負事等など……すごいですね、ほんとに自治区並の規模があります」
アヤネもタブレットを覗きながら、その規模に驚愕している。
「うへ、規模だけならうちらアビドスよりも上かもね〜?」
「んなわけないわよ! 私らは正式な学園、ここは不正なただの闇市! どう天地がひっくり返ろうとも、立場は私達の方が上よ!」
セリカが感情を剥き出しにして叫ぶ。
「正式、ねぇ……」
それに対して、ホシノは何か意図を含ませたような小言を発するが、聞こえたのは唯一人だけだった。
「とにかく、入ってみませんか? 私達の目的はここの調査なんですし」
ノノミが皆に問い掛ける。その声にはここで足を止めていると怪しまれるかもしれないという想いを感じさせる。
「そうだね、じゃあ入ろっか。」
ホシノのその一言で、アビドス対策委員会はブラックマーケットの内部へと足を進めて行った。
■
「外からでも分かってたけど、活気が凄いね〜」
ホシノが感嘆している。実際に活気は凄まじいものがあり、そこらかしこで人が行き交い、話に花を咲かせたり店長と仲睦まじげに喋っていたりしている。辺りを見回しても店が多く、活気だけで言えばシャーレ付近の中心都市街にも負けてはいないと思えるほどだった。
「一区画とかじゃなくて、こんな街みたいだとは思って無かった」
「他の学園とかじゃ、これが当たり前なんだけどねぇ〜」
「? ホシノ先輩、他の学園とか行ったことあるんですか?」
「いや、ないけど聞いたことがあるんだ〜、アクアリウムだっけ、お魚が水槽に入って泳いでるらしいよ〜? うへ、お魚……」
「……気を緩めすぎじゃない? ホシノ先輩」
「そうですよ、ここはブラックマーケット。何が起こるか分からないんですよ!」
アヤネとセリカに言われて、ホシノがどことなく気を持ち直したように見えたところで。
前方から銃声が聞こえて、皆が身構える。ブラックマーケット内は一気に騒がしくなった。騒ぎの中から何人かがこちらに向けて走ってくる。こっちが出口だということもあるのだろう。
「うわぁぁぁ! すみませぇぇん!」
そうして、対策委員会の目の前から、一人の少女が三名程に追い掛けられながらこちらに向かってくる。
「おら待てぇ!」
「待てませぇぇん!!」
そうこうしている間にも、彼女達はどんどんと星矢達の方に近付いてくる。どうしようかと皆が悩む内、追われていた彼女がシロコの目の前に来ていて。
「あっ」
「わわっ、すみません……!」
「……その制服、は」
アヤネが彼女の制服をじっと見つめる。ぶつかった事によって彼女の足は止まる。それに伴って追ってきたチンピラ達の足も止まった。
「そいつを渡してもらおうか」
チンピラのリーダーらしき者が、星矢達に問い掛けてくる。そいつをよこせと。
「! 思い出しました! その制服、キヴォトス有数のマンモス校であるトリニティ総合学園の制服ですね!」
「そうだ、こいつはトリニティの生徒だ」
「だから人質に取って、たんまりお金を取ろうって話」
「お前らもどうだ? 取り分はしっかり払うぜ」
そんな言葉を向けてくるチンピラ三人。下衆な笑みを浮かべてこちらを誘ってくる。が、
「な、なんだお前ら! ぶべらっ」
「リーダーっ! ぎゃっ」
「はぐぁっ」
「お断りです〜☆」
「勧善懲悪」
「そんなお金使えるか!」
あっさりノノミにシロコ、セリカに落とされて、地べたに転がった。
「んで、なんでトリニティのお嬢様がここに居るわけ〜?」
ホシノが彼女に問い掛ける。なぜこんなところにトリニティの生徒がいるのか、と。
「そ、それがですね……これを手に入れる為に……」
そう告げると、彼女はゴソゴソと鞄の中を探り始める。その鞄には様々なキャラグッズであろうものが取り付けられており、そのキャラを彼女が好きなんだろうと言う事が伝わってくる。
「これ、これです!」
「どれどれ〜?」
ホシノ他、対策委員会が彼女の手の平に乗っている物を興味津々に見つめる。お嬢様がどんなものを手に入れる為にブラックマーケットに来たのかと。
「……なにこれ」
「モモフレンズのペロロ様です! このぬいぐるみは限定生産品で、百個も生産されていないとか……」
「皆さん知らないんですか〜? モモフレンズ」
「聞いたことない……です」
「何よそれ……」
「知らない」
「うへ、世代の差かな〜」
「俺も知らない……」
モモフレンズを知らない五人を置いて、ノノミと彼女は会話を重ねていた。聞こえてくる内容こそ分からないものの、皆それが悪い話でないことは星矢もわかる。それから、二人はこちらに向かってきて。それから軽い自己紹介を交わした。それてま彼女の名前が阿慈谷ヒフミであるということが分かった。
「アビドスの皆さんは、なんでここに……?」
自己紹介を交わしたところで、彼女の側からも疑問が出てきたようで、それを問うてくる。なんでここにいるのかと。
「探し物があってね〜、それを見つける為に来たんだ〜」
「探し物ですか……」
と、話し合おうとしたところで、アヤネが声を上げた。
「みっ、皆さん!」
「どしたの? アヤネちゃん」
「四方から、敵が接近中です!」
「先程の奴らの仲間みたいだね〜」
「先生、いける?」
「もちろん! 何時でもいけるぜ!」
四方から迫りくる殺気を感じながら、星矢は元気いっぱいの声で答えた。
■
「さて……」
敵は四方からやって来ている。数は二〇数人。とてもじゃないが人数上では勝てる感じじゃない。けれど、アロナの支援に対策委員会のみんな、それに俺がいる。負ける要素は実はあんまりない。
「あ、あの! 私も戦います!」
「いいのか?」
「いえ、私が蒔いた種ですから! 私が戦わないのはおかしいんです!」
阿慈谷ヒフミ、って言ってくれたかな。中々良い子だな、逃げずに一緒に戦ってくれるなんて。良い心を持ってるんだろうな。
「四方から……確かにそうだな、このまま待ってたら格好の餌食になっちまう」
「ここは四方に合わせて分散して各個撃破を狙うべきじゃな〜い?」
「よし! それで行こう。それじゃあ……」
そうして、四方に繰り出すメンバーが決まった。北にはホシノとノノミ、西にセリカとアヤネ。東にシロコ。南は俺とヒフミが担当することになった。
「撃破したら、ここに戻って来るか、他の加勢に行くように!」
最後にそう言いつけておいて、俺達はそれぞれの戦地に向かった。
「あ、あの……」
「なんだ? ヒフミ」
「せ、先生は外から来たんですよね、じゃあ、銃弾に当たったら、その……」
ヒフミが所々吃りながら、こちらを見て聞いてくる。銃弾は大丈夫なのか、目の前で死なれないか、ということ。
「大丈夫。銃弾なんか、当たっても屁でもないぜ」
「ほ、ホントですか……?」
疑問の色を強めるヒフミに、肯定するように首を強く縦に振る。大体、銃弾以上のものを身体に受けて来たんだ、この世界の銃弾が如何に危険とは言え、そう簡単には喰らわないし、受けても動けなくなるなんてことはならないはずだ。
その会話から数分後。現れたチンピラ達は、俺達を発見するなり、問答無用で発砲してきた。咄嗟に伏せて、放たれた弾丸を躱す。横目でちらりとヒフミを見ると、障害物に身を隠しながら戦っている。直ぐ様自分も足を動かして、その障害物に身を隠す。
相手の人数は見たところ五人。人数有利を頼みにして突っ込んで来ている。グッと拳に力を込めると、じわりと小宇宙が広がる感触がする。
「ヒフミ」
「はい!」
「俺が突っ込むから、援護を頼む」
「えっ、それはどうい──ええっ!?」
ヒフミが言葉の意味を理解出来ずにいる間に、障害物の陰から勢いよく飛び出す。
「飛び出して来やがったぞ!」
「おら撃て撃てぇ!」
弾丸の雨霰が、この身目掛けて降り注ぐ。ある程度までは見て躱せるが、当然五人の砲火となるともちろん厳しい。だから……
「頼んだアロナ!!」
「先生の身には、傷一つ付けさせません!!」
胴体に、足に腕に頭に当たるはずだった弾道が、途中で軌道を変えて明後日の方向へと飛んでいく。もしくは、空中で何かに弾かれたようにして地面へとはたき落とされる。
「なっ、なんだぁ!?」
「ペガサス……流星拳!!」
動揺している相手を尻目に、攻撃を仕掛ける。蒼い流星が世界を埋め尽くした後、目の前にはたった二人しか立っている者は居なかった。
「てめぇ、よくも!」
仲間が倒れた事に怒り、こちらに銃口を向けてくる。だが。
「げっ」
「も、もうひと──」
どこからとも無く飛んできた銃弾に、ドサッと意識を刈り取られる二人。
「だ、大丈夫でしたか……?」
障害物の陰から、ヒフミが心配そうな顔をしてこちらに問い掛けて来たのだった。
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「ああ、まったく大丈夫だ」
「なら良いんですが……」
不安気な表情を浮かべて、ヒフミが胸を撫で下ろす。
あのような肉弾戦をするのは、このキヴォトスでは数少ない。それもお互いの肉体が強固なため、なんとかなっているのだが、外から来た弱い身体の者が肉弾戦をするなど、ヒフミ、いやキヴォトスの生徒では考えもよらないのだろう。
「とにかく、集合場所に急ごうぜ──」
「待ってください、あれは……」
星矢の言葉を遮るようにして、ヒフミが声を発する。警戒した目付きで辺りを見回している。目線の先には、武装したロボットの軍団が足音を強調するようにして行進していた。
「先程の集合場所では難しいかもしれません……」
「なぁ、あいつらはなんなんだ……?」
「あれはブラックマーケットの治安維持を行っているマーケットガードです……さっきの騒ぎを聞き付けて、やって来たのかもしれません」
「なら別の場所で集合するよう皆にメッセージを送るから、ここ近辺で目立つ場所を教えてくれないか?」
「それならここが……」
ヒフミが指を指したのは、周囲の建造物よりも一回り高くそびえ立っていたビルだった。写真を撮り、写真と共にメッセージを送る。直ぐ様に既読が付き、了解! というスタンプが送られてきた。
「俺たちも向かおう」
「はい、出来るだけ目立たないように、慎重に行きましょう」
そうして二人は、黒い道の中へ、霧隠れのように消えて行った。
更新頻度については毎度申し訳ないです、完成出来るまでアナザーディメンションして異次元に閉じ込めて欲しい(切実)
現在アンケートはパヴァーヌが優勢ですね、パヴァーヌで見どころどう作るかな……なんか良い案があったらコメントでもじゃんじゃん意見寄せてください。
パヴァーヌかエデン、どっちを先に見たい?
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パヴァーヌ編(2章は後で)
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エデン条約(やるならフルで4章まで)
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普通にパヴァーヌ1章→エデン条約フル
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アビドスの後にミニストとか挟んでほしい