この奇妙な世界(ザ・ワールド)に祝福を! 作:満員座・スノー
リッチーと吸血鬼 ウィズとDIO(もう一つの候補)
黒耀の平原に、赤光に照らされる墓の数々。嵐の予感を感じさせるような風が、対峙する二人の間を吹き抜ける。
黒装束に包まれた麗しき茶髪のなびく女は、墓地の番人の如く、吸血鬼に立ちはだかった。
「…自己紹介をしていませんでした。
私はウィズ。リッチーであり、"魔王軍の幹部"の一人」
ウィズは普段隠していたその身分を自ずから明かす。その相手に隠し通せないことを察したからということもあるが、それはその相手への敬意だった。
「DIO…いや、"ディオ・ブランドー"。吸血鬼にして、なりたての冒険者だ」
冒険者にして三日足らず。まさか魔王軍の幹部という実力者と顔を会わせるとは思わなかった。この世界で自分がどこまで通用するか試す、絶好の機会。DIOにしては珍しく、その本名を明かした。
「ご冗談も言う方なんですね。貴方のような方がなりたて…だなんて」
「ふん。そう受け止めるなら、それでもいい」
「ところで…後ろの
夕陽の沈みゆく刻、彼女の背後にある墓の側から続々とアンデッド達が出てくる。彼女の様子を見ていた魂達に事態を告げられ、勇気づけるため加勢しに来たのだ。
「!い、いけません皆さんッ!!ここは危険ですっ、下がってください!!!」
実は…ウィズはその緊張を悟られないよう繕っていた。曲がりなりにも魔王軍の幹部、どれほど恐ろしさを感じる相手だって、立ち向かう度胸はある。
しかしその立場にしては彼女は優しすぎる…仲間を傷つけることは避けたいのだ。アンデッド達があの男に葬られてしまう…その焦りが表に出てしまった。
「ど、どうして……」
アンデッド達はそんなこと、当に知っていた。そんな『覚悟』はできている。
ずっと世話になった王へ…ついに忠誠らしい忠誠を誓えるのだから!この身が滅びようとも、戦わねばならないのだッ!!
グオオォォォォォォォオオ!!!
「お願いします…止まってください…!!」
ウィズは立ち尽くし、祈ることしか出来なかった。このレベルの低いエリアで比較的穏やかなアンデッド達が、これ程までに高揚しているのは見たことがなかった。止められる気がしなかったのだ。
「控えよッ!!!」
ゴ オッ
吸血鬼が目を見開きそう言い放つと、アンデッド達の動きがピタリと止まる。
「脳無し共に興味はない。それにこれは…受験生が小手調べに行う、模擬試験のようなものよ…!」
「模擬試験…?」
受験生の過去を持つDIOにしか通じない喩えだろう DIOは短剣を出し、クルリと一周させてから構えた。
「私と貴様の実力試しということだッ いくぞッ!!」
「皆さん下がっていてください!『ライト・オブ・セイバー』ッ!!」
アンデッド達の前に一歩、二歩と出たそのリッチーは、王たらしめる魔力を発揮し、光の刃を手に纏う。
粗製の短剣片手の冒険者と上級魔法を繰り出す魔王軍幹部の衝突。傍から見れば、勝負の行く末など明白…しかし本人達はそうではない。
「はあぁぁッ!!」ブォンッ
お互いが走って距離を詰める中、先に仕掛けたのはウィズ。左腕を振りかぶり、光の刃を高速で降ろす。その一撃は、まさに文字通りの一刀両断。
…だが刃の先に、男はいない。
「後ろだ」ズア
「…っぐうッ!?」
ウィズの首元に短剣を突き刺す。突き刺された箇所の下に、赤い線を垂らしてゆく。
ただダメージが通っている様子は全くない。それはそうだ。アンデッド…それもその王リッチーにただの物理攻撃が通用するはずはないのだ。
「貴様も幹部ほどなら、目で追えたはずだろう…それともなまっちょろい"
「すみません…貴方の言う通りです。
相手が実力を持っていることは分かっていた。ただ、突然の出来事にまだ油断は消化し切れていなかった。
では、DIOが何をしたか?
実に単純な考えだった。刃を手に纏うなら、その射程範囲から外れればいい。だから刃を避けられる高さまで跳躍し、相手の後ろに回っただけだ。
(しかしスピードが遅すぎれば相手に追いつかれるため、着地までのその素早い身のこなしはDIOの身体能力故なのだが)
「これでお互い分かったはずだ…まだ続くぞ!」
DIOも似た特性を有す故、ウィズにただの短剣の一撃が通用しないと予測していた。それを確かめる為でもあるが…こんなことをしたのには、己の力を誇示することも含まれていた。
短剣を引き抜き、再び跳躍して距離を置くDIO。
「私は…幹部らしいことはあまりしていませんが…。『元冒険者』として…貴方の挑戦にお応えしますッ!!」
ウィズは冒険者時代、相当の実力の持ち主だった。それは魔王城に乗り込み、複数の魔王軍幹部を相手にしても追い返してしまったほど。
今では生活のほとんどが商売業とはいえ、その力が衰え切ったわけではない。
「次はこちらも本気でゆくぞ…来いッ!!」
「いきますッ!『カースド・クリスタルプリズン』ッ!!!」
ウィズがその魔法を放つと、DIO目掛け凍てつく氷の粒が勢いよく飛んでいく。距離が近づくにつれ、粒は合わさり幾つもの氷塊となる。
このまま、まともにくらってしまえば…吸血鬼とて氷漬けになるだろう…まるで何千年も前に絶滅したマンモスのようにッ!
しかしDIOはこのような激しい戦闘を待ち望んでいた…何故なら…"それ"を試す絶好の機会だからだッ!
「この世界に来てから…貴様が初めての相手だ」
失敗すれば、彼の冒険者人生は早くも終了するだろう…しかしそれはそれでいいッ 何故ならば、『
「『
ブオオォォォォォン カチカチ……
目の前の氷雨は不自然に浮いたまま動じない。
観衆のアンデッド達は案山子のように立っている。
あの圧倒的な力を持つ魔王軍幹部でさえも詠唱の構えで固まったまま、瞬き一つしない。
…その異世界は、動きを止めていた。
「これが………『
ただ一人…何事もなく口を動かすDIOは、短剣で氷塊をバラバラに砕きながら退け、ウィズの元へ接近。その口元を少しだけ緩ませ、彼は言う。
「気に入ったよウィズ。君は素晴らしい…」
「君のような者こそ…このDIOのパーティーメンバーにふさわし………いッ!?」
色褪せたように時の止まった異世界は、再び動き始める…
ブォォォォォオオン
「ば、バカなッ!……早すぎ……………る……………」カチコチ
砕き切れなかった氷塊に包まれ…吸血鬼は氷漬けとなった…。
「…!?今、何が起こって…」
目の前の男による不自然な動きにウィズは驚く。自身の氷魔法による目の錯覚かとも思ったが、それにしても不自然に、それも瞬間的に、前進していた。
「そ、それよりも…!!」
安全確認をするように、その大きな氷の塊をペタペタと触る。いや、どう考えてもそれで安全かは確認できないと思うが
「…う、動かない…や、やってしまいました……」ガックシ
男から仕掛けた勝負とはいえ…自身の全力を相手にぶつけてしまった。ここまでするつもりはなかったのに…彼女は、一人の冒険者を殺めてしまったのだ…。
…こうして、DIOの異世界冒険は幕を閉じる。
第3部、完!
パリイィィィ
「W R Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y」
ィィィィィィイン
「!!?」
「威力の激減した
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
「ハァ…ハァ……(油断した…まさか『
異世界に入門したことによる影響か…悲しいことに『
しかしDIOもウィズも驚いている暇はない。これほどの騒ぎ(ド派手な魔法のウィズ&声量のうるさいDIO)を聞きつけた者は少なくない。
アクセルの方から、いくつもの松明の炎らしき光がこちらへやって来ているではないか。
この状況を見られてしまえば、二人とも只では済まされない…一刻も早く、何とかせねばァーッ!
「ウィズ…君に伝えたいことがあるんだ────」
意外ッ!それは告白ッ!
DIOはウィズの右肩に手をポンと起き、その背丈に合わせるように屈んだ…顔と顔が近いッ!!!
「え、えっ、な、ななな何でしょうか///(何でしょうこの雰囲気…!?い、今まで経験したことない、ような…)」
DIOは、その目を見つめて離さない。
「私の────」
「は、はいぃぃ…///」
「私の、仲間にならないk「ウィズさんに何をするだァーーーッゆるさんッ!」何ィーーーーッ!?」
突如乱入してきた波紋の籠もる拳がDIOの顔面に食い込んだッ!思いがけぬ攻撃に吹っ飛んでいく!
「おぉ~カズマ、ソイツが"
青年を囃し立てるゴロツキに続いて、続々と冒険者達がやってくる。その中に混ざっていた、粘液まみれの女神が怒鳴り上げる。
「あんたこんな所で何やってんのよ!!そっちのクエストは10分で戻ってくる約束じゃなかったのッ!?」
粘液まみれの魔法使いもヒョコッと現れ、続く。
「…カズマさん、きっとコイツが全ての元凶ですよ。もっとやっちゃってください」
口説かれかけた(?)ウィズと粘液まみれの二人を見た、周りの冒険者達がDIOに対してあれやこれやとざわつき始めた。
「俺のウィズさんを…あの野郎!!」
「ふっざけんなお前のじゃねぇ~~~ッ!!!」
「おいおいあの男、あんな趣味あったのかよ」
「ロクな奴じゃないと思ったら…」
「なんて気色の悪い趣味なの!?」
「この前の勢いはどうしたんだよw」
「…WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」
漢の脳死の叫びが…平原に響き渡ったッ
カリスマだったり不幸だったりよく分からん人になってるDIO様…()
-"21"の影響は大きい