この作品にはきららMax最新号と前の号のネタバレが含まれてます。読む際にはご注意を。
原作の二年分のお祝い、ぼっち楽しんでると良いですね。
来月リリースする楽曲のMV撮影を終え、私たちは今ぼっちちゃんの2年分の誕生日を祝う為とある場所へと向かっていた。
「いやー今日のMV撮影は大変だったねぇ」
「ええ。でもHALさんも厳しい人でしたけどそれだけ拘りがあるって事なんでしょうね!」
「あの人は本物。変人に悪い人はいない」
リョウの謎理屈。どこからくる理論なんだそれは?
「あ、で、でも実際MVが出来上がるの楽しみです。私が書いた歌詞でどんな映像が出来上がるのか」
「そうね! それに歌詞の意味はよく分からないけどすごく壮大な感じだったし、ひとりちゃんの歌詞ってやっぱりすごく深いのね!」
「ヴェッ!? あ、そそそ、そうですね。へへ……」
……確かにHALさんが何か深く考察してたけど、多分違うんだろうなぁ。何かこう、もっとしょぼい意味な気がする。まぁそれであの歌詞を書けるのもぼっちちゃんの語彙力の凄さの現われでもあるんだけど。
「あ、あの、ところで今どこに向かってるんですか?」
「ん? ああ、STARRYだよ」
そう、私たちが今向かってるところは毎度おなじみSTARRYだった。
本当は打ち上げも兼ねてパーッとファミレスでぼっちちゃんの誕生日を祝いたかったけど、私は受験を終えるまで殆どバイトに入っていなかったせいで懐が厳しく、喜多ちゃんもリョウに貢ぎすぎて懐が厳しく、リョウは無駄遣いのしすぎで懐が厳しい状態だったため、定休日のSTARRYでお祝いをすることに決めていた。……それに今日のぼっちちゃんへの誕生日プレゼントもSTARRYでしか渡せないからね。
「す、すみません。皆さん大変なのにお祝いしてもらっちゃって……」
「良いの良いの。私もようやく受験が終わって皆と遊べるしね。喜多ちゃんの貢ぎ癖とクズはそろそろいい加減にしてほしいけど」
「虹夏辛辣」
「でも言い返せません。ついリョウ先輩に奢り過ぎて誕生日の予算にも影響を出しちゃうなんて……」
「私は虹夏にお守り買ったからお金が無い」
「それは有難いけどそんなの痛くも痒くもない程のお小遣いを親から貰ってるだろお前は!」
もう高校も卒業して学生じゃなくなるんだからお金の使い方は本当にいい加減に分かってほしいもんだよまったく。このままだとファンにお金を貢がせるバンドマンなんて絵に描いた様なクズがあっという間に出来上がっちゃうよ。はぁ……。
そしてそんなやり取りをしながら目的地であるSTARRYへとたどり着き、ぼっちちゃんに開けてもらうために扉の前に立たせた。
「さぁぼっちちゃんどうぞ。今日は定休日だから好きに使えるからね」
「え? あ、はい」
ぼっちちゃんがゆっくり扉を開ける。すると。
「ギャッ!? わ、わわっ!?」
「後藤さんおめでとうございます~」
「ぼっちちゃんおめでとう」
開けた瞬間、中からお姉ちゃんとPAさんがクラッカーでお出迎え。更に。
「ひ、ひぃっ!? 後ろからも!?」
ぼっちちゃんが扉を開けている隙にバッグの中から私達もクラッカーを取り出してぼっちちゃんに放った。
「どう? 驚いたでしょひとりちゃん!」
「今日は二年分だからね!」
「存分に楽しむがよい」
「は、はい……!」
目を丸くしながらSTARRYへ入っていくぼっちちゃん。中はぼっちちゃんの誕生日パーティー用に飾り付け、パーティー用にお菓子をジュースとお菓子を準備していた。
「わ、わぁ……! すごい……。私達がMV撮影に行ってる間に店長さんとPAさんが準備してくれたんですか?」
「いいえ~、私たちはお菓子を買ってきて広げただけですよ」
「飾り付けなんかは昨日虹夏達が営業時間後にしてたぞ」
「え!?」
「あはは~、お陰で少し寝不足……」
そう。昨日営業が終わった後、私達3人は集まってこの数日作っていた飾りをSTARRYに飾り付けを予め行っていた。ただし飾り付けは懐事情により予算が少なく、折り紙なんかで作った小学生じみた飾りになってる。
「さぁ各々飲み物は持ちましたか!? 乾杯しますよ!」
「ジュースで乾杯なんて未成年の頃以来ですね~」
「まぁ間違っても酒飲んで酔っ払って誕生日パーティー台無しにする訳にはいかないからな」
「お腹空いたから早く始めよう」
「ちょっとリョウ、お菓子食べつくさないでよ? ぼっちちゃんが主役なんだからね」
「へ、へへ……。私が主役……」
浮かれたぼっちちゃんが本日の主役タスキと星型サングラスを掛ける。……喜んでくれるのは嬉しいけど自らそれを身に付けるのはどうなんだろう。
「じゃあひとりちゃん! 17歳の誕生日おめでとうございます! 今日はいっぱい楽しんでください、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
乾杯をしてお姉ちゃんとPAさんに買ってきてもらったお菓子を皆で食べていく。本当はぼっちちゃんの好きなから揚げとかいくつか料理を作ろうかとも思ったんだけど、ぼっちちゃんの家の事だから絶対パーティーするだとう思ってあんまりしっかりした食べ物は無い方が良いと思ったので今回はお菓子だけにしてる。
「ぼっちちゃん」
「あ、はい」
「改めて去年はごめんね? ぼっちちゃんだけ誕生日祝えなくて」
「い、いえ。そもそも私が言ってないのが問題なので……」
そう、去年の誕生日はぼっちちゃんだけ祝えてなかった。
私とリョウは互いに誕生日を知ってるからその流れでお祝いしてもらったし、喜多ちゃんはそういう誕生日とか主張するタイプだから皆で祝った。問題はぼっちちゃんが主張するタイプではない為いつの間にか誕生日が過ぎてしまい、後から知った時には祝うのも躊躇われるほど後になってからだったんだよね。あの時は血の気が失せたなぁ。
「しかもこんなお金が無いから折り紙で飾り付けた子供みたいなパーティーになっちゃって……」
「い、いえそんな! そ、それにこういう飾り付けの誕生日パーティーも、私初めてだからすごく嬉しいんです」
「ぼっちちゃん……」
う、ウソじゃないですよ!? と慌てるぼっちちゃん。
そっか。考えてみればぼっちちゃんって友達いなかったから家族以外から祝ってもらったことないんだよね。だとしたら去年の誕生日は私には想像もつかないほど楽しみにしてた筈。だけど私達が気付かなかったせいで今年は期待すらしないようにさせてしまったなんて……。
「~~~~~~~!!」
「に、虹夏ちゃん?」
「ぼっちちゃん!」
「は、はい!?」
「今日は最高の誕生日にするからね!!」
「あ、は、はい!」
やるぞ! 二年分だ!!
そして時刻は16時。お姉ちゃん、喜多ちゃん、リョウ、私はライブステージの上に。ぼっちちゃんにはライブステージの前に立ってもらった。
「あ、あの……?」
突然私達が楽器のセッティングを初めて困惑してるぼっちちゃん。そしてセッティングが完了してぼっちちゃんの方を向く。
「ぼっち、今日は誕生日おめでとう」
「今からひとりちゃんに誕生日プレゼントを贈ります」
「本当は普通にぼっちちゃんに誕生日プレゼント贈れたら良かったんだけど、今私達はお金が無いので……」
お金がない、夢を追いかける馬鹿なバンドマンが贈る誕生日プレゼントなんて決まってる。
それはドン引きされる地雷プレゼント堂々の第一位! お金のないバンドマンが恋人に送るプレゼント第一位! そんな曲作る暇あったらバイトして何か買って第一位の!!
「ぼっちちゃんの為に皆で歌を作りました! お姉ちゃんにはサポートギターとして入って貰ってます!」
「ギター触るのも久しぶりだけどぼっちちゃんの為に頑張るよ。PAも音響よろしく」
「は~い」
「それでは聴いてください! 今日限りの新曲です!」
『ハッピーバースデー!』
「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!!」
そして始まるぼっちちゃんの為のバースデーソング。この歌は編曲はリョウにお任せしたけど、作詞作曲は私達3人で作った。
ぼっちちゃんがお姉ちゃんに誕生日に歌を贈るって言いだした時はやめてくれと思ったものだけど、いざ作り始めると皆熱心に考えて曲を作った。ぼっちちゃんの為に皆で作った力作だ。
この曲は一見何の変哲もないバラード曲。だけど普段の私たちの歌と違うところがある。それは。
「あ、あれ? リョウさんと虹夏ちゃんも歌ってる……?」
そう。この曲は3人ともボーカルとして作られた歌だ。
事の始まりはまさかのリョウが
『ぼっちの為の歌でしょ? 皆で歌わない?』
と言い出したのが始まりだった。
喜多ちゃんは目をキターン! と輝かせて即座に賛成してたけど、正直私は歌が下手くそだから辞退したい気持ちもあった。だけど、ぼっちちゃんが喜んでくれている表情が一瞬脳裏によぎるとすぐに覚悟が決まった。
「~♪」
でもやっぱりリョウと喜多ちゃんに比べると私の歌下手くそだ……! 何かフラついてる気がする。それに自信を無くしてるのがドラムにも現れてる気がするし、私全然ダメだ……!
徐々に声が小さくなってしまう。その時。
「が、頑張ってください!!」
ぼっちちゃんから大きなエールが届いた。
ぼっちちゃんが不安そうな顔をしてる。あんな顔させてたまるか。私の歌が下手くそとか知るか。下手くそでも全力でぼっちちゃんにプレゼントを贈るんだ! 私は二年分ぼっちちゃんを祝うんだ!!
声を張り上げる。音程がズレてるとか知った事か。これが私の全力だ!
私の歌に覇気が戻ったと同時に皆の勢いも上がる。聴いてぼっちちゃん! これが私たちのプレゼントだよ!
歌いながらぼっちちゃんを見る。そこには涙を浮かべながら満面の笑顔で私達の歌を聴くぼっちちゃんがいた。
そしてぼっちちゃんへの歌が終わり、ぼっちちゃんの自宅への移動時間を考えて今日はお開きとなり、ぼっちちゃんは先にSTARRYを出て、リョウと喜多ちゃんとPAさんとお姉ちゃんはパーティーの片づけが終わると帰っていった。
だけど私は片付けの際中にロインに届いたメッセージを見てとある場所へ向かっていた。
「ぼっちちゃん、来たよ」
「あ、はい。わざわざ来てもらってすみません」
そう、ロインにはぼっちちゃんから私達が初めて逢ったあの公園に来てほしいとメッセージが届いていた。
「どうしたのぼっちちゃん? 何か用事でもあった?」
「……はい。お願いしたいことがあるんです」
「お願い?」
あのぼっちちゃんがお願い事? 一体なんだろう。
「あ、あの、今日は二年分、祝ってもらえるんですよね……?」
「え? そうだけど……。あ、足りなかった?」
なんて、ぼっちちゃんがそんなこと考える訳……。
「……そう、ですね。足りないんだと思います」
「え?」
ええ!? ま、まさかぼっちちゃんからそんな事言われるなんて。ど、どうしよう。何か形に残るものが欲しいってことなのかな? ならちょっと来月まで待ってもらって……。
「あ、その、別に物が欲しいとかそういうことじゃないんです。お金とかは、掛からないので……」
「あ、そうなんだ」
でもそうなると逆にぼっちちゃんが何を求めてるのか分からなくなってくるな。
「……」
「……」
沈黙が流れる。正確にはぼっちちゃんが言いにくそうに何か口をモゴモゴさせていて、私をそれを待っている形だ。
そしてぼっちちゃんが意を決したように口を開いた。
「あ、あの。わ、私がお願いしたい事、なんですけど……」
「うん」
ぼっちちゃんが軽くを息を吸う。
「今日、私の家に来て、私の家族と一緒に誕生日を祝ってほしいんです!!」
「……え?」
「い、今から私の家に来てもらうってなると、お泊りになっちゃいますけど、でも、その、今日一日終わるまで、一緒にいてほしいんです……」
「――私の初めての、大切な人に、最後までいてほしいんです……」
「……つまりぼっちちゃんは」
「は、はい」
「今日一日だけ、誕生日プレゼントに私が欲しい、って事かな?」
私が聞くと途端に顔を真っ赤にして、小さく、本当に小さくうなずいた。
「そっかぁ……」
「だ、駄目ですか……」
真っ赤な顔で、今にも泣きそうな顔なぼっちちゃん。……駄目な訳ないじゃん。
でも、そっか。私がプレゼントか。それなら。
「ねぇぼっちちゃん……」
「は、はい。え、え?」
ぼっちちゃんの右手を掴んで、私の首に巻いているリボンへと導く。
「これ、解いてくれる?」
「え、あ。……はい」
意図を察したのかぼっちちゃんが手を震わせながら私のリボンを解いていく。……誕生日のプレゼントに巻かれたリボンを、ぼっちちゃんが優しく解いていく。
「ほどき、ました……」
「うん」
ぼっちちゃんに抱き着く。
まったく、こんなコテコテの事をする日が来るなんて思いもしなかったな。
ぼっちちゃん、誕生日おめでとう。プレゼントは私、だよ。