軛を解き放て   作:クマぴょん

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【英傑】

 

 

ロシア・サハリン

元準内地・大泊(コルサコフ)

 

港では大激戦を繰り広げられていた。

その激戦の中で到着した神美(シェンメイ)の護衛を任されたフキたちとイーダを含む車輌群。

イーダはペリスコープで港を見渡す。

生石灰という化学兵器の中でも醜い大人たちは争っていた。

重火器を使用する敵と小火器しか使用できない友軍『ジャイアント・アビス』。

友軍の目的は造船所であり、その中には神美(シェンメイ)たちが乗り込む船がある。

下手に重火器で造船所を吹っ飛ばすのは出来ない。

寧ろ敵の思う壺である。

イーダは諦めてペリスコープから離れた瞬間、1台の戦闘車が友軍の前に現れては、造船所に向かって機関砲を放ちつつ、赤い一筋の光が敵をなぎ倒す。

慌てて覗き込むイーダは、確信を得た。

大胆にこんな行動するのは”あのバカ”しかいない。

しかも殺傷能力の高い異形の銃火器を用いるのは殺意マシマシのフレディだけだ。

フレディが片手間で銃火器を打ちながら左拳を上げると、護衛車輌群以外の友軍が総攻撃を開始した。

被弾したらその被弾個所から生石灰が流れ込み、化学兵器の餌食になるの解ってて、醜い醜い争い(憎しみの連鎖)に突入した。

一気に優勢が傾き始めた。

フレディやジョンとマイケルを始めとする恐れを知らない不死隊のような連中に、元アラン機関の執行部隊は恐れおののき、無残にも執行部隊に対する虐殺が始まる。

イーダは、ペリスコープの閉じては無線封止を各車に通達した。

フキたち子供たちに見せない為であった。

生石灰弾による霧は晴れる。

そこには敵・友軍の互いの死体と化学兵器にもがき苦しむ兵士や便衣兵が居た。

ここは紛れもなくジェノサイドが発生した”地獄絵図”だ。

イーダを始めとする車輌群にいる傭兵らは、喉元まで吐しゃ物が上がりそうだった。

戦争を知らない子供たちに見せていいモノではない。

 

『子供たちの未来が第一』

 

と考えたフレディは手段を選ばずに敵を倒す。

その結果がこれだ。

フレディの戯けた言葉とは相反する行為である。

 

「なにが子供たちの未来よ・・・あのバカっ!」

 

イーダが呆れてため息をついた。

直後に通信が入る。

 

<<こちら軽槍騎兵(アイアン)連隊長。造船所は確保し、逃げる準備を行えー>>

 

フレディの指示を遮ってイーダは激怒した。

 

「アンタ!これがアンタが言う子供たちの未来を描く方法なのっ!?」

<<そのAnswer(答え)は内地に行ってからにしろ。悪手だが正解()を獲得したことは変わりない。>>

 

冷酷非道のフレディを声を聞いてイーダはひとまず落ち着き、あとでしかえしてやろうと思った。

 

「・・・わかった。あとで覚えて起きなさい。全車、突っ込んで!」

 

神美(シェンメイ)を載せた車輌と殿車輌は造船所に入っていった。

 

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コルサコフ造船所にて。

 

神美(シェンメイ)を載せた車輌群は造船所内部に到着し、神美(シェンメイ)と護衛部隊は当初の目的通りに船へ入っていく。

一方でフキたちはイーダと共にフレディを探していたが、明らかに風貌が違う3人の漢を見つけて早歩きに向かう。

フレディと相手にしていたのは、かつての戦友であり家族()()()ジョンとマイケルの2人で、仲良しこよしの雑談をしていた。

互いに生きていることの実感さと、二度と年齢的に軍には戻れないはずジョンとマイケルが軍組織を率いていることに多少の安心感、そして互いに見違えたことをブラックジョークで言い返す3人であった。

そんなことよりイーダは”先程”の発言で相当キレており、一発お見舞いしてやろうと思った。

少しずつ息を殺しつつフレディに近づくも、機械化された人間であるフレディに勘づかれ、代わりに古き良き拳銃がイーダの顎に当たった。

 

「文句は山ほどあるだろうが、”全て”が終わってからにしろ。いいな?」

 

フレディの悪趣味な演じ方にイーダは引き下がった。

 

「クソっ・・・わかった。終わってからあの子たちには必ず謝りなさい。いい?」

「わーかってる。ほら、行った行った。」

 

イーダはフレディの指示で離れて船に乗り込む。

フキは一巡の流れを見て、サクラとモモも同様にイーダについていくよう指示した。

サクラは今度こそは感謝を述べたいと意志を発したが、フキは”今度こそ”は大丈夫と見たらしく、1ファーストリコリスの代表として謝りに行くと志願したのだ。

大男の3人の雑談に弱冠(じゃっかん)18才の小さき戦士が現れた。

フキを横目にフレディは微動だにせず、ジョンがフキに気づいて会釈した。

 

「よぉ!フキお嬢!延空木以来だな!」

 

ジョンとマイケルがフキの目線に合わせて膝をついて話し出す。

フレディを除いて。

 

「元気だったか?」

「え、えぇ。何とかはなってます。」

「お嬢らしくない言葉だ。サクラお嬢も来ているのか?」

「はい、モモも居ます。」

 

ジョンとマイケルは大笑いして肩をゆすった。

 

「フレディの的確な指示がなかったら危なかったな。なぁ?ジョン。」

「あぁ。俺達はともかくフレディは”まだ”任務中だから言えなかっただろ?」

 

それを聞いてフキは無言で頷く。

 

「だってさ、フレディ。何か言ったらどうだ?」

 

マイケルがフレディを見て笑いながら言う。

 

「終わっても無いのに(オレ)に『ソレを受け取れ』と?嫌だね。」

「相も変わらずだな。それでこそお前らしいな。」

「ジョン、それはフレディにとって『余計なお世話』だってことさ。」

「解ってるよ。敢えて口に出してみただけだ。」

 

ジョークが飛び交う2人を見てフキは、

 

(・・・あぁ。何もかもが懐かしい。何も変わらない彼と手段を択ばない()()が目の前にいる。)

 

と昔を懐かしんでいる。

彼らがDA、いや日本に居てくれればどんなに楽か。

ただそれは杞憂(きゆう)に過ぎない。

ジョンもマイケルはもとより軍の出世街道から逸れた人間で、平和なひと時を過ごしている場所に家族が待っている。

だから、その2人にはDAに呼び戻すのは不可能だったが・・・

こうして会えるのは、フキ個人としては嬉しい。

目の前の2人の英傑(えいけつ)だけじゃなく、DAを思って消えたはずの機械化の英傑(えいけつ)

フキにとってこの3人は、死を恐れない兵士を持つ一方で私たちDAにとって救世主だからだ。

感謝の気持ちを込めて『ありがとうございました。』言いたい。

はずだった。

造船所内部に、1つの水筒のような円筒が投げ込まれた。

ジョンとマイケル、フレディは即座に指示を出す。

 

「アビス諸君、船に乗り込め。」

「そぉーら撤収だ。撤収!」

「フキお嬢、行け!マイケル頼んだ。」

「あいよ。ちょいと失礼!」

「あっ!」

 

2つの意味で赤面したフキは、マイケルにお姫様抱っこで船に駆け足で乗り込む。

それを見たフレディは、右こぶしを上げてほぼ90°下ろし、ピースサインをはるか彼方の日本に向けた。

DA組には内緒にしていた”船の出航”合図だった。

彼は・・・

 

『最後ノ任務ヲ全ウセントス。』

 

その心構えがあった。

マイケルがギリギリに乗り込むと船はゆっくりと動き出す。

フキが慌ててマイケルに物申すがマイケルは最後のピースを当てはめる。

 

「あいつが殿(しんがり)だ。お嬢たちの護衛も代わりに頼まれたからな。奴なりのケジメを落とさないと行けないのさ。」

 

と、マイケルはフキを甲板に降ろして。

 

 

次回⇒【目的と死闘】

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