この奇妙な世界(ザ・ワールド)に祝福を! 作:満員座・スノー
異世界に辿り着いたご一行。(二人)
眩しい。
黄金に光り続ける視界。かつてこの身に受けた波紋のような感覚。それは吸血鬼の己にとって、無意識に身体が拒絶するような感覚のはずだが…。
「(身体に馴染むようだ…まったく不思議な感覚よ)」
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薄青と白い雲が彩る清々しい空。その空が美しく反射する湖。年季の感じる木造の風車。麓に見えるは石造りの街。ここは、始まりに相応しいそよ風の吹く草原。
…に立つ、ちょっとアンバランスな二人組。
「ほほう…これが異世界…。まるでおとぎ話の世界のようじゃないか、新鮮な気持ちだ」
「………」
新たな世界の広がりに内心惹かれつつ、周囲を見渡すDIO。それに対し動じることなく口を開くこともなく…ただ俯くのは、堕ちた女神。
「まずはあの街を目指すとしよう。おい女神……おい、聞いているのk「うああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁぁ」
意外ッ!というわけでもないがッ アクアは自身の置かれた状況に絶望し、泣き叫ぶのだった!!! しかしどれほど泣き、絶望の感情を高めたとしても『スイッチを押せば時が戻る』ような美味しい話はない!! あるはずが無いのだ!そう、アクアは既にチェスや将棋で言う『詰み』にはまったのだッ!
そしてDIOはそれに構うことなく、石造りの街を目指して歩みを進めていった。
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辿り着いたのは駆け出しの冒険者の街、"アクセル"。
その名の通り、冒険を始めたばかりの
その道の中心を闊歩する、魔王かその幹部かでも勘違いしそうな格好の大男。と、配下が一人…かと思いきや。それはどこか神秘を感じるような衣服を身に包む、麗しき美女。その表情はぐちゃぐちゃに崩れているが
ちょうどすれ違った町民や冒険者達の目には、そのただならぬ前進が入りこんでしまうだろう。
「う~うう…どォォォうしてよォォオォォォォ」
ドオオォォォォォン
しかし、堕ちた女神はそれどころではないッ!
アクアは衝撃のあまり、周りを気にする暇などない…!ただ抑えきれない絶望の感情を暴発させることに必死で、DIOの(どこからともなく着込んだ)マントを手離さず引きずられ続けるしかないのだ!!
そこに、ついさっきまで女神だった面影などどこにも無いッ ただ泣き喚く哀れな姿を街中にひけらかすだけであるッ!
「H E E E E Y Y Y Y」
「おい、そろそろ静かにしr「こんなのおかしいじゃないッ!!!どうしてあたしまでこんなとこに連れてかれなきゃいけないわけ!?」
「その"こんなとこ"を提案したのは貴様だ。そして特典をつけるという約束にも従った、それだけの事よ」
「あーもううるさいうるさーい!!!大体なんであの時瞬間移動したの!?あれさえ無ければあんた一人で無事転生、それで終了だったッ…はずなのにぃッ!!はず、なのにぃ……ッ!!!」
「瞬間移動だと?そんなちゃちな能力ではない。『
「ハァ!?意味分かんないし!!何それズルい!そんなの
「先に特典をつけると話したのはお前だバカめ~ッ!!にも関わらずあの妙な光を放ち、おれを出し抜こうとした…!!そこで咄嗟に、愚かな女神も道連れにできないか賭けた結果がこれだ!!」
「貴様はこのDIOとの賭けに負けたのだマヌケがァ~~~!!!!」
「~~~ッッ!!!」
二人の激しい口論に街の人々が注目する。
「おいおい、ありゃすげぇ騒ぎだぜ」
「女神とか言ってなかったか?そういやあの女、女神アクアの肖像画に何か似てんなあ…ん?どうしたカズマ」
ゴロツキのような男達に混じって見物していた若々しい"日本人の青年"。その一見ひ弱そうな身体に合わぬ
「あれは、まさかッ………ディオ…!?」
彼の名は佐藤和真。年齢20歳。転生者であり、どこにでもいそうな日本人男性。と本来、転生前はそうだったのだが……この異世界では彼もまた、『奇妙な冒険』を歩んでいる。
…
「」
女神アクア、意気消沈。再起不能ではないが、それに近しい状態。
DIOがトドメとばかりに口論を終わらせてから10分暫く。ずっとこのまま。流石の見物客も同情したのか、静かに場を去っていた。
「………」
DIOは立ち続けたまま、アクアの復帰を待っていた。いや、ただただ考え事をしていただけだが。
「(天界とかいう場所ではスタンド能力を使うことができた。しかしこの世界ではどうだろうか…時を止めることは勿論、我が『
「……ぅぅ…」ピクピク
「(そういえば今更気付いたことだが、さっきから"日光"に当たっても何も問題がない。*1何故だか知らんが、これも転生の影響なのか。いずれにしても、そのうち自分の肉体の状態を詳しく知りたいところだ)」
「……ううぅぅぅぅ」グスッ
「起きたか」
「もういいわよ…あたしはもう救いようのない落ちぶれ女神なのよブツブツ…」
女神アクアには"アクシズ教"という信仰団体がある。その信仰者はまあまあ多く、割と活発的、おまけに少し過激的。信仰心はかなり厚いものだと言われているが、当の信仰対象がこれ程までに落ちぶれているのを見たらどうなるだろう。想像するに堪えないが。
「立て、女神」
「何よ…私はもうここにいるわ…はぁ」
「
DIOはアクアへ右手を差し出す。
「えぇもう好きにすればいいのよ好きに………えっ…?」
「貴様が愚かだということは知っている。だが、いつ私が貴様を女神として否定した?」
「………」
アクアはこのほんの少しの間を振り返る。
目の前の高慢な態度の男は、神にも全く引けを取らない態度ではあった。そしてよっぽどの自信家で、実際に神に刃向かい得る謎の力を持っている。
だが確かに、女神であることを否定したことは一度としてない。それに、雑に呼び捨ててはいるものの、基本的には女神と呼んでくれている。別にそのことを信じてないようでも、馬鹿にする様子でもなく。一般的な神を敬う態度はなくとも、彼は彼なりに神への敬意を向けているということだ。
「DIO…」
アクアが少し気を許したところで、DIOは付け加える。
「高みを目指す時、ただ『力』を振るえばいいか?そんなのは猿でもできる。では何が必要か…『知』が必要なのだよ」
DIOは生前の経験から語る。圧倒的な力さえ得れば全てを成せるわけでは決してなく…それは100年眠った時も、親友と語らった時も、因縁の相手と闘った時でさえも実感していた。
「私はこの世界について全く何も知らん。だからこそ、このDIOを案内するに相応しいのは君のような女神…十分な『知』を持つ君が必要なんだ」
もっとも…『知』があったとして、まだ足りない事もあろうが、と付け足しつつ。
「…うぅ……うぅう~~~」
アクアは、泣いた。不思議なことに、視界がぼやけるほどに涙が溢れてくるのだ。
それは絶望からくる涙と違う、嬉し涙だろうか。いや、単に頼られる嬉しさではない…天界から下ろされた今、どうしようもない自分に道しるべを『与えてくれる』。本来それを『与える側である』はずの女神がすがりたくなるような、導かれるまま着いていくことで安心を得られるような…目の前に立つ、恐ろしくも偉大なる者への感服。アクアはそんな感服から涙を流していた。
…DIOのカリスマ術に堕ちていることも気付かずに。
「わ、私もお供させてくださいぃ~!DIO様ぁ~~」
「クックック、いいだろう。その石畳の床を二歩下がれ。そしてわたしへ忠誠を誓うのだ」
アクアはDIOの手に顔をすり付けるように近づき、両手で包むように取った。DIOは、アクアの目線が自らの顔から外れたことを確認し、ニヤリと笑う。
「はいぃ………忠誠を誓いまぁ…」
「…ってなるかあッ!!!!」バシッ
アクアはハッと我に返り、DIOの手を振り払った。
「バカなッ!?あと少しで女神を完全に堕とすことができたというのに…ッ!!」
「ハァ…ハァ…!!!そっ、そんなわけないでしょ!誰がアンタなんかに忠誠誓うのよこの間抜けッ!」
「間抜けだとッ!?それは貴様だこの間抜けがァァァァァ」
懲りない二人組は、こんな感じのまま街のギルドを目指していく……
………
「ハ、ハアアァァァァァッ!?こ、これ…ッ…何ですか!?こ、ここここ、こんなステータスは、今までに見たことがないですッ!!!!」
ギルドの受付嬢が驚き、大声でそう叫んだ。どうやらステータスに異常があったらしい。その驚きの内容とは…
「お二方の幸運を合わせても"
「「…は?」」
カズマの年齢って高校生(17くらい…?)でしたよね。
web版だと年齢が違って、20って知った時は驚きました。