仮面ライダー妖魔   作:玲音考人

36 / 70
第参拾伍話「邪神出現…彼女との別れ」

 

リュウジン「前回の仮面ライダー妖魔は!

 

修学旅行で京都へやって来た時雨達!

しかし、それを邪魔しようとする一茶との戦いになる!

 

覚悟を決めて迷いを捨てた夢華が仮面ライダー夢幻となり、一茶を撃破!

 

出現したオオムカデも時雨達が倒したことで修学旅行は無事に守られたのだった。…しかし、大きな危機の種はじわじわと迫っていた…」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

雹介「そろそろあなたにお目覚めになってもらおうかと思いまして。…()()()()()

 

凪桜「…!何の話…?っ…離して…!…う……」

 

雹介「これで──おっと。はぁ…。君か」

 

都黎「…凪桜を離せ」

 

 凪桜の前に突然現れたのは雹介だった。やけに恭しく接したかと思うと、凪桜の腕を掴み、どこかへ連れて行こうとする。

 抵抗する凪桜だったが、雹介が手を翳して放った衝撃波を浴びせられたことで身動きを取れなくなり、そのまま連れ去られそうになってしまう。しかし、そこに都黎が闇夜月を振るって割って入る。

 

凪桜「都…黎…!」

 

都黎「…ヌラリヒョン。お前を…倒す」

 

雹介「へえ?君が私に敵うとでも?」

 

《ヤギョウ!》

 

都黎「……俺は俺の家族や仲間を守るために…力を求め続けた。そのためにお前に従い続けて来たんだ。だから…お前が凪桜に危害を加えようというなら…」

 

《インストール!》

 

都黎「俺はお前を倒すだけだ。変身!」

 

《デンシソウチャク!ヘンゲ!

 

常闇Darkness…!ヤギョウヨロイ!》

 

暗夜「はああっ!!」

 

 雹介に闇夜月の鋒を向けたまま、自身の想いをぶつけた都黎は暗夜 ヤギョウヨロイへ変身し、斬りかかる。

 

雹介「仕方ない…か。ふん…!」

 

暗夜「本性を表したな…!」

 

ヌラリヒョン「手間を掛けさせてくれないでほしいのだけれどね」

 

 雹介は餓鬼に凪桜を預けると、ヌラリヒョンとしての怪人態となり、手に持った杖で暗夜の斬撃を防ぐ。

 

暗夜「凪桜は返してもらう!」

 

ヌラリヒョン「君の力では無理だね」

 

暗夜「はああ!」

 

 凪桜を助けるべく、暗夜は闇夜月を振り上げてヌラリヒョンへ立ち向かっていくのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

 

 

仮面ライダー妖魔

 

 

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

第参拾伍話「邪神出現…彼女との別れ」

 

暗夜「はっ!」

 

ヌラリヒョン「無駄だよ。… 喜悦光(きえつこう)

 

暗夜「ぐっ…うっ…!今だ!」

 

ヌラリヒョン「ほう…」

 

オンミョウP1「はあっ!」

 

オンミョウP2「ふっ!」

 

オンミョウP3「凪桜ちゃんは…返してもらいます!」

 

 暗夜の斬撃を避けたヌラリヒョンは黄色の笑う人の顔のような紋様の刻まれた陣から黄色のレーザー光を放つ妖術の一つ、感情術式・喜悦光によって暗夜を攻撃するも、ヌラリヒョンの相手を暗夜がしている間にオンミョウトルーパー(紫)の三人が凪桜を助けようと物陰から飛び出し、凪桜を捕らえる餓鬼に挑みかかる。

 

ヌラリヒョン「おやおや…困るんだよね。喜悦光」

 

「「「うあああ!」」」

 

暗夜「何っ…!?」

 

 ヌラリヒョンは暗夜の相手をしながら追加で術式を展開し、オンミョウトルーパー(紫)の三人を纏めて撃ち抜く。

 

暗夜「くっ…なら!」

 

ヌラリヒョン「甘いよ太刀筋が。ほれ。喜悦光」

 

暗夜「うああ!ぐっ…」

 

 暗夜は闇夜月をヌラリヒョン目掛けて振るうも、ヌラリヒョンは腹部に杖を突き立ててその先端から黄色のレーザー光を放つことで暗夜を吹き飛ばして壁に叩きつける。

 

暗夜「負けるか…!」

 

ヌラリヒョン「しつこいなぁ。喜悦光」

 

暗夜「っ…はあっ!はっ!はあーっ!」

 

ヌラリヒョン「ん?」

 

オンミョウP2「覚悟しろ!!」

 

オンミョウP1「あなたを倒す!」

 

オンミョウP3「はあああ!」

 

《オンミョウチャージ!》

 

ヌラリヒョン「無意味なことを。…哀哭波(あいこくは)

 

オンミョウP1「嘘…!きゃあああ!」

 

オンミョウP2「ヤバ…だあああ!」

 

オンミョウP3「えええ!?うわあああ!!」

 

 何発も連続して放たれる喜悦光を回避したり闇夜月で弾きつつヌラリヒョンに接近する暗夜。そこにヌラリヒョンが気を取られた隙を突いて背後に回ったオンミョウトルーパー(紫)の三人は必殺技を発動しようとするが、振り向きざまにヌラリヒョンが放った青色の泣く人の顔のような紋様の刻まれた陣から青色の高圧水流を放つ妖術、感情術式・哀哭波によってオンミョウトルーパー(紫)の三人を纏めて押し流し、変身解除に追い込む。

 

双葉「うぅ…」

 

瑠李子「強い…!」

 

玲「この…!」

 

ヌラリヒョン「私に歯向かうからそういう目に──」

 

《秘剣・暗黒剣舞!》

 

暗夜「はあああ!!」

 

ヌラリヒョン「しつこいよ。怒気爆(どきばく)

 

暗夜「!?」

 

 仲間がやられた隙を突いてでも闇のオーラを纏った闇夜月による斬撃を叩き込もうとした暗夜だったが、ヌラリヒョンは杖を突きつけ、感情術式・怒気爆の徐々に巨大化する赤色の怒った人の顔のような紋様が刻まれた陣を胸の前に展開する。

 

ヌラリヒョン「それともう一つ。楽天嵐(らくてんらん)

 

暗夜「…身動きが…!」

 

《常闇ストライクフィニッシュ!》

 

暗夜「くっ──」

 

チュドオオオオンッ!!

 

暗夜「うぐああああ!!」

 

 何とか距離を取ろうとした暗夜だったが、足元に緑色の楽しそうにしている人の顔のような紋様が刻まれた陣から緑色の竜巻を吹き荒れさせる妖術の感情術式・楽天嵐によってその身動きを封じられてしまう。

 暗夜が危機感を覚えて咄嗟に電書ドライバーを操作し、全身に闇の妖気を纏わせて防御フィールドを展開するのとほぼ同時に妖気を吸って膨れ上がった怒気爆の術式が起動し、竜巻の中で大爆発を起こす。防御行動に出たにも関わらず暗夜を変身解除に追い込み、都黎に火傷や傷を負わせる。

 

ヌラリヒョン「はい終わり。さて、君等は用済みだし…消えてもらおうかな」

 

瑠璃子「っ…させない!はあ!」

 

雹介「おっと…逃げたか。まあ良いや。ふふふ…黄泉の神の復活はこの世界にどんな影響を及ぼすか…楽しみだ」

 

 倒れた都黎にトドメを刺そうとするヌラリヒョンだったが、瑠璃子がオンミョウブラストチェンジャーを用いて銃撃して目眩しし、都黎を連れて玲、双葉と共に撤退する。

 残されたヌラリヒョンは人間態に戻ると、凪桜を連れて上機嫌に立ち去っていくのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

──1週間後

 

時雨「……」

 

賢昇「…そうか、まだ見つかってねえんだな」

 

汰月「いきなり行方不明なんて…一体凪桜に何が…」

 

 凪桜がヌラリヒョンに連れ去られて一週間。そんなことは知る由もない時雨は明らかに落ち込んだ様子を見せていた。

 そんな時雨を心配してか汰月と賢昇もやって来ていたが、どうにも出来ず思い悩む。

 

賢昇「1週間前のあの日から寮に戻らなかったんだろ?そんなに遠い距離でもねえよな…」

 

時雨「……うん。照羅巣の女子寮は学校から徒歩5分もかからない所にある」

 

汰月「その短い時間で一体何が…」

 

咲穂「心配ではあるのですが…いかんせん手がかりがないのですよね…」

 

調「……もし、凪桜ちゃんに万が一のことがあったらどうしよう…」

 

時雨「!…め、滅多なこと言わないでよ。…凪桜ちゃんはきっと、無事なはず……」

 

調「!…あ、いやごめんなさい。俺…そんなつもりはなくて…」

 

時雨「…こ、こっちこそごめん。…つい……」

 

咲穂「…ここのところずっとこんな調子でして…」

 

賢昇「……あんな弱った時雨、初めて見たな…」

 

汰月「それだけ、時雨にとって彼女の存在は大きいのだろう。俺も…星海や治安維持委員会の皆が急に行方不明になったらと思うとゾッとする」

 

賢昇「…そうだな」

 

 かなり憔悴した様子の時雨を見て、時雨にとって凪桜がどれだけ大切な存在であったかを思い知る汰月と賢昇。

 すっかり暗い雰囲気となった歴史研究部の部室だったが、突然その戸が開かれる。

 

都黎「邪魔するぞ」

 

時雨「…!?昏時さん…それに世模継正屠会の方々…?」

 

汰月「どういうことだ?」

 

賢昇「一体何しにここへ…?」

 

都黎「……単刀直入に言う。凪桜を助けるために力を貸してほしい」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 入って来たのはあちこちに包帯を巻いてボロボロな都黎と、こちらもボロボロな上に非常に疲れ切った様子の瑠璃子、玲、双葉の世模継正屠会四人だった。

 そして、困惑する時雨達に、都黎は頭を下げ、力を貸してくれるよう懇願する。

 

時雨「ど、どういうことですか!?」

 

都黎「……凪桜は今、ヌラリヒョンによって世模継学院高校に捕えられている」

 

汰月「…何故今更ヌラリヒョンが彼女を…?」

 

都黎「…それは、凪桜がイザナミの形代となり得る存在だからだ」

 

リュウジン「イザナミの形代だと…!?まさか、凪桜は彼岸一族の血を引いているのか!?」

 

賢昇「彼岸一族ってなんだよ。てかアレだろ?イザナミって、確かこないだの修学旅行の時にシュテンドウジがなんか言ってたんだろ?」

 

 情報が錯綜としていることを感じた都黎は話を一度区切る。

 

都黎「……お前達は知る権利があるからな、詳しく説明したいところだが、今は時間がない。早くせねば凪桜はイザナミの形代にされてしまう。…頼む。こんなこと、頼めた義理でないのは分かっている。それでも…俺の仲間を…家族を救いたいんだ。…凪桜を救えるのならどんな罰を与えられたって良い。だから…俺に力を貸してくれ」

 

時雨「…昏時さん…。凪桜ちゃんは、今はまだ無事なんですか?」

 

都黎「…ああ。ヌラリヒョンにとっても凪桜は大切な形代だ。危害は加えられないはず」

 

時雨「…分かりました。昏時さん、一緒に戦いましょう」

 

調「時雨部長、信じて良いんですか?」

 

 土下座してまで頼み込む都黎を見た時雨は、凪桜はまだ無事であるということを確認すると、手を差し伸べ、共に戦おうと誘う。

 

時雨「うん。…嘘は言ってないと思うんだ。他でもない凪桜ちゃん自身が昏時さんのことを信じていたし…昏時さんも本気で凪桜ちゃんを助けたいって思ってるんだって、伝わってきたから」

 

都黎「晴河時雨…」

 

賢昇「俺達も力を貸してやるよ」

 

汰月「お前には助けてもらった恩もあるからな」

 

都黎「……礼を言う。信じてくれてありがとう」

 

 都黎のことを信じると決めた時雨、汰月、賢昇の三人は共に戦うと告げ、都黎も三人に深く感謝する。

 

時雨「雪音ちゃんと桃原さんにも伝えますか?」

 

都黎「…桃原夢華には、言わないでほしい。彼女はきっと、俺のことを恨んでいるだろうから」

 

時雨「え?」

 

都黎「俺はアイツの『幼馴染を守りたい』という思いを利用し、踏み躙ったんだ。今更助けてくださいなどと…言えはしない」

 

汰月「昏時都黎…」

 

賢昇「けどよ、それだってヌラリヒョンのせいなんだろ?お前が気に病まなくても…」

 

都黎「…俺には、アイツの気持ちが理解出来たんだ。俺も、家族や、幼馴染を守るために戦うことを、ヌラリヒョンに従うことを決めた。だからこそ、アイツがどんな思いでいたのか、誰よりも理解出来たはずなのに…俺は見て見ぬ振りしてその思いを利用した。…そんな俺に、彼女に助けを求める資格はない」

 

汰月「まあ、時間もそんなにない。ここから揉める可能性を考えたら無理に呼ばない方がいいか」

 

賢昇「だな。…早速向かうか」

 

時雨「だね」

 

 夢華への負い目から、その助力を拒む都黎。その結果、夢華、そして夢華と共にいるであろう雪音の手は借りず、今いるメンバーだけで世模継学院高校へ向かうことを決める。

 

双葉「なら、私達も…」

 

玲「凪桜を助けに…!」

 

都黎「いや、お前達はここで休んでろ」

 

玲「な、何でだよ!」

 

都黎「お前達はこの1週間、自分達の怪我も後回しに俺の手当をしてくれていただろ。それにあまり休まずに世模継の偵察にも向かってくれていた。これ以上無理はさせられない。ここは休んでくれ」

 

玲「けど…」

 

瑠璃子「玲、落ち着いて」

 

双葉「瑠璃子さん…?」

 

瑠璃子「…私達が疲弊してるのは事実。多分、私達じゃ戦いについていけないの。寧ろ都黎達の足を引っ張ってしまう。そうなったら凪桜を助けられる確率は下がってしまう。だからここは…大人しく休もう」

 

咲穂「私達が保健室まで案内します」

 

調「ほら、掴まって」

 

玲「…分かった」

 

双葉「お願いします…」

 

瑠璃子「そういうわけだから、申し訳ないのだけれど…凪桜のこと、お願い」

 

時雨「はい。…凪桜ちゃんが大切なのは、僕も一緒ですから!」

 

瑠璃子「ふふ、じゃあ都黎…後は任せたよ」

 

都黎「ああ。……行こう」

 

時雨「……」コクン

 

汰月「ああ」

 

賢昇「…おう」

 

 共に向かおうとする双葉と玲を都黎は止めつつ、瑠璃子の説得もあって世模継正屠会の三人は照羅巣で待機することとなり、咲穂と調が側につくことに。

 そして都黎と共に、時雨、汰月、賢昇の四人は世模継学院高校を目指すのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

時雨「それで、イザナミっていうのは…」

 

リュウジン「それについては我から説明させてもらおう」

 

都黎「…そうだな。あんたはよく知ってるか」

 

リュウジン「そもそもイザナミとは、この国を創り出した女神だ。しかし…現在の奴は邪神となっている。国を産んだ後、諸々の事情から黄泉の国を司る神となったイザナミは、1000年前、布留杜市がまだカンナギと呼ばれていた頃、奴を信奉する巫女の一族の娘の身体を形代として復活し、現世も幽世も全てを死の世界に変えようとしていたんだ」

 

時雨「なんでそんなことを…」

 

リュウジン「……さあな。奴の真意は分からんが…放っておけば人も、モノノケも、皆がその命を奪われることとなってしまう。それを止めるために我は素質を持つ優秀な陰陽師…即ち晴朗を見つけ、イザナミに対抗するために作り出された妖魔の力を託した」

 

 世模継学院高校へ向かう道すがら、リュウジンからイザナミという存在について語られる。

 

時雨「それが…先代妖魔」

 

リュウジン「そうだ。…そして晴朗に共鳴した者達が複製した妖之書によって霊魂や幽冥となり、力を合わせてイザナミを打ち倒した」

 

賢昇「成る程、そういう繋がりがあったわけか」

 

汰月「俺達の持つ妖之書の原本が時雨のものだったってことか」

 

 リュウジンは妖魔や霊魂、幽冥といった仮面ライダー達の成り立ちについて語る。

 

リュウジン「うむ。…そして、さっき話に出ていた彼岸一族、というのがイザナミを信奉していた巫女の一族のことで、その血を引く娘はイザナミの形代となり得る素質を持つ」

 

都黎「…俺と凪桜の祖母が彼岸一族の血を引いていたんだ。だから凪桜は器としての素質を持っていた」

 

汰月「俺と凪桜の祖母?」

 

時雨「ああ、昏時さんと凪桜ちゃんはいとこなんだよ」

 

賢昇「そうだったのか。ってことはお前もその彼岸一族とやらの血を引いてるってことか?」

 

都黎「ああ。…とはいえ、俺は男だからそもそも形代としての素質はないんだがな。そして凪桜はここ数代の中でも突出して高い素質を持っているらしい」

 

汰月「それでか…」

 

 先程話題に上がっていた彼岸一族についての解説をリュウジンがし、都黎は補足として自分達の祖母がその血を引くものであったことを明かす。

 

時雨「…カンナギ…黄泉の神…巫女の一族……もしかして布留杜に昔から伝わってるっていうあの伝承ってイザナミと先代の妖魔…雨辺晴朗さんとの戦いの話なんですか?」

 

汰月「伝承って…モノノケがどうとかっていうアレ?」

 

時雨「うん。偶に近所の子供達に読み聞かせしてあげたりしてたから覚えてるんだけど…確か…

 

──昔々、この辺りは“カンナギ”と呼ばれていた。

──カンナギでは、人と、モノノケとが共に暮らしていた。

──ある時、とある一族の巫女が黄泉の神をその身に宿す。そして、多くの人と、モノノケとに未曾有の危機を齎した。

──その危機を解決するべく、カンナギにいた名高い陰陽師は龍のモノノケと手を結び、危機を祓ったのだった…。

──それ以来、カンナギでは人とモノノケとはより深く付き合うようになったとさ…。

 

…っていうものなんだけど、リュウジンさんの話してた内容と一致すると思って」

 

リュウジン「まさしくその通りだ。1000年前、我と晴朗はこの地で共にイザナミと戦い、そして何とか勝利した。その時の出来事が伝承という形で残っているのだろう」

 

賢昇「まさかガキの頃から学校で習ったりした伝承がマジモンだったとはな…」

 

 リュウジンの話を聞いた時雨は、自身の知る布留杜市に残る伝承とそっくりであると気付き、それが史実に基づくものであったことを知る。

 

リュウジン「そして、その時に我と晴朗はイザナミが形代となる人間に乗り移るための力の源となる“血染めの桜”を破壊した」

 

時雨「それって、この間の修学旅行でシュテンドウジが持ってた…」

 

リュウジン「ああ。元々晴朗が我の力を使って“血染めの桜”の力ごと封じ込めていたのだが…リュウジンの力と、それを抑制するオオムカデの力とぶつけ合わせて“血染めの桜”を封じ込めていた我の力を弱めることで復活させたのだろう」

 

汰月「…オオムカデってリュウジンの力を弱めるんだよね?だったらそんな回りくどいことしなくても、直接オオムカデの力を取り込めば良かったんじゃ…」

 

賢昇「確かにそうだな。わざわざ時雨達に倒させるなんて…」

 

リュウジン「…いや、オオムカデの力は我等リュウジンの力を弱めると同時に、他のモノノケ達にとっても猛毒に等しいものなんだ。それをそのまま取り込めばいかにイザナミの力を持つ“血染めの桜”だとしても、ただでは済まない。だから敢えて我の力とぶつけ合わせてその力を弱める部分だけを入手したのだろう」

 

汰月「…成る程、血清の要領か」

 

賢昇「…どういうことだ?」

 

汰月「ヘビ毒なんかに使われる血清には、敢えて動物にヘビ毒を注入してその抗体を作らせ、その抗体を採取するという作り方がある。それに近い要領ってことだろ?」

 

リュウジン「そういうことだ。我の力を弱める妖力を“血染めの桜”に取り込ませることで“血染めの桜”を封じ込めていた我の妖力を打ち消したのだろう」

 

時雨「そのために修学旅行での騒動を引き起こした…」

 

賢昇「全部アイツ等の計算ずくだったってわけか」

 

 修学旅行での騒動すら、イザナミ復活のための手段に過ぎなかったことを悟り、時雨達は敵の底知れなさを感じる。

 

都黎「…元々、世模継は捨てられた学校だと教わってきた。捨てられ、隔離された俺達を育ててきたのがヌラリヒョンだと」

 

時雨「世模継の人達はヌラリヒョンに育てられて来たんですか?」

 

都黎「ああ。正確には反人間連合によって、だが。…まだ幼かったある時、俺は凪桜がイザナミの形代となる存在であることをヌラリヒョンから教えられた。そして、その凪桜を守るのが俺の役目だと」

 

汰月「そんな昔から…」

 

都黎「…俺は、凪桜を守るために強くなると決めた。誰にも負けない強さを得ようと決めた。そうすれば…きっと何かを変えられると、そう思った。だからずっとヌラリヒョンの指示に従い続けた。ヌラリヒョンの優秀な部下になれれば、奴の計画を変えることが出来るかもしれない、凪桜を犠牲になんてさせずに済むかもしれないと」

 

時雨「…ずっと、戦って来たんですね」

 

都黎「…だが…俺は結局お前達に勝てなかった。それに…俺の力では止めることは叶わなかった……俺は、何のために…」

 

 自分の本当の意思を語る都黎だったが、次第にその顔は俯いていく。

 しかし、そんな都黎に、時雨は静かに、しかし力強く呼びかける。

 

時雨「なら、僕達と一緒に戦いましょう」

 

都黎「…!」

 

時雨「昏時さんが一人で背負うことじゃありません。これからは…僕達も仲間です!」

 

都黎「…仲間……」

 

汰月「そうだな。思いは一つだ」

 

賢昇「ヌラリヒョンをぶっ倒して、その計画を止める。そんでもってアイツを助ける。だろ?」

 

都黎「…そうだな。……ありがとう」

 

 都黎が背負って来たものを知った時雨達は都黎に手を差し伸べ、そんな三人に都黎は表情を柔らかくすると、礼を告げる。

 

時雨「そんな話をしている間に着いたね」

 

都黎「ああ。このトンネルを抜ければ校舎はすぐだ」

 

汰月「前時雨が来た時は天狗の力を使ったんだったっけ?」

 

時雨「うん。…昏時さんはまだ道分かります?」

 

都黎「ああ。俺達を追い出してからも特に変化パターンは変わっていなかった。だから今回も行けるだろう。…それだけ舐められているということだろうが」

 

賢昇「上等じゃねえか。ヌラリヒョンの野郎の傲岸不遜な態度をぶち壊してやろうぜ」

 

都黎「…行くぞ」

 

 ヌラリヒョンの都黎達を舐めている態度故か道順が変わっていないことを利用し、都黎の道案内で四人は世模継学院高校へと突入するのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

妖魔「…来たね」

 

汰月「ここが世模継…前に来てたらしい時は洗脳状態だったから何も覚えてないな…」

 

賢昇「あ?…出迎えみてえだぞ」

 

都黎「…一応、前よりも警戒はしてるわけか」

 

 飛羅坂トンネルを抜けて世模継学院高校の校舎前までやって来た時雨達。

 そんな彼等を察知してオンミョウトルーパー(紫)や餓鬼達がゾロゾロとやってくる。

 

時雨「結構いるね…!」

 

汰月「ここは俺と賢昇で相手する。マトモに相手してたら突破に時間がかかるからな」

 

賢昇「餓鬼はともかくオンミョウトルーパーまで倒すわけにいかねえもんな。っつーわけで、ここは俺等に任せとけ!」

 

時雨「二人とも…」

 

都黎「……良いのか?」

 

汰月「勿論」

 

賢昇「ったりめーだろうが」

 

 マトモに相手をしていたら時間がかかると判断した汰月と賢昇は自分達が道を作り、時雨と都黎を先に行かせることを決める。

 

オンミョウP「侵入者め…!」

 

オンミョウP「ここから先は行かせない!」

 

汰月「お前達の相手は…」

 

賢昇「俺達だ!」

 

《激怒!》

《大蛇装填!》

 

《ギュウキ!》

《インストール!》

 

汰月「はあっ!…変身!」

 

《編纂装着!変化!

 

八重展開!八岐大蛇ヨロイ!》

 

霊魂「はあああ!」

 

オンミョウP「動きが…!」

 

賢昇「ウラッ!だあっ!変身!はああ!」

 

《デンシソウチャク!ヘンゲ!

 

猛火Burning!ギュウキヨロイ!》

 

幽冥「ッラアア!」

 

オンミョウP「ぐあっ!」

 

 汰月は餓鬼を回し蹴りで蹴り飛ばすと霊魂 八岐大蛇ヨロイへと変身し、地形操作能力で近くのオンミョウトルーパー(紫)の動きを封じる。

 一方で賢昇はオンミョウトルーパー(紫)の一人を殴打しながら幽冥 ギュウキヨロイへと変身し、その腕力で殴り飛ばす。

 

幽冥「いくぞ!」

 

《チャージ!》

 

霊魂「ああ」

 

《最大装填!》

 

幽冥「ダアアアっ!」

 

《チャージスラッシュ!》

 

霊魂「ふっ!」

 

《激昂八百連弾!》

 

「「うぐあああ!」」

 

霊魂「今だ!」

 

幽冥「いけ!」

 

時雨「ありがとう!…行きましょう。はっ!」

 

都黎「ああ。…恩に着る。…ふん!」

 

リュウジン「先に行かせてもらうぞ!」

 

 霊魂と幽冥はそれぞれ大量の妖気弾の掃射と斬撃を飛ばすことでオンミョウトルーパー(紫)と餓鬼を蹴散らし、時雨と都黎が進む道を作る。

 そして時雨と都黎もその意を汲んで二人に礼を言うと、時雨はリュウジンのサポートとブラストモードのブンプクブラストフォンで、都黎は闇夜月で道を塞ごうとする敵と交戦しつつ校舎へ侵入する。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

雹介「いよいよだな。間も無く“血染めの桜”は完全覚醒する。…おや?」

 

都黎「ヌラリヒョン…!」

 

時雨「凪桜ちゃん!」

 

雹介「君達か。よく辿り着いたものだね。思ったより早かったよ」

 

時雨「!…僕達が来るって分かってたんですか…!」

 

雹介「まあね。君達が彼女を見捨てるとは思えないし…折角だからそんな君達にイザナミ様の顕現する瞬間を拝ませてあげようと思ってね」

 

都黎「ふざけるな!」

 

時雨「凪桜ちゃんは返してもらいます…!」

 

 雹介は世模継学院高校の体育館にて意識を失った凪桜をステージの上に設置した陣の上に寝転がしていた。

 そこへ駆け付けた時雨と都黎を前にしても飄々とした態度を崩さず、二人は怒りを覚える。

 

雹介「所詮今まで私の手の上で転がされて来ただけの存在が、私に敵うとでも?」

 

都黎「…どういう意味だ」

 

雹介「簡単なことだよ。全ては今、この瞬間のために仕組まれていたのさ」

 

時雨「仕組まれていた…?」

 

雹介「あれ?まだ分からない?…仕方ないな。教えてあげよう。…世模継が孤立したのも、彼岸の血を引く彼女がこの場所に生まれたのも、全部私が“そうなる”ように仕向けたのさ、60年前からずっと」

 

時雨「!…じゃあやっぱり…世模継の人達が厳しい生活を強いられて来たのも…」

 

都黎「…他の三校を恨むように刷り込んできたのも…」

 

雹介「勿論。全部私の計画のためさ。…60年前、ここは人とモノノケが共存する学校だった。そして…強い力を持つ陰陽師の末裔たる彼岸家の娘も、ここにいることが分かった。だが…その時点ではイザナミ様を復活させるための準備が整っていなかったし…何より当時の彼岸家の娘は力が足りていなかった。だから…私は考えたのさ。この場所で、私にとって都合の良い、最高の形代を作り出そう、ってね」

 

時雨「!…それが、凪桜ちゃん……」

 

都黎「…じゃあ、俺達は生まれることも、人を恨むことすらあんたの手の上だったというのか!」

 

雹介「そうだよ?そのために色々やったさ。人のモノノケへの潜在的な恐怖を利用して世模継を孤立させたり、そのことについて外の人達の記憶を消したり。そうやって長い時間をかけて…今があるのさ」

 

 世模継学院高校の運命を自分の手で好き勝手に弄んでいたことを明かす雹介に、二人は絶句する。

 

時雨「そうやって…皆の思いを、命を…弄んできたんですか…!」

 

都黎「俺達を計画の駒として生まれさせて戦わせて…!」

 

雹介「そうさ。私の計画のためにね。さて、彼女を助けたい?だっけ。そんなことは無駄さ。彼女は…この時のために生まれたんだ。イザナミ様の形代となる、そのためにね。邪魔をしたいというのなら…遊び相手になってあげよう」

 

 雹介は凪桜は飽くまでイザナミの形代でしかないと言い切ると、ヌラリヒョンとしての本性を露わにする。

 

都黎「……っ」

 

時雨「…昏時さん……」

 

都黎「……晴河時雨、改めて言う。俺と一緒に戦ってくれ…!この呪われた運命を断ち切るために!」

 

時雨「勿論です!…僕達二人で、凪桜ちゃんを助けましょう!」

 

都黎「ああ。…いくぞ!」

 

時雨「はい!」

 

《龍神!》《真打!》

《『真価覚醒!』》

 

《ヤギョウ!》

 

《装填!》

 

《インストール!》

 

「「変身!」」

 

《憑依装着!変化!

 

『画竜点睛!龍神ヨロイ!真!』》

 

《デンシソウチャク!ヘンゲ!

 

常闇Darkness…!ヤギョウヨロイ!》

 

 あまりにも邪悪な敵であるヌラリヒョンを前に、時雨と都黎は横並びに立つと、同時にそれぞれ妖魔 龍神ヨロイ・真、暗夜 ヤギョウヨロイへと変身する。

 

妖魔「はああ!!」

 

暗夜「はっ!」

 

ヌラリヒョン「ふふふ…」

 

 妖魔は大剣状態の龍神之大砲剣を振りかぶりながら、暗夜は闇夜月の鋒を向けたまま、同時にヌラリヒョンへ向かっていく。

 

ヌラリヒョン「おっと…。その程度じゃあ、私は倒せない。反人間連合を束ねる総大将の名は…伊達じゃないのさ」

 

妖魔「避けられた…!」

 

暗夜「やはり手強いな…」

 

 妖魔と暗夜の連続攻撃も難なく避けてみせるヌラリヒョン。

 その姿に二人は方針を変えることを決める。

 

妖魔「なら、連携で勝負です!」

 

暗夜「…いいだろう」

 

ヌラリヒョン「連携?ふん、即興コンビの連携でどこまで出来るか見ものだね…!」

 

妖魔「はああ!」

 

ヌラリヒョン「ふん」

 

暗夜「はああっ!」

 

ヌラリヒョン「!くっ…」

 

妖魔「はあっ!!」

 

 妖魔は龍神之大砲剣でヌラリヒョンに斬りかかり、ヌラリヒョンはそれを杖で容易く受け止める。

 しかし、次の瞬間妖魔の背を踏み台にして暗夜が飛び出し、背後からヌラリヒョンを斬り裂くと、続けて妖魔が重い斬撃を浴びせる。

 

ヌラリヒョン「…やるじゃないか」

 

暗夜「伊達に何度も…」

 

妖魔「戦ってませんから!」

 

ヌラリヒョン「っ…ふふ、そういうことか。これは…想定以上かもしれないねえ」

 

 意外な連携の良さに驚くヌラリヒョンだったが、そんなヌラリヒョンに二人は何度も激突してきて互いの手を知っているからこその連携であることを返しつつ、同時に斬撃を叩き込む。

 

ヌラリヒョン「なら…喜悦光!」

 

妖魔「はあっ!!あなたの技はもう聞いてます!」

 

暗夜「喰らえ!」

 

ヌラリヒョン「…っ…とと…成る程。これは中々だ」

 

 ヌラリヒョンの放つ黄色のレーザー光に対し、妖魔は暖かい光のエネルギーを発して弾き返し、同時にヌラリヒョンの視界を一瞬奪う。

 そして暗夜はその隙にヌラリヒョンの懐に入ると、真下から斬り上げてヌラリヒョンを後退させる。

 

ヌラリヒョン「なら…こういうのはどうかな!怒気爆!」

 

妖魔「!…っ…危なっ!?」

 

暗夜「…最大威力を捨てて速射性を上げてきたか…!」

 

 ヌラリヒョンは赤色の爆発する陣を飛ばして妖魔と暗夜に攻撃を仕掛け、二人は防御と回避を強いられる。

 

妖魔「だったら…はあっ!!」

 

ヌラリヒョン「氷の壁か…なら砕くまで──」

 

暗夜「させるか」

 

《大砲之刻!》

 

妖魔「はあっ!!」

 

ヌラリヒョン「ぐあっ!…面白いことするねえ」

 

 妖魔は氷の壁を生み出してヌラリヒョンの攻撃を防ぐが、ヌラリヒョンは攻撃を集中させて壁を破壊しようとする。

 しかし、氷の壁による目眩しを利用し、闇を通じて移動して来た暗夜が闇夜月を振り下ろしてヌラリヒョンが向けた杖の向きを変えることで妨害し、すかさず龍神之大砲剣を大砲状態に変えた妖魔が痛烈な砲撃を浴びせる。

 

ヌラリヒョン「くくくっ…なら、こういうのはどうかな?哀哭波!!」

 

妖魔「任せてください!」

 

《河童!》

《読取装填!一柱!一撃必殺!》

 

妖魔「はあっ!」

 

《一柱砲撃!》

 

ヌラリヒョン「!相殺したか…」

 

 ヌラリヒョンは青い高圧水流を放つも、妖魔の放った胡瓜型の水塊が炸裂し、相殺される。

 そして、その間に提灯御化アヤダマを闇夜月に装填した暗夜は攻撃に移る。

 

《提灯御化!》

《アヤダマ装填!》

 

暗夜「爆ぜろっ!!」

 

《アヤダマ一閃!》

 

ヌラリヒョン「くっ…」

 

 暗夜が闇夜月から飛ばした提灯型のエネルギー弾が着弾し、ヌラリヒョンの身体を焦がす。

 

ヌラリヒョン「…良いね。面白い戦い方だよ。…なら、これにはどう対応する!?楽天嵐!」

 

妖魔「竜巻…!」

 

暗夜「俺の後ろに!」

 

妖魔「分かりました!」

 

ヌラリヒョン「ふんっ!…さーて、ここからが本番だよ。…怒気爆!!」

 

 ヌラリヒョンは緑色の竜巻を生み出して妖魔達に向けて放つ。

 それを見た暗夜は闇夜月を構えて妖魔に自身の後ろに来るよう伝え、妖魔が従うのと同時に二人を暴風が包み込む。

 更に追い打ちをかけるように赤い陣を何発か竜巻の中へと飛ばすと、少しの後に幾重もの爆発が竜巻を赤く染め上げる。

 

ヌラリヒョン「フッ…おや?」

 

《唐傘御化!アヤダマバースト!》

 

暗夜「…その手は喰わない…!」

 

 爆風の中から現れたのは無数の唐傘型のエネルギーフィールドを展開していた暗夜だった。

 その様子に感心した様子を見せるヌラリヒョンだったが、妖魔がいないことに気付く。

 

ヌラリヒョン「あの攻撃を防いだか。やるじゃないか。…?妖魔は…」

 

ヒュオオオ…!

 

ヌラリヒョン「上か…!」

 

《天狗!》

《読取装填!一柱!一撃必殺!》

 

妖魔「はああっ!!」

 

《一柱斬撃!》

 

ヌラリヒョン「うぐああ!!」

 

 聞こえて来た風切音に気付き上を見上げたヌラリヒョンの視界には、空中に浮かび上がった妖魔がヌラリヒョンの放った術式すらも利用して巨大な暴風を纏わせた刃を振り下ろす姿が映る。

 次の瞬間、叩き込まれた暴風の刃がヌラリヒョンの身体を吹き飛ばし、体育館の壁に叩きつけ、大きなヒビを入れる。

 

ヌラリヒョン「…くく…やるじゃあないか」

 

妖魔「…昏時さん!決めましょう!」

 

暗夜「ああ!…いくぞ」

 

 ヌラリヒョンの大きな隙を前に、勝負を決めるべく妖魔は龍神之大砲剣を金色と銀色の粒子に変換して妖書ドライバー内に収納し、暗夜は闇夜月を背中にマウントする。

 

《一・撃・必・殺!》

 

《スペシャルムーブ!》

 

妖魔「はああ…!」

 

暗夜「……」

 

《『画竜剛撃!』》

 

《常闇ストライクフィニッシュ!》

 

「「はあーっ!!!」」

 

ヌラリヒョン「くっ…!ぬああ!!」

 

 妖魔と暗夜はドライバーを操作すると同時に跳び上がり、妖魔は右脚に雷、風、水、光、氷を纏わせ、暗夜は左脚に闇のオーラを纏わせて跳び蹴りを放ち、ヌラリヒョンを蹴り飛ばす。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

雹介「くくく…まさかここまでの力とはね」

 

妖魔「あなたの負けです」

 

暗夜「観念しろ」

 

 人間の姿に戻った雹介を前に詰め寄る妖魔と暗夜。しかし、雹介は動じる様子もなくヘラヘラと言い放つ。

 

雹介「負け?観念する?ふふ、ふははは!そんな必要はない。何故なら…私の目的は果たされるのだから!」

 

暗夜「まだそんなことを…」

 

妖魔「凪桜ちゃんは返してもら──!?」

 

ゴゴゴゴゴ…!

 

暗夜「!…なんだ…!?」

 

雹介「君達がここに来るだろうことは分かっていた。だから利用させてもらったよ。君達の妖力を」

 

妖魔「まさか…最初から僕達の力を…!」

 

雹介「ああそうさ!私が自分でやってもいいのだけれど…どうせなら君達が最後のスイッチを押してしまうほうが面白いと思ってね。さあ、遂に…訪れる。女神様の降臨の時がね!」

 

 突然の地響きに驚く妖魔と暗夜。そんな二人を前に雹介は芝居がかった動作で全てが計算ずくだったことを明かす。

 

霊魂「はあっ!!」

 

幽冥「オラアッ!」

 

霊魂「!…なんだ…!?」

 

幽冥「ああ…?」

 

 外でオンミョウトルーパー(紫)や餓鬼達と乱闘を繰り広げていた霊魂と幽冥も地響きに気付き、ただならぬ事態になっていることを感じ取る。

 

妖魔「一体何が…」

 

暗夜「!あれを見ろ!」

 

妖魔「!あれは…“血染めの桜”…!?」

 

雹介「見たまえ…美しいだろう?」

 

 地響きと共に、凪桜の傍に鉢植えに入れられて置かれていた血染めの桜の苗木が突如として急成長すると、そこそこの大きさの樹木となり、満開の花を咲かせる。

 美しいながらもどことなく危険さを感じさせる赤色の混じった桜色の花弁が咲き誇ると、凪桜の身体が花弁と同じ色のオーラを纏って浮き上がる。

 

妖魔「凪桜ちゃんが…浮いた…!?」

 

雹介「さて…こいつの出番だ!」

 

暗夜「!?両面宿儺の呪符だと…!」

 

妖魔「両面宿儺!?」

 

雹介「イザナミ様を目覚めさせるには強大な負の妖気…即ち呪いの力が必要でね。そのために両面宿儺を生み出したのさ」

 

妖魔「じゃあ…あの争いすらも…この時のために…!?」

 

雹介「そうさ!…さあ、見たまえ!女神様がいよいよ顕現なさるぞ!」

 

妖魔「…!」

 

暗夜「!」

 

 雹介が投げ込んだ両面宿儺の力を封じ込めた呪符はドス黒い妖気を解き放つ。

 その様に驚く妖魔と暗夜に、雹介は何でもないことのように学園紛争を起こした理由すらイザナミ復活の儀式のために過ぎなかったことを明かす。

 そして、赤みがかった桜吹雪とドス黒い妖気を取り込んだ凪桜は地面へ降り立つと、ゆっくりとその瞳を開き、血染めの桜は灰となって消えてゆく。

 

凪桜?「……」

 

妖魔「凪桜ちゃん…?」

 

凪桜?「…妾はイザナミ。この世界へやってくるのも…久しぶりじゃのう」

 

妖魔「そんな…!」

 

暗夜「…イザナミが…顕現した……!」

 

 ゆっくりと凪桜が目を開くと、その瞳は血染めの桜と同じく赤みがかった桜色となっており、そしてこれまでにない冷たい声音と視線で、自身はイザナミと名乗る。

 

イザナミ「少し見ないうちに妖魔も代替わりか。見たこともない姿じゃが…あの目障りな人間でなくなったなら…倒すのも容易いことよ」

 

妖魔「…黒い…ドライバー!?」

 

雹介「何を驚く。彼女の持つ禁断之書こそ、君の持つ妖之書の原型なのだよ。そうだね…君達に倣うなら、“禁書ドライバー”…ってところかな」

 

暗夜「禁書ドライバー…だと…!」

 

 イザナミは妖魔達を睥睨すると、黒色の妖之書…禁断之書を取り出し、腰に装着する。

 そうして彼女の腰に装着された“禁書(きんしょ)ドライバー”こそが時雨達の使う妖書ドライバーの原型であるのだと聞かされ、妖魔と暗夜は驚く。

 

イザナミ「どれ…」

 

《伊邪那美…!》

 

イザナミ「妾が遊んでやろう」

 

《装填…》

 

 イザナミは黒色と臙脂色を基調とした“伊邪那美アヤダマ”を取り出して起動し、禁書ドライバーへと装填し、“降臨栞”を引き下げて表紙を展開する。

 同時に、イザナミの背後へ血染めの桜が出現する。

 

イザナミ「…変身」

 

《支配装着…変化…!

 

冥界姫君(めいかいひめぎみ)…伊邪那美ヨロイ…!》

 

雹介「素晴らしい…!これこそがイザナミ様の真の力を引き出させた姿…言うなれば“仮面ライダー()()”だ!」

 

 イザナミが表紙を閉じると、黒色の陣がその身体を通って金色の模様が刻まれた黒色の素体を形作る。血染めの桜から放たれた桜吹雪が集まって生み出された黒色と臙脂色を基調とした巫女装束のような形状の装甲が装着され、腰には黒色を基調として血染めの桜の花の紋様が描かれたスカートにも見える形状のローブが追加される。

 複眼は赤みがかった桜色…即ち血染めの桜と同じ色に染まった冥界の女神の力を持つ存在…仮面ライダー黄泉 伊邪那美ヨロイが顕現する。

 

黄泉「仮面らいだあ?…ふむ、今はそう呼ぶのじゃな。この形代の記憶を利用して現代に合わせてやったぞ。…見せてやろう、妾の力を」

 

暗夜「…凪桜を…返してもらうぞ!」

 

黄泉「さっきから煩いのう…こやつは妾の形代に過ぎぬ。諦めるんじゃな!」

 

暗夜「ぐああっ!」

 

 暗夜は黄泉に斬りかかるも、黄泉はその斬撃を片手で払い除けると、掌底打ちを暗夜の腹部に叩き込み、そのまま衝撃波を放って暗夜を吹き飛ばす。

 

妖魔「昏時さん!」

 

暗夜「だったら…!」

 

《神剣・暗闇演舞!》

 

暗夜「はああああ…はあーっ!!」

 

黄泉「無意味なことを…彼岸桜(ひがんざくら)

 

暗夜「!?くっ…う…ぐあああ!!」

 

妖魔「あの技は…!?」

 

 暗夜は闇夜月に闇のオーラを纏わせて強力な斬撃を放つも、黄泉はそれを自身の目の前に複合術式・彼岸桜で赤みがかった桜色に、桜の花の紋様が刻まれた円陣を展開して防ぎ切ると、そのまま円陣を用いて暗夜を捉え、床に叩き付ける。

 

暗夜「くっ…だったら…!」

 

黄泉「これで終わりじゃ。… 千本桜(せんぼんざくら)

 

暗夜「!うぐああああ!!」

 

妖魔「昏時さん!昏時さん!!」

 

 黄泉は手を翳し、殲滅術式・千本桜を発動することで大量の桜の花弁を飛ばし、暗夜に炸裂させる。

 高威力の桜の花弁に包まれた暗夜は変身を解かれ、ボロボロの状態で倒れ込むのだった…。

 

黄泉「…ふん」

 

妖魔「…凪桜ちゃん…!」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

次回!仮面ライダー妖魔!

 

イザナミ「次はお前じゃ…妖魔」

 

時雨「凪桜ちゃんを攻撃なんて…」

 

イザナミが牙を剥く!

 

時雨「うああああ!!」

 

賢昇「時雨!落ち着け!」

 

雹介「スペシャルゲストを紹介しようと思ってね」

 

混乱の中、現れた人物とは…?

 

時雨「青い…禍炎…!」

 

第参拾陸話「抱える憂い、事態混迷」

 

日曜午後9時!




第三十五話をご覧いただきありがとうございます。

凪桜に隠されていた秘密も明らかになり、時雨と都黎の共闘と盛り沢山な内容となりましたが、描き切ることができて良かったです。

さて、今回からはいよいよ第四章の表題ともなっているイザナミの登場となります!
妖魔のストーリーも終盤戦に差し掛かることとなりますので、是非ともこの先もお見逃しなく!

凪桜(の身体を乗っ取ったイザナミ)と戦うことになってしまった時雨。
ある意味で今までにない試練に時雨がどう立ち向かっていくのか、要注目です!

因みに恒例の変身ポーズ講座ですが…黄泉には設定しておりません。
イザナミにとってはあくまで変身とは単に戦闘形態になる以上の意味合いはないので、その場その場で適当な動作で変身する、って感じですかね。
特定の動作が定まっていないという意味で言うなら幻徳のローグとかと近いかもです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。