俺はディオ!ジョジョの親友で、本当の紳士を目指す者さ! 作:バケギツネ
◇
テッテレー、俺はディオ!!
転生者であり、偉大なる父・ダリオのような本当の紳士となる事を目指す男だ!!
さてさて〜。
5話もかけて、ようやくジョースター邸へと辿り着いた俺!長かったな〜!
早速、チビる程立派な屋敷の中へとエスコートされ、今日からお世話になる大大大恩人・ジョースター卿にご挨拶する事になった!
「ジョースター卿。俺を引き取ってくれた事、本当に感謝しています!」
『気にしないでくれたまえ。ロンドンからの長旅ご苦労だったね、ディオくん。今日からキミは、私の家族だ。』
何だかんだで初めて顔を合わせたジョースター卿は、穏やかな優しい笑顔の似合う、イメージ通りのイケオジだった。
解釈一致!!!
『ジョジョとは、もう友達になったようだね。少しヤンチャな所のある息子だが、仲良くしてやってくれ。』
「勿論です!!こちらこそ、息子さんには大変大変お世話になってます!」
『ちょ、よしてくれ!ディオ。』
実際、ジョジョは命の恩人だしな。転生の事も明かしたし、今では親友だと言っていい。
...ジョースター卿には絶対言わないが、ファーストキス(人工呼吸)の相手でもある。
うん、絶対言わんとこ。親友のお父さんを泣かせたくないし。
「............」
『ん、ディオ君。私の顔に何か付いているかい?』
「あ、いえいえ!何でもありません!!」
しかしこう見ると、ジョジョはお父さん似なんだな〜。顔だけじゃなく、雰囲気や性格もソックリだ!
このイケメン聖人一族め!
きっと彼らの子孫たちも、全員素行の良い、穏やかな人達なんだろうな〜。
刑務所からの脱獄犯や、
裏社会を牛耳るマフィアのボスや、
未成年でパチンコ店に入り浸るリーゼントや、
同じく未成年で飲酒・喫煙を繰り返す、喧嘩や食い逃げの常習犯である不良や、
学校を中退していて、暴力沙汰で7つの前科を持ち、不倫で隠し子を作るようなクズ男、
なんていないに決まっている!!!!!!!
ジョースター家の未来は安泰だな、ガハハ!!
◇
『私は貿易の仕事をしていてね。時折家を空ける事もあるので、全てを彼らに任せているんだ。キミも遠慮なく頼るといい。』
ジョースター卿が、馬車の安全運転をしてくれてた執事さんを含む、7人の使用人さんを紹介してくれる。
何というか、皆んなプロフェッショナルって感じだ。どの人も、貴族に負けず劣らずの気品を身につけていて、正直俺よりもよっぽど高貴に見える。
自省!穴があったら入りたい!!
「まだまだ未熟な俺ですが、これからよろしくお願いします!!」
使用人の方々には心を込めてペコペコしておく!しっかり挨拶しておこう!第一印象大事!!
『言っただろう?ディオくん。今日からキミは、私たちの家族なんだ。そんな堅苦しい態度はよしてくれ。』
恐る恐る頭を上げた俺の目を、ジョースター卿はジッと見つめてくる。ジョジョとよく似た綺麗な瞳が、俺の視線を受け止めた。
「あの、ジョースター卿?」
何故だかジョースター卿は、ハテナマークでも浮かべてそうな怪訝な顔で、俺の事を見つめていた。
ヤベッ、何か失礼な事しちゃったか!?とりあえず謝っとく!?全裸土下座までなら全然やれるが、
『キミは、本当にディオ・ブランドー君なのかい?』
「いいいいいいいい!?」
え、まさか転生の事がバレた!?何で!?
慌ててジョジョの方を確認すると、彼は首をブンブンと横に振っている。どうやら、彼の口から伝わったわけではないらしい。
まあ、そりゃそうか。ジョジョは間違っても、人の秘密を勝手に喋るような奴じゃない。当然だ。
例え冗談でも、ジョジョがチクリ魔だなんて噂を流す不届き者がいたら、俺はソイツをぶん殴ってしまうかもしれない。
ってそんな事より、今この場をどうするべきだ!?
『いや、すまない。こんな事を聞くなんて、どうかしている。今の発言は撤回させてくれ。申し訳なかった!!』
「あ、いえ、その...」
その場で謝罪を口にするジョースター卿を、俺は慌てて押しとどめる。
バッチリ当たってるんだよな〜。
実際俺は転生者で、ディオ・ブランドーさんではない。いわば偽者のディオ・ブランドー、偽ディオなのだ。
いや凄っ、何で分かるんだよ!?ジョースター卿、人を見る目ありすぎない!?
「あの、それについてなんですが、」
どうしよう、彼にも転生の事を話すべきか?
優柔不断な俺は、再びジョジョの方を確認。すると彼は、かなり悩んだ後にゆっくりと首を横に振る。
まあ、いくらスーパー大聖人のジョースター卿でも、いきなりそんな事言われたら、大混乱だろうしな。
秘密をカミングアウトするのは、もう少し時間を置いてからでいいかも!
「やっぱ、何でもないです〜。ハハハハ〜。」
『..............』
ヤッベ、何か微妙な空気になっちゃった!気まずい!!
「ジョジョ、何か良い一発ギャグない?」
『え、この流れで!?絶対今じゃないと思うよ!?』
ええい、何でもいいんで話を変えよう!
「あ、あのインテリア、おしゃれですね〜!流石はジョースター卿!!」
俺が指をさしたのは、適当に目に入った石の仮面。
何故だか分からないが、視線が吸い寄せられたのだ。まるで何か大きな力に導かれるように。
まあ、気のせいだろうがな。
『ほお、その石仮面が気になるのかね?』
「あ、はい!めっちゃ気になります!!」
嘘です!全て嘘です!!
正直どうでもいいですあんなの!!
『ほぉ、試しに被ってみるかい?』
「あ、それは結構です。」
『ハハハッ、すまない。冗談だよ。』
正直、ボロいし、不気味だし、キモいし、何か臭いし、あんな石仮面の何がいいのかサッパリ分からない。
例え天地がひっくり返っても、被ろうなんて思う事はないだろうが、ジョースター邸にあるんだし、きっと高級品なんだろう!
多分!!!!!!!!!
「いや〜、きっとお高いんだろうな〜!!!」
『実はね。さほど価値がある物でもないんだよ。』
「い!?あ、た、たた確かに〜。」
ヤッベ、モノを見る目がない奴だと思われたかも!?
「た、たしかにあの仮面、何か、傷も多いし、えっと、独特の匂いがするし...」
『ソレはね。妻の写真代わりに、そこにかけてあるんだ。』
「あ......その、すいませんでした...マジでっ、すいませんでした...!!!」
やった。やっちまった。痛恨のミス過ぎる...
『気にしないでくれ。その石仮面は、メキシコの遺産から発見されたそうだ。ジョジョが生まれたばかりの頃、ロンドンの美術商から買ったんだよ。妻が気に入ってね。』
ジョースター卿は話をしながら、どこか遠くを見つめている。その目は少し寂しそうなものだった。
『そしてその帰りに、馬車の事故があってね。私が妻を喪ったのも、その時だ。』
「そうだったんですね...」
彼にとって石仮面は、亡き奥さまとの最後の思い出が詰まったものなんだろう。
それで、あんな風に目立つ場所に飾っているのか。奥さんとの幸せな日々が色褪せないように。
『そうそう、その馬車の事故があった時に出会ったのが、キミのお父さん。ダリオ・ブランドーなんだよ!』
「おお、そうでしたか...!」
父さん〜!!!
俺にとっての憧れであり、紳士としての理想像でもあるダリオ・ブランドー。やっぱりジョースター卿にとっても、彼は大きな人物なんだろうな〜。
なんだか、誇らしい気分だ!エッヘン!!
『...キミは、お父さんを尊敬しているんだね。』
父を懐かしんでニヤついていた俺に、ジョースター卿は声をかける。
「はい!父のように、命懸けで人を助けられるような、本当の紳士になる事!それが俺の夢なんです!!」
『......そうか。彼からは、“そう”聞いているんだね。』
一瞬、ジョースター卿の顔に迷いが浮かんだような、そんな気がした。
「???」
『いいや、何でもない。うん。ディオ君ならなれるさ、ダリオのような立派な紳士に!!』
「はい!ありがとうございます!!」
『そうだ、ディオくん。キミの部屋へ案内しよう。付いてきたまえ。』
気付けばジョースター卿の顔には、普段の穏やかな笑顔が戻っていた。
◆
ジョージ・ジョースターは知っていた。
ディオの父、ダリオ・ブランドーが、命懸けで人を助けるような高潔な人間ではない事を。
それでも、彼は嘘をついた。
父を尊敬する心の優しい青年の憧れを、自身の新しい家族の理想を、守る為に。
「そうだ、ジョースター卿!父の事をもっと教えてくれませんか!?」
『え!?あ、あーー、そうだな。えっと、彼はその、て、手先の器用な人で...』
「おお!他には?」
『他には!?え、えっと、そうだね.......あーーーーー』
そのせいでディオにせがまれ、存在しないエピソードを幾つも捻り出す羽目になったのは、また別の話だ。
◆
『ジョージ・ジョースター。やはりコイツは目障りだ。』
転生者である偽ディオ。その異常さを知る唯一の人間は、暗闇の中で悪態を吐く。
その正体は、この世界に転生を果たした悪の救世主だった。
『奴はいずれ、始末するとしよう。“前の世界”と同じように、この”DIO“の手でな。』