ただひたすら可哀想 is 俺もしくは are 俺たち 作:のーとりあす
オリジナル:ファンタジー/ノンジャンル
タグ:R-15 残酷な描写 不幸 寝取られ 理不尽 強姦 ハッピー ポジティブ 異世界 可哀想な子大好き隊
『可哀そうな子大好き隊』のリーダー、平成生まれの高校生男子が異世界で不幸な子を助けるお話……になる予定。
※センシティブな内容を含みます。エロとかではないです。
突然ではあるが、この世で一番かわいそうな存在とはなんであろうか。
一生を狭い金魚鉢で過ごす金魚?
食われるためにブクブク太らされ歩くこともできない鶏?
拷問の果てに殺される虜囚?
幼馴染を寝取られた草食くん?
純潔を強姦で散らされた少女?
うん。かわいそうだ。かわいそうで、かわいそうで……とてもカワイイ。
可愛いではないか。愛せるではないか。可哀想is可愛い。これ常識なりけり。
てなわけで俺は世界一愛される存在、すなわち世界で一番不幸で可哀そうな存在になろうと思う。
だってみんな悲劇の主人公が大好きだろう?
「俺が一番かわいそうなら、みんなは俺より大丈夫だって、そう思えるだろう?」
「人と比較して生きるのが大好きな君たちは、そう思うんだろう?」
「貶してるんじゃないよ、褒めてるんだよ! かわいいなぁもう!」
◇◆◇
平成生まれの高校二年生、『負け犬』の〝ポチ〟とは俺の事だ。
え? なんでポチなのかって?
それは俺の本名が工藤ポチだからだよ。
なんでそんな名前なのか?
――うるせぇ! 生みの親が勝手に決めたんだよ!
生みの親は俺の名前だけ決めて心中したらしい。いやどんな嫌がらせ??
何がしたかったわけパパン、ママン。
あんたらの人生ほんとにそれでよかったわけ?
昼休みの学校の屋上でセンチメンタルに浸っていると、下から階段を上ってくるような足音が聞こえてきた。すると、少しして扉が開き、屋上の出入り口の上――俺が寝転がっている場所へ誰かが来た。
「またこんなとこにいたのか、親友」
「ああ、寝取られ
「ぶっ殺すぞ負け犬」
「黙れ寝取られ常習犯、一回くらいお前から寝取ってみろ」
「断る。僕は純潔純愛至上主義者なんだ」
「生物的異端者め。そんなんだからヤりもせずに寝取られるんだよ」
「馬鹿だな。寝取られるのは僕のせいじゃない。真に純潔足りえない彼女らが悪いんだ。僕は悪くない」
自称俺の親友こと佐藤
一か月に一回は寝取られている一個下の不幸な後輩だ。
だがよく考えて欲しい。一か月に一回寝取られているということは一か月ごとに付き合っている人が変わっているということであり、それはつまりそれだけこいつがモテているということである。
何故って? それはこいつのビジュがよく、運動神経がよく、物覚えがよく、人当たりがよく、優しいからである。どこの完璧超人だよ。
そんな完璧な彼はその性ゆえか完璧主義者であり偏執者でもある。
処女に拘っているのもそういうわけだ。
「僕の事はいい。それよりも君だ。まだあんなDV男とダメ女の元で暮らしているのか?」
「え、うん、そうだけど?」
「さも当たり前のことみたいな顔をするな。非常識だろ」
「非常識が非常識を語るなよ、ミスター非常識」
「僕は君ほどじゃない。だいたい君は……」
「――あー! やっぱりここにいたぁ! ふたり、みーっけ!」
いつも通りの雑談を繰り広げていると、これまたいつも通りもう一人が加わってきた。活発さとは裏腹に清純さと大人しさ、およそ日本人男性が好みそうな見た目をした高校生『天音ひとり』である。
「おー『世界一明るい被害者』こと天音さんじゃあないですかー、今日はどうだったんですか?」
「おい、あまり天音先輩に変なことを……」
「んー? 今日はぁ、あれだねっ! 教頭先生に襲われかけたよっ! こわかったぁ、慰めて~ポチく~ん」
「おぉほれほれ、可哀そうだねぇ、可愛いねぇ」
「天音先輩に気安く触れるなクソ野郎! ぶっ殺すぞ!」
「好きなら告れよ、天音なら受け入れてくれるだろ。な?」
「えー! れんくん天音のこと好きなの!? 好きなの!?」
「なっ/// そ、そんなわけがないだろっ! 僕が、この僕が、天音先輩のような破廉恥な人を好きなわけ……好きなわけ……」
「えへっ、そうだよね! れんくん綺麗好きだもんね! それでも仲良くしてくれるれんくんが天音は大好きだよー! 仲良くしてくれてありがとねー!」
「なっ、だ、大好きだなんて、気軽に言うもんじゃないですよ……」
「受け身草食へたれへっぴり腰寝取られ童貞め」
「暴言が過ぎる。あんまり言うと僕と言えど泣くぞ」
「可哀想だから今度おすすめのA〇を教えてやろう」
「愛してるよ親友」
「お前のそういうところは俺も好きだぜ」
「むぅ、ふたりで何か楽しそうに話してるー! 天音も混ぜろー!」
「よし、じゃあ天音にもおすすめの〇Vを……」
「ぶぅ――! な、何言ってんだクソ野郎! あ、天音先輩にそんなもの……!」
「え? アニマルビデオのどこがそんなものなんですか? ん? 何と勘違いしているのかな、お前は」
「なっ、嵌めたな!」
「お前が勝手に勘違いしただけですぅー!」
「あにまるびでお? 猫ミームみたいな可愛い猫ちゃんとか見れるの?」
「おー見れる見れる。可愛い受け身な猫とタチっていう男らしい――うぶへっ! 殴ったな! 父親にしか殴られたことないのに!」
「至極当然のように家庭内暴力を暴露するな。とっくに周知の事実だけどな」
「周知っつったって知ってるのはお前と天音くらいだぞ、俺友達いないし」
「友達はいなくても親友ならいるもんねー! 天音たち三人! 今時珍しい大親友! でしょ!」
「そうですね。僕たちは友達はいませんが、かけがえのない同士がいます」
「ふっ、そうだな。俺たち『可哀そうな子大好き隊』の三人だけのメンバーだもんな」
「真面目くさった顔で僕たちも知らないことを事実のように話すのはやめてくれ」
「可愛そうな子大好き隊ってことは……! ポチくんってもしかして天音のこと、好・き!?」
「ああ、大好きだよ。この世の女性の誰よりもな。だがごめんな、俺はそれよりも男であるこいつが好きなんだ、悪く思わないでくれ」
「そっかぁ……じゃあ、三人で一緒になろうよ! ぎゃくはーれむって言うんでしょ!」
「こいつの言葉を真面目に受け取らないでください先輩。あと二度と身の毛のよだつ気持ち悪いことを言うな負け犬野郎、ビンタするぞ」
「ははっ、俺は手を出してないのに振るわれる暴力って甘美すぎないか? どんだけ俺の事好きなんだよ、やっぱり分かってるなお前は」
「ダメだこいつ無敵だ」
不幸と理不尽をこよなく愛する工藤ポチという男は大概無敵だ。初めて出会った時からそれは変わらない。一緒に登下校していたときに道端で泣き崩れていた天音先輩を見つけた時もそう。
理不尽な教師、生まれ、親、環境、不幸を見て見ぬふりをする傍観者の周りの生徒、そのすべてがこの男にとっては喜ばしいことでしかない。
いつもは非常識で、ふざけていて頭のおかしい奴だが、僕と親友になってくれたことまで含めて、僕はこのふざけた親友のそういうところを少なからず尊敬しているのだ。
不幸とは、幸福を奪われることである。
不幸とは、生まれながらの理不尽である。
不幸とは、他者の幸福である。
だからこそ、自らの不幸を何よりも楽しみ、他者の不幸を何よりも尊ぶこいつは、工藤ポチという男は――誰よりも強い心をもっている。
「……え、なにこの魔方陣みたいなの」
「ほえ?」
「……まさか、これは」
突然僕たちを取り囲むように現れた宙に光る魔方陣のような何か、否、何かではないこれはれっきとした魔方陣だ。無駄に物覚えのいい僕の記憶の端っこに似たような魔方陣の知識があった。
これは……この展開は、そう――俗に言う異世界転移というやつなのではないのか?
それに気づいたときにはもう遅く、僕たちは眩い光に包まれて次の瞬間、学校の屋上から姿を消していた。
これは『可哀そうな子大好き隊』の僕たちが不幸と理不尽の溢れる異世界で可哀そうな子を見つけては話を聞き、手を貸して、仲間にする、そんな古き良き童話のような物語である。