王の名はサガ   作:1年5ミリ

5 / 5

2作目ばかり投稿していて本当に申し訳ない...

どうも、すんげーお久しぶりの1年5ミリです。
数ヶ月ぶりの王サガ、多分みんな存在忘れてたんじゃないかな(白目)

何ならがめつい番宣のおかげで、
別作品の『推しを喰らうのを必死で止めたい』からきた人もいますよね。

まぁそれも2ヶ月間更新できていないんですが…

どうしてこんな頻度クソのろになったのかは、私にも分からん(きっぱり)
文化祭で夏休み食われまくったのが唯一明白な理由ですね。
おのれ文化祭準備ぃ!我魂魄百万回生まれ変わろうと、恨みはら(ry

とりえずグダる前に、どうぞ久しぶりの『王の名はサガ』をお楽しみください!





第5楽章 不明のイレギュラー:王との邂逅

「何、これ...?私、どうなっちゃってるの!?」

 

それはまさしく、一瞬の出来事。

瞬く光は、1人の少女を"変身"させた。

周りの光景、状況などは、何一つ変わっていない。

だが響だけは、その摩訶不思議な格好に身を包んでいた。

一体先ほどまで着ていたリディアンの制服の面影はどこへ行ったのか。

傍から見れば、変態趣味のコスプレとも捉えかけられない。

 

「お姉ちゃん、かっこいい!」

 

一方の女の子は、歓声を上げながら鎧にスマートな格好となった響に目を奪われていた。

こんな状況でも見とれられているというのは、実に不思議である。

 

「え、うん。」

 

今一度冷静になれない響は、そんなことしか言うことが出来ない。

しかしすぐさま、自分たちはノイズの目の前にいたということを思い出した。

さらには数体のノイズが、自分たちへと迫ってきている。

 

「ッ!危な...」

 

それはいつものおせっかいか、はたまた見知らぬ姿に抱いた謎の安心か。

響は咄嗟に女の子を抱きしめて、庇うようにしてノイズへと背を向けた。

...が。

いつまで経っても、ノイズに触れられたような感触は来ない。

 

「...?」

 

不思議に思った響が振り向くとそこには―――

 

『#%!*』=)%#』

 

「え?」

 

上空から垂れている赤く細い棒のようなものに貫かれ、

炭素の塊へと化してゆくノイズがいた。

 

「何をしている。」

 

続けざまに、その背後から確かに男の声がした。

 

「ひゃっ…!?」

 

思わず小さな悲鳴を上げる響。

そして振り向いた先には―――

全身を白い鎧に覆われ、青い蛇のような目でこちらを見つめる怪物が居た。

 

「ひえぇぇぇっ!?」

 

その姿を見るや否や、さらに悲鳴が大きくなる。

右手には、何かの柄のようなもの。

しかも先端から、赤い縄のようなものが伸びていた。

 

「まさか...」

 

赤い縄に心当たりがあった響は、急いで先ほどのノイズの方を向く。

そこには、あの赤い縄が近くのアンテナを支えにし、ノイズを貫いて吊り下げていた。

 

「嘘…」

 

響には、今すぐにこな状況を飲み込むことなどできなかった。

自分は何か幻想でも見せられているんじゃないか...そんな気がして。

その間に赤い縄が縮み、まるでサーベルの刃のような形に変わっていることも気づかずに。

 

「何を怯えているんだ。」

 

だが怪物は響のことを気にも留めず、その横を歩いてゆく。

その真正面に居たのは...ノイズ。

 

「ちょ、ちょっと何してるんですか!?死んじゃいますよ!」

 

大慌てで怪物を引き留めようとする響。

触れれば即死。それぐらい分かっているはずなのに。

先ほどのはありえない偶然。そう自分に言い聞かせて怪物を引き留めるので響は精一杯だった。

すると、それは黙って響の方へと振り向く。

 

「何を言ってるんだ?お前だってその姿になっているのなら、

 俺のことぐらい知っているだろう?」

 

怪物は、響に意味不明な返答をした。

そしてすぐさま、ノイズの方へと視線を移す。

 

「とっととここから飛び降りろ。

 この屑どもを片付けるのは俺一人で十分だ。」

 

「と、飛び降りるぅ!?」

 

怪物の言葉に仰天する響。

そんな反応を見て怪物は、少しだけ首を傾げた。

 

「お前..."あの組織"の人間じゃないのか?」

 

「え?」

 

だが響がそこで呟いた瞬間、ノイズが怪物へと突っ込んでくる。

 

「ッ!?あぶなっ...」

 

響は急いで、怪物へと手を差し伸べようとする。

しかし、そんな必要は全く無かった。

 

怪物が背後のノイズを見もせずに、握っていた剣で切り裂いたからだ。

 

「ッ!?…」

 

もう驚く必要はない。

夢だと思っていたものは現実だった。

不可能は、今目の前で可能に塗り替えられた。

 

本来ノイズには、物理的な攻撃なんて効かないはず。

それなのに、この怪物はさも当たり前の如くノイズを『殺して』見せたのだ。

 

いや、もはや怪物というより―――

 

響には、1人異形に立ち向かうその背中はまさしく『戦士』言うに相応しく見えた。

 

「おじさん、すごーい!」

 

相変わらず女の子の方は、能天気にかっこいいとばかり言っているのだが。

 

「聞えなかったのか。その子供を連れてここから飛び降りろ。

 あとおじさん呼びは無しだ。」

 

だがそんな響の内心など知らず、

怪物は鬱陶しいと言うかのように響に語り掛ける。

 

「で、でも...」

 

困り果てた響は、自分の後ろを振り返る。

何せ今自分たちが居るのは、何十メートルもある高さの建物の屋上。

ここから飛び降りるなど、無謀な勇気でもない限りできない。

無尽蔵の人助け精神を持っている彼女でも、そんなものは持ち合わせていなかった。

 

「あと、念のため歌は歌っておけ。

 人間に勝手に死なれてもらうのはこっちにとっても迷惑だからな。」

 

「え?今なんて...」

 

そう言って怪物は一方的な要求だけを響によこすと、1人ノイズの群れへと向かっていった。

 

「そ、そんな事いきなり言われても...」

 

結局怪物との会話についていくこともできずに、取り残されてしまった響。

すると、呆然と立ちすくんでいた彼女の耳にある声が響いた。

 

「おねぇちゃん、ここからどうするの?」

 

そう尋ねてくるのは、今もその手を繋ぐ女の子。

 

―――そうだ。

 

思わず忘れていた。自分には今もこうして守らなければならない人が居ると。

ゆっくりと女の子を見下ろし、彼女の顔を除く。

その瞳には、先ほどの曇った不安は無い。

むしろ、少し光を取り戻していた。

少女と怪物、2人の輝かしい姿を見て。

 

「...ッ!」

 

そんな女の子を見て、ついに響も決心がつく。

 

―――生きるのを諦めるな!

 

あの言葉を、忘れはしない。

 

 

そして気が付けば、彼女は歌いだしていた。

 

 

絶対に... 離さないこの繋いだ手だけは

 

 

まずはしっかりと、女の子の手を握る。

幸いにも、響たちの前に立ちふさがるノイズたちは全てあの怪物に気を取られていた。

 

こんなにほら(あった)かいんだ ヒトの作る温もりは

 

その上で視線を女の子に合わせ、優しく包み込むように抱きしめる。

 

「はぁッ!」

 

握りしめた剣を振るい、ノイズを切り倒してゆく怪物。

その背中を少し見つめた後、響は深く頭を下げる。

 

難しい言葉なんて いらないよ

 

そして背を向けると一呼吸置き、言われたとおりにビルから飛び降りた。

 

今分かる 共鳴するbrave min...うわぁッ!?」

 

しかし予想を超える勢いでジャンプした影響で、少し姿勢が崩れていまう。

更にはそのまま、重力に引きずられるかのように垂直に落ちていった。

だが次に地面がひび割れ、轟音が鳴り渡った後に居たのは、無傷で佇む響。

 

...っむぎあいたい魂 100万の気持ち...さぁ ぶっ飛べこのエナジーよ

 

しかしそれに釣られるようにして、ビルの屋上に居たノイズたちも次々と飛び降りてゆく。

 

「しまった...!」

 

一方で思わずそんな声を漏らす怪物も、残った個体をムチ状にした剣先で全てなぎ倒すと、

その後を追っていったのだった。

 

 

 

 

 

解放全開!イっちゃえHeartのゼンブで

 

上からの奇襲に間一髪気づき、なんとかノイズの体当たりを躱す響。

ただし避けたとはいっても、それは攻撃が少し逸れて吹き飛ばされたもの。

その余波で地面に叩きつけられたせいで、立ち上がろうとすると是が嫌でもふらついてしまう。

 

進む事以外 答えなんてあるわけがない

 

しかしその隙を逃すノイズではない。

続け様にいくつかの個体が自身を液体のように変え、響に突っ込んでくる。

 

「ッ!」

 

何とか身を翻して避けたものの、その余波で更に吹き飛ばされる2人。

更にその先には、巨大な煙突が。

しかし響の方は変わらず女の子を抱き抱えたままのために、身を挺してぶつからざるを得ない。

等身大以上の亀裂を生み、煙突に半分ほど食い込む響。

更にはその横を振り向くと、そこには煙突と同じ程の大きさの人型ノイズまで佇んでいた。

 

見つけたんだよ 心の帰る場所

 

そうして間髪入れずに、ノイズが腕を横に振ろうとしたその時―――

 

赤い斬撃が、ゆっくりと落下する響の前に降り注いだ。

 

瞬く間に、巨大ノイズの体が炭となり崩れ去る。

 

Yes届け! 全身全霊この想いよ

 

瞬間、響は斬撃を放った正体を見た。

青い瞳に白い装飾の、先ほどの怪物である。

 

(助けて、くれた...?)

 

響け! 胸の鼓動! 未来の先へ...

 

そう思考を巡らせるのも束の間、怪物の後ろ姿を見届け、再び響の足が地につく。

同時に、その怪物も響の真正面へと立つ。

 

「あ、あの!」

 

まず声を上げたのは、響の方だった。

しかし怪物は...

 

「後ろ、来るぞ。」

 

「え?」

 

振り向きざまに、槍のような姿に変わったノイズがぶつかってくる。

そしてそれを、響は咄嗟に腕で防ぎ、()()()()()()()

 

「え?」

 

再びそんな声を思わず漏らす。

呆然と立ちすくむ響は、今さっきノイズを倒した自分の腕を見つめる。

自分も女の子も、全くと言っていいほど無事だ。

なのに今のはなんだ。

 

―――私が倒した?

 

そんな考えが、響の頭の中に浮かぶ。

 

「見ただろう。それが『シンフォギア』の力だ。」

 

するとその後ろから、怪物が語りかけてきた。

 

「シンフォギア…?」

 

唖然としたままに、響は視線を怪物の方向へ戻し尋ねる。

 

「...その感じなら、本当か。」

 

「本当って、何がですか?」

 

はぁ...と面倒くさがるように怪物が手を顔に当て、静寂が訪れること数秒。

 

「一からの説明は手間取るな。まぁいい、これが終わったら...」

 

そしてようやく話し出したと思った矢先、再び怪物の話は止まった。

響の背後を黙って見上げて。

また響も、後ろを振り返る。

そこには、先ほどと同じような巨大なノイズが、数匹の小型を連れて立っていた。

 

「あ...」

 

「チッ、おい退け!」

 

舌打ち混じりに叫んだ怪物が、響を押し除けてノイズへと向かう。

その直後、怪物の握っていた剣先が鞭状に変化し巨大型へと突き刺さる...はずだった。

 

怪物の真横から、一台の"バイク"が飛び出すまでは。

 

その搭乗者(ライダー)の顔を、響は目にする。

 

「あれって...」

 

ヘルメットも被らずにその美しい髪を靡かせ、バイクをノイズへ突撃させるその女性。

 

その名前を忘れるわけがない。何なら、"今日も会っている"。

 

それこそまさに―――

 

 

「翼さん?」

 

 

バイクの爆風と共に、翼の体が空へと吹き飛ぶ。

 

 

Imyuteus amenohabakiri tron

 

 

そして、歌が聞こえた。

 

 

国民的人気アイドル『風鳴翼』の体が、一瞬にして光の球体へと包まれる。

それはまさに、響から溢れ出たあの光と瓜二つ。

 

「あれって...」

 

少女の心の中に再び浮かぶ、遠いようで近しい記憶。

自分を救ってくれた人の横で立っていた、あの時の姿。

そうして光の球が弾けた瞬間、翼は“変身“していた。

 

まさしく、響と同じシンフォギアと呼ばれるものに。

その手に掴まれていたのは、刀。

響はまだ知らない。このギアの『天羽々斬(アメノハバキリ)』の名を。

 

空中で身を翻し、翼が響の前、そして怪物の少し斜め後ろへと降り立つ。

 

「あ...」

 

「呆けない、死ぬわよ。」

 

「えっ?」

 

言葉を続けようとした響に対して、翼は冷淡に返す。

その台詞はどこか薄情で、今まで響が聞いたこともないような“風鳴翼“の声だった。

 

そう響に返したのも束の間、翼は前へと歩み、怪物の横へと立つ。

 

「今日はいつも通りのように口うるさくないようだな。

 どうした?他人の前では強情な姿を見せたくないのか?」

 

すると、翼へ目配りをすることもなく、怪物が独り言のようにそう言った。

 

「...!」

 

それに対して翼は一瞬、怪物の方を睨みつける。

だがそんなのお構いなしにと、怪物は話を続けた。

 

「お前たちはいつも通り人命救助だけしていればいい。

 ノイズは全員俺が殺す。手出しは無用だ。」

 

「ッ!...そんな道理が、通ると思うか!?」

 

歯ぎしりしたかと思うと、今度こそ本当に怪物の方を向き、翼が叫ぶ。

 

「通させる。俺には王としての資格があるんだからな。」

 

その言葉と同時に、怪物が跳び上がった。

行く先は、巨大ノイズを飛び越えその奥に備えるノイズの群れ。

 

「待て!『サガ』!」

 

夜の工場に、翼の焦張り詰めた声が響く。

 

「その子を守ってて!」

 

そうして最後に響にそう言い残すと、

翼もまたサガと呼んだ怪物の方を追うように、巨大個体の頭上を越して跳び立っていった。

 

(サガ。今翼さんが言ってたのが...それに翼さん、やっぱり...)

 

翼に引きつられるように、

女の子を抱きしめ、響は再び取り残された。

浮かぶ怪物の顔、そしてサガという名。

その姿に、響はどこか懐かしさを感じて―――

 

 

その夜、少女は目にしたのだ。

一度も目にしたこともなかった 憧れ(風鳴翼)の姿を。

ひたすらにノイズを『殺す』と言ったサガの背中を。

これらが近い未来、自分を一体どんな運命へと導くのか、この時の彼女は知る由もなかった。

 

 

その遥か遠くの背後、工場の()()()()()()()()()()が居たことにも。

 

 

 

 

 

港沿いに広がる工場地帯に、2つの影が跳ぶ。

1つは、怪物『サガ』。

もう1つは、『シンフォギア装者』風鳴翼。

2人は、共に同じ向きを見ている。

自分達の敵、ノイズを。

されども、片方はもう1つの影を追う。

 

「止まれ!聞こえないのか!」

 

赤い洋剣のような刃先を振るうその姿を見つめ、翼が叫ぶ。

しかし、サガは振り向きもしない。

 

(眼中にないということか...)

 

2人の状況はまさに並行の位置。

正面のノイズを各々蹴散らしていきながら、

サガと一定数の距離を保ち、翼は並び進んでいる。

 

狙い通り、立花響を狙っていた巨大ノイズはこちらに誘導できた。

彼女の身の安全は約束されたと言っていいだろう。

本当ならば、そこから聞きたいことが山程あったのだが...

まず今はこの大群をどうにかして、なんとかサガを―――

 

そこまで思考を巡らしたところで、翼はある気配に気づく。

 

(殺気!...ではないが...)

 

殺気を持つのは感情を持つもの。だがそれがないということは...

直後、後ろから降りかかるハンマーのような一撃。

その犯人は何を言おう、あの巨大ノイズ。

てっきり攻撃範囲からは最低限外れていたと思っていたが、

考え事をしている内に追いつかれていたらしい。

 

「......」

 

しかし奇襲をかけられようが、彼女は動揺など露わにしない。

それどころか、翼は突如大群を前に急ブレーキをかけいきなり飛び上がった。

一回転するように宙を舞い、その身体が巨大ノイズの頭長を越す。

 

―――そしてまた彼女も、歌を歌いだした。

 

去りなさい! 無想に猛る炎

 

もしこのノイズに『感情』があれば、きっと"唖然"としていたであろう。

 

そこで、翼の握る(つるぎ)にある変化が起きた。

 

神楽の風に 滅し散華せよ

 

刀身が動き出し、蒼い光とともになんと巨大化してゆく。

そのサイズは、翼の身長を裕に越すほどまでに。

最早大剣。普通の人間なら振るうどころか持つことさえままならない。

 

しかしそれを、翼は夜空の下で思い切り振り下ろした。

 

【蒼ノ一閃】

 

大いなる刃から放たれる、蒼い光の斬撃。

それは瞬く間に巨大ノイズに直撃し...

 

その巨体を、真っ二つに切ってみせた。

 

嗚呼絆に 全てを賭した閃光の剣よ

 

刹那、爆発が辺りを一面を照らし出す。

 

次に、翼の体が重力に引かれ落下を始めた。

そこで、彼女は2つ目の『技』に出る。

 

手足を大の字に広げると同時に、突然と周囲に発生する無数の光の刃。

更にはそれを、翼は地面に"落とした"。まるで、涙のように。

 

【千ノ落涙】

 

四の五の言わずに 否、

 

その先に待つのは、依然として残っているノイズの群れ。

そして、サガ。

 

「正気か...!?」

 

世の飛沫と果てよ

 

翼の意図を察し、サガが急いで逃れようと駆け出す。

しかし、それこそが翼の狙いだった。

 

「背中を見せたな!」

 

「ッ...!」

 

足の鎧が一瞬にしてブースターのようになり翼を加速させ、間合いを詰める。

 

直後、先程の技がノイズに直撃し、1匹残らず粉砕した。

それの引き起こした衝撃により、サガの姿勢が崩れる。

 

「しまっ...」

 

更には立て続けに、翼の斬撃がその背中へ。

 

「ぐぅッ...!」

 

鎧が火花を散らし、サガを吹き飛ばす。

だが、その吹き飛ばした先が悪かった。

 

そこはまさしく、サガが響と別れ、その彼女が今もいる場所。

 

「大丈夫だよ。ママは絶対来てくれるからね~。」

 

何なら、女の子を下ろしなだめるようにその頭を撫でている響が真正面にいた。

 

「...よし。」

 

吹き飛ばされ墜落したサガの体が、地面を転がる。

しかしそれを逆に利用し、流れるようにサガは転がり着いた先の響の首元を掴んだ。

 

「少し手荒い真似に出させてもらうぞ。」

 

「...ふぇ?」

 

「しまった!」

 

翼が気づいたときにはもう遅い。

響を捕まえた直後、すぐさまサガは体勢を立て直し、彼女を連れて狭い工場の通路へと跳んだ。

 

「おねぇちゃん!」

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

宙を舞う中、響が叫びジタバタしたせいで、少し着地が崩れる。

しかしそれでも、サガはすぐさま女の子の前に立つ翼の方へ向き直り、

響の首に剣を突きつけた。

 

「え?...」

 

「何!?」

 

武器の『ジャコーダー』の刃をみた瞬間、響の顔が青ざめる。

同じように、翼も動きを止めた。

 

「珍しくやってくれたようだが、悪いな。

 何度も言ったと思うが、お前達の要求を呑むつもりは無い。

 そろそろ鬱陶しくなってきてな。

 これ以上俺に付き纏うのは止めろ。さもなければ...分かるな?」

 

まるで立て篭もりの強盗犯のような台詞を吐くと、

サガはチャカリ...と、ジャコーダーを響の首にさらに近づける。

 

「ッ!...分かった。どうすればいい?」

 

それを受け、悔しさで少し顔を歪ませながらも翼は構えていた刀を下ろした。

 

「このまま俺を見逃すこと。そうすればこいつ...『立花響』には何もしない。」

 

開放の条件を言い渡したサガの言葉に、響は真っ先に反応する。

 

「え?なんで...私の名前を?」

 

しかし、その尋ねにサガは答えようとはしない。

いやむしろ、耳を傾けてすらいないようだった。

 

「武器をその場に落とせ。いいな?」

 

言われるがままに、翼が刀を地面に置く。

それに遅れて、サガもすぐさま響を離した。

 

「わっ!」

 

支えがなくなり、響の体がふらっと前に出る。

 

 

―――そこで、サガが何かに気づいた。

 

 

「...!」

 

直後、"銃声"が工場地帯に轟く。

 

「ひゃっ!?」

 

突然の音に身を震わせる響。

何が起こったのか直ぐに理解できず、目を見開く翼。

 

そして―――どこからともなく飛んできた銃弾をムチで捕らえたサガ。

 

ムチに巻き付いた弾丸の先は...響の背後。

もし今ので止められなかったなら、間違いなく直撃していた弾道だった。

 

「サガさん、もしかして...」

 

自分を庇ったように見えたその姿を、響は見つめる。

そうして三者三様の反応を見せる中、サガは1人後ろをを振り向いた。

そこで一瞬、見えたのだ。

 

ある工場の通路で、どこかへ逃げ去る人影の姿を。

 

「あれは...」

 

そして立て続けに、響く車のブレーキ音。

音のする方向を見れば、そこには翼のすぐ近くに停まりだすいくつかの黒い自動と、

そこから出てくる黒いスーツにサングラスを掛けたの男たちが居た。

 

「大丈夫ですか!?」

 

ずらずらとサガを囲うように並びだすそのうちの1人が、翼に呼びかける。

 

「...来たか。」

 

「え?ええっ!?何あれ!」

 

男たちを見たサガが呟き、響は困惑の声を上げる。

するとサガは突然、今度は響を通路から押し出した。

 

「うわあっ!」

 

そのまま響の体が、翼のすぐ前へと落下する。

 

(今だ...!)

 

だが、それを翼は悠々と見過ごせなかった。

すぐさま懐から小さな刀を取り出し、人質の居なくなったサガへと投げつける。

【影縫い】。当たっていれば確かに、その技はサガの動きを確実に止めていた。

だが既のところで、サガは飛び上がってそれを避ける。

 

「チイッ!」

 

見事な素早い回避に、思わず翼は舌打ちした。

ジャンプしたサガの体が、瞬く間に工場の煙突の頂上付近まで飛ぶ。

そして、そこから落下しだしたところで、月光に照らされたその影は工場の裏に消えた。

 

落胆するように、翼の肩の力が抜ける。

すると同時に、彼女の体が光り変身が解除された。

シンフォギア(?)が消え、いつもの制服に身を通した風鳴翼へと姿が戻る。

 

(やっぱり、そうだ。)

 

それを見届けあることを確信しながらも、響はあのサガが逃げた方向を見つめるのだった。

 

 

 

「あったかいもの、どうぞ。」

 

「あ、あったかいものどうも。」

 

少し立った後、響は何かの制服のようなもの着た女性に飲み物を渡される。

戦場となった工場は、気がつけばいつの間にか何人もの人で溢れかえっていた。

ヘリが空を飛び、幾つもの救急車が停まり、ノイズだった炭を片付ける業者のような人まで。

そのどれも、普段彼女が目にしたこともないような人達ばかりだった。

もちろん、目の前のこの女性もそうだが。

 

「ふぅ...」

 

そうして一息つこうとしたところで、彼女の体に異変が起きる。

なんと彼女の意思に反して、勝手にシンフォギアが光り始めたのだ。

 

「えぇ...わっ!」

 

その瞬間、コップが落ち、彼女の体が元のリディアンの制服を着た姿に戻る。

さらには、その勢いで響が倒れそうになった...のを、背後から誰かが受け止めた。

 

「あ、あぁ..ありがとうございま...」

 

すぐさま姿勢を整えて振り向き、響は相手に深くお辞儀をする。

しかしその途中で顔を見上げたことによって、その相手が風鳴翼だったことに気づいた。

 

「ありがとうございます!」

 

感謝の言葉が、先程よりもさらに大きくなる。

そうしてすぐ背を向いた翼に、響はさらに呼びかける。

 

「実は...これで翼さんに助けてもらうの、2回目なんです!」

 

その台詞が、寡黙になっていた翼を引き留めた。

 

「2回目...?」

 

「にひひ...」

 

右手で2の数を示して、満面の笑みを浮かべる響。

だがその時、ある声が彼女の注意を引き付けた。

 

「ママ!」

 

振り向いた先の声の主は、まさしくあの女の子。

 

「良かった!無事だったのね...!」

 

そして、その女の子を抱き止める母親。

ここまでは感動的な親子の再会...と、言ったところだったのだが。

 

そこで乱入してきたある女性によって、その空気はガラリと変わることとなる。

 

「それでは、この同意書に目を通した後、サインをしていただけますでしょうか。」

 

母親の前にタブレットを差し出し、女性が淡々と話を続ける。

格好は、先程響に飲み物をくれた人と同じだ。

 

「本件は、国家特別機密事項に該当するため、情報漏洩の防止という......」

 

そういった難しそうな話が、ずっと続いている。

まぁ響には、その内容が聞いてもさっぱりわからないのだが。

 

「あぁ...じゃあ、私もそろそろ...」

 

遠目でそのやりとりを見つめ、本当なら響はここで帰るつもりだった。

いや、早く帰りたかった。

 

しかし、その願いが叶うことはなくーーー

 

いつの間にか、響の周りをあの黒いスーツの男たちが囲んでいる。

 

「あなたをこのまま返すわけにはいけません。」

 

「なんでですか!?」

 

「特異災害対策本部二課まで、同行していただけます。」

 

目線を逸らされながら、響は翼からそう言い渡される。

そして瞬く間に両手にはめられる、重い電動らしき手錠。

 

「え?あ...」

 

「すみませんね。あなたの身柄を、拘束させていただきます。

 特にあなたは、『サガ』と接触していますので。」

 

「えぇっ!?」

 

これはサガのせいなのだと言われたも同然で、愕然とする響。

 

「なんでぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

そうして無理矢理車に乗せられながら、彼女はあのサガが去った方向へと叫んだ。

 

 

 

 

「...何か聞こえたような...気のせいか。」

 

そんな哀れな少女の叫びなどつゆ知らず。

 

工場の片隅で、黒森飛牙はその手に握りしめた弾丸を月光に照らし見つめていたのだった。





お楽しみいただけたでしょうか。
本作更新をまともにしてないのに、最近赤バーついたんですよね。
結構驚きでした。
まだ新規で見てくれる人いるんやなぁって。

後推しを喰らうのを必死で止めたいについてですが…
現在かなりスランプ状態にあり、ちょっと時間かかりそうです。
本当に申し訳ございません。

後、JASRACで無印の曲調べても出てこないんですが…
他の人も使ってても乗せてなかったので、多分存在しないのかな?
知ってる人いたら教えてください。

それでは、また!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。