軛を解き放て   作:クマぴょん

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本作品は~銃弾と対価~( https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=299601 )の後日談です。ご注意ください(テンプレ乙)。

活動報告でも言ったけど、3部作目の翻訳が進んでないから1部作目(この話)が終わったら期間が空くかもしれない。なるはやで2部作目出すよう試みるよ。


【非情な再会】

 

 

ロシア・サハリン

元準内地・豊原(ユジノサハリンスク)・旧ユジノサハリンスク警察署

現、『黒騎士』騎兵連隊兵舎・連隊長室にて。

 

 

「隊長、連れて来ました。」

 

右目に眼帯をかけた男が黒外套の人間に言う。

 

「連れて来い。どうせ下らん話だが、もてなしておけ。」

「了解しました。」

 

眼帯の男はフキ、サクラ、モモの3人を連れて、ソファーに座らせた。

そして眼帯の男は連隊長室を去り、正に沈黙の時間だった。

 

パチッ!パチッ!

 

と暖炉の火の音。

葉巻から出て来る紫煙(しえん)(ただよ)う部屋。

そして、ソレを吸っては吐く黒外套の男。

葉巻を咥えたまま黒外套は3人に振り返った。

漆黒に近い黒外套。

機械化された左顔。

この数ヶ月で変わってしまった狂った顔。

その男こそ3人、いやDAが求めていた人物だった。

男は言う。

 

「”喜劇”のような再会だな。フキ、サクラ、そしてモモ。」

 

3人はたじろき唾を飲む。

男ことフレディはドスの効いた声で3人の心を突き刺したのだ。

刺された3人は何も出来ない。

”何故か”武装解除されずにここまで来ている。

それはフレディがMPたちの武装解除の命令を許さず、ここまで通した理由として「戦争中」という表看板があるからだ。

下手に武装解除したらMPが3人を始末する可能性がある。

それを考慮して人中(じんちゅう)を転がす必要があった。

MPの隊長である眼帯の男は、フレディの言葉を信じてここまで3人を連れて来た。

フレディが言う。

 

「DAが(オレ)を呼び戻そうと計画していたんだろ?」

 

確信を突いた言葉だ。

DAの考えがフレディによって知れ渡っている。

3人の沈黙が肯定のように聞こえる。

いや、奴は心が読めるのだ。

 

「DAが思う事だろう。貴様らがアントン・チェーホフに着いた時点でDAに対して同時サイバーテロを仕掛けている。救援要請は届かないだろう。既に5手先は見えてる。リーが喫茶リコリコに連絡することも、Walnut(クルミ)との協力体制取ってラジアータの修復、千束たちがここに来ることも、(オレ)を無理に連れ出すことも全部知っている。」

 

大きく息を吸って言い放つ。

 

「貴様らの負けだ。千束の代わりにここで果てろ。」

 

薄気味悪い笑いをするフレディは大型ナイフを取り出し、突き立ては3人めがけて投げる。

ナイフはサクラとモモの隙間を()って、奥のダーツボードに深く突き刺さる。

脅してにしては十分な手口にー

モモは泣き出した。

それを見たサクラがモモを慰めようとするが、フキが止めた。

疑問を投げかけるサクラ。

フキが小声で言う。

 

「あの頃の”彼”ではない。」

 

そう、優しくしてくれた彼は”亡くなって”いる。

魔を纏い、触れるものみな死んでゆく(たた)り神に生まれ変わっている。

そんな彼は電話の受話器を取り出して、3人に聞こえるように言う。

 

「よう。首尾はどうだ?ーそうだ。Walnut(クルミ)を封じ込めることと、ラジアータの”完全破壊”の件だ。なるほど・・・ーうまく言ってるんだな。準備しておけ。」

 

と受話器を元に戻した。

フレディは肩を揺らして笑う。

ひらひらと舞う黒外套と悪魔じみた笑う姿は・・・

いや、悪魔そのものだろう。

”悪魔”はフキに問いかける。

 

「ちょうど模擬戦闘から1年ぶりだな、フキ。延空木からの調子はどうだった?」

 

フキは沈黙を通す。

 

「また、”あの時”のように沈黙を貫き通すつもりか?今度こそモモを失い、次はサクラを失うことになる。それでも沈黙を貫き通すのか?」

 

と笑いながら彼の愛銃、Le Mat Revolver(レ・マット・リボルバー)の銃口がサクラに向けた。

これは”ガチ”だ。

サクラは青ざめて、未だに泣いているモモを引き寄せる。

フキはサクラとモモを(かば)うように立ちふさがる。

ここでフキが拳銃を引き抜いたら、間違いなく発砲される。

だから、行動だけで示す必要がある。

彼は鼻で笑う。

 

「ほう、少しは仲間を(かば)うようになったか。”あの時”と”たきなを見捨てた”時とは大違いだ。」

 

ニヤリと笑う彼。

内地を踏んでいた傭兵団時代の際、DA特有のカースト(階級)制度の最下層であるサードのモモを人質にさせた。

フキたちはその際に、モモの人命を軽視を承知した上でフリッツとフレディ、味方であるモモを殺そうとしたことと、銃密輸取引の際、たきなのスタンドプレイでDAからの命令無視により左遷喰らわせたことを話した。

 

「DAの保身の為に動いていた貴様は確かに成長した。ただ思うに、”あの時から変わっている”が、その”根本”は変わらんだろう。フキ、貴様はどう思う?」

「・・・なぜですか?」

 

フキは自身の沈黙を破って彼に問いかける。

 

「なぜ、とは何か?」

「貴方は『子供たちの未来の為に動いた』。その行動はどこに行ったのですか?」

 

彼はLe Mat Revolver(レ・マット・リボルバー)を下げて葉巻を吸って、吐く。

白い煙が揺らいで彼の顔が歪む。

 

Singularity(特異点)だよ。この世に蔓延った害虫どもが世界中でジェノサイドするならば、己も同様にジェノサイドするだけだよ。それが子供だったとしても、Singularity(特異点)に変わりはない。違うか?」

 

フキは首を振る。

 

「いいえ、それだけでは原動力にはならないー」

 

カチッ

 

何かの音が聞こえた。

彼が下げたLe Mat Revolver(レ・マット・リボルバー)の撃鉄が落ちた音で再びフキたちに銃口を向けた。

Le Mat Revolver(レ・マット・リボルバー)の威力はフキが一番知っている。

放たれた銃弾は散弾のように散らばり、四肢の一部が吹き飛ぶほどだ。

延空木事件の際、フキが真島率いるテロリストに追い詰められた時に、フレディが放った銃弾がテロリストの四肢をもぎ取っている。

目の前で血が華のように散ったとき思い知らされた。

それがフキの頭に一瞬、よぎったのだ。

 

(まずい・・・)

 

と動揺するフキ。

銃口がフキに集中する中、突如として電話が鳴った。

彼は銃を手にしたまま、受話器を取る。

 

「どうした?ーーーほう、動き出したか。ピエールを呼び出せ。そうだ。”3人を餌にする”。」

 

受話器でそう話す彼はより一層、悪魔に近づいている事を感じた3人であった。

 

 

次回⇒【(くびき)に縛られる人物】




Q:Le Mat Revolverってどこの国の拳銃?
A:アメリカ連合国…所謂南軍の拳銃。因みに靖国神社にも1丁所蔵されている。
Q:拳銃なのにどんだけ威力があるの?
A:連射力を主体とされたはじき出す「ぶどう弾(いわゆる散弾)」とも言われているが、拳銃弾以外にも散弾も扱える上に黒色火薬を使用するので瞬間火力は19世紀最高の回転拳銃とも言われる。
Q:そんな知らない拳銃を採用したのはなぜ?
A:連邦軍が「黒人差別」の象徴として不採用されたので、少しでも知ってもらいたいから、前作の『~銃弾と対価~』から採用している。
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