この奇妙な世界(ザ・ワールド)に祝福を!   作:満員座・スノー

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いよいよクエストに挑戦する四話ですよ。
職業を決めた二人は、二日目から既に忙しく。その理由とは…。


異世界漂流

 

 豊かな自然、かつての祖国を想わせる雰囲気の街、現実として認識しながらも、どことなく幻想的な雰囲気を漂わせ続ける異世界。

 DIOは百年…そして人間時代、少年期の頃には既に捨てていたノスタルジアを感じていた。

 

「…イギリスも、このような夕焼け空だったか」

 

 吸血鬼ゆえ、陽の浮かぶ空などとっくに忘れていた。

 だからとは思わなくとも…荒んでいた幼少期、愚かな父親に痛ぶられたあの頃…貧民街のある一角で見た眺望。野望で溢れかえる前、僅かに感じた希望。

 捨て去った景色が、勝手に、ぼんやりと頭に浮かんできたのだ。

 

「えぇ~!?あんたイギリス人だったのぉ~」

 

 側に経つ木の後ろからフラフラと姿を現したアクア。

 

「女神か。あのモンキーみたいな芸の披露は終わったのか?」

 

「だぁれがモンキーよぉっ!!…宴は終わりよおわりぃ~初日からこぉんな盛り上がるなんてぇうへへ~、やっぱ不運なんてうそっぱちよぉ~~~」ヒック

 

「(酔ってるな…間抜けめ)」

 

───

 

『ワールド…ッ!』 『クルセイダースぅ?』

 

『ワールドクルセイダース』。

 受付の娘の話によると、それは"特定の人物にしか見られず"、"一定以上のレベルを必要"とする。"存在は判明しているが、現状就いている者がいない"ため、ギルドにもあまりデータが集まっていないという謎の職業だった。

 そして。その職業の候補者はDIOだけでなく、アクアも同様だったのは驚きである。

『(この職業に就ければ、私だってタメ張れるかもしれない…)』

と、本人は神である自分を見下してくるDIOへの対抗手段としか考えていなかったのだが。まさかこの職業が数奇な運命を導くことになるとは…。

 

 結局のところ、現在の職業選択には関係なかったため、DIOは『ソードマン』を、アクアは『アークプリースト』を選んだ。

 アクアはステータスに見合った職業を選んだ。DIOは元から職業で取得できるスキルなどに頼るつもりは更々なく、『世界(ザ・ワールド)』で完封するつもりなのだ。にも関わらずそれを選んだ理由はただナイフ投げを扱いたいだけらしい。もし冒険者が信号標識を振り回せたらそれでもよかったのだろうか

 

 冒険者登録後、DIOはいつの間に姿を消した青年を探しに。アクアは盛り上がる酒場に飛び込んでいき、そのまま宴へと発展したのだった。

(ちなみに酔った勢いで酒場にいた全員分奢ると宣言してしまったアクアは高額のツケができたので、しっかりとその不運は発揮していた)

 

───

 

「(あの青年には逃げられたが…まあいい。次にこのDIOと遭遇した時が最後よ)

 

「じゃ~あたしゃ先ねてるわぁ~~ん」フラフラ

 

 アクアはそう言って、近くの馬小屋へ千鳥足で向かっていった。

 

「ほう、馬小屋で寝るつもりなのか?間抜けにはお似合いだな」

 

 

「ハッ!!まさか、金が無いということはこのDIOもだというのかッ…!?」

ドギャアアァァン

 

 どっちも間抜けだろこれ DIOはここで初めて自分の不運を実感したが、既にいくつも起こっていることは言うまでもない。

 

「おのれ…!このDIOに…貧民街の糞溜まりに巣食うドブネズミのような屈辱をォ……ッ!!」

 

 己の不運というやり場のない怒りに拳を握りつつ、仕方なく馬小屋に向かっていった。

 

 

 

翌日…

 

「…ぐがあぁぁ……ゴッ……」zzZ

 

 少々野生臭い馬小屋に、藁山にボロボロの布を敷いただけの寝床が二つ。当然、DIOはそんなところで睡眠など取らない。

 

「つくづく女神の格を落とすな…この女は」

 

 いわゆる、仰向け大の字。…というより、乱暴に両脚を大っぴろげにして寝ている水の女神(?)はいびきかきながら酒臭さを漂わせている。そのアルコール分も浄化されないものだろうか。

 

「グォ……おっ…ん、んん~~~ぁ…。おふぁよぉ~…」

 

「ギルドへ行くぞ」

 

「へ…あ、ちょっと待って頭が痛「とっとと来いッ!!」

いたたたたちょっ行くってば引っ張らないでぇ!!

 

 

「二日酔いで頭痛いのに、コブができて更に痛いよぉ~…」グズグズ

 

 びえーんと喚く女神に、物凄く機嫌の悪そうな男。実力は確かな二人だが、周りからはロクな冒険者とは見られていないだろう…二日目にして既に。側でテーブルに突っ伏していた魔法使いが最後の希望とも思えたそのパーティーに、やっぱり加入したくはないと諦めた程である。

 

「殴られて済むだけマシと思え」

 

 まあ、ギルドに来て早々、『借金が20万エリスになりました』なんて知らされたらそりゃ誰でも不機嫌になるだろう。

 ピキッときたDIOはこの愚女神をパーティーから追放することも考えたが、双方のステータス事情を加味して許した。(許してない)

 

 しかし、全くといって状況は変わっていない。

 ただ登録を済ましただけの冒険者が、一夜にして借金20万エリス…初級冒険者にはあまりに大きすぎる負担ッ!こうしてはいられないのだッ 早急にクエストを受け、報酬を得る必要がある…そして借金を返済することで、ようやくスタートラインに立てるッ!!

 

「よかろう…このDIOの初めのクエストは『カエル狩り』だッ!!」

「何で最初からこんな絶不調なのよ?いたた…」

 

 

 クエストの指定の通りに、二人は街外れの平原に辿り着く。内容は『3日間でジャイアントトードを5匹討伐する』というものだ。

 

「ほう…ただのカエルかと思っていれば。想定外のデカブツだな」

 

 DIOは100m先程にボッとしている間抜け面をどう始末してやるものかと考えていると、アクアが自信あり気に前に出た。

 

「ふふん、ここは私に任せなさい」ガシッ

 

 アクアは右拳を左手に叩きつけるようにガシッと構えてみせた。興味を持ったDIOはやってみせろ…とでも言うように行け、と手で合図した。

 その合図に乗るように、女神は平原を颯爽と駆けてゆく。

 

「見てなさいDIO!!これが女神の力よッ」

 

 そう言うと、アクアの拳に神聖な光が宿る。その走る勢いも段々と上がっていき、止まることのない拳は、目の前の己の十数倍もある大きさのカエル目掛けて。

 

「慈悲深き女神の、愛と悲しみの一撃!!『ゴッドブロー』ッッ!!!」ゴオォォ

 

「ほほう…!」

 

 その勢いに圧倒され、思わず感嘆を漏らす。やはり見込んだ通り…奴は女神。それに見合う力を持つ。

 

 

ブヨン

 

 輝かしき神拳は蛙の腹の中に沈み、その弾力に跳ね返る。

 

「あれ、おかしmmmm……」

 

「………」

 

 『無駄(めがみ)』はジャイアントトードに捕食され飲み込まれていった。もはやかける言葉もなく、助けずに見捨ててやろうと思ったが、パーティーの誼みで仕方なく助けてやることに。

 

「…貴様には我がスタンドを使ってやるまでもない。この短剣2本で十分よッ!!」スババババ

 

 DIOはギルドから渡された二人分の短剣を使い、目にも止まらぬ速さでジャイアントトードの腹を切り裂いていった。カエルはその痛みに怯む間もなく、その手捌きに次々とダメージを負わせられていく。

 

「mm…ちょっ!ちょ、私にも当たるからやめっ、許してDIOぉぉ!!」

「せいぜい避けてみせろ愚女神!!」スババババ

「ひいぃぃぃぃぃッ!!!」

 

 …何だかんだ鬱憤は溜まっているらしい。

 以降、こんな狩猟が続き、ジャイアントトード3匹の討伐が完了。アクアが二日酔いのせいで全力が出せない、とかペチャクチャ言っている間にDIOが見つけたカエルを狩っていった。

 

 本日の活動、終了ッ!

 

 

 

 

 そして二日目へ…。

 

「…えっ、もしかして私一人で狩るのこれ」

 

 アクアは一人、平原に置かれていた。いや…なんか近くでカエルに食われかけてるゲッソリした魔法使いが見えるんだけど。

 今日はクエストの都合で、二人は別行動だ。

 アクアは残り2匹のジャイアントトードの始末。

 

 そしてDIOはというと…

 

「ゾンビ使い…所謂、同業者ってやつか」

 

 クエスト『共同墓地の奥地にいるゾンビメーカーの退治』を受注し、現地へと向かっていた。

 アンデッドを従えるという100年前の自分を思わせる存在。ダンジョンとしては浅めであるためクエスト難易度はまちまちだったものの、己の勘がその親玉はやり手だと言うのだ。

 

ゴゴゴ

「クックック……このDIOにとって…ここがカエルよりも相応しい狩り場というわけよ」

               ゴゴゴゴ

 

 ()()()()()()()()()()()()流石にその頑強な肉体にも堪えていたが、手応えのありそうな挑戦に奮わせていった。

 

 

──────

 

 

「迷える魂達よ…お疲れ様でした。どうか天のお導きが、あなた方を無事に送り届けられますように…」

 

 墓場の奥地で一人、座り込んで一礼。そこに居座る魂達へ、安寧の祈りを捧げる。それは、現世に残る魂を解放し送るレクイエム。

 

「貴方は…えぇ、そうなんですか?分かりました、ではまた今度の儀式でお会いしましょう。でも、次回はちゃんと成仏してくださいね?」フフッ

 

 私の周りをフヨフヨと集まる魂達に微笑みかけ、他の誰にも聞こえぬその魂の声に耳を傾ける。そして一つ一つの魂が、安心していられるように優しく語らう。

 

 あっ!私ウィズっていいます。元冒険者で、現アンデッドの王、リッチー…なんですけど、一応。

 えっ、何で墓地でこんなことをしているかって?

 この方々、死後ぞんざいな扱いをされてきた悲しい魂達なんです…。

 親族に一向にお参りされない方だったり、一周忌を開いてもらえない方だったり、中には存在ごと忘れられて葬式も開かれなかった方もいるんです!可哀想ですよね…?だから、死者に寄り添える立場の私はこうして儀式を行うことにしているんです。

 

 でも最近、悩んでいることがありまして…。私の営んでいる魔道具店の売れ行きが…あ、いえっ何でもないです!

 えっとですね、最近ギルドのクエストでゾンビメーカー退治というものを見つけまして。夜更け、共同墓地から時々アンデッド達が外へやってくるので退治をしてほしいという内容でした。

 

 ごめんなさい…多分それ私なんですよね。私自身、そのつもりはないんですが、私の魔力に呼応して眠っていたアンデッドの方々が目覚めてしまったのかな…。

 とにかく、このことで私の正体がギルドにバレてしまうと大変です。何故なら、私は…

 

『魔王軍の幹部』だから…。

 

 

Wryyyyy………」

 

「!?」バッ

 

 あれこれ悩んでいると、突然背後から呻き声が聞こえました。驚いた私は振り返ると、それは私より二回りは大きい男の人。

 何より、一目で…雰囲気で分かりました。

 

「あ、貴方は……」

 

 彼は、私のような在り来たりリッチーとは違う。長い時を渡ってきた…『由緒正しきアンデッドの王』なんだと…!!!

 

「よくできた建物だと感心していたが…」ブツッ

 

 そう言って、彼は頭に刺さった矢を引き抜いて投げ捨てました。あっ…もしかしてそれ、トラップの…あぁ片付け忘れてたっ…!?私、な、何てことを…!!

 

「す、すみません…それは」

 

 私が謝罪しながら、自身のせいだと説明しようとすると、彼は全く気にしていないと言って話を続けます。いくらアンデッドでも脳は致命傷だと思うんですが…さ、流石…!!

 

「貴様のその得体の知れない力、ひしひしと伝わってくるぞ」

 

「ッ…!」

 

 何となく…分かっていました。私が貴方を見抜けるなら、貴方も私を見抜いている。そして、貴方のその敵意に満ちた目。その身体が、昂るような様子。

 

「…分かりました。ですが、ここではできません。外へ出ましょう」

 

「…いいだろう」

 

 緊張を表情に隠し切れない私を、魂達が見守る中…二人の階段を登る音が、墓場に響き渡りました。

 




びっくりした?爆裂魔女やM騎士が出てくる前にウィズが出てきてびっくりした?

すみません。作者の趣味です…アンデッド同士を引き合わせたいという。
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