この奇妙な世界(ザ・ワールド)に祝福を! 作:満員座・スノー
このDIOの出番がないだとォッ!?
「まさか宿屋にまで泊めてもらえるなんて思わなかったわ!ありがとねジョナサン!」
借金貧乏生活にもはや神の威厳も何も忘れかけていた女神と、それに感謝される青年、そしてRPGの死人のように後ろに置かれている棺。
「女性を馬小屋で寝かせるなんて、紳士として見過ごせないよ。全くディオのヤツ…」
それと一応ジョジョと呼んでくれないか、と小声で付け足す。
あの後、戦闘は起こらず。…DIOは、寝た。クエストで持ち帰った墓地の棺にそっと入り。ぐっすりすりすり…寝た。
一同、静かな驚愕ッ…そして何事も無かったかのように、宿屋につき…眠った。
「この3日間、まさかずっと寝てなかったとはねぇ…いくらコイツでもそりゃ持たないか」
二人でクスクス笑っていると、隣の部屋の扉がガチャリと開き、欠伸をしながら魔法使いがやってくる。
「おふぁようございます…。昨日ってどこからどこまで夢でした…?」
「全部現実だと思うよ。えぇと……」
カズマ改め、ジョジョが言い淀むと、魔法使いはハッとして得意気な顔になる。
「そういえば名乗り忘れていましたね!」
「我が名はめぐみん!
アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法『爆裂魔法』を操りし者!」
ドオォォォォン
魔法使いの厨二病少女、めぐみんは眼帯を強調しながらキメ顔をし、二人に指差すように(自称)カッコいいポーズを決めた。完璧な自己紹介だ…ッ!
「「…………」」
二人は突然のそれに反応が遅れ……と思いきや。
「…あっ、私はアクア。アークプリーストよ」
「改めてッ 僕はジョジョ!冒険者であり、本当の紳士を目指す者さ!」
バアアァァァン
ここで乗ってみせるのが、ジョジョという男!脚を内股気味に開き、右手を下に、左手を顔の前にキメてみせたァッ!!
これには…かの紅魔族も見惚れてしまうッ
「おおおぉぉぉぉおおっ……か、か、カッコイイッ…!!!」キラキラ
「緊急クエストの放送も聞こえないなんて…やれやれだわ」
アクアは二人に目をやることなく、騒がしく冒険者達の駆けてゆく方向へ歩いていくのだった。
……
「キャベツだー!キャベツの群れがやってきたぞー!!」
冒険者の一人がそう言っていると、それに続いて冒険者達がどんどんと前へと走っていく。対する地平線の奥からは飛来するキャベツの群れ。
「うおおお狩れ狩れェ!!」
「ついでに溶けかけの氷像も見つかったぞぉ!!」
「げっ、これダクネスじゃねぇか…」
「うおっ、溶けた氷水がなんか厭らしいぞ」
「ピクピクしてる…こんなの放っておいていきましょうよ!」
「いいや!ダメだ、残るねッ!オレはッ!」
「クッ、コイツ…とんだ変態だぜッ!」
「な、なんだこれはァ!!…野菜が飛んで…いるッ!?」
ジョジョはその冒険者とキャベツの乱闘に驚いている。そこへ、荒々しい風に吹かれるローブを舞わせ、ウィッチハットを手で押えながらスラスラと歩く…随分気取った魔法使いが後ろから解説を入れてくる。
「これはキャベツ…この時期になると、彼らは"己"の存在を…誇示せずにはいられないんです。だからこそ…我々はその意志に背くことはできないッ!この、野菜なのにッ…燃えたぎる"紅"の意志を…ッ!!」シュバッ ヅォ
「こ、これは…ッ!?」
その時ッ!めぐみんが詠唱の構えを取る!すると辺り一体の空気が…彼女の杖に、まるでメッシーナの大渦のように、集まって気流を生むのだ!
「ならば我が意志…お見せしましょう!この
『爆裂魔法』をッ…!!」ギュウウウウン
「す、すごいぞッ!これまで魔法使いの人達を見たことはあったけど、こんな気流を作る程の魔法は見たことない…!!き、君はまさか……ッ!?」
あれ程の乱闘騒ぎだった冒険者達も、これには思わず注目してしまうッ!
………が、それは明らかに『おいやめろ』の目だった。
「あ、スミマセン…。やめるのでそんな目で見ないでください」スッ
「(や、やめちゃうのか…)」
「二人とも、早くしないとキャベツがいなくなっちゃうわよ。あの男はどうしたの」
ひょこっと出てきたアクアが棺男の所在を尋ねる。
「ディオは起きなさそうだったのでそのままにして来ましたよ。アクア様、あの飛んでいる野菜達は一体?」
「アクア様っ…!?うへ、へへへ…そうねぇ……」
"様"付けされたことにめちゃくちゃ少し嬉しくなったが、それは置いといて、とアクアはジョジョに対し質問する。
「ご、ごほん…あんた結構冒険者やってる顔してたのに、キャベツ収穫知らないの?」
「すみません…長らく波紋法の修行をしながら活動していたから。知識も少し偏っているのかもしれません」
ジョジョがDIOに対し見せた『波紋法』。それは赤い雷のような衝撃波…人間の内に秘める生命エネルギーを放出させているものだ。本来これを修得するには数年かかる修行、或いはそれを用いる人物から横隔膜の特定の部分を刺激されるといった、人並外れた方法が必要なのである。
しかし、彼はかつての肉体と波紋の重なる感覚を覚えていた。そのため再度使いこなすのも一週間あれば容易かった。
だが、今の彼はカズマの肉体。そのまま波紋を使おうとすれば、肉体が無理なエネルギー放出に耐えかねず損傷する可能性が高かったのだ…。そのため、彼は空気の薄い山岳地帯に三ヶ月暮らしたり、初心者殺しの住む森に一ヶ月サバイバルするなど、並の冒険者には過酷な活動地で修行ついでに、需要の高いクエストをクリアしていたのである。
「へぇ~…確かに職業は冒険者だとしても、ちょっと凛々しい体してるものね。相当苦労したんじゃない?元のカズマって奴はどれだけヘナチョコだったのよ」
あまりカズマの事を悪く言わないでください、とフォローするジョジョと、どこかから睨まれた気がして背筋を震わすアクア。きさま!見ているなッ
そうもしている間にキャベツは数を増やしてビュンビュンと飛び回っている。
「キャッ、こ、こっちに来ます…!!」
そこへッ!一匹(?)のキャベツがめぐみんの元へ突撃して向かってきたのだ!
ただの野菜にその一見キューティーな顔に油断してはいけないッ 調子さえ良ければその突進速度は、"60km/h"…本気で自転車を漕いだ際の3倍ッ!当たればただでは済まない!!
「『
ジョジョがキャベツとめぐみんの間に割り込み、拳を向けた!赤い雷がキャベツに向かって走り…内部から弾けるッ!!
キャベツは粉微塵…とまではいかないが、バラバラに砕けた。
「ケガはなかったかい?良かった、間に合って」
「大丈夫です…あ、ありがとうございます。助かりました…」
青年は爽やかに笑う。この清らかなイメージが定着し過ぎて、もはや元の体の持ち主の戻れる居場所はないような気がする…気の毒だが。
「頼りがいあるし、同じセンスを感じるし…貴方に一生着いていかせてください!ジョジョさん!!」
「同じセンス…?」
「(厨二病判定されてるわ、可哀想に)」クスクス
「僕も君のパーティー入りは歓迎だよ。ただあの男に着いていくことになるけど…」
"あの男"とはDIOのこと。何をしでかすか分からないあの化物をそのまま放っておくなんて、正義感に満ちた紳士の取る選択ではないから。
監視も兼ねて、パーティー入りすることを彼は決めていた。
「え゛っ゛………と、いうことは…あの物騒な金髪不審者に、厄神様まで付いてくる…?」チラ
「誰が厄神様よっ!!!!」
「ハッ!アクア様、危ないッ!!」
いつも通り騒がしい女神が吠える…と思いきや、イレギュラーも発生。その大きな声量を聞きつけたキャベツ達がこちらへと飛んでくるのだ。
「うぎゃああああああ何で三体も飛んでくんのよぉ!?助けてジョジョ~!!」
「コオォォォ…ゴッ!だ、ダメだッ 呼吸に乱れが……!」
「ほらもう既に厄がッ!!厄がーーッ!!」
「ひいぃぃぃぃっ!!?私の…私のそばに近寄るなああーーーーーーッ」
「『ピエール=シモン』ッ!壁となれ!!」
戸惑う三人の前に突如、金鎧の兵士が現れる。
ゴ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ン ッ
「な、何っ……!?」
「大きな金属の響く音が……」
「何かが当たった音…ま、まさか!そこの鎧の人は大丈夫かッ!?」
三体ものキャベツの突撃を真っ正面から受け止めたものの、全く動じる様子はなく…キャベツ達は弾き飛ばされていた。
「な、何とか、間に合った…ようだな……」
さっきもそうだったようだが、どうやら声は目の前の鎧から発せられたものではないらしい。
それは背後からもそもそと近づく者…その声のする方へ振り返る三人。
「わ、私は………ッ、ダクネsあぁっ感覚がッ!?
おっ…!?お、 おおおぉぉぉぉっっっ」ビクビク
「いやアウトだよ!!!!!!」
紅魔の少女の…甲高い悲鳴が響き渡った。
アウトの存在に、持たせるアウトな効果のスタンド。
(いやちゃんとした効果ではあるんですけども)