軛を解き放て   作:クマぴょん

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性根が腐っている人間ほど、弱みを握らせようとして第三者には「自分は優しい人間」と噓を吐く。人類の敵は人類ってハッキリわかんだね。


【子供たち】

 

 

ロシア・サハリン

元準内地・豊原(ユジノサハリンスク)郊外

”ゲスト”を連れたBTR-80は、ユジノサハリンスク市街地を見渡せる山荘に到着した。

到着直後、フレディは山荘に居る兵士たちと話し合っていた。

その間にフキたち3人はピエールに従って山荘の中に入っていく。

 

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ピエールに山荘の大広間へ案内されたDA3人組。

そこには赤子を抱いた1人の女性だった。

ピエールが赤子の世話をする女性を呼びかけると、女性は3人の少女たちに振り返って言う。

 

「あら、可愛い子供たちが増えたこと。」

 

妖美(ようび)な声で話す。

彼女こそがフレディやピエールが話していた”ルーク”、その本人だろう。

ルークは言う。

 

「貴女たちが来ることは彼から聞いたわ。」

 

彼はフレディの事だろう。

ルークは続けて言う。

 

「貴女たちなら彼の”呪い”を解き放てくれることを信じているわ。ね、フキちゃん。」

 

唐突にフキを「ちゃん」付けされて、フキはどきまぎした。

情報伝達網が早すぎる。

それは傭兵集団(配下)の時から思っていたが、解散されてから今でも発揮していた。

ルークは世間話を繰り広げながら、3人をソファに座らせて、ピエールに紅茶を頼んで”本題”に入っていく。

 

「私はルーク。元”アラン機関”の1人で彼に助けてもらってから、ずっと言われ続けているの。」

 

アラン機関と聞いた3人は目を見開く。

驚きを隠せなかった。

フキが出身を問う。

 

「出身はどちらでしょうか?」

「遠い昔だからあんまり覚えてないけど・・・そうね。」

 

ルークは赤子をあやしながら考えながら言う。

 

「かなり寒く山岳地帯が続く所で育ったのを僅かに覚えているわ。彼曰く、北欧って言う地域らしいけど、どっちかというと英語圏の北欧だった気がするわ。」

高地スコットランド(ハイランド)だ。ちがうか?」

「そう!それよ!」

 

大広間の出入口から現れたフレディの答えに、ルークはフレディに指を指して言った。

ルークとフレディは仲が良い。

だけども、フキの頭の中では疑問点が生じる。

何故?

元アラン機関所属のルークは、反アラン派閥のフランクリン派閥ではなく、フレディの派閥にいるのだろうか?

そんなことを思っていたらルークが小さく笑いながら応える。

 

「ふふっ・・・フキちゃん、私がフレディと一緒に居るのか不思議に思っているのでしょ?答えは簡単よ。私の命を狙ったフランクリン派閥を(かくま)ったのが彼だからよ。あの時はありがとね。」

 

ルークは妖美な笑いでフレディを”誘う”が、フレディに色仕掛けは効かずにルークの亡命を急がせる。

 

「ふん。そんな事よりもさっさと日本に亡命した方が良いつったが、なぜまだ残ろうと(こだわ)る。」

「貴方、わかっているでしょ?この子と一緒に行きたいからよ。」

 

そう目線を落とした先にはルークの腕で眠る赤子だった。

 

「この子は親を知らないまま育つのは悪影響なの。貴方もそうだったでしょう?」

「まぁな。本当の親だけじゃなく赤子まで(ほうむ)るジェームズをイカレ野郎だが、あんまり(こだわ)り続けると今度こそ助けるのは難しいぞ。」

「その為にこの子たち3人が助力として来たんでしょ?」

 

フキたちは2人の会話に疑問が生じる。

DAに引き渡すのはフレディではなく、ルークとその赤子だと・・・

そんな3人を他所に会話を続けるルークとフレディ。

 

「そうだが、DAは(オレ)を呼び戻したいそうだ。だが、それは無理なのは(オレ)でも充分承知している。そのためにはリーに呼び掛けた後にお前さん2人をDAに押しつけたほうが良い。」

「計画は万全ね。」

「最終手段にすぎないがな。ロープの無いバンジージャンプを挑めって言っているようなもんだ。」

 

フレディが半笑いで言うとサクラがおもむろに口にしてしまう。

 

「フレディさんはDAに戻るつもりはないんですかっ!?」

「あぁ。内地に戻ってもどの面下げて親父(フリッツ)姉さん()、強いては千束お嬢たちに会えると思う?」

 

サクラは強く言い出す。

 

「そんなことないっすよ!皆、フレディさんに会いたいんです。あっしやフキ先輩やモモだけじゃない。皆がー」

「サクラお嬢、(オレ)にそんな義理はない。運命の橋渡しは”終えた”。違うか?」

「あぅ・・・」

 

彼は『子供たちの未来の為に動いた』。

動力源かつ『(オレ)の道』として定めて生きてきた。

それが延空木事件まで彼だ。

ただまだ、彼に『子供たちの未来の為に』として今でも動いているのであれば、フキたちの作戦は既に失敗に終わる。

フキは考え込む。

すると、モモが立ち上がり大きな声で言う。

 

「フレディさん!あの時は本当にありがとうございました!!」

 

そして泣き出すモモ。

 

「お、おい。モモ!なに泣いてんだ。」

 

サクラの問いにモモは泣きじゃくりながら応える。

 

「だってぇ、もう、ひっぐ・・・()えないのは嫌だもん!」

 

とモモに言われたフレディは・・・

何だか悲しい顔になった。

延空木で消えた以前の問題だ。

内地で、傭兵集団の内戦後にモモの感謝の言葉を遮ったのは彼自身。

何ならば、サクラ被弾時の的確な指示で助けたことを言えてないフキとサクラの感謝さえ遠ざけた上に、DAの楠木司令や喫茶リコリコ、栄華を誇った傭兵集団もろとも内地から勝手に消えた。

その後に千束たちと()ったが”直接的”に会っておらず、幻のように消えていった。

フレディは、モモに近づいては抱きしめた。

 

「ごめんな。」

 

と一言を言ってモモを慰めた。

それでも泣き止まないモモ。

ルークはフレディの情けない姿を見ては面白がって言う。

 

「子供好きなのは相変わらずだけど、扱いだけはホントに下手なんだから。ちょっと変わって。」

 

あまりにフレディの”不器用さ”に変わり、ルークがモモを慰める。

 

「そうねーーーええーーーあの人は”そういうところ”があるからねぇーーー」

 

ルークのフレディに対する評価が垣間見るが、フレディは気にしちゃいなかった。

気にしちゃ居ないものの、この後の事を考えなければならない。

思考を巡るフレディにフキが質問する。

 

「フレディさん。先ほど、日本に戻らないのは何か理由があるのですか?」

 

フレディは黙る。

答えないのではない。

言うべきか言わないべきか躊躇(ちゅうちょ)している。

そんな姿を前に、フキは近づいてフレディに小声で提案する。

 

「・・・ここでは話せない内容ということでしょうか。」

 

それを聞いたフレディは頷く。

ルークがモモをあやしているのを見ながら、フキの背丈(せたけ)に合わせてしゃがみ込んで話す。

 

「可能ならばフキお嬢とピエールの3人を連れて話したいことがある。複数の作戦を同時にこなす重要性の高い話だ。」

「解りました。」

 

やり取りを終えたフレディはルークに言う。

 

「ルーク、すまないがこれからの作戦について席を外す。いいか?」

「いいわよ。出来ればこの子もあやして欲しいけど・・・」

 

ルークはモモを慰めつつ、赤ん坊の遊び相手を頼む。

フキの目線の先にはサクラが居た。

サクラは自分に指して、

 

「あ、あっしですかぁ!?一緒に同席した方が・・・」

 

サクラの慌てっぷりを見てフレディが言う。

 

「それぞれの作戦で、異議を申し立てる人間が居ると話が逸れる。ルーク、その赤ん坊はそのお嬢に任せてやってくれ。」

「わかったわ。サクラちゃん、この子のーーー」

 

子供の”用事”を済ませてたフレディ。

フキを連れてピエールを仰ぎ、山荘の地下室に向かった。

 

 

次回⇒【粛清】




Q:北欧ってスカンディナビア半島だけじゃないの?
A:『国連による北欧の区分』に北欧理事会の5つの加盟国+バルト三国とブリテン諸島が加えられている。
Q:挿絵がナイトなのになぜルーク?
A:フレディが重騎兵でリーが城とだけ覚えておけば後々解るよ。
Q:ロープの無いバンジージャンプってなに?飛び降り自殺じゃん。
A:「生か死か」の隠語。
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