もうすぐ夜が明ける時間。
私とリーノとレッド、そして珍しくメタナイト卿は、一緒に川の字で寝ていた。
場所はもちろん、私の部屋だ。
いつものようにリビングに布団を敷いて、私、リーノ、レッド、メタナイト卿の順番で眠る。
――風が吹いた気がした。
私は目を覚まし、体を起こす。そして窓の方を見た。
窓は開いていなかった。どうして風を感じたのだろう?
もう一度眠ろうとして、窓の外が光った。
私はバリアをすぐに張った!
ドカン!ドカン!
あれは光弾の音だ。爆風で部屋の窓が壊れてしまった。
何より、リーノとレッド、メタナイト卿が一斉に目を覚ます。
リーノはレッドに覆い被さり、メタナイト卿はそんな二人を守るように側に寄る。
メタナイ卿は私に言った。
「敵襲か!?」
「おそらくデスタライアーです!どうしますか」
「――フームのところへ。大臣家の部屋へ急ぐぞ」
そこにリーノが待ったをかけた。
「お待ちください。どうか、アーニャとランタンも一緒に!」
「では、二手にわかれよう。事は一刻を争う。私は大臣家へ。カノープスは皆を守れ」
「わかりました。どこで落ち合いますか?」
「――噴水で会おう」
メタナイト卿はリーノとレッドを撫でた。
「また後で」
「はい。どうか気をつけて」
メタナイト卿は颯爽と駆けて、部屋を出ていった。
私は言った。
「リーノ、急いでアーニャたちのところへ行くぞ」
「ええ」
リーノは泣いているレッドを、抱っこ紐で抱き上げ、前側に固定した。
順次が整ったので、私たちはアーニャとランタンを探しに行く。
まずは部屋をあたってみよう。
アーニャとランタンとは、すぐに会えた。
どうやら二人も爆発音で起きたらしい。そして、私の部屋に向かって避難している最中に、出会えた。
運が良かったな。
出会えたその場……廊下の中央にとどまり、バリアを張り続ける。
爆発音と揺れは、やがておさまった。
私たちは伏せていた顔をあげる。
リーノが言った。
「敵を倒したのでしょうか?」
「きっとカービィが倒してくれたんだ。さあ、メタナイト卿に言われた通り、噴水へ」
私がそこまで言うと。アーニャとランタンは首を振った。
「私たちは村へ行きます。おじいちゃんたちが心配なので」
「いいでしょ?すぐに戻るわ」
私は考える。物語通りなら、村は焼かれたはずだ。
二人だけを行かせるのは、ひどく心配で。
だから提案する。
「なら、フームたちと一緒に行ってくれ」
「子供たちと?どういうこと?」
ランタンの疑問に、答える。
「フームたちだって、村を心配するだろう。きっと向かうはずだ。二人だけで行動するよりも、安全だと思う」
アーニャが「確かに」と言った。
「そうですね。わかりました。橋でフーム様たちと合流します」
「ああ。それじゃ、また後で。気をつけてな」
私たちは二手に分かれた。
アーニャとランタンは急いだ方がいいと、廊下を走り出す。
それから、私とリーノも、レッドを抱えて噴水へ走り出す。
それからは途方もない展開だった。
村人たちを含めたみんなが噴水へと集まると、メタナイト卿は地下へと案内してくれた。
長い階段を降りて、大きなエレベーターでさらに地下へ。
そうしてエレベーターを降りた先には、巨大な戦艦があった。
戦艦ハルバード。
メタナイト卿とソードナイトとブレイドナイト、三人だけで造り上げた明日への希望が、立ち向かう諦めない心が、そこにあった。
メタナイト卿は村人たちに、ナイトメアと戦うために志願してくれ、と頼み込む。
――村人たちは怖気付いて逃げ出してしまった。
無理もない。戦ったことがないものに、武器を手に取れなんて、無茶だ。
だが、子供たちは言った。
「私は行くわ!」
「おれも!」
「ぼくも!」
「わたしだって!」
フーム、ブン、ロロロ、ラララが声を張る。
ああ、どうしてこの子たちは、こんなにも勇敢なのだろう。
眩しくて目を細める。そして私も前に出た。
「最終決戦ならば、戦力は集中させた方がいいですよね?」
「ああ、その通りだ」
「ならば、私も行きましょう。決戦が早く済めば、それだけリーノたちも安全になる」
「頼む」
そのとき、私はズボンをクイっと引っ張られたので、そちらを振り向いた。
リーノが、泣きそうな、怒ったような顔をしていた。
妹は震える声で言った。
「カノ、今度は今までと規模が違うわ。だから……」
「ごめん。それでも行ってくる」
「――だめ、行かないで」
ピシャリと言い放たれた。
周りの空気が凍る。
リーノの目からは涙が溢れていた。
私はしゃがみ込み、それを親指で優しく拭ってやる。
「メタナイト卿も行ってしまうのに、お姉ちゃんまで私を置いていかないで……」
私はリーノをそっと抱き寄せる。レッドが潰れてしまわないように、そっと。
妹が幼い頃にしたように、頭を撫でた。
「少しだけ、出かけてくる。メタナイト卿を生かして、みんなで帰ってくるためだから、わかってほしい」
「わかってる……少しだけ、こうしていて」
「いいよ」
抱きしめながら言った。
囁きよりも小さな声で、みんなには聞こえないように。
「リーノ、怖いんだろう?少しでも歯車が合わなければ、みんな帰って来れなくなる。私が行ってしまうと、どう転ぶのか、未来はさらに不明確になる。でもさ、それってもっと良い未来になるかもしれないってことだろ?私、信じるよ。みんなと、生きて戻る。リーノはレッドと一緒に待っててくれる?」
ばっと、リーノが顔をあげる。
とても驚いているようだった。
私は、彼女の口元に、指をあてる。
「答え合わせは、帰ってからな」
「……わかった。必ず、帰ってきて」
リーノはすっと、小指を差し出した。
私も小指を差し出して、結ぶ。
「約束よ」
「約束だ」
それから、リーノはメタナイト卿ともハグをしていた。
アーニャとブレイドナイト、ランタンとソードナイトも、それぞれハグをして、すぐに離れていた。
間もなく、敵の攻撃が再開され、城が揺れる。
そうこうしている内に、村人たちが帰ってきた。
ううん、正しくはダコーニョ軍曹という方が、みんなを連れてきてくれたのだ。
合流はできた。
選ばれた数名だけが戦艦に乗り、残ったみんなは村の復興を進める。
リーノたちが安全圏内まで避難したのち、ハルバードは発進した。
空へ舞い上がったハルバードは、全四機のデスタライアーを一度に攻撃し、撃破する。
そうして、宇宙へと飛んでいく。
全員がブリッジの椅子に座り、体を固定して、ワープの準備に入る。
私は座れる席がなかったので、ブリッジの床にへばりつき、バリアで自分を固定した。
「目標、九百光年先のナイトメア大要塞!行くぞ」
メタナイト卿の言葉を合図に、スイッチが押される。
戦艦がひどく揺れた。
……何か忘れているような気がする。