日本・某所
DA本部・司令室にて。
<<奴はーアラン機関とアランチルドレンの”ジェノサイド”を誓ったんだ。全ての根源であるアラン機関とその駒であるアランチルドレンを”浄化”という理由から沿海州でアラン関係者の大虐殺が発展した。それが第二次
「・・・あぁ。そうだな。」
リコリスたち子供たちは一斉に楠木の顔を見た。
楠木は弁解する。
「お前たち黙っていたいと思っていない。特に千束にはな・・・」
「わ、私・・・?」
千束は自分を指してキョトンとしていた。
楠木は目を伏せて言う。
「ここだけの話ではあるが千束は一応、”アランチルドレン”だった時もあった。」
楠木の言葉に、千束とたきな、全てを知っているリー以外の全員が知らなかった。
驚きを隠せないフキ。
何が何だか分からないサクラたち。
そして何よりも千束自身、フレディが余り手を汚さないこと自体驚いたのか、はたまた性格が一変したのが
それを見たたきなが口を開いた。
「リーさん、千束を彼に会わせて”なりません”。ですよね?」
「た、たきな!?」
「だって、千束はー」
「それはとっくの昔にー」
千束とたきなが珍しく口喧嘩した。
フキたちが間を入るが止まらなかった。
そしてー
リーが変わってしまったフレディの答えを出す。
<<たきなお嬢の言う通りだ。奴はかつてのアランチルドレンでさえ手にかけてる。第二次
「そ、そんな・・・」
リーの残虐な答えに、涙を浮かべて千束はぺたんと座り込む。
楠木はリーに問いかける。
「では、代わりにフキたちを向かわせるべきか?」
リーは
<<奴のことだ。フキお嬢たちを向かわせただけで解決しない。>>
「何故だ?」
<<フキお嬢を人質にした上で、千束お嬢との”交換”があるからだろう。>>
「なるほどな、ふむ・・・」
楠木とリーのやり取りに首をかしげるリコリスたち。
フキとたきなは勘づくが敢えて言わなかった。
いや、千束の前では言えるなかろう。
例え、救った子供でさえ手にかける可能性がある。
それが延空木での『千束』だ。
彼の『子供たちの未来』という考えを反故になるが、世界の
延空木事件で終わったはずの宣戦布告が、永久不滅の絶滅戦争になってしまった。
その影響により、延空木で救った千束でさえ始末する気だ。
「どうするべきかー」
楠木は眉間にしわを寄せて考えたが、リーから思いがけない事を言う。
<<あのサードリコリスは・・・今どこにいる?あの子とフキ、あとはオマケでサクラを向かわせることなら忍び込むことは可能だ。>>
あっけらかんとするリコリスたち。
楠木は口を開く。
「なぜだ?まだサードであるー」
<<
「・・・わかった。呼び出す。」
<<明日までには支度しろ。あの子が居るからこそ、DAと俺と経由で通信網を形成出来るように叩き込んである。>>
サードリコリスにそんな力があると思えないと思った一同。
ただ、解るとしたらー
リーが秘密裏にあの”サード”に通信網技術与えていたのは、正に”この時”に控えていたものであり、フキや千束をはじめる重要性の高いリコリス達には教えられなかったのだろう。
もしもの為に備える力を備えているのは、かつて栄華を誇った傭兵集団だから出来たこと。
その場しのぎのDAに緊急対応力が備わったリーが居て最強に見える。
が、このやり取りを聴いていた人間が居た。
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同時刻
元準内地・豊原(ユジノサハリンスク)・旧ユジノサハリンスク警察署
現、『黒騎士』騎兵連隊兵舎・連隊長室にて。
「ー連隊長、例の件を傍受しました。」
電探技師長がファイルの束を抱えて、”連隊長”と呼ばれる真っ黒の
その男こそがDAが探してたフレディそのものだ。
フレディは技師長に振り返らず、葉巻を吹かしていた。
技師長は”報告時に何も言わない”いつものフレディを見て、続けて報告した。
「場所はジパング・フジであります。心当たりは?」
「ある。」
「どうします?アントン・チェーホフを封鎖しますか?」
技師長の言葉にフレディは振り返る。
彼の姿は昔と相も変わらず軽装備であった。
彼は言う。
「いや、戦争支持者やアランを始末したい連中はゴマンといる。
「・・・連隊長。先程、心当たりがあると聞きましたが、以前お話しされた”例の治安組織”ですか?」
「察しが良いな技師長。貴様を技師長に昇格したのは間違いではない。・・・そうだな、かつての戦友だが今は敵だ。」
「やはり。アラン関係者ですか?」
「”元”・・・だ。すばっしこくて可愛いらしい子でな、
「
技師長の疑惑の眼差しにフレディはただただ葉巻を吹かす。
そしてフレディは椅子を引いて、深々と座る。
「あの時は消す選択肢はなかった。親父が大事に守っていた子を消すことなど・・・
フレディの答えに技師長は笑った。
「えぇ。上のしがらみに縛られている状況下で
「技師長の憶測は全て当たってるのが怖いぐらいだ。その”ファイル”と引き換えに連隊長の座を譲りたいぐらいだ。」
フレディのふざけた交渉に技師長は思わず吹いた。
「冗談じゃないですよ連隊長。何度も言ったではありませんか。私は参謀の中枢であって、戦闘には向かわないって。」
技師長の答えにフレディはケタケタと笑う。
「そうだったな”ジェームズ”。既に
「そうですね。彼らにはわざと勝利広場に誘導させてます。無論、部隊創設やアランに対する無差別テロも
そう笑う技師長の名はジェームズ。
かつてアランチルドレン”だった”男でアラン機関の闇資金や存在を公に情報流出させた主犯でもあった。
アラン機関によって国際指名手配にされた際、フレディと合流。
直後に沿海州で発生した第二次
リーを笑ったジェームズに合わせてフレディは言う。
「リーのことだ。明日には準備して向かわせるだろう。それに備えて”織り込み済み”だろ?」
「えぇ。事後報告になりますが・・・」
「構わない。彼らがアントン・チィーホフに着いた瞬間、指定された偵察衛星を乗っ取り破壊しろ。」
「承りました。」
とジェームズはファイルを机の上に置いて、部屋から出て行く。
ファイルに目を通すフレディには、葉巻を咥えたまま笑顔が垣間見る。
フレディは既にDAの動きを知っていた。
このタイミングでフレディを呼び戻すのはDAが衰えている証拠。
フレディを組み込むことでDAの力を取り戻す・・・なんて誰もが思うことだ。
そして何よりもリーを知っている人物はフレディであり、DAでは今亡きフリッツとワタナベしかいない。
だが、その2名は既に殉死している。
リーだけにはとどまらず、DAの情報を知っているのはフレディだけではなく、先程のジェームズや複数名の傭兵隊長が筒抜けになっていた。
原因は”ラジアータ”。
ジェームズがクラックする価値も無いとして不正アクセスを秘密裏に実行・流出させていた。
その全ての情報がファイル群に纏めてある。
フレディは1つのファイルを読み終えては暖炉に投げ入れて呟く。
「来るなら来い。フキにサクラ、そして”モモ”。この『
次回⇒【支援不能】
Q:なんでジェノサイドしたの?虐殺者じゃん。
A:大量虐殺だけがジェノサイドじゃない。ジェノサイド条約第2条の引用だけど、
「大量虐殺であっても、民族・人種抹殺の目的を伴わない場合はジェノサイドに当らない。」と記載されている。
Q:あ、あま?尼港ってどこ?
A:ニコラエフスク・ナ・アムーレのこと。ソビエト赤軍パルチザンによる大規模な住民虐殺事件を尼港事件や尼港虐殺と呼ばれている。
Q:ジェノサイドの元ネタとかはあるの?
A:アルメニア人虐殺。どっちかというとボスニア・ヘルツェゴビナに近いけど、ジェノサイドの例を挙げるならアルメニア人虐殺の方がしっくりくる。
Q:カースト制(軍人階級)って良くないの?
A:指揮がクソの時ってだいたい軍人階級の問題があったり、作戦を容認しない上層部だったりする。イラク戦争では200人弱のアメリカ軍の下士官が部下によって殺害されている。
Q:アントン・チェーホフってどこ?誰なの?
A:ユジノサハリンスク空港のこと。19年5月にウラジーミル・プーチン大統領が作家アントン・チェーホフを冠する大統領令に署名。