軛を解き放て   作:クマぴょん

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~終わりは始まりでもありますから~
【本髄の末路】


 

 

ロシア・サハリン

元準内地・大泊(コルサコフ)

 

コルサコフ駅に装甲列車が停車。

先頭車輌からはイーダ率いる護衛部隊が装甲列車から出てくる。

独立戦争時、中国人民軍からレンドリースしてもらった92A式装輪装甲車ことZSL-92A。

そのうちの1台はVIPの神美(シェンメイ)とその護衛長であるイーダとDAのフキたち。

ZSL-92Aは既に旧式化されたとはいえ、BTR-80よりかは幾分マシである。

ただ、独立軍の車輌のほとんどはBTR-80かそれ以前のモノを使っている。

旧式と骨董品。

その装備差が独立軍との軋轢(あつれき)を産んでいたのだが、ピエールの一喝で独立軍は矛を収めたらしい。

なんだって独立軍の約半数はフレディを始めとする傭兵から成り立っている為、独立軍の主導権は既に傭兵副長・ピエールに移っていた。

フキたちが思った以上に用意周到の本作戦。

いや、傭兵時代を糧に大局的に見たフレディの本髄(ほんずい)だろう。

だが、相手も本気を出していなかった。

それを知らないフキたちは絶望に駆られるまでに陥ることとなった。

 

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コルサコフ駅到着から1時間後。

駅からそれほど離れていない倉庫に潜むフキたち。

原因はジェームズが率いる執行部隊が占領状態だったコルサコフ市街地を強襲し、部屋の1室の間で陣取りゲームを展開していた。

先を急ごうにも味方にも敵にも撃たれる状態で事が落ち着くまで待機する。

そうイーダが判断した。

後から合流した独立軍は全滅。

斥候を出したものの帰って来た人物は居らず、イーダ直属の護衛部隊しか今いない。

ジェームズ率いる執行部隊の本髄(ほんずい)が、敵を混乱状態に陥って元来の目的とVIPの殺害を両方で成すもの。

それが民間人が居ても任務遂行には単なる駒か奴隷としか見ておらず、虐殺を平気で成す虐殺機関そのものだった。

イーダはイライラしながら倉庫の出入口に設置した通信機器の前で右往左往していた。

 

「フレディの奴、まだ伝令は来ないの?」

 

イーダのイライラは止まらなかった。

既に解き放った独立軍の新兵らは全滅しているし、既にコルサコフ市街地で激戦を繰り広げているのは退役軍人上がりの古参で、その古参はフレディ率いる傭兵らと共に活動している。

連絡手段がフレディからの伝令兵しかなかった。

無論、無線機を考えたが敵が敵なので、安易に扱えない。

直前の連絡では、

 

<<執行部隊(ターゲット)との戦闘に入った。>>

 

とフレディから受け取っているものの、コルサコフ駅からは音沙汰ない。

直後、倉庫に何かが着弾された。

単なる白い煙と思ったが、イーダは直ちに号令した。

 

「車輌に戻って!全部蓋しないと死ぬわよ!」

 

倉庫に置いてあった機器を捨ててまで、護衛部隊は車輌に乗り込み、あらゆる開閉部分を蓋にした。

イーダと数名はフキたちが乗るVIP車輌に乗り込んでいた。

煙が倉庫内に立ち込める中、イーダは冷汗を掻いていた。

 

「あのバカタレ・・・生石灰(せいせっかい)弾を投入させて・・・」

 

せいせっかい?

フキたちは聞きなれない単語だった。

イーダはフキたちを見ると分かりやすく説明した。

 

「要はナパームよ。生石灰と水を入れると化学兵器に化けるの。触れたら皮膚は(ただ)れるし、吸ったら肺は潰れるし、目に入ったら失明するわよ。この車輌には対化学兵器用にコーティングされているから大丈夫とは思うけど・・・ねぇ。」

 

その言葉を聞いてフキたちは戦慄が走る。

イーダが言う”バカタレ”はフレディのことだろう。

だから生石灰弾を使うこと自体、使いたくない最後の手段って事だろう。

化学兵器が舞うコルサコフ市街地は正に『死の都市』と生まれ変わったと言っても過言ではない。

互いの本髄()がぶつかり合った結果として、罪もない無実な市民が犠牲となったのだ。

のちに『コルサコフ無差別テロ』或いは、『コルサコフジェノサイド』として取り上げられるが、詳細はアメリカ国防総省しか知らないまま闇に葬り込まれる。

最初に撃ったのはどちらなのか?

フレディたちか?

アラン機関の執行部隊か?

それは解らない。

ただ解るのは、一般市民を巻き込んだ大規模なテロだろう。

双方の部隊とコルサコフ市街地に入った際には、関係の無い市民が巻き込まれるのは分かっていたが・・・

民間人を単に駒として見ていない上に手段を選ばない敵部隊が相手では分が悪すぎる。

フキたちの焦燥(しょうそう)ともかくイーダは作戦における焦りを見せていた。

それを見た神美(シェンメイ)は皆を落ち着けさせる。

 

「皆、焦りすぎよ。彼らならそつなくこなせると思ってこの作戦に挑んでる。ちがう?」

 

 

次回⇒【死の都市からの来訪者】

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