この奇妙な世界(ザ・ワールド)に祝福を! 作:満員座・スノー
『ば…バカなッ!……こ…このDIOが………このDIOがァァァァァァーーーーーーーーッ』
100年をも辿るある因縁が、運命とも呼べる決闘は終わりを迎えた。
吸血鬼となったその元人間は肉体を真っ二つに割かれながらも、忌々しくも好敵手と認める血筋の容姿から目を一時も離すことはなかった。そして、その頭部、脳、意識と消滅していく最後の時まで、自身の敗北への驚嘆が薄らぐことはなかったのである。
DIO…『
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「は?絶対送り届けられるとこ間違ってるでしょアンタ」
困惑。女神アクアはその死を迎えたばかりの魂の記録を読み、困惑しかなかった。もはやその女神らしくない下品な素性を隠すことなど、当の当に忘れるくらいだった。
「………」
凄まじいガタイの金髪、明らかに自分の担当である日本人ではない、巨漢。
ここに訪れる死者、若き日本人の魂たちは高確率でその女神アクアのその美貌に見惚れる。天界の神の一端を全うするに相応しき、蒼天の髪や透き通る瞳…故に高確率、本当に高確率だからね。
と、今。この場に現れた金髪はどうだ。常人とは思えぬ肉体の大きさ、そのワイルドな服装がはち切れそうに見えてバランスの良い筋肉質、それが作り上げる全身。それだけではない、ただならぬ気迫、何者が感じる得体の知れなさ、そこから来るのは何も恐怖だけではない。そう、カリスマだッ!
さあ、巨漢の背後で列をつくっている魂たちは、その衝突を見て、律儀に並んでいられようか。
いや、いられまい。
「はああ!?ちょっと後ろの魂達、ちゃんと並びなさい!並べってばー!!」
魂たちはガヤガヤと騒ぎ立てながら、光の空間の外から…中の様子を興味津々に見ている。アクアは騒ぎを静止しようとするも、外野の興奮は収まらない。
「何よこれ!!ま、まぁこの女神アクア様の美しさに我慢できなくなるのも分かるけど~?」
否。皆が耳を傾けているのは女神ではない。
「………ふん。くだらん」
バァーーーーーン
ウオオオオォォォォォォッ!!!!
男が腕組みしてそう言い放つと、魂たちの歓喜の声が響きわたった。空間の外からではあるのだが…内部にもうるさいくらいに漏れ聞こえている。
「はぁ~もういいわ。とりあえずあんた…う、嘘でしょ…何この罪状の量」
アクアは再び困惑した。今までの職務の中でもやけに分厚い記録。その殆どが数々の罪状で埋められている。
「ジョースター家の壊滅未遂、石仮面による世界征服未遂、標識看板の破壊、ロードローラー盗難、ダイアーさん、花京院、うわああその他に沢山人が死んでるぅ……!!」
「ふむ…どこからか懐かしい記憶が湧き出てくる…」
男、DIOは目の前の騒がしい奴に勝手に生涯を振り返られ、100年も前の記憶を思い起こしていた。
「懐かしいとか言ってる場合!?アンタには罪の意識とかないわけ!?」
「女よ、何が言いたい」
「もぉ~~!!!アンタなんかどう考えても地獄行き!!てか魂ごと消滅よこんなのぉ!!」
「……だけど、ここにはその選択肢が無いのよねぇ」
アクアはとほほと息を漏らし、仕方無く目の前のどうしようもない奴に選択肢を説明し始める。
「2つ選択肢をあげるわ。一つは天国へ逝く事、もう一つは異世界へ転生する事」
ドドド 「!!!」 ドドドド
DIOは"ある言葉"を耳にし、これまで以上の気迫を放つ。アクアはキャッ、と小さくではあるが反射的に声を漏らし、外野の魂たちも緊張にのまれ、空間は静寂に包まれた。
「"天国"、だと?」
「答えろ。天国とはどのようなものだ」
DIOはかつて天国を求めた。それを分かり合える同志もいた。そしていつの時か、己の天国*1を見つけ出したものの、生涯そこへ至ることはなかった。
DIOがそれ程に重要とする『天国』。しかしそれについて、彼以上に存在を知るだろう女神はあっけらかんに答えた。
「天国ぅ?あんなの退屈でしかないわ。何もすることがない、疲れもしないから寝れもしない、ずっとずーっと日中ぼっと突っ立ってるだけの場所よ」
「ぬぁにィ………ッッ!?」
DIO、後退り。此程までの衝撃ッ…。
宿敵との決戦に負け、己が死しているという現状は理解していた。それに加え、対峙しているズボラな態度の女についても、その不思議な雰囲気と強い力を感じたため、実際に女神だろうということもある程度は察していた。態度やその性格は本当に神に似つかわしくないのだが。失礼ねッ!!
そんな女神から発せられる、
己が抱き続けた憧れの実態は、あまりに退屈なものだったのだ。こんなことをかつて語り合った同志に伝えたら、一体どれ程落胆することだろう。想像したら、よりやるせない気持ちが込み上げてきた。
「………フゥ」
「あれ?あたし、そんな悪いこと言った?急に弱々しくなったけど」クスクス
「黙れッ!ならば異世界とやらについて説明しろ」
己の理想の消滅から、意気消沈…とまではいかなくとも、少し気を抜かしていた。だが、まだもう一つの選択肢が残されている。
異世界。
女神が言うには、その世界は魔王が世界征服を企み、人類は駆逐され滅び得る危機的状況だった。今まで幾多もの勇者が挑んでいったが、空しく散りゆくのみ。さらにその魂達は、再びその過酷な世界へ生まれることを拒否するため、人類はますます滅びゆく一方だという。
そこで、死してしまった魂達に転生のチャンスを与え、更に特典も付けることで、意気揚々と魔王討伐に向かわせているというが…。
「………」
DIOは考える。かつての自分も魔王と同じような事を目指していた。しかし今では、あの忌々しくも華麗な因縁に破れた身。負け犬のレッテルを貼られたにも関わらず、懲りずにもう一度などとはとても思わない。これまでの野心や燃え上がる感情をぶつけたとしても、思えないのだ。
「へぇ~…こんな事があったのかぁ~。面白いなぁこの人」
一方、その無礼な女神と来ると。真剣な様子で考える男を前に、それのあまりに厚い記録をペラペラと捲って、評論でもするかのような態度で読み漁っている。数多の命を管理している神が故、上から物を見るのも仕方ないことではあるのだが…。
「おい、勝手に読み漁るな」
「私は女神だからいいんですぅ~。ホラホラさっさと決めて、どっちにすんのよ」
「ッ(いちいち気に触れる女だ……)」
死後、その現実と向き合うほど妙な冷静さをつけていたが…こんな神の醜態を見せられると怒りも沸き上がるもの。とはいえ野次馬の魂達が注目する手前、易々と粗相は見せたくなかった。
「…いいだろう。このDIOが異世界とやらに降臨してやろうじゃないか!!」
様々に思慮した手前…"退屈な場所で空を拝むのは自分に似つかわしくない"と思ったから。今はその理由一つで自分を納得させた男。
しかしこの『奇妙な冒険』は、これから男に更なる『理由』を、そして『祝福』を与えるのだろうッ!!
「さあ、お行きなさいDIO!!貴方に光溢れる祝福が訪れますようn「ちょっと待て」
i…って何よ折角のキメ台詞が台無しじゃない」
「貴様、さっき"転生者には特典が付く"と言っていなかったか?」
「えぇ。何でもあなたの願うものを一つ異世界へ持ち込む…こと、を許……す………?」
ドオオォォォォォォッ
「ハッ!!?」
その時、アクアに存在しない筈の記憶が流れ込むッ!それは…転生を行う瞬間。特典として己を選ばれ、異世界へ引きずり込まれてゆく恐ろしい記憶!!
「あ、あ、あっ、貴方に祝福が訪れますようにッ!!!!」バッ
アクアは自分が話していたことも、相手が何を言ったかも、脳で処理すること全てを放棄した。ただ危機を感じ取った本能だけが、ベタな台詞を吐き、手を大きく広げ、全身全霊でその神の力をDIOに向けたのだ。
「なぁにィ!?キサマァ、約束が違うじゃないかッ」
途端にDIOの体が光に包まれてゆく。強制的に転生の儀式を行ったのだ。もう数秒もすれば、彼は異世界へ送られているだろう。
「な、何を考えてたか知らないけどこれでお別れよぉ!グッバーイDIO!!」
ポオオオオオオ
「ぬぐがァ…ぐおああああああ」
オオォォォォォォ
「ほらほらほらぁ!!!」パァッ
光の輝きが増してゆくDIOに追い撃ちを掛けるかのように、アクアのさらなる儀式。その眩しい光は激しく天界に広がり、やがて、"目潰し"へ。
「勝っt「『
ブオオォォォォォン カチカチ……
「神も嘘をつくんだと、プッチ…」
精神が具現化した事による能力、スタンド。人によって、そのスタンドが持つ力は異なり、性能差や得意分野も様々である。
そして、DIOが所持しているのは世界の理を崩し得る能力、時を止める『
DIOは神に絶対的信頼を寄せていた親友へ多少なりの同情を込めながら、愚かな神の傍へと歩みを進めた。
「ほう…?やはり神と言えども、時に流れ生きる者。逆らうことはできんわけよォ!!」
女神でさえ動けない時間を、自分が動いているという悦に浸り。DIOはアクアの背後に立ち、右肩を掴み捕らえた。そして自分の顔だけはアクアが横目に見えるよう左肩から前のめりに出して。
無論、こんなキザな波紋使いがやりそうな行動をするのはDIOがアクアの美貌に見惚れたからではない。彼が相手へ贈る、屈辱の味。そのやり方の一つだ。
「五秒経過…もう十分だろう。時は動き出す」
ブォォォォォオオン
「たぁ!!………へっ?」
「ごきげんよう。愚かな女神様」
「ギィヤアアアアアアアアアッ!!!?」
DIOは相手に視線を向け、レロと舌舐めずりをしてやる。余裕さを見せつけるがの如く、最大級の煽り。立てられたその全体像は高尚な美しさも野蛮な汚らわしさも併せ持つ。フィギュアにして切り抜きたい 更にそこへ、神秘的な光が激しく包み込む。
野次馬の魂達はもはや騒ぎ立てることもできなかった。その光が完全に二人を包み消え去るまで、固唾を飲み込んで見惚れるのみだった。
つい先程まで白く輝かしかった蒼天の女神が見せるはずのない、絶望に崩れ落ちる表情にさえも。
なんて勢いなんだ…!!この先のストーリーもあんまり考えてないのに平然と投稿してのけるッ そこにシビれる!憧れるゥ!