カノープスの終生   作:紅絹の木

63 / 63
いざ、空へ

 

 

 

 もうすぐ夜が明ける時間。

 私とリーノとレッド、そして珍しくメタナイト卿は、一緒に川の字で寝ていた。

 場所はもちろん、私の部屋だ。

 いつものようにリビングに布団を敷いて、私、リーノ、レッド、メタナイト卿の順番で眠る。

 

 ――風が吹いた気がした。

 

 私は目を覚まし、体を起こす。そして窓の方を見た。

 窓は開いていなかった。どうして風を感じたのだろう?

 もう一度眠ろうとして、窓の外が光った。

 私はバリアをすぐに張った!

 

 ドカン!ドカン!

 

 あれは光弾の音だ。爆風で部屋の窓が壊れてしまった。

 何より、リーノとレッド、メタナイト卿が一斉に目を覚ます。

 リーノはレッドに覆い被さり、メタナイト卿はそんな二人を守るように側に寄る。

 メタナイ卿は私に言った。

 

「敵襲か!?」

「おそらくデスタライアーです!どうしますか」

「――フームのところへ。大臣家の部屋へ急ぐぞ」

 

 そこにリーノが待ったをかけた。

 

「お待ちください。どうか、アーニャとランタンも一緒に!」

「では、二手にわかれよう。事は一刻を争う。私は大臣家へ。カノープスは皆を守れ」

「わかりました。どこで落ち合いますか?」

「――噴水で会おう」

 

 メタナイト卿はリーノとレッドを撫でた。

 

「また後で」

「はい。どうか気をつけて」

 

 メタナイト卿は颯爽と駆けて、部屋を出ていった。

 私は言った。

 

「リーノ、急いでアーニャたちのところへ行くぞ」

「ええ」

 

 リーノは泣いているレッドを、抱っこ紐で抱き上げ、前側に固定した。

 順次が整ったので、私たちはアーニャとランタンを探しに行く。

 まずは部屋をあたってみよう。

 

 

 

 アーニャとランタンとは、すぐに会えた。

 どうやら二人も爆発音で起きたらしい。そして、私の部屋に向かって避難している最中に、出会えた。

 運が良かったな。

 

 出会えたその場……廊下の中央にとどまり、バリアを張り続ける。

 爆発音と揺れは、やがておさまった。

 私たちは伏せていた顔をあげる。

 リーノが言った。

 

「敵を倒したのでしょうか?」

「きっとカービィが倒してくれたんだ。さあ、メタナイト卿に言われた通り、噴水へ」

 

 私がそこまで言うと。アーニャとランタンは首を振った。

 

「私たちは村へ行きます。おじいちゃんたちが心配なので」

「いいでしょ?すぐに戻るわ」

 

 私は考える。物語通りなら、村は焼かれたはずだ。

 二人だけを行かせるのは、ひどく心配で。

 だから提案する。

 

「なら、フームたちと一緒に行ってくれ」

「子供たちと?どういうこと?」

 

 ランタンの疑問に、答える。

 

「フームたちだって、村を心配するだろう。きっと向かうはずだ。二人だけで行動するよりも、安全だと思う」

 

 アーニャが「確かに」と言った。

 

「そうですね。わかりました。橋でフーム様たちと合流します」

「ああ。それじゃ、また後で。気をつけてな」

 

 私たちは二手に分かれた。

 アーニャとランタンは急いだ方がいいと、廊下を走り出す。

 それから、私とリーノも、レッドを抱えて噴水へ走り出す。

 

 

 

 それからは途方もない展開だった。

 村人たちを含めたみんなが噴水へと集まると、メタナイト卿は地下へと案内してくれた。

 長い階段を降りて、大きなエレベーターでさらに地下へ。

 

 そうしてエレベーターを降りた先には、巨大な戦艦があった。

 戦艦ハルバード。

 メタナイト卿とソードナイトとブレイドナイト、三人だけで造り上げた明日への希望が、立ち向かう諦めない心が、そこにあった。

 

 メタナイト卿は村人たちに、ナイトメアと戦うために志願してくれ、と頼み込む。

 ――村人たちは怖気付いて逃げ出してしまった。

 無理もない。戦ったことがないものに、武器を手に取れなんて、無茶だ。

 だが、子供たちは言った。

 

「私は行くわ!」

「おれも!」

「ぼくも!」

「わたしだって!」

 

 フーム、ブン、ロロロ、ラララが声を張る。

 ああ、どうしてこの子たちは、こんなにも勇敢なのだろう。

 眩しくて目を細める。そして私も前に出た。

 

「最終決戦ならば、戦力は集中させた方がいいですよね?」

「ああ、その通りだ」

「ならば、私も行きましょう。決戦が早く済めば、それだけリーノたちも安全になる」

「頼む」

 

 そのとき、私はズボンをクイっと引っ張られたので、そちらを振り向いた。

 リーノが、泣きそうな、怒ったような顔をしていた。

 妹は震える声で言った。

 

「カノ、今度は今までと規模が違うわ。だから……」

「ごめん。それでも行ってくる」

「――だめ、行かないで」

 

 ピシャリと言い放たれた。

 周りの空気が凍る。

 リーノの目からは涙が溢れていた。

 私はしゃがみ込み、それを親指で優しく拭ってやる。

 

「メタナイト卿も行ってしまうのに、お姉ちゃんまで私を置いていかないで……」

 

 私はリーノをそっと抱き寄せる。レッドが潰れてしまわないように、そっと。

 妹が幼い頃にしたように、頭を撫でた。

 

「少しだけ、出かけてくる。メタナイト卿を生かして、みんなで帰ってくるためだから、わかってほしい」

「わかってる……少しだけ、こうしていて」

「いいよ」

 

 抱きしめながら言った。

 囁きよりも小さな声で、みんなには聞こえないように。

 

「リーノ、怖いんだろう?少しでも歯車が合わなければ、みんな帰って来れなくなる。私が行ってしまうと、どう転ぶのか、未来はさらに不明確になる。でもさ、それってもっと良い未来になるかもしれないってことだろ?私、信じるよ。みんなと、生きて戻る。リーノはレッドと一緒に待っててくれる?」

 

 ばっと、リーノが顔をあげる。

 とても驚いているようだった。

 私は、彼女の口元に、指をあてる。

 

「答え合わせは、帰ってからな」

「……わかった。必ず、帰ってきて」

 

 リーノはすっと、小指を差し出した。

 私も小指を差し出して、結ぶ。

 

「約束よ」

「約束だ」

 

 

 それから、リーノはメタナイト卿ともハグをしていた。

 アーニャとブレイドナイト、ランタンとソードナイトも、それぞれハグをして、すぐに離れていた。

 

 間もなく、敵の攻撃が再開され、城が揺れる。

 

 そうこうしている内に、村人たちが帰ってきた。

 ううん、正しくはダコーニョ軍曹という方が、みんなを連れてきてくれたのだ。

 合流はできた。

 選ばれた数名だけが戦艦に乗り、残ったみんなは村の復興を進める。

 リーノたちが安全圏内まで避難したのち、ハルバードは発進した。

 

 空へ舞い上がったハルバードは、全四機のデスタライアーを一度に攻撃し、撃破する。

 そうして、宇宙へと飛んでいく。

 全員がブリッジの椅子に座り、体を固定して、ワープの準備に入る。

 

 私は座れる席がなかったので、ブリッジの床にへばりつき、バリアで自分を固定した。

 

「目標、九百光年先のナイトメア大要塞!行くぞ」

 

 メタナイト卿の言葉を合図に、スイッチが押される。

 戦艦がひどく揺れた。

 

 

 

 

 ……何か忘れているような気がする。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS憑依禪院直哉~甚爾君のお嫁さんになれなかったから恵君を食おうと思う~(作者:八握剣異常性癖魔虚羅)(原作:呪術廻戦)

禪院家ブームに乗ろうとしたけど遅筆すぎて逃したので供養です▼コンセプトは性格がドブカスのまま仲間になる直哉。TSは趣味▼善院家じゃないドブカスものが増えることを祈って


総合評価:6856/評価:8.68/連載:9話/更新日時:2026年03月03日(火) 07:01 小説情報

やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか(作者:星乃 望夢)(原作:機動戦士ガンダムSEED)

なお、准将みたいに頑張らないと世界が簡単に破滅しそうな戦略兵器がポコポコ簡単に撃たれるマッポーめいた終わらない明日へ目指して「それでもっ、守りたい世界があるんだぁぁぁ!!!!」しないとならない模様。▼将来別嬪なお姫さまが嫁になったり、カッコいいロボットに乗ってオレTUEEEEE!!!!出来るイケメン主人公ではあるが、絶対に転生したくない主人公の1人である。


総合評価:11582/評価:8.84/連載:33話/更新日時:2026年05月22日(金) 12:00 小説情報

TS転生した元おじさん一般村娘。将来結婚相手になるだろうからと優しく接していた幼馴染が村を出た。そして十年後、立派になりすぎて帰ってきた。(作者:突発性でべそ症候群)(オリジナルファンタジー/恋愛)

やあ、おじさんは村娘に転生したよ。▼どうやら村長の一人娘みたいだから、将来子供を産んで村を存続させるのが役割なんだ。▼最初は受け入れがたかったけれど、まあ人生って諦めと妥協の産物だよねってことで受け入れたよ。▼せめて結婚相手は仲良い相手がいいなぁ、と思って幼馴染と親しくしようとしたけれど、あんまりうまくいかなくって。▼その子は村を出ちゃったんだ。▼しょうがな…


総合評価:8823/評価:8.32/連載:6話/更新日時:2026年05月23日(土) 06:03 小説情報

TS転生クソボケユメ先輩(死亡済・幽霊)が原作のn倍ホシノの脳を焼いていた話(作者:死刑囚)(原作:ブルーアーカイブ)

▼ ユメ先輩にTS転生していた元ブルアカプレイヤーの『俺』――が、原作通りにユメ先輩として死んだらなぜか幽霊になってた話。▼ なお、原作よりマシにしようと思って色々やった(できたとは言っていない)結果、ホシノの脳は原作よりこんがり焼かれているものとする。


総合評価:17059/評価:8.96/連載:12話/更新日時:2026年05月18日(月) 01:20 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>