特別棟には噂がある
<山村side>
私には他の人が輝いて見えた。
勉強ができる、運動ができる、話が上手、リーダーの素質があるなど他人の輝いてる部分などがよく目に入った。
他人は輝いて見える。しかし、自分はどうだろうか?
勉強は人並みにはできるとは思うが、クラスで一番などでは決してない。ましてや私の所属するのはこの学校のAクラスという一番頭が良いであろうクラス。私の頭の良さなど特段目立つところではない。
運動は全然できない。クラスどころか学年でも最下位かもしれない。
誰かと話してその人を楽しませたり、人を率いたりするのなんて絶対無理だ。そもそも私は存在感が薄く、よく無視される。
誰も私を気にしてなんかいない。私は影のような存在だ。
きっと今までと変わらないこの学校でも光に照らされることなく孤独に寂しく誰にも記憶されないまま過ごすとそう思っていた。
でも違った。
当たり前のように彼はそう言ってみせた。
その一言がどれだけ嬉しかったか……その一言にどれだけ救われたか………
私はこの瞬間を一生忘れることはない、そう断言できる。
だって私が生まれて初めて
その瞬間なのだから………
<落合side>
中間テストも無事に終わり放課後、俺はししょーと一緒に特別棟に来ていた。
何やらここに変な噂があるとか。
「最近この辺りで髪の長い女性の幽霊を見たとか噂があるようです」
「なるほど幽霊が出るのか」
幽霊なんて実際に見たことなどは一度もない。
俺の死ぬまでに会ってみたいものランキング上位である。
一位はサンタさんだ。
「弟子一号は幽霊を信じてますか?」
「俺は信じている。存在するほうが面白そうだからな」
「そうですか、私も同じ意見です」
そうして歩いていた俺たちだったが、俺は立ち止まる。
「どうかしましたか?」
「後ろから視線を感じる、誰かに見られているかも」
「なるほどなら、善は急げといいます」
「「捕まえよう(ましょう)」」
俺たちは同時に動く。
俺は視線の感じた方向に全力で移動して視線の主の背後に回る。
「え、ちょっ、え!?」
俺に驚いたのか、視線の主は前方へ逃走する。女性の声だった、もしかして噂の幽霊か?
しかし逃げた先には大きな虫取網を持ったししょー。どこから持ってきたのかしらないがその網を振りかぶる。
「確保ー」
ししょーの網に何が起きたのかわからず、目を回している制服を着た長い髪の少女。
「ししょー、足がある。幽霊じゃないぞ」
「ゆ、幽霊!?」
捕まっている少女からとても驚いた声が発せられる。
「断定するにはまだ早いです。世の中には足が生えている幽霊もいます。例えば髪が長くて白い服をきているやつとか」*1
なるほどそうなのか
「でも、制服着てるぞ」
「あ、本当ですね。じゃあなんでしょうか?」
「と、とりあえずこの網をなんとかしてください!!」
網を外して俺たちは少女と向かい合った。
「それで君は幽霊じゃないとして誰なんだ?」
「私は………や、
なるほど、幽霊じゃなかったのか………
ん?
「私たちを知っているのですね」
「は、はい。落合さんと森下さんですよね。お、お二人は有名ですし………それに森下さんは同じクラスですよ」
なるほど俺とししょーは有名になっているらしい。
「山村美紀………あぁ、思い出しました」
ししょーが何かを考えるように呟いた。思い出したと言葉を聞いたとき山村は驚いたような顔をしていた。
「自己紹介のときブレイクダンスをしていた」
「それ絶対私じゃないです!」
<山村side>
放課後私は、特別棟に来ていた。理由なんてない、たまたま足を運んだだけ。
しばらく歩いていると変わった男女二人組を見つけた。
大きな網を持ちながら歩く女子生徒とその隣を歩く男子生徒。
どういうこと!?
その二人の生徒は一年生の中でも変り者で有名になっている。
女子生徒は森下藍さん。私と同じクラスの人だ。今のAクラスはクラス内で2つの派閥が別れている。その中で森下さんは
ばいならと言い残し教室を去っていた。そのときは両派閥のリーダーである坂柳さんや葛城くんまでもすごい顔をしていた。
そんな個性的である彼女とはクラスの誰も話そうとはしないし、Aクラス内でも浮いてるそんな個性的な人だ。
男子生徒の方は落合天嶺さん。一年生のDクラスの人だが学年、学校中の噂になるくらい有名だ。
水泳で世界記録レベルを出したとか。
テストはオール100点だとか。
人を殺せるオーラを放っているとか。
学園長の銅像を探して、購入しようとしているとか。
三年生を恐喝していたところ勇者橘茜に退治された魔王だとか。
実は未来からきたサイボーグであり、ショットガンを片手で撃ち、最終的には溶鉱炉に親指をたてながら沈んでいったとか
とんでもない噂が飛び交っている話題の尽きない人物だ。
そんな二人を見つけてしまい、気になって追ってみたら気づかれてしまった。
自慢とは言いたくはないが、私は気配が薄く、隠れていたら存在を気づかれることなんてほとんどない。
そんな私の視線を気づくなんて………噂通りのすごい、私とは住む世界が違う人なんだなと思った。
………まぁ、そんな二人に私は捕まってしまったのだけど。
「さて山村美紀。あなたはなぜ私たちを追って………いや言わなくてもわかりました」
森下さんが話を始めた。
その、私………言う素振りすら見せてないんですけど?
「仲間になりたかったけど声をかけられなかったのでしょう。もう大丈夫です」
え?
「なんだ、仲間になりたかっのか。歓迎するぞ山村」
ええええええええぇぇ!?
こうして私はこの二人と一緒に行動することになりました。
「山村美紀、ちゃんと撮れてますか?」
「は、はい」
………撮影係として
断るに断れなかったです。落合さんも森下さんも表情が変わらないから少し怖いです。
「そういえばししょーは
「そうですね………私はミルクレープの方が出てきてほしいです」
何の話をしてるんだろう?
「なるほど。山村、君はどう思う?」
「え、えっと……私ですか?」
「ここに山村は君しかいないぞ」
何を言ってるんだという風に落合さんが私に問いかけた。何を言ってるんだはこっちが言いたいです。
森下さんも私がなんと答えるか気になるようで私をじっくりと見てくる。
「………その、衛生的に危ないと思います。棚がどんな状態かわからないですし、そもそも牡丹餅ってあんこともち米ですから保管場所としてはもっと別の場所があるのではと思います」
私は思っていたことを答える。
私の意見に驚いたのか二人は少し目を見開いていた。
「確かにそうだな。いい意見だ、こたえてくれてありがとう」
「そうですね。山村美紀、あなたなかなかやりますね」
「………ありがとうございます?」
思っていたことを言っただけなのに何故か感謝をされたし、認められた?
というかこの二人………特に落合さんだが、噂に聞く魔王のような感じがしない。それどころか会話の内容は変だが、普通に話しやすいと感じました。
………そういえばいつぶりだろう
こんな風に人と話したのは………
「ん、何かの気配。しかも複数」
急に落合さんが何かを感じ取ったのか声をあげる。
「今度こそ幽霊かもしれません。行きますよ、弟子一号、山村美紀」
「あぁ」
「え、ちょっと待ってください」
落合さんと森下さんの二人がどこかへと走る。私は端末のカメラを構えながら急いで二人を追いかけるのだった。
二人になんとかして追い付いたが、二人は物陰で隠れながら様子を伺っているようだった。
………森下さんの持っている網があちらからみるとはみ出している気がしますけど
「どうしたんですか?」
落合さんが何も言わずに指をさす。そこには4人の男子生徒が揉めているようでした
「幽霊ですかね、あれ?」
「流石に違うと思いますよ!?」
「あぁ、あの赤色の髪の男子はうちのクラスの須藤だ。他は……多分Cクラスの生徒だな。Cクラスの教室で見たことがある」
見た限りだと、Cクラスの生徒が何かを言い寄っているように見えます。
するとそれに痺れを切らしたのか、須藤という生徒が一人の胸倉を掴み、殴りかかるような体勢になった。
私はこれから起きるであろう光景を創造し、思わず目を瞑ってしまう。
しかしいつまで経ってもまるで時が止まったような静寂、何も聞こえてこなかった。
一体何が起きたのだろうかと目を開こうとしたとき
「そこまでだ」
声量がそこまであるわけではない。しかしその場の空気を一瞬で変えるような強い声が離れたところから聞こえた。
目を開く、そしたらもっと衝撃的な光景が広がっていた。
須藤さんの拳は
「これ以上は見過ごすわけにはいかない」
これが………噂の魔王のようなオーラなのだろう。私はさっきまでとは別人な落合さんに恐怖を感じていた。
「山村美紀」
森下さんなら声をかけられる。
「これなら何が起きようとカメラを止めないでください」
<落合side>
「なっ、落合!?」
俺は須藤の拳を慌てて受け止めた。
「須藤、原因はよくわからんが暴力はよくない」
「う、うるせぇてめぇには関係ないだろ」
俺は須藤の拳を受け止めながら、殴られそうになった生徒たちのほうをみる。
「おい、石崎どうすんだよ?このままだと」
「わかってる。おい、テメェどういうつもり「そこまでです」」
急に大きな声が聞こえてくる。大声を出してるのはししょーか。
「あなたたちの行動は録画させてもらっています………山村美紀が」
「え?」
「それがわかったならおとなしく暴力なんてせず弟子一号を解放することです」
「おい、石崎!?」
「やべぇよ」
「ちっ、一旦引くぞ」
カメラの存在をししょーがアピールしているとCクラス生徒たちが
狼狽えてどっかに行った。
なぜ君たちが?暴力しようとしたのは須藤では?
「チッ、何がなんなんだよ」
舌打ちして須藤もどっか歩いて行った。
俺もよくわからん
「危なかったですね弟子一号。私の助けがなければ今頃大変なことになっていたでしょう」
「そうなのか」
「えぇ、なので私を労い、褒め称える権利を差し上げます」
「流石ししょーだな」
えっへんといいながらししょーは胸を張った。
「えぇっと………その、大丈夫ですか?」
「ん、なんのことだ?」
山村に心配されるが一体なんのことだろうか?
「その、結構勢いのある拳を受け止めていましたよね?」
なるほど
「あぁ、大丈夫だ。頑丈さには自信がある」
「そ、そうなんですね」
心配してくれるとは山村は優しいな。
<山村side>
あれから数分後、私たちはまたしばらく幽霊を捜索していました。あんなことがあったのにお二人はすごいと思いました。
「気のせいだったか?」
「何がですか?」
落合さんが言っていたことが気になり私は思いきって聞いてみた。
「実はさっきの須藤たち以外にもう一人別の人間の気配を感じたんだが………気のせいだったのか?」
「あそこにもう一人いたと?私は見てませんね。山村美紀あなたは見ましたか?」
「い、いえ、私も見てないです」
あそこにもう一人いたのかな?そしたらそれって
「もしかしたら幽霊かもしれないな」
「ゆ、幽霊ですか!?」
まさか本当にいるなんててっきりこの二人の冗談か何かかと。
「まぁ、結局居なかったから真相は闇の中か」
「そうですね、帰りましょうか。弟子一号、私は美味しいお店を所望します」
「なら蕎麦屋はどうだ?最近見つけた、かき揚げがうまかった」
「ではそこへ行きますよ。蕎麦が私を待っています」
そうして森下さんが走り出した。
「山村、俺たちも急ぐぞ」
「え、私もですか?」
「ん、もしかして蕎麦嫌いなのか?」
「いえ、そういうわけでは………」
「ならいいだろう、そんな高い店じゃないし奢るぞ」
「そ、そんな悪いです」
「気にすることじゃないそれに………ってまずい山村、話しは後だ急ぐぞ」
そうして落合さんが私の手を引いて走る。
「え、ちょっ!?」
「すまない、しかしししょーとはぐれてしまう」
「はぐれるって向かう場所は同じですよね?」
「走り出したがししょーは店の場所知らない」
じゃあ何であの人は走り出したのだろうか?
結局森下さんとはそんなに離れてない距離にいて、合流して私たちは蕎麦屋へと向かった。
蕎麦は本当に美味しかったし、誰かと一緒にご飯するのは久しぶりだった。だからか、いつものご飯より少しおいしく感じた、
「結局奢ってもらっちゃった」
部屋に帰ってきて私は思わず呟いた。あれからいつの間にか落合くんか支払いをすませてそのまま帰ってきた。
彼はDクラスなのにポイントは大丈夫なのかと思ったけれど、気にしなくていいとそのまま押しきられてしまった。
私は今日1日を振り返った。
たった数時間の出来事だけど、落合さんと森下さんと過ごした時間は私にすごい衝撃をあたえた。
「少し怖かったけど、噂通りの人じゃなかったな」
魔王みたいなオーラは感じたけど、それはそれとしてとても優しい人であったと感じた。
「そういえば……」
私は端末を取り出し、録画した映像を見てみる。
それを見て改めてとんでもない1日だったなと実感した。
「え?」
私は映像の最後の方を見て驚いた。
そこには
最大のネタバレをします。特別棟に幽霊なんていませんし、番外編以外に幽霊なんて出てきません。だってそういう作品じゃねぇもん。じゃあ誰やねんって話ですが、誰でしょうね?あと本当に落合くんたちは何してんのかな?須藤イベントもキャンセルになっちゃった。こらからどうなるのかまた次回お会いしましょう