異世界イッセー   作:規律式足

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 書けました。



第九十八話 白龍皇の目的。

 

 北欧神話が主神オーディンと日本神話との会談を阻止せんと襲いかかる悪神ロキ。

 会談のきっかけとなり他神話融和の考えを広げたいと考える神亡き聖書の勢力は会談を成功させる為に悪神へと立ち塞がる。

 ロキの創り出した最強の魔獣、神喰狼フェンリルを前に覇龍へとなろうとする赤龍帝イッセー。そこへ突如現れた元二天龍白龍皇。

 果たしてこの騒動はいったいどうなってしまうのか、どう決着するのか。

 赤龍帝の精霊魔法に捕縛された白龍皇一行の運命やいかに。

 

 

『以上、現場のドライグでした』

 

「誰に説明してるのドライグ?」

 

 悪神ロキによる襲撃の場に現れた白龍皇ヴァーリ。二天龍を揃って敵に回すのは分が悪いと判断したのか撤退した悪神ロキを逃がしてしまった後、俺は即座に白龍皇一行を捕らえた。

 俺やオーディン様なら勝てるとはいえ白龍皇ヴァーリは紛れもなく世界有数(100位くらいの格付で)の強者。仲間達の安全の為に自由にさせておくわけにはいかないのだ。

 そして翌日。

 兵藤家の地下一階の大広間に関係者全員で集まっていた。

 ちなみにオーディン様と日本神話との会談はまだ時間的に余裕はある。昨夜の移動も観光の為だったからだ。

 戦闘になってもある程度(龍王クラスが暴れても耐えられる)は平気な頑丈な一室にて、グレモリー眷属+転化天使イリナ、堕天使総督アザゼル、堕天使幹部雷光のバラキエル、シトリー眷属、グラシャラボラス眷属、フェニックス眷属、そして縛られたままの白龍皇ヴァーリチームが居た。

 

「流石にこの人数だと狭く感じるな」

 

 グラシャラボラス眷属はガタイの良いのばかりだし、ライザー師匠の眷属は美女美少女揃いだけど人数最多だからなあ。

 

「コイツが兄貴に絡んできた白龍皇かアアン?」

 

 白龍皇の翼の触れたら半減する力を使わせない為に両掌を合わせて拘束してあるヴァーリに全力でガンをつけるゼファードル。久しぶりにみるチンピラらしい姿だ。

 

「なるほど、レーティングゲーム上位陣にひけをとらない実力者だな」

 

 最近レーティングゲームのタイトルを狙っているライザー師匠はヴァーリとその仲間達を見てそう評価した。神器を発動してない状態でそれなんだからヴァーリの実力の高さを窺わせる。

 

「とりあえず目的を吐かせますか」

 

 ヴァーリチームはこちらに敵意やら戦意は無さそうだけど放置できない存在ではあるのだから。

 養父としては複雑な心境のアザゼル先生は気不味そうに目を伏せる。この状況で庇い立てするのは誰にとっても良くないことだからだ。

 

「大した目的はないがこちらにも意地はある。そう安々と口を開くと思うな」

 

 頬を膨らませて拗ねてるヴァーリ。

 ロキを倒すことが目的の一つなんだろうけど、自身の扱いに不満があるようだ。

 強者感だして参戦しようとしたらこんな現状になったからだろう。

 

「拷問ですね」

 

 そんなヴァーリの態度に小猫ちゃんが物騒な発言とともにスチャリと懐から洗濯ばさみと耳かきをとりだした。

 いや養父であるアザゼル先生の前で拷問とかそんな事をする気はないんだけど。

 

「というかその二つでどうする気なの?」

 

『使用法に興味あるな』

 

 拘束されて動けないヴァーリチームに洗濯ばさみと耳かきを両手に構えて躙り寄る小猫ちゃん。

 

「そんな!?白音に耳掃除なんてされたりしたらなんでも話しちゃうにゃん!?」

 

「『あっさり効いたよ』」

 

 シスコンな姉猫だしなあ。

 

「せ、洗濯ばさみを俺に近づけるなあっ!?」

 

 美猴の怯えた反応は悪ノリしてるだけだね。

 

「オウコラ、正直に吐かねえとウチのボールボーイの腹にその綺麗な面ァ埋め込むぞ」

 

「それは嫌ですねえ〜」

 

 ゼファードルはゼファードルで聖王剣の使い手アーサーさんに絡んでいるし。

 

「ユーベルーナの鞭とロウソクが振るわれる前に自白すべきだな」

 

 あ、やっぱりライザー師匠の女王である「爆発王妃」の異名持つユーベルーナさんはそっち系なんですね。そしてバラキエルさんステイステイ、そこで反応しない。

 そんなグダグダな緩んだ空気。

 悪くはないけど非常時だからね、ほら何気に生真面目なリアス部長とソーナ会長が眉間にシワを寄せてイライラしだしてるから。

 まあとにかく、

 

「記憶再生」

 

 確認ならこれが一番だよね。

 記憶の再生なのに本人視点以外から見れるこの魔法。自白させるより確実で、「記憶捜査」の魔法のように俺から説明する手間を省けるから。

 

「「最初からやりなさいっ!!」」

 

 まあ当たり前だけど怒られはするよね。

 

『実際相棒はこの喧騒を楽しんでたからな』

 

 シリアスな空気はグランバハマルでお腹いっぱいなんだもん。

 大広間の壁に広がる記憶再生の画面。

 全員でそちらを眺めるとヴァーリの記憶が映像となって再生されだした。

 

「生まれ変わったらラーメン屋の箸になりたい」

 

『木である期間の方が長いだろその生涯』

 

 プツン。

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 あ、間違えたごめーん。みたいな感じで消えた画面。夕焼けの照らす崖の上で腕を組みながら何を言ってんだろこの白龍皇。

 痛々しい空気の中、再度画面が光りだす。

 今度は大丈夫か不安になるよ。

 

 

「北欧の悪神ロキが日本神話と会談予定の自らの主神であるオーディンを襲撃するそうだ」

 

 どこかの森の中、焚き火を囲みながら会話するヴァーリチーム。どうやら食事中なのか火の上には鍋が置かれグラグラと麺が煮られていた。

 

「英雄派からの情報かぃ?」

 

 椀に盛られたラーメンを啜りながら美猴はヴァーリに問いかける。

 

「そうだ、連中はそちらにも伝手があるようでな」

 

 自分の椀にチューブニンニクを足しながらつまらなそうな表情でヴァーリは言う。

 

「であれば英雄派もこの件に介入を?」

 

 食事を終えて箸を置いたアーサーがそう問えば、ヴァーリは首を横に振って違うと答える。

 

「英雄派は禁手使いを増やす為の各組織への襲撃で忙しいそうだ。なぜか駒王町では上手くいってないらしいしな。それに、」

 

 そこで一拍おいてから英雄派の理由を告げる。

 

「悪神ロキと神喰狼フェンリルがいる場ではそちらに注目されて自分達が目立てない。だから介入はないだろうな」

 

 どうやら禍の団・英雄派は目立ちたがりのようだ。神滅具使い、英雄の子孫・転生体、神器保有者で構成された英雄派。

 未だにリーダー・幹部の詳細不明な集団だが、どんな存在でも世界有数の強者にして神を殺せる魔狼フェンリルには見劣りするだろう。

 

「だから余計な邪魔が入らないこの機会に神に挑むってわけにゃん?」

 

 猫舌なのかフーフーとラーメンを冷ます黒歌さんがそう言った。

 正直この情報はこちらに有益だ。前回のような神滅具使いからの余計な手出しがないと知れたのだから。

 

「ああ、そしてその絶好の機に」

 

 そしてヴァーリが俺達が知りたかった真の目的を語りだす。

 

「神喰狼フェンリルを俺達ヴァーリチームの仲間に引き入れる」

 

「「「「!?」」」」

 

 その驚きの発言に未だに話さないハフハフとラーメンを食べていたフードの少女も含め全員が驚いていた。

 

「弱らせたところに『支配の聖剣』の力で従える気ですか?」

 

 単なる思いつきだけではなく具体的な手段まであるのか。困難ではあるが不可能ではなさそうだ。

 

「ああ、ロキがオーディンを襲撃しているところに参戦し、護衛をしているだろうアザゼル達に共闘を申し出る。そして上手いことフェンリルを誘い込み俺が覇龍で撃退、弱ったところをアーサーに支配してもらう算段だな」

 

「あのアザゼルやお人好し魔王なら共闘は断らないと思うにゃん」

 

「でもヴァーリさんが危険では?ただでさえ覇龍にはリスクがあるのに」

 

「その程度のリスクで得られる物が大きい。無論フェンリルに勝てない可能性もあるが、負けたらそれまでだったということだ」

 

 ただロキに使役されてるフェンリルは本調子ではないだろうというのがヴァーリの見立てだ。また強者に負けるなら本望とかそんな感じかな?俺にはよくわからないけど。

 

「けどよ、神を殺せる牙目当てってわけではないんだろ?」

 

「もしやルフェイの護衛役ですか」

 

「何が狙いにゃん?」

 

 リーダーの真意を尋ねる仲間達。

 

「気に入らないだけだ」

 

「「「「?」」」」

 

「最強の力があるのに思うがままに生きれないフェンリルの現状と、創り出したからと好きに扱う悪神ロキの姿がな」

 

 その言葉はヴァーリ自身の過去から来ているのかもしれない。如何なる感情かはヴァーリ本人にしか、いや本人にすら正確にはわかっていないかもしれない、そんな激情のこもった言葉だった。

 

「悪魔達のレーティングゲームのように最強のチームを作りたいという思いもある。魔法使いであるがゆえに戦闘力が劣るルフェイに護衛をつけたい思いもある。

 だが一番の理由は、強者が弱者に良いように使われてることが気に食わんからだ」

 

 悪神ロキとて弱くない。

 北欧の名の知られた神であるという時点で充分に強者といえる。

 けれど北欧最強とは到底言えず、間違いなくフェンリルよりは弱いのだ。

 

「しばらくは『支配の聖剣』で従えることになるだろう。だがいずれ必ず、本人(狼)の意思で仲間になってもらうつもりだ」

 

「ま、そういうことなら」

 

「異論はありませんね」

 

「男ってのはやたら最強に拘るにゃん。まあ強いオスは魅力的ではあるけどね」

 

「凄いですヴァーリさん」

 

 仲間達が賛同し計画が決まったところで、ふと何かに気がついた美猴が問いかける。

 

「けどよ、あのおっかない赤龍帝がロキとフェンリルをまとめて倒したり、問答無用で俺らを捕まえにきたらどうするんだぃ?」

 

「・・・・・・・・・。ふっ、ルフェイは仮宿で待機してもらうか」

 

「「「考えてないんかいっ!!」」」

 

『考えても無駄だろあのバグ龍帝』

 

「そこはなるようになれだな」

 

 

 プツンと画面が消える。

 見るべきところは見たわけだしね。

 そしてヴァーリの記憶を見た皆の反応だが、

 

「アンタ達、とんでもないことを企んでいたわねえっ!!」

 

 怒髪天をつくとばかりに怒るリアス部長と何も言わないが不愉快そうなソーナ会長。

 

「あー案外良いヤツなのか白龍皇」

 

 フェンリルの開放という目的から絆されるゼファードル。親に良いようにされるというのはゼファードルにとっても不快な記憶だしね。

 

「最強のチームか、理解はできるな。俺はハーレムチームだが」

 

 ライザー師匠もレーティングゲームのプロプレイヤーだからと理解を示した。

 

「ヴァーリめ成長しやがって(ぐすっ)」

 

 養父であるアザゼル先生からしたら義息子の成長した姿に見えるようだ。

 といってもフェンリルって北欧神話で重要な存在だから強奪はマズイと思うけど。

 目的知ったからには共闘なんてしないで、今回の戦いが終わるまで隔離しておくべきかな?

 

「面白い企みじゃな」

 

 と、そこで別室で本国と連絡を取り合っていたオーディン様が現れた。

 

「状況的には渡りに船といえる。白龍皇の企み、実行しても構わんぞ」

 

 一番怒りそう方からの意外な賛同の言葉。その予想外の反応に全員が呆気にとられた。

 

「良いのか爺さん。フェンリルは北欧神話の最終兵器みたいなもんだろ?」

 

「その北欧の最終兵器が現在進行系で主神である儂を狙っておるがの。

 それに白龍皇の言葉には納得できる所もある。実のところフェンリルそのものを北欧は持て余しているから封印しとったわけじゃしの」

 

 ロキ共々撃退し捕らえて封印したところで、和平の方針に賛同できない者がまたフェンリルを使おうとするだろう。

 ならば信用できぬ身内よりも、好き放題してるヴァーリの方がマシだと言う。

 

「ヴァーリとてフェンリルで神を殺して回る気ではなかろう?」

 

「当然だ。神と戦うなんて面白そうなことを譲ってやるつもりはない」

 

「ならば良い。

 が、神喰狼を従えるからには資格を示す必要があるのう」

 

「資格だと?」

 

「ロキを討伐してみせい。それが成せたならばフェンリルを仲間に引き入れることを北欧の主神オーディンの名を持って認めてやろう」

 

「上等だ」

 

 そうヴァーリは愉しげに笑うのであった。

 

「その間にフェンリルを抑えておくのは僕の役目かなあ」

 

『実力的には順当だな』

 

 明かされた(というか暴いた)ヴァーリ達の企み、それに便乗し利用するオーディン様。

 事態はよりいっそう混迷していくのであった。

 

 とりあえずもう拘束は外してよいよね。

 





 ヴァーリ。
 計画があっさりバレて不満げ。精霊魔法の厄介さを実感した。

 美猴。
 小猫により顔中に洗濯ばさみが付けられている。

 黒歌。
 妹が耳掃除してくれなくて凹んだ。

 アーサー。
 作者がヴァーリチームで一番扱いに困っている。

 ルフェイ。
 魔女っ子、正式な出番はまだ先。

 オーディン。
 フェンリルの扱いに不満はあった。だが危険過ぎるからと封印せざるえなかった。

 アザゼル。
 義息子の成長に涙。
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