リュウジン「前回の仮面ライダー妖魔は!
己の夢を見つけた時雨は龍神ヨロイ・真へのパワーアップを果たし、テンコに勝利を収める。
そして、世模継の一員であった凪桜は…」
⭐︎⭐︎⭐︎
咲穂「では、世模継に乗り込む、ということですか?」
時雨「うん。…凪桜ちゃんを迎えに行く」
雪音「しかし、行き方は分かるのですか?」
時雨「…多分、大丈夫。テングさんの力を借りて神通力で道を探れば…」
雪音「…成る程、私を助けてくださった時と同じように…」
時雨「うん」
部室にて、時雨は凪桜を奪還するために世模継学院高校へ乗り込もうと考えていることを告げ、そのための手段についても説明する。
聖「君がそう決めたのなら…きっと叶えられるさ。街は私に任せてくれ」
調「…まあ、大丈夫ですよね。時雨部長は新しい力も手に入れましたし!」
咲穂「そうですね。…ただ、一つだけわがままを言いたいことがあるとしたら…」
時雨「?」
咲穂「私も同行して良いですか?」
調「!だ、だったら俺も!」
時雨「でも、危ないかもしれないよ?」
咲穂「それこそ、時雨君が新しい力で…私達を守ってくれるでしょう?……足手纏いにならないようにします。ですからどうか…お願い出来ませんか?」
調「俺達にとっても、凪桜ちゃんは大切な仲間だから。…四人で、歴史研究部だから…だから、助けに行きたいんです!」
時雨「……そう、だよね」
雪音「皆さんがこう言ってることですし、一緒に連れて行ってあげてください。…私は、藍羽先生と連携して留守を守っておきますので」
時雨「雪音ちゃん…ありがとう」
雪音「時雨君が向こうへ突入すれば、敵戦力もそこに割かざるを得なくなるはずです。そうなれば藍羽先生や降谷さんだけでも対応出来そうです。……夢華さんも当分は動けないでしょうし」
作戦会議の末、時雨は咲穂、調と共に世模継学院高校へと乗り込むことに決める。
聖「…それで、いつ行くつもりなんだい?」
時雨「…今日、これから向かおうかと」
調「きょ、今日!?」
咲穂「少し驚きましたが…時雨君が新たな力を手に入れたことは伝わっているでしょうし…対策される前に行動するのはある意味合理的ですね」
時雨の行動予定日が今日であったことを知り、調は驚くが、咲穂がその意図を汲み取る。
時雨「うん。…二人とも大丈夫?」
咲穂「大丈夫ですよ」
調「俺も問題なしです!」
時雨「そっか。ありがとう。…じゃあ…行こうか。凪桜ちゃんを助けに!」
「「はい!」」
時雨は咲穂と調の都合を聞くと、早速歴史研究部の部室を飛び出していく。
残った雪音は見送り終えると、スマートフォンを取り出してどこかへ連絡を取り始める。
雪音「あ、もしもし。ご無沙汰しております。…例の件、進捗はいかほどでしょうか?」
聖「……段々と皆…頼もしくなっていくなぁ…」
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第弍拾伍話「先輩後輩の道のり」
時雨「ここだね」
咲穂「これが…飛羅坂トンネル…」
調「噂しか聞いたことなかったけど…なんだか不気味…」
時雨「話によると落盤してるってことだけど…」
照羅巣地区の最北部にある山道を抜けた時雨達は、不気味な雰囲気を漂わせる飛羅坂トンネルの目前まで辿り着く。
時雨「どうですか?リュウジンさん」
リュウジン「うむ…このトンネル…妙な気配を感じるな。もしかすると…ここから向かえるのかもしれんぞ」
時雨「成る程…。なら、早速試してみましょう!」
《天狗!》
《装填!》
時雨「変身!」
《憑依装着!変化!
疾風神通!天狗ヨロイ!》
妖魔「よーし…!」
時雨はリュウジンからのアドバイスを受けると、妖魔 天狗ヨロイに変身。
地面に手を着き、神通力で探知を始める。
妖魔「…!あった!」
調「本当ですか!?」
咲穂「それで…どちらに?」
妖魔「えっと…これだね」
調「非常口…」
妖魔は何かを見付けると、トンネル内部まで入って行き、非常口用のドアを指さす。
咲穂「神通力…本当に便利ですね…」
調「ですね…」
妖魔「よし、皆!先に進もう!…ってあれ?」
調「またトンネル…」
咲穂「リュウジンさん、これは…」
リュウジン「…うむ。妖術によって作られた空間だな。恐らくはこうやって複雑化しておくことで辿り着くことを困難としたのだろう」
非常口から先へ進んだ妖魔達が見たのは、先程とよく似たトンネル内部だった。
困惑する妖魔達に、リュウジンが推測を語る。
調「扉は…3、4…四箇所」
妖魔「なら…あった!あのドアだよ!」
咲穂「…進みましょう」
妖魔は神通力で扉を探し当てていくと、先へ先へと進んでいく。
そして、その繰り返しを何度か経て、妖魔達は漸く外へと出る。
妖魔「あっ、外に出た」
咲穂「結構長かったですね…」
調「帰る時もこれかぁ…」
妖魔「まあ…それは後で考えよっか…」
早くも帰り道を心配している調を妖魔が宥めつつ先へ進んでいると、やがて古びた学校の建物が視界に映る。
咲穂「あれ…ですかね」
調「あれっぽいな…」
妖魔「よし…ここからはより慎重に行こうか」
変身を解いた時雨と、咲穂、調はこっそりと世模継学院高校の敷地内へ向かっていくのだった…。
⭐︎⭐︎⭐︎
「「ふんっ!!」」
幽冥「うああっ!!」
幽世の地獄府。賢昇…もとい幽冥 鬼ヨロイはその訓練場にてゴズとメズの槍による同時攻撃を受けて吹き飛ばされ、変身を解かれる。
ゴズ「どうした。その程度か…当代の幽冥よ」
メズ「それとも…特訓は終わりにし、諦めるか?」
賢昇「……霊魂の奴…認めたくはねえが実力だけは洗脳されても確かときた、それが容赦なく襲ってくるってんだから強えわけだ…。それに、四凶に暗夜もいる。妖魔だって強くなってんだ…このままでいられるかよ。諦める?笑止千万!覚えとけ!この俺様の辞書に諦めるなんて言葉は欠片もねえ!」
ゴズとメズに強くなるための特訓を頼んでいたらしい賢昇は、二人から煽られると立ち上がり、闘志を燃やす。
《鬼!》
賢昇「…俺は、強くなる!誰かを虐げる悪意を…この手でぶっ潰すために!」
《装填!》
賢昇「変身!」
《憑依装着!変化!
鬼気粉砕!鬼ヨロイ!》
幽冥「オラオラオラオラァ!まだまだいくぞッッ!」
ゴズ「…ふん、根性はアイツそっくりだな」
メズ「…ああ。…心ゆくまで鍛えてやろう!」
幽冥 鬼ヨロイへ再変身した賢昇は槍状態の妖之盾槍を構えてゴズ、そしてメズへと突撃していき、その姿に先代の姿を思い出したゴズとメズは懐かしみつつ、その気概に応えることを決め、己らも槍を構える。
⭐︎⭐︎⭐︎
凪桜「……あった」
凪桜は世模継学院高校の一室に、丁重に飾られている色を失ったアヤダマを手にし、周りを気にする。
すると、ラクーンモードにしていた凪桜のブンプクブラストフォン…かつての真黒のブンプクブラストフォンが凪桜に何かを伝える。
クイクイ
凪桜「どうしたの?…こっち?」
ブンプクブラストフォンがどこかへ案内しようとしてることに気付いた凪桜は、慎重にその部屋を出ると、後を着いて行く。
時雨「凪桜ちゃんは…どこにいるんだろ…」
調「そもそもさっきから人を見かけないような…」
咲穂「…生徒数も少ないですし、そもそもここに私達が到達するのは想定外のはずでしょうし、見回りなども大してしてはいないのでしょう」
校舎の陰に潜んで様子を窺っていた時雨達がそんなことを言い合っていると、背後から足音が。
時雨「!?」
咲穂「(しー…!)」
調「(わ、分かってます!)」
慌てて静かにする時雨達だったが、無情にも足音は近付いてくる。
時雨は最大の警戒のため、アヤダマを構える。
そして、足音の主は段々と接近し、遂に建物の角からその姿を表す。
凪桜「こっちに何があるの?」
時雨「っ………え?」
凪桜「ん?……ん?」
「「「「………」」」」
現れたのは凪桜だった。時雨達からすれば絶賛探している最中の人物。凪桜からすれば断腸の思いで切り捨てたはずの大切な仲間。
その感動の再会にしては間の抜けた空気、というかどことなく気まずい空気が漂う中、先に口を開いたのは時雨だった。
時雨「……えっと、元気?」
咲穂「…時雨君…」
調「時雨部長…流石にそれは…」
時雨「…本当にごめん。なんか、咄嗟に出たのこれで…絶対もっといい言葉あったよね、これ」
凪桜「……ふふっ」
時雨「凪桜ちゃん…?」
凪桜「少し離れても、皆は皆だね。…うん。私は元気だよ。皆も変わりなさそうで良かった」
相変わらずな様子の時雨達に、凪桜は思わず笑みを溢す。
時雨「うん。…僕達は変わってないよ。…凪桜ちゃんが大事な仲間で、友達ってことも」
凪桜「!」
凪桜の言葉に返す形で、時雨は自分達にとって凪桜は仲間で友達なのだということもまた、変わってはいないのだと伝え、咲穂と調もそれに合わせて強く頷く。
時雨「ねえ、凪桜ちゃん。…一緒に帰ろう?僕達の…学校へ」
凪桜「……ありがとう、時雨先輩、皆。──だけど、私は皆と一緒には行けない」
時雨「……そっか。まあ、凪桜ちゃんのことだから、しっかり考えて決めたことなんだよね」
調「時雨部長、良いんですか?」
咲穂「……」
時雨の言葉に、自分は帰れないのだと言う凪桜。その様子に理解を示す時雨に、調は驚き、咲穂はその意思を探るように見つめる。
時雨「…凪桜ちゃんのことを、諦めるつもりはないよ。僕は僕の理想…皆が笑い合えるハッピーエンドを叶えるって決めたから。凪桜ちゃんの笑顔だって…叶えてみせる」
凪桜「……」
凪桜の考えは理解しつつも、その上で譲らない姿勢を見せる時雨に、凪桜は少し目を反らす。
時雨「けど、今こうやって無理矢理説得しようとしたって意味ないって分かってるよ。だから…凪桜ちゃん。帰る気がないって言うなら、教えてほしいことがあるんだ」
凪桜「…何?」
時雨「どうして、僕を選んだのか」
凪桜「!……」
時雨「…どうしても言いたくないなら、無理強いはしないよ」
凪桜「いや、話すよ。時雨先輩には、それを知る権利がある」
これ以上説得を続けても効果は薄いと考えた時雨は、話を変える。
時雨を妖魔に選んだのは凪桜。その真意を凪桜に問うと、凪桜はポツリポツリと語り出す。
凪桜「…ねえ、時雨先輩。私達が初めて会った時のこと、覚えてる?」
時雨「勿論。去年の4月。僕が2年生になってすぐで…凪桜ちゃんが照羅巣高校に入学してすぐの頃。もうそろそろ1年近く経つね」
凪桜「そう。あの時、私は照羅巣高校へ妖魔の変身者を探す任務のためにやって来ていた──」
⭐︎⭐︎⭐︎
──回想
凪桜「……ここが、照羅巣高校…」
「世模継にとって都合の良い妖魔の後継者」を探す任務のために照羅巣高校に入学した凪桜は、その表向きの理由に隠されたもう一つの目的を果たす必要があった。
もう一つの目的…反人間連合の計画を挫くために、真黒から「力が強くなかったとしても、強く優しい心を持った人を見つけること」と教わっていた凪桜は、その条件に合致する人物を探すために活動を開始した。
図書委員に入ったのは比較的穏やかな人が多いと凪桜は考えたからだった。
そして…そこで凪桜は、時雨先輩と出会った。
時雨「えっと、初めまして。僕は2年A組の晴河時雨。君は…1年A組の暁さん、だよね?」
凪桜「…うん。私は暁凪桜。よろしく」
時雨「うん。よろしくね」
図書委員会では1年と2年の同じクラスの生徒が二組に分かれて組んでそれぞれ一つずつサブの窓口を受け取って受付仕事をすることになっていて、メインの窓口は3年生の二人が受け持つという形を取っていた。
蔵書数も多く図書館の建物そのものも大きい照羅巣高校の図書委員会ならではと言える。
そして、凪桜と時雨は、同じA組だったため、組んで仕事をすることになっていた。
凪桜「……」(…この人は優しそうだし…調べる価値はありそう)
時雨「?」
出会って数日は様子を見ながら一緒に作業するだけの関係だったのが、変化が訪れたのは4月の半ばのことだった。
二人で貸し出し記録を書き込んでいると、時雨が何やら鞄の中を漁り始める。
時雨「うーん…」
凪桜「どうしたの?」
時雨「あ、暁さん。えっと…筆箱をうっかり開けっ放しにしたままリュックに入れてたみたいで…消しゴムがどっかにいっちゃってたんだよね…。これも違う…」
苦笑いしながら自身の失敗を語る時雨は、あれでもないこれでもないと言いながらリュックの中身を出していくが、その中の一つが、凪桜の目に留まった。
時雨「あ、あった!…って、暁さん?」
凪桜「えっ!?あ…いや…」
時雨「もしかしてこれ…気になる?」
凪桜「……ちょっと」
凪桜の目に止まったのは勇敢な顔つきの騎士と猫が混ざったようなキャラクター──後に凪桜はそのキャラの名が“ニャイト”であると知るのだが──のラバーキーホルダーだった。
時雨「少し前にガチャガチャで引いたの、カバンに入れっぱなしにしてたみたい。…良かったらあげるよ」
凪桜「…良いの?」
時雨「うん。同じの何個か持ってるからね」
凪桜「…そうなんだ。…これ、何のキャラクターなの?」
時雨「ああ、これワンダーファンタジアっていうアニメのグッズなんだ。ワンダーファンタジアはゲームに漫画と展開してて、子供にも人気な作品で…結構有名だから、一度は聞いたことくらいはあるんじゃないかな?」
凪桜「そ、そうなんだ。私はあんまりそういうの詳しくないから…」
時雨「良いの良いの。知らないなら…知れば良いんだし!ワンダーファンタジアはね…」
凪桜の質問に、急に熱弁し始める時雨。その様を見た凪桜は何となくワンダーファンタジアへの興味を抱き、同時に時雨の新たな一面を知ることとなったのだった。
大きな転機となったのはそれから数日後。アニメを見てみた結果、凪桜はワンダーファンタジアにどハマりし、時雨との仲も深まったある日のこと。
時雨「この前の話のバイクカッコよかったよね」
凪桜「うん。あれは良かった。臨場感があったし、バイクのスピード感もよく表現されてたと思う」
時雨「だよね!自分のバイクが欲しくなっちゃったな…」
凪桜「免許はあるの?」
時雨「うん。春休みに取っておいたんだ。やっぱりグッズを買ったりするのに何かと入り用だからね。配達系のバイトも単発で出来るようにと思って」
凪桜「そういえば…時雨先輩」
時雨「どうしたの?」
凪桜「そういえば、時雨先輩がどうしてワンダーファンタジアを好きなのか聞いたことなかったと思って。この前、ワンダーファンタジアは子供向けの作品って聞いたから、それでもまだ好きなのには何か理由があるのかと思った」
時雨「あー…確かに話してないかもね。…確かに、ワンダーファンタジアはさ、割と子供向けって言われることも多い作品でね。僕も小さい頃から見てたんだけど…それだけじゃないんだよ。ワンダーファンタジアには、沢山のキャラクターがいて、それぞれ一生懸命生きてて、そんなキャラクター達が出会うことで色んな物語が生まれるっていうのが、僕にとっては飽きない魅力だし、それに何より、ワンダーファンタジアは絶対にハッピーエンドになる作品なんだ」
凪桜の質問に、時雨は笑顔で答える。
凪桜「ハッピー…エンド……」
時雨「うん。制作者さん達の意向らしいけど、努力したら報われて、辛いことがあっても、苦しいことがあっても信じ合える仲間と立ち向かえば、きっと乗り越えられる。そして…最後には皆が笑い合えるハッピーエンドになる。それがワンダーファンタジアなんだ」
凪桜「そっか…それは確かに良いかも」
時雨「分かってくれた?……子供の時は、気付けなかったけどさ、やっぱり現実ってそう上手くいくものではないんだよね。でも…だからこそ、諦めないで進み続けることが大事なんだって、その勇気をワンダーファンタジアから貰ったから。だから僕は…ワンダーファンタジアが好きなんだ」
凪桜「…そっか。ありがとう、話してくれて」
時雨のワンダーファンタジアに対する考え方を聞いた凪桜は、「ハッピーエンド」という言葉を初めて聞く。
そして、この会話を経て凪桜は時雨について優しく、そして好きなものには真っ直ぐな人なのだと評し、妖魔の第一候補として見るようになるのだった。
…最後のひと押しとなったのは、それから一週間後のことだった。
この頃になるとすっかり仲の良い先輩後輩と呼べる間柄となっていた時雨と凪桜だったが、この日は時雨が少し遅れるということもあり、来るまでの間凪桜だけで受け付けをすることになっていた。
最初は特に問題もなく進んでいたのだが、ある生徒がやって来たことで雰囲気が一転する。
「すみません、漢文徹底解説という本、どこにありますか?」
凪桜「少々お待ちください」
神経質そうな2年生の生徒が尋ねたのは、漢文についての参考書だった。
まだ蔵書の位置を全て把握しているわけではない凪桜が探すのに手間取っていると、その生徒は苛立ったように声がけする。
「あの、まだですか?」
凪桜「…申し訳ありません。もう少々お待ちください」
「…はぁ、早くしてくださいよ」
とはいえ、そもそも照羅巣高校の図書館は普通の高校の図書館とは規模感が全く違う。
そう簡単に見つからないのは、よくあることではあるのだ。
「あの、いつまでかかるんですか?本一冊も見付けられないんですか?図書委員の癖に」
凪桜「それは…」
「そもそも──」
時雨「そこまでです」
「!うわっ、誰ですか」
時雨「僕はこの子の先輩で、ペアです」
「はあ」
時雨「彼女はまだ1年生で、この高校に入って一ヶ月も経ってないんです。ただでさえうちの図書館は大きいですし…そんな中でも、彼女は、暁さんは、一生懸命真面目にやるべきことをやってるんです。
僕達は一年長くこの場所を知っているのですし、気長に待ってあげませんか?それが…先輩というものでしょう?」
「……それは…す、すみません。ちょっと気が立ってました」
時雨「分かってくれたなら良いんです。それで、どの本をお探しですか?」
神経質そうな生徒の苛立ちがエスカレートしていくところに、時雨が到着すると、何とか宥めて乗り切る。
凪桜「時雨先輩、ありがとう」
時雨「良いの良いの。気にしないで。びっくりしちゃったよね。ごめんね、一人にしちゃって」
凪桜「…ううん。大丈夫」
時雨「なら良かった」
そう言って笑う時雨の姿を見た凪桜には、一つの確信があった。
妖魔に選ぶのなら、この人しかいない。
誰かを思いやれる優しさ、誰かを守ろうとする強さ、その二つを持つ時雨を、逃す手はないと、凪桜はこのとき考えたのだった。
そして、夏休みのあの日、世模継側が予め見付けていた妖之書の在処…古書店に時雨を誘導したのだった…。
⭐︎⭐︎⭐︎
時雨「……そっか、あの時、凪桜ちゃんは僕を選んだんだね」
凪桜「……うん」
凪桜の話を聞いた時雨は、何か納得したような様子を見せるが、対する凪桜は深々と頭を下げる。
凪桜「ごめんなさい。…私が時雨先輩を巻き込んだせいで、沢山迷惑を掛けたと思ってる。私が時雨先輩を巻き込んだせいで、沢山危険な目にも遭わせたと思う。……巻き込んでしまってごめんなさい」
時雨「良いんだよ、気にしなくて。それに…僕は凪桜ちゃんに…感謝しているんだ」
凪桜「感謝…?」
時雨「うん。沢山あるけど、まずは僕を選んでくれてありがとう。凪桜ちゃんが選んでくれたから、僕は理想を叶えるための力を手に入れられた。皆の笑顔を守れる力を。それに、凪桜ちゃんが選んでくれなかったら皆とも出会えなかったと思う」
凪桜「……それは」
咲穂「時雨君の言う通りですよ。時雨君が妖魔だったから、私達は仲間で、お友達になれたんです」
調「だから、俺達も感謝しなきゃだね。ありがとう」
時雨「…それにね、凪桜ちゃんが選んでくれたから、僕は日島君や降谷君と仲間になれた。雪音ちゃんと昔みたいな友達に戻れた。人とモノノケの共存っていう、新しい夢が出来たんだ。全部、凪桜ちゃんのお陰なんだよ」
時雨、そして咲穂と調の言葉を受けた凪桜は、その瞳を揺らす。
凪桜「そんな…だって私は、私の目的のためだけに時雨先輩を巻き込んだだけだから…感謝されるようなことじゃないのに…」
時雨「キッカケは凪桜ちゃんだったかもしれない。だけど、今僕達がここにいるのは、確かに僕達自身が選んだ未来だよ。だから、僕達に負い目なんて感じる必要はないんだよ」
凪桜「…そっか」
時雨は凪桜に、自分達自身で選んだ道なのだと伝え、巻き込んでしまったと気に病む必要はないのだと諭す。
凪桜「…その…皆、さっきはああ言ったけど……」
都黎「おい、そこで何を…!?貴様等…何故ここに…!凪桜、これはどういうことだ」
凪桜「!都黎…」
凪桜が口を開きかけたところで、その場に現れたのは都黎だった。一瞬で緊張感が走るが、口を開いたのは時雨だった。
時雨「……凪桜ちゃんを連れ戻しに来たんです」
都黎「…連れ戻す?ふざけたことを…どうやって来たのかは知らんが…コイツはここで生まれ、ここで過ごして来た。俺達の仲間だ」
時雨「ここが、元々の凪桜ちゃんの居場所だというのは否定しません。ですが…それでも凪桜ちゃんは僕達の仲間だって、そう信じてますから。…だから、邪魔はさせません!」
時雨と都黎は真っ向から意見を対立させると、それぞれ妖書ドライバーと電書ドライバーを装着し、時雨は龍神アヤダマ及び真打アヤダマを、都黎はヤギョウ電子アヤダマを取り出す。
都黎「……ふん、力で捻り潰すまで」
《ヤギョウ!》
時雨「…僕は負けません」
《龍神!》《真打!》
《『真価覚醒!』》
《インストール!》
《装填!》
都黎「変身」
時雨「変身!」
《デンシソウチャク!ヘンゲ!
常闇Darkness…!ヤギョウヨロイ!》
《憑依装着!変化!
『画竜点睛!龍神ヨロイ!真!』》
時雨は妖魔 龍神ヨロイ・真へ、都黎は暗夜 ヤギョウヨロイへと変身すると、暗夜が先制攻撃を仕掛け、闇夜月で斬りかかる。
妖魔「結末はハッピーエンドで決まりです!」
暗夜「そんなもの…斬り捨ててくれる…!」
妖魔「もう僕には…通用しません!はあっ!!」
暗夜「なっ、ぐああっ!」
暗夜の放った斬撃は、しかし妖魔の生み出した氷の盾により防がれ、風を纏わせた回し蹴りにより暗夜は軽く蹴り飛ばされる。
暗夜「くっ…龍神ヨロイの更なる力か…ならば」
妖魔「!」
調「またあの奇襲攻撃…」
咲穂「厄介な技ですが…」
凪桜「……」
龍神ヨロイ・真を得た妖魔の強さを知った暗夜は闇を生み出してその中に姿を消す。
リュウジン『時雨!』
妖魔「はい!皆、目瞑っててね!」
「「「?」」」
妖魔「はあああっ!!」
妖魔は仲間に目を瞑るよう伝えると、燦々と世界を照らす輝く快晴時の太陽の如き眩い光を解き放ち、暗夜の移動を妨害する。
暗夜「くっ!」
咲穂「成る程。リュウジンさんの持つ天候操作能力がパワーアップしてるんですね…」
調「時雨部長…凄いです!」
凪桜「時雨先輩…」
妖魔の光を受けて闇から投げ出され、地面に転がる暗夜。
暗夜「ならば…手を貸せ!」
霊魂「……」
妖魔「!…日島君…!?どうしてここに…」
不利を悟った暗夜が闇を通じて呼び出したのはレーザーガンモードのアヤカシレーザーアタッカーを構えた霊魂 ミズチヨロイだった。
暗夜「調整のためにここに呼んでいたが…。まあ丁度良い…貴様を倒す!」
霊魂「……」
調「二対一なんて…」
凪桜「……」
妖魔「なら、こっちも…!」
《龍神之大砲剣!》
暗夜「ふんっ!」
妖魔「はっ!」
霊魂「……」
妖魔「ほっ!」
暗夜と霊魂、二対一となった状況を前に、妖魔は大剣状態の龍神之大砲剣を呼び出す。
そして、暗夜の闇夜月による斬撃を軽く弾き返し、霊魂の放つレーザー弾を斬り払う。
暗夜「諦めの悪い奴だな…凪桜は俺達の仲間だ!」
妖魔「…今は僕達の仲間です!日島君だって…ちゃんと返してもらいますよ!」
暗夜「ぐあっ!!」
霊魂「……」
妖魔と暗夜は激しい剣戟を交えながら押し問答を続け、妖魔は己の決意をぶつけつつ、横薙ぎに斬撃を放って暗夜と霊魂を退かせる。
《大砲之刻!》
妖魔「一気に決めます!」
《龍神!》《真打!》
《読取装填!神域!一撃必殺!》
暗夜「…ならば」
《夜行流奥義!》
霊魂「……」
《インストール!》
《スペシャルムーブ!》
妖魔は大砲状態に変えた龍神之大砲剣に連結状態のまま龍神アヤダマと真打アヤダマを連続で読み込み、砲身に金色と銀色のエネルギーを集めていく。
対して暗夜は闇夜月の鍔を二回転させ闇夜月の刀身に紫のオーラを纏わせ、霊魂はミズチアヤダマをアヤカシレーザーアタッカーに装填して水のエネルギーを溜め込む。
妖魔「…エピローグといきますよ!」
《
暗夜「終わりだ!」
《魔剣・宵闇乱舞!》
霊魂「……」
《激流シュートフィニッシュ!》
妖魔の放つ金色と銀色のオーラで出来た龍型の砲撃と、暗夜の放つ大量の三日月状のエネルギー刃、霊魂の放つ激流弾とが激突し、僅かに拮抗する。
妖魔「はあーっ!!」
暗夜「ぐあああっ!!」
霊魂「っ……!」
しかし、妖魔の放った龍の砲撃が暗夜と霊魂の攻撃を跳ね返し、そのまま貫く。
都黎「くっ…!」
汰月「……」
都黎「……凪桜、戻って来い。お前は俺達の仲間だ。そうだろう?」
凪桜「そう…だね。確かにそうだよ」
調「!」
咲穂「凪桜ちゃん…」
都黎「…そうだな。だから…」
凪桜「けど、私は都黎達に手を貸せない」
都黎「…!」
妖魔「…それが、凪桜ちゃんの選ぶ未来なんだね」
凪桜「うん。…私にとって、都黎達が大切な仲間であることに変わりはないから…だから、その仲間が過ちを犯そうとするのなら、人を傷付ける道を進もうとするのなら、私が、私達が止める」
都黎「過ちだと…?コイツ等なんかに影響されて、考えを失ったか!?」
凪桜「私は何も変わってない。…ただ、大義のために演じて来ただけ。…私は私の正しいと思う道を選ぶ。それが…都黎達の選ぶ道じゃなくて、時雨先輩達の選んだ道だった…それだけの話」
汰月共々変身解除された都黎は凪桜に共に帰るよう告げるが、凪桜は自身の意見をハッキリと伝える。
都黎「……後悔するなよ」
凪桜「しないよ」
都黎「…っ」
妖魔「じゃあ、悪いですけど、凪桜ちゃんは連れて帰らせてもらいます。それと…日島君も絶対に取り戻しますから」
都黎達と凪桜が決別するのを見届けた妖魔は汰月も救うと宣言し、その場は霞を発生させて凪桜、咲穂、調の三人を連れて撤収する。
都黎「…晴河時雨…っ!」
⭐︎⭐︎⭐︎
賢昇「あー…つっかれた…」
星海「あ、あの…」
賢昇「んあ?…霊魂のとこの。そういや地獄府で預かられてたな」
特訓を終えて疲れ果てていた賢昇の元に、地獄府にいる星海が現れる。
星海「その…お疲れ様です」
賢昇「そりゃどうも」
星海「えっと、日島君は今…」
賢昇「アイツはまだ洗脳されたままだ」
星海「そう、ですよね…」
汰月の現況について尋ねる星海は、半ば分かっていたこととはいえ、落ち込む様子を見せる。
賢昇「けどな、俺達だってアイツをあのままにしとくつもりはねえぞ」
星海「…!」
賢昇「敵の手段は掴めた。…必ず取り戻すさ。“仲間”だからな」
星海「!…はい!私も何か出来ることがありましたら手伝いますので!」
仲間想いな賢昇らしい言葉に、星海は安堵する。
すると、そんな星海を見て賢昇はある提案をする。
賢昇「おう。…そうだ、暫く俺等のとこ来ねえか?」
星海「えっ?」
賢昇「一応俺がいればアイツの代わりに守るくらいは出来るし、俺の仲間も守ってくれるだろうしな。…何より、状況をすぐに確認出来る。多少危険に遭うかもしれんが…どっちを選ぶ?」
星海「……お願いしても良いですか?」
賢昇「おう。良い仲間を持ってんだな、霊魂の奴」
汰月を想う気持ちから、賢昇の提案に乗った星海。その姿を見て、汰月は仲間に恵まれているのだと察する。
「特訓頑張っているようだな」
賢昇「ん?…!?エンマのじーさんか」
星海「あ、エンマ様」
話を終えた賢昇の元へ現れたのはエンマだった。
エンマ「彼女を連れて行くなら好きにするが良い。元より、現世こそが彼女の本来の居場所だしな。だが…自分で決めたからには、しっかり守るんだぞ」
賢昇「言われなくても守るに決まってんだろ。傷付けさせたりしたらアイツに申し訳が立たねえし」
エンマ「なら良い。まあ、これからも頑張るんだな」
賢昇「それも言われるまでもねえ。先代だってあっという間に超えてやるよ」
エンマ「そうか。期待しておるぞ」
星海の連れ出しに許可を出し、賢昇の肩をポンと叩いたエンマは、賢昇の強気の発言にくつくつと笑いながら激励の言葉を残して去っていく。
⭐︎⭐︎⭐︎
凪桜「そういうわけで、戻って来ることになった。藍羽先生と、雪音先輩も、これからもよろしく」
聖「お帰り、で良いのかな」
雪音「良いんじゃないでしょうか」
歴史研究部へと戻って来た凪桜は、残る仲間である聖と雪音にも事情を説明する。
凪桜「そういえばこれ、手土産」
時雨「これって…アヤダマ?」
雪音「…ふむ、何でしょうか…」
凪桜「何かの役に立つかと思って持って来た」
聖「この手の物は…夜御哉さんの所に持ち込むのが一番かな」
凪桜が世模継学院高校から奪取して来た謎のアヤダマを見た聖は、夜御哉の元へ預けることを提案する。
時雨「じゃあ、今度持って行こうか。…さて、今日は凪桜ちゃんも戻って来たことだし!夕飯は腕によりをかけて作っちゃおうかな〜」
凪桜「時雨先輩の晩御飯…恋しかった」
時雨「そう?なら気合を入れて作らないとね!」
凪桜の言葉にすっかり機嫌を良くした時雨は夕飯の準備に取り掛かるのだった…。
⭐︎⭐︎⭐︎
次回!仮面ライダー妖魔!
夜御哉「汰月君に掛けられた術の解除方法が分かったんだよ」
時雨「天狐アヤダマ…そうか、確かにあれなら幻を見せる能力を使える」
凪桜「副会長を倒すということ?」
雪音「そろそろお灸を据えてあげないといけない頃合いだと思っていましたから」
夢華との決戦に挑め!
雪音「どうしても私がこの手で決着をつけたいのです」
時雨「雪音ちゃんなら、きっと桃原さんを止められるよ」
凪桜「雪音先輩がその手で決着を付けたいと言うのなら…応援したい」
雪音「夢華さん。幼馴染として、こちらも覚悟と全力を以て、あなたを止めます!」
雪音、覚悟の変身!
夢華「全力で叩き潰してあげる」
雪音「夢華さんを救います!」
第弍拾陸話「雪魄氷姿!それが彼女の在り方!」
日曜午後9時!
第二十五話をご覧いただきありがとうございます!
今回は新たな力を手にして殻を破った時雨が凪桜を迎えに行く回となりました!
凪桜はずっと心苦しさを覚えていたものの、自分を支え続けてくれた凪桜のことを、時雨は凪桜が思う以上に大切に思っていたという話です!
歴史研究部も元通りの四人に戻り、学園紛争も最終局面へと突入していくことになります!
その行方を是非とも見届けてください!
次回は雪音と夢華の幼馴染コンビの回となります!二人がどのようにぶつかり合い、どんな結末を迎えるのか、是非お楽しみに!
さて、ここからは今週の変身講座コーナーです!
妖魔、霊魂とくれば当然、今回は3号ライダーの幽冥の変身ポーズです!
①アヤダマを右手で持って顔の左側へ持ってきます。(持ち方は時雨・汰月と共通)
②アヤダマを軽く放り投げて右手でキャッチします。
③その勢いのまま妖書ドライバーに装填し、勢いよく栞を引き下げて表紙を開きます。(賢昇の性格上、基本的に全部思い切りよく荒々しさが出るよう動くのがポイントです)
④右手はそのまま右腰に当てて、左手を開いたまま、一度右肩の前を通りつつ前へ突き出します。
⑤左手を握って肘から先のみ上に向けます。
⑥ 変身!の掛け声を上げて、左手でドライバーの表紙を閉じます。
⑦両手を軽く開き、両腕と体の間に少し間を開けた状態を保ちます。
…という手順となっております。今回もお付き合いいただきありがとうございます!