一度地に墜ちた天馬は、再び翼を広げ、青空を駆ける。   作:桐山たかふみ

4 / 19
 ついにプロローグ終了です。長かった…


あなたをずっと、待ちわびて。

「…何かありましたか?」

と、今ちょうど着いたのか、リンがそう問いかけてくる。

…今の自分の顔は、そう問われるほど間抜けだったのだろうか。その問いに大丈夫だと返して、リンこそここにわざわざ何を?と聞き返してみると、彼女はハッキリと答えてくれた。

 

「…ここにある、連邦生徒会長が残したものが保管されています。幸い、傷一つ無く無事なようですね…これを受け取ってください。」

 

 そう言ってリンの手から星矢の手に受け渡されたのは、タブレット端末だった…だが、星矢にとってはタブレット端末というのが未知のものであって…

 

「…なんなんだこれ…板か?いや板にしては妙に滑らかだし画面が付いてる…」

「…もしかして、タブレット端末をお知りでありませんか…?」

「タブ…レット…?これがそうなのか、見たこともないもん渡されたから一瞬戸惑ったぜ…」

「それが連邦生徒会長が先生に残したもの、シッテムの箱です。」

「普通のタブレット…?ってのは違うのか?」

「はい、普通のタブレットとは違う…といいますか、実はわからないことだらけの代物なのです。開発会社も、システム構造もOSも動く仕組み、全てが不明なのです。」

「じゃあこれを、俺なら動かせる…ってことなのか?」

「…連邦生徒会長はこれが先生の物で、これでタワーの制御権を回復させれると言っていました。私達では起動すらできませんでしたが、先生ならもしかしたら…」

 

 そこでリンが喋るのを止めて、一度こちらに整理させる時間を与えてくれたため、その時間で考えることにした。

タブレット…というのは、未来の何か…なのか?テレビのような液晶が付いているが、テレビより小型で綺麗だ。

 そしてそのタブレットに見えるこのシッテムの箱?というものは、何もかもが謎で起動すら出来ないとの代物。

連邦生徒会長曰く、これは俺の物…らしい。

起動してみようと、指を伸ばすとリンが再び口を開く。

 

「では、ここから先は全て先生にかかっておりますので、私は邪魔にならないように離れています。」

と言って、言葉通りに離れていく。

 

 

Connecting to the Crate of Shittim…

システム接続パスワードを入力ください。

 

 パスワードの入力を要求される。本来なら知らない、打てないはずのパスワード。だが不思議と脳内には、パスワードの文字が浮かび上がっていき、やがて形になる。それをそのまま、打ち込んでみることにした。

 

 ……我々は望む、七つの嘆き(なげ)を。

……我々は覚えている、ジェリコの古則(こそく)を。

……。

 

接続パスワード承認。

現在の接続者情報は星矢、天馬星座の星矢、確認できました。

生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。

 

 そう表示された文字を読み終わった瞬間、意識が青く染め上げられていった。

 


 

 目を開くと、そこは蒼い世界が広がっていた。

教室の中にいるのだが、教室はまるで何かに吹き飛ばされたかのようにポッカリと横穴が空いている。

外を覗くと、夥しい数の椅子が積み上がっている。乱雑に積み上げられたそれは、何時からそうなっているのだろうと思わせる謎のオブジェと化していた。

 

 教室の外は、海だった。水色の液体が、地平線の彼方まで無限に広がっているんじゃないか。と思わせるほどに長く続いている。するとこの教室はこの大海原に浮かぶ孤島、まさに陸の孤島といったところだろうか。よくよく自分が立っている足元を見てみると教室の床には、水辺に浮かぶ波紋のようなものが広がっていて、足を動かすと動かした分だけ静かに輪を広げていく。こういったものを意識して見る機会などなかったためか、心の底から綺麗だと、星矢は思った。

 

 

 そして教室の中では、ただ1人。少女が机にうつ伏せになって寝ていた。口が動いているのを見て、耳を澄ましてみると何か寝言を言っているらしく、その言葉が一つ一つハッキリと聞こえてくる。

 

「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクよりも……バナナミルクのほうが……」

 

 かわいい寝言だな、と思いながら近付いていく。

近付いても尚、楽しい夢でも見ているのか笑みを浮かべてむにゃむにゃと呟いている。

 だが彼女がただの人間なはずがない。星矢は既に自分が現世ではない「別の世界」に入った事を実感しており、ここに彼女が居るのも何か意味があるのだろうと、そう思っている。

 

「楽しそうなとこ悪いが…起こすしかねぇよな…お〜い。」

…声をかけても起きない。仕方ないので揺さぶってみる。

ゆさゆさと、優しく揺り起こしてあげるように揺さぶってみる。すると彼女はうへ………と楽しい世界にまだ居たようだが、流石に身体に加えられた力を感じたのか、はたまた気付いたのかひへ!?と驚いて跳ね上がった。

 しばらく彼女は目をこすったり、むにゃむにゃと寝惚けていたのだが、その目が星矢に気付いた際、ハッキリと目が見開かれて驚愕しているのが分かる。口もパクパクと忙しなく動いており、まるで目の前にいるものが信じられないような仕草と言動をしている。

 

「え、あれ?あれれ?もっ、もしかして先生!?この空間に入ってきたということは、まっ、まさか星矢先生!?」

「…そんなに驚いているところ悪いんだが、おま…君は誰なんだ?あと、なんで俺のことを知って…」

「う、うわあああ!そ、そうですね!?…もうこんな時間!?うわあああ!?…ふー、ふー…落ち着いて…落ち着いて…え〜と、そっ、そうだ!まず自己紹介からさせてもらいますね!!」

そう言って、彼女はその名前を告げる。

「私の名前はアロナ!このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!やっと会うことが出来ました!私はここで先生を、ず〜〜っと待っていました!」

 

 本当に嬉しそうな声を、目一杯弾ませてしゃべっている。

この子はほんとに俺をず〜っと待っていてくれたんだな、と感じる。待っていた割には寝てしまっていたが…まあ、長い間待っていたのだから寝てしまうくらい仕方ないか。

 

「よろしくな、アロナ。」

「はい!よろしくお願いします!まだ身体のバージョンが低くて、声帯周りに調整が必要なのですが…これから先、様々な面で先生のサポートをさせてもらいますね!!」

「おう、頼りにしてるぜ!」

「ビシバシ頼っちゃってくださいね!…あっ!それではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います!手続きのため、こっちに来てください!…もう少しこっちです。うう…少し恥ずかしい…

「ここか?」

「はい、丁度いい感じです!ではこの私の指に先生の指を当ててください!」

「…こうか?」

 

 アロナが人差し指をピンと立てる。

指をアロナの指に合わせる。すると指の先端が色鮮やかに光ったかと思うと、光はやがて収束していき、まるで光など無かったかのように元に戻っていた。

 

「はい!これでOKです!」

「…これでどう生体認証?を確認するんだ?」

「ふっふっふ…実は今指を合わせた時の指紋で確認するんです!!」

「マジか…そんなことが出来んのか…」

 

 素直に感心する。指紋云々で生体認証が出来るようになっているなんて、自分が元いた世界では出来ないどころか未来の技術なんだろう。この世界の文明や技術が余程進んでいる事が前に見た街並みからもわかる。

 

「指紋を目視で確認しますが…すぐ終わります!こう見えて目は良いので。」

 

 すぐ終わると言われたので、少し側で確認作業を待つことにする。…どこか雑にやっているような感じもしたが、概ね終わったとアロナが言った時に、現状の説明と知りたいことを告げた。

 

 

「なるほど…大体の事情はわかりました。連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段が無くなった…と。」

「その…何か連邦生徒会長について知っていることはあるか…?」

「…私はキヴォトスの多くの情報を知っていますが、連邦生徒会長についてはほとんど知りません。何者なのか、なぜ居なくなったのかも…お役に立てず、申し訳ありません。」

 

そこまでは暗そうな表情で話していたアロナだが、ですが!と大きく声を出すと、

「サンクトゥムタワーの問題は私が解決できそうです!」

「それは良かった…!ぜひ、今すぐ頼めるか?」

「分かりました!それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お待ちください!」

 

僅か数十秒だけの短い時間を空けて、アロナは制御権が取れたと言ってくる。実はこの子凄い子なんじゃないか…?

 

「今、サンクトゥムタワーは私アロナの統制下にあります。今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!!承認さえしてくだされば、制御権を連邦生徒会に移譲できますが…でも大丈夫でしょうか?連邦生徒会に制御権を渡しても…」

 

 許可を求めてくるアロナ。答えは考える間もなく、自ずと答えていた。

「大丈夫だ、アロナ。制御権を連邦生徒会に移譲してくれ。」

「わかりました!これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!!」

 

 力は持つべきものが持つものだ。俺みたいなやつが握って良いもんじゃねぇ。使い方を知っているやつが持たねえと、後々大変なことになっちまうからな……

 


 

「……はい、わかりました。」

意識が元の世界に帰って来る。そこではリンが何かの報告を受けていたところだった。

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認出来ました。これからは生徒会長がいた頃と同じ様に行政管理が出来ます。」

そこで言葉を一旦切り、リンが労いの言葉を贈ってくれる。

「お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでいただき、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。不良生徒達の対処はこちらでいたしますのでご心配は要りません。それでは私の役目は…」

 これで終わり、そう言おうとしたのだろうが、何かを思い出したらしく、あ。と声を漏らした後についてきてください。とだけ告げて、足を進めていってしまった。

「ちょ、ちょっと待てよ…!」

 

 

「ここが、連邦捜査部、シャーレです。」

 ついて行った先は、度々言葉は聞いていた連邦捜査部()()()()の部屋…になる部屋だった。扉には貼り紙で空室 近々始業予定。と書いてあり、その横にはシャーレのエンブレムが正式名称と共に刻まれている。

 ドアを開けて部屋の中に入る。部屋の中には荷物等などが大量に手付かずのまま置かれており、これから主人を迎えて体裁を整えていくといった感じがした。

 

「長い間空っぽでしたが、ようやく主人を迎えられましたね。そして横が…部室です。ここで先生のお仕事を始めると良いでしょう。」

「…待て待て、お仕事つっても…何すればいいんだ?」

「……シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織なので、特に何かしなければいけない…という強制力はありません。加えて、キヴォトスのどんな学園の自治区にも出入りでき、所属に関係無く先生が希望する生徒たちを部員として加入させることが可能です。」

「改めて聞くと恐ろしいな…あまりにも権限がデカすぎないか?捜査部にしては権限が大き過ぎるし、余分じゃないか?」

「面白いですよね、捜査部とは言いますがその部分については、連邦生徒会長も特に触れていませんでした。……つまり、先生がやりたいことを何でも好きにやって良い…ということですね。」

「俺が、やりたいこと……」

 

 そこで言葉が、思考が詰まる。今までやりたいことと言えば、姉さんを探し出して再び二人で暮らすこと。そして聖闘士として沙織さんを守り、地上の平和と愛を脅かす敵を打ち砕くこと。だがこの世界に来た以上、その二つは叶わない。

新たにやりたいことを探して、考えていかねばならないのだ。

 自分が何をするためにここに呼ばれたのか。それを唯一の知るであろう連邦生徒会長は行方不明。そしてリンが今話してくれているが、連邦生徒会も彼女の捜索に全力を尽くしているため、他のことにまで手が回っておらず、あらゆる苦情が放りっぱなしになっていること。そこまで伝えた所で何か閃いた表情で

「もしかしたら、これらの面倒な問題と苦情の数々を、時間が有り余っている「シャーレ」なら解決出来るかもしれませんね。」

「…俺にいろいろと押し付けるつもりか?」

「いえいえ、やるやらないは先生のご自由にお任せしますので。その辺りの書類は机の上に一応置いておきました。それでは私はここで。必要な時には、また連絡致しますので。」

 

 

「サンクトゥムタワーの制御権を…」

「ワカモは自治区に…」

そんな会話をしているのが近づいていくにつれてハッキリと聞こえるようになってくる。彼女らも近づいて来るのに気付いたのか、こちらに一礼して話しかけて来てくれる。

 

「お疲れ様でした、先生。先生の活躍はすぐにキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

「SNS…ってなんなんだ?」

「そっ、そこ!?いいや、そんなことはどうでもよくて!!先生、ミレニアムサイエンススクールに来てくださればまた会えるかも?先生、それでは!」

まずはユウカが。

 

「お疲れ様です。これでお別れになりますが、近い内にトリニティ総合学園へお立ち寄りください、先生。歓迎いたします。」

ハスミと、それに同意してペコリと軽く頭を下げるスズミ。

 

「私も、今日の出来事を風紀委員長に報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてくださいね。」

チナツ、それぞれ全員に今日協力してくれたことを感謝して、全員から自分の学園に立ち寄ってくださいねと誘われてしまった。参ったな、早速いろんな所に感謝も兼ねて立ち寄ることになるかもしれない…と、星矢は思った。

 


 

 一度シャーレの部室に戻ってきて、椅子に腰を下ろしてシッテムの箱を起動する。そしてその光に触れた瞬間、再びあの蒼い世界に降り立っていて、それに気付いたアロナが話しかけてくれる。

 

「なんだか慌ただしそうでしたが……ある程度落ち着いたみたいですね、お疲れ様でした。」

「アロナもお疲れ様。大変だっただろ?」

「いえいえ!あの程度、スーパーアロナちゃんにかかれば、ちょちょいのちょいです!」

えっへんと言葉が付きそうなポーズを取るアロナ。それを微笑ましいものを見る目で少しの間見守っていた。

 

「それより先生、本当に大変なのはこれからですよ?」

「これから?」

「はい!これから先生と共に、キヴォトスの生徒達が抱える問題を解決していくんです!単純に見えても簡単じゃない…と〜〜っても大事なことです。それではキヴォトスを、シャーレをお願いします、先生。」

「こちらこそ、サポートを頼むぞ!アロナ!」

「…!それではこれより、連邦捜査部シャーレとして、最初の任務を始めましょう!!」

「おう!やってやろうぜ!!」

 

 ここから始まる。

先生としての、星矢の物語が。新しき神話が、今幕を開ける。

 

 これは生徒と共に歩む、新たなアーカイブだ。

 

 




 ようやくプロローグ終わったよぉ……長かったよう…
はい。ようやくプロローグが終わったので、前々から言ってた通りにこれからユウカメモロビ&おまけでやっていこうと思います。
 そこから対策委員会編ですね。星矢がアビドスに行って迷うかどうか、死にかけるかどうか。そこはどうでもいいとして、アビドス編では後半にオリジナルをぶっ込もうと思っているので、それまでの前座、もし星矢がアビドスにいたら。
それをやりたいと思います。

…続きがいつなるかわからねぇがな!!()

パヴァーヌかエデン、どっちを先に見たい?

  • パヴァーヌ編(2章は後で)
  • エデン条約(やるならフルで4章まで)
  • 普通にパヴァーヌ1章→エデン条約フル
  • アビドスの後にミニストとか挟んでほしい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。